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オンライン講演会のお知らせ

2021年11月22日(月) 16:00~18:00の日程で「第13回先端化学知の実装コロキウム講演会」がオンライン開催されます。本講演会は学内だけでなく卒業生へも公開されますので、興味のある方のご参加をお待ちしております。講演聴講にあたり、事前登録が必要ですが講演前日まで受け付けているとのことです。

<ご案内>

「第13回先端化学知の社会実装コロキウム『真に環境に優しい触媒的有機合成反応を目指して』『含窒素非平面π共役系多環式化合物群の簡便合成と評価』」オンライン開催のお知らせ – 早稲田大学 理工学術院総合研究所 (waseda.jp)

詳細及び申し込み(事前登録)はこのURLサイトから
   ⇒ https://www.waseda.jp/fsci/wise/news/2021/10/06/6943/

<プログラム>

16:00- 講演
 名古屋大学大学院工学研究科・教授 石原 一彰 氏
 「真に環境に優しい触媒的有機合成反応を目指して」

17:30- 研究所発表
 化学・生命化学専攻 柴田 高範 教授
 「含窒素非平面π共役系多環式化合物群の簡便合成と評価」

今後、学内で開催される講演会で社会人へも公開されるものは適宜本HPでも案内していきたいと思います。

早稲田応用化学会主催 第2回 先輩博士からのメッセージのご案内

2021年12月18日(土)13:00~16:00 (Zoomによるリモート開催)

前回8月に開催した「第1回 先輩博士からのメッセージ」で博士後期課程を身近に感じ、進学にご興味を持たれた方もいらっしゃるかと思います。今回は社会でご活躍されている先輩博士に、在学中の様子から学位取得後のキャリアパスまで幅広くお話ししていただき、学部生及び修士課程学生の皆様と交流する会を開催することといたしました。

普段はなかなか接する機会のない先輩博士と直接話すことができる機会ですので、奮ってご参加くださいますよう、お願い申し上げます。

講演者①;加藤 遼さん(中央大学助教、2017 西出・小柳津・須賀研究室 博士修了)
演題;『博士号を“取るまで”と“取ってから”』

加藤 遼さん

講演者②;堀 圭佑さん(住友化学、2020 野田・花田研究室 博士修了)
演題;『企業研究者という選択』

堀 圭佑さん

講演者③;中村 夏希さん(東芝、門間研究室D3)
演題;『社会人博士に至るまで』

中村 夏希さん

座談会参加予定者リスト
<講演者>
・加藤 遼さん    中央大学助教、2017 西出・小柳津・須賀研究室(高分子化学部門) 博士修了
・堀 圭佑さん    住友化学、2020 野田・花田研究室(化学工学部門) 博士修了
・中村 夏希さん   東芝、門間研究室(応用物理化学部門) D3
<OB/OG>
・大島 一真さん  九州大学助教、2015関根研究室(触媒化学部門) 博士修了
・伊知地 真澄さん 三菱マテリアル株式会社、2017平沢・小堀研究室(化学工学部門)、博士修了
・徳江 洋さん   三菱ケミカル株式会社、2017西出・小柳津須賀研究室(高分子化学部門)、博士修了
・山本 瑛祐さん  名古屋大学助教、2018黒田・下嶋・和田研究室(無機化学部門)、博士修了
・村越 爽人さん  塩野義製薬株式会社、2019細川研究室(有機合成化学部門)、博士修了
・佐藤 陽日さん  三井化学株式会社、2019細川研究室(有機合成化学部門)、博士修了
・梅澤 覚さん   長谷川香料株式会社、2020木野研究室(応用生物化学部門)、博士修了
・吉岡 育哲さん  学校法人早稲田大学 学振PD、2021桐村研究室(応用生物化学部門)、博士修了
・村上 洸太さん  三菱ケミカル株式会社、2021関根研究室(触媒化学部門)、博士修了
・林 宏樹さん   早稲田大学助教、2021門間研究室(応用物理化学部門)、博士修了
<博士後期課程>
・金子 健太郎さん D2  野田・花田研究室(化学工学部門)
・齊藤 杏実さん  D2  山口研究室(有機合成化学部門)
・女部田 勇介さん D2  本間・福永研究室(応用物理化学部門)
・林 泰毅さん   D1  下嶋研究室(無機化学部門)
・渡辺 清瑚さん  D1  小柳津・須賀研究室(高分子化学部門)
・渡邊 太郎さん  D1  木野・梅野研究室(応用生物化学部門)
・曹 偉さん    D1  桐村研究室(応用生物化学部門)
・中軽米 純さん  D1  細川研究室(有機合成化学部門)
・加藤 弘基さん       D1  山口研究室(有機合成化学部門)
・松田 卓さん   LD2   関根研究室(触媒化学部門)
・疋野 拓也さん  LD2  下嶋研究室(無機化学部門)

講演の日時、形式等

開催期日;     2021年12月18日(土)
講演形式;     遠隔会議用ソフト Zoomを使用したリモート講演
開会挨拶;     13:00~13:05
講演会・質疑応答; 13:05~14:35 (Zoom利用)
座談会;                   14:40~15:45 (Zoom Breakout Room利用)
応化奨学金の説明; 15:45~15:50
閉会挨拶;               15:50~16:00

その他 ;参加費無料.要事前申し込み(11月末締め切り)
     本講演ならびに座談会は日本語で実施いたします。

申し込み方法について

出席申し込みは、下記URLから11月末までにお願いします。
※申し込みの際は、wasedaメールのアドレスをご入力ください。
※今回のイベントは早稲田大学応用化学科学部1年~修士課程2年に在籍されている方が参加申し込みの対象となります。

    ⇒  https://forms.gle/BvkPS1jvfb6iUzCX9

参加申し込みをされた方には、ご入力いただいたwasedaメールアドレス宛に、参加のためのZoom情報 (URL、ミーティングID、パスコード)を12月15日頃に配信いたしますので、そちらからご参加をお願いします。

皆様、是非奮ってご参加下さい。
宜しくお願い致します。

――― 以上 ―――

(文責;交流委員会)

応化会学生委員会による学生企画フォーラム2021 

WEB開催のご案内

早稲田大学応用化学会 学生委員会委員長 西尾博道(修士1年)
学生委員会学部生部会部会長 髙田こはる(学部3年)

 旭化成株式会社様をお招きし催した第六回学生企画フォーラムに引き続き、今年も学生委員会が企画・運営するフォーラムを開催することとなりまし た。第七回目となる今回は、富士フイルム株式会社様の絶大なるご協力のもと、下記の通りWEB(ZOOM)で開催致しますので、多数ご参加をお願いいたします。

<正会員の皆様へ>

学生による企画・運営でございますが、日頃より学生委員会にご支援頂いております多くのOB・OGの皆様に参加して頂けますと幸甚です。

<学生会員の皆様へ>

本フォーラムは、応用化学の学び舎で培った「役立つ化学、役立てる化学」の理念のもと、社会でご活躍されている先輩の生の声を聞くことができますので、今後の学生生活のモチベーション向上や進路選択および将来設計の助けとなることを期待しております。是非、ご参加ください!

1.  講師

 講師1  (会社概要紹介): 澤田 真 様 

    • 2007年 早稲田大学大学院 応用化学専攻修了(黒田研究室)
    • 2007年 富士フイルム株式会社 入社
    • 2007年 富士フイルム株式会社 先端コア技術研究所
    • 2012年 富士フイルム株式会社 高機能材料研究所
    • 2016年 富士フイルム株式会社 人事部 技術系採用グループ
    • 現在に至る

 講師2 : 村上 達也 様

    • 2009年 早稲田大学大学院 生命理工学専攻修了(清水研究室)
    • 2009年 富士フイルム株式会社 入社
    • 2009年 富士フイルム株式会社 有機合成化学研究所
    • 2009年 富士フイルム株式会社 医薬品・ヘルスケア研究所
    • 2018年 富士フイルム株式会社    バイオサイエンス&エンジニアリング研究所
    • 現在に至る

 講師3 : 赤木 夏帆 様

    • 2021年 早稲田大学大学院 応用化学専攻修了(野田・花田研究室)
    • 2021年 富士フイルム株式会社 入社
    • 2021年 富士フイルム株式会社 精密プロセス技術センター
    • 現在に至る

2. 日時

2021年12月4日(土)15:00~17:30 (受付開始 14:45)

3. 当日のスケジュール

14:45-15:00      zoom受付 
15:00-15:15      開会の挨拶、注意事項説明、社員様紹介
15:15-15:25      会社概要説明
15:30-16:05      第一講演
16:10-16:45      第二講演
17:00-17:30      懇親会

 

参加申し込みはこちらから ⇒ https://forms.gle/LKNRxsfxpyTQDKnW8

来る 11月29日(月)までに申し込み願います。

 

「先輩からのメッセージ2022」の開催日程

早稲田応用化学会 交流委員会

「先輩からのメッセージ」は、学生諸君の企業への理解を深める時期が余裕をもって確保できるよう、開催日を2022年1月22日(土)とし、準備を進めています。
 学生諸君には参加へ向けてのスケジュール調整をお願いいたします。
 当日は、「企業ガイダンス」ホームページ掲載中の日本を代表する各社に在籍されているOB・OGの皆様から直接に、学生諸君の疑問や不安について適切なアドバイスがいただけますので、将来の進路決定にも必ず役立つものと確信しております。
 本年度の実施形態は、対面、リモートの両面で準備し、新型コロナウィルスの状況により11月末に決定いたします。

 詳細な内容ならびに参加の申し込みは、改めて12月中旬にホームページおよびメールマガジンにてご案内いたします。

1.日 時 

2022年1月22日(土) 時間(開催形態により別途連絡)

2.実施方法

実施方法詳細は12月中旬にご案内いたします。 
「先輩からのメッセージ」は、一般の企業説明会と異なり、企業概要、仕事の紹介にとどまらず、応化OB/OGより直接に、会社生活や日常、普段考えていることや雰囲気などを親しく聞けることを特色としています。

3.対象学生 

学部生、大学院生(修士、博士、一貫制博士)
(進路決定を間近に控えた学部3年、修士1年、博士、一貫制博士課程修了予定者を主体としていますが、将来へ備えての学部1・2・4年生、修士2年生の参加も大歓迎です。)

4.対象学科 

応用化学科および応用化学専攻、化学・生命化学科および専攻、生命医科学科および専攻、ナノ理工学専攻、生命理工学専攻等

5.お問合せ 

本件に関する問い合わせ・要望等は下記の専用アドレスまでお願いいたします。

       guidance_2021@waseda-oukakai.gr.jp

早稲田応用化学会給付奨学金への寄付のお願い

早稲田応用化学会会長 濱逸夫

趣旨

「応用化学会給付奨学金」は2005年度設立以降、「応用化学科卒業生による優秀な人材の発掘と育成の支援」を実現するために、応用化学会予算並びに卒業生有志からの寄付をもって博士後期課程進学予定の修士課程学生へ経済的な支援を行い、2020年度までに延べ48名の修士課程学生へ奨学金の給付を行なってまいりました。一方で、早稲田大学応用化学科に関わる多くの奨学金制度の整備により、博士後期課程進学者の経済的支援は充実してきました。

しかしながら、博士後期課程への進学者は年に10名程度と1割に届かず、私たちが期待するほどには増えていないのが現状です。早稲田応用化学会は、これからますます重要となってくる研究開発力や技術力を担う「博士人材を育てていく」ことで、母校早稲田大学や我が国、さらにはグローバル社会の発展に貢献致したいと考えています。

早稲田応用化学会100周年を期して、この「博士人材を育てていく」取り組みを新たに展開していく予定です。その一環として、下記のように「応用化学会給付奨学金」制度の拡充を行うとともに、制度継続のための「応用化学会給付奨学金」への募金を開始致しますので、応用化学会会員並びに応用化学会関係各位のご賛同とご支援を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

「応用化学会給付奨学金」制度の拡充

  • 給付対象を学部生まで拡大し、優秀で意欲のあるより多くの人材に対し早期から経済的な支援を行います。
  • 博士人材との交流イベント「先輩博士からのメッセージ」を新設し、早期から博士後期課程への啓蒙活動を推進します。

奨学金の構成

今回の募金活動は早稲田応用化学会100周年を期して「応用化学会給付奨学金」制度の拡充及び制度維持のために行うものであり、有志の寄付金及び応用化学会予算からの捻出を応用化学会給付奨学金に積み立てることにより制度の運用を図ります。

寄付目標総額

 目標総額:1000万円
 寄付金単位:一口 1万円より

寄付は一口1万円からお願いしております。また、寄付口数に1万円以下の端数を加えた寄付も可能です。早稲田応用化学会が100周年を迎える2023年8月末までに目標総額1000万円を達成できるよう、可能な範囲で複数口のご寄付を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

資金の管理

資金は、応用化学会の責任のもとに運用する奨学制度とし、早稲田大学理工学術院統合事務・技術センター 総務課に管理委託します。

寄付の手順

ご寄付頂ける場合は、銀行振込とインターネット利用(クレジットカード払い)の2通りからご都合の良い方法をお選びいただけます。

  • 銀行振込の場合:応用化学会事務局(oukakai@list.waseda.jp)にご一報頂ければ、寄付申込書と振込依頼書、返送用封書をご送付いたします。振込依頼書には手数料が無料となる口座情報が記載されています送付された振込依頼書を用いて指定口座に振込み、かつ記入・捺印した寄付申込書を同封された返送用封書で応用化学会宛てに郵送してください。
    必ず指定の振込用紙をご利用の上、下記銀行の指定口座にお振込ください。電信振込は手数料が発生するのでご注意ください。

手数料無料となる銀行の指定口座は以下の4つです。

      • みずほ銀行 高田馬場支店 普通1215058 口座名 早稲田大学
      • 三菱UFJ銀行 江戸川橋支店 普通0001029 口座名 早稲田大学
      • りそな銀行 早稲田支店 普通554909 口座名 早稲田大学
      • 三井住友銀行 高田馬場支店 普通1844080 口座名 早稲田大学

但し、寄付申込書を応化会宛てに郵送していただかない場合には、応化会指定寄付扱いの手続きが出来ませんのでくれぐれもご注意ください。(寄付申込書の中で指定先を応化会給付奨学金と記入する箇所があります)

  • インターネット利用の場合:大学HPから必要情報を入力することで、クレジットカード等を利用して寄付することが出来ます。
    インターネット利用の場合は、寄付申込書を郵送する必要はありません。ただし、応化会事務局で寄付情報を把握するため、寄付手続きとは別に卒業年次と氏名、寄付日および寄付金額を応化会事務局(Fax:03-5286-3892 E-mailoukakai@list.waseda.jp でご連絡ください。

大学寄付金申込サイトURL ⇒ https://kifu-form.waseda.jp/waseda/exp/explanation.htm
から進んでいただき、寄付情報入力画面で以下の内容を正確に選択してください。

・申込者区分:個人
・寄付の種類:大学各部門
・指定先:大学院
・指定先(部門):先進理工学研究科
・指定先(詳細):応用化学会給付奨学金

その後、寄付金額や寄付回数、クレジットカード情報などを入力する画面に進みます。

税額控除

なお、本奨学金への寄付金は、税額控除の対象となります。

税額控除額の算定についてはシミュレーションができます 
      ⇒ こちらhttps://kifu.waseda.jp/privilege/koujo_simulator

領収書および「寄付金控除の証明書(写)」発行については下記リンクの注意事項をご確認ください。  ⇒  寄附控除の注意事項

以上

 

 

第1回 先輩博士からのメッセージ

【開催日時】 2021年8月21日(土) 13:30-16:00
【参加者】:50名 (B1; 8名、B2; 5名、B3; 18名、B4; 9名、M1; 10名)

 Zoomにて開催

開会の挨拶:下村 啓 副会長

2023年の5月に早稲田応用化学会は100周年を迎えます。この応化会が次の世紀に向かうにあたり大切な取り組みとして「博士課程」に進む人材を増やしていくことに取り組んでいきたいということになりました。
全国的に修士から博士課程への進学率は低下する中でこれからの社会の変化に対応し、日本が世界の中で主要な役割を果たすために、早稲田大学の応用化学科においても博士課程に進む人材を増やしていくことで、より良い社会を作り出す力になるのではとの思いに至りました。
応化会では「先輩からのメッセージ」を企画し、多くの先輩方から様々な企業での働き方を紹介してもらっていますが、一方、博士課程に進む人たちがどの様なキャリアを積み、どの様な活躍をされているか、これを知る機会が少なかったと思います。そこで今回、「先輩博士からのメッセージ」と題して、博士課程の進んだ方々の話を聞き、交流する企画を立ち上げることと致しました。学部生の頃から博士課程、そしてその先のキャリアを身近に感じてもらうイベントにしたいと思っています。

講演会

講演者;加藤 弘基さん(D1 山口研究室)
演題;『有機化学に魅せられて』

加藤さんの現在の研究テーマは安定な芳香環を触媒的に脱芳香族的官能基化する手法の開発であり、インフルエンザ治療薬である「タミフル」や古くから鎮痛剤として使われているモルヒネなどの骨格を形成するシクロヘキセンといった化合物を芳香環から合成する手法であり、過剰量の芳香族や毒性を有する化合物を使用することなく複雑な三次元骨格分子の単工程合成への応用を可能にしています。

加藤さんが博士課程進学を意識するようになったのは研究室配属後、研究に没頭する中で結果が出た時の楽しさや達成感、また、研究室内での切磋琢磨といった環境因子もあり、有機化学を究めて人のためになる仕事をしたいという将来の目的がはっきりしてきた修士1年の5月頃に決意したとのこと。
とはいえ、研究室配属前から有機化学が勉強していて楽しく、勉強していく中で有機化学反応を徐々に理解していく様なった素地もあった様です。
研究室生活は教授・講師と学生との距離感が近く学年間や研究テーマに関わらず仕事のオンオフともに仲が良く、博士課程進学にあったては研究室としても背中を押してくれたとのことです。

博士課程においては自身で実験計画を立て、前日に設定した実験系の確認を午前中に実施、共同研究先とのオンライン会議に参加するなども合わせ、夕方に翌日に向けた実験系を組むなどしている。

博士課程に進学して感じたことは、奨学金制度が充実し、学費も自身で負担できるほどで研究に集中するバックグラウンドが出来上がっているほか、留学制度についても充実している様に思う。将来に対しては学位取得後に周囲から即戦力として見られるなど進路に関する部分や、研究成果を重ねていくことが求められる博士号取得への不安もあるが、周囲と議論していく中で解決策や新たな発見が得られることも楽しみであり、博士課程は遠い存在ではないことをこれから進路を模索する学部・修士の学生には理解頂ければよいと考えている。

講演者;疋野 拓也さん(LD2* 下嶋研究室)*LD:5年一貫制博士課程
演題;『無機合成って面白い』

疋野さんの研究テーマは精密に制御された無機骨格を組み上げて新たな機能を創出するもので、無機ナノ構造体の精密合成に特化した研究を行っている。ケイ素酸塩の層を有機あるいは無機化合物によるリンカーで結合することにより多孔質のサイズを調整、気体保持、光触媒、吸着剤、バイオメディカルへの応用など多岐に渡る用途に対応する素材を開発する研究であり、現在、シロキサン分子によるこれまでにない籠形の分子を合成し、リンカーには従来使用されている有機化合物ではなく金属分子を使用しているのが特徴である。

研究生は論文化まですべての過程を一人で対応することで様々な経験が出来るのも自分自身の力になっていることを実感している。分子をデザインする有機化学も面白いが一方で多様な機能を創出する分子設計を無機化合物で達成するのも強いインパクトを感じている。

疋野さんが在籍している一貫性博士課程は修士号を取得しない代わりに5年間掛けて博士号を取得するコースで進学に際しては試験もあるため、博士課程進学を決めたのは学部4年の5月頃で、進学にあたっては無機合成への好奇心、博士号取得による将来性(応化会活動の中で博士課程を取得している先輩から話を聞く機会などあり)、また研究を継続していく上で重要な環境など考慮して判断、また、博士課程進学を一つの精神的な障壁と考えた際に、そこを突破していく勢いのようなものもあったそうです。
博士号は専門性を高めたことを担保していく資格だけではなく国際性、リーダーシップ、問題解決能力なども身に着けるような訓練をされ世界で活躍する人材としてのスキルを自身の武器と出来る魅力もあると考えている。

2年間で修士号を取得して、その後の3年間で博士号を取得する区分制とは異なり、5年間で博士号を取得する一貫性博士課程は最初の2年間で通常のラボワークに加えて専門科目や俯瞰科目など受講し、資格試験(Qualifying Exam)をパスしたのちの複数指導体制下でのラボワークなどに従事し学位審査を受けるプロセスである。一貫性の先進理工学専攻のメリットとして区分制と比較しても経済的支援に恵まれているほか、インターンシップや研究留学、指導教員に加えて副指導教員からのナレッジにも触れることが出来るなどあると考えている。
学部生には研究が面白いと感じるなら博士課程進学を選択肢として考えてほしいこと、使える奨学金制度など経済的支援は活用すること、先進理工学専攻や卓越大学院プログラムに興味があれば積極的に説明会などに足を運んでほしいことなどメッセージとして伝えられた。

座談会

講演会のあと、講演者2名に加えて博士号を取得している卒業生と現在博士課程に在籍している在校生計12名を交えてブレークアウトルーム7室に参加者を分けて、博士課程や関連する質問事項を取り上げ自由闊達な議論を実施した(20分間のブレークルームセッションを3回実施、参加者がなるべく多くの博士課程経験者から話を聞ける様に配慮した)。

座談会参加者は以下の通り(敬称略)

金子 健太郎       (野田・花田研究室)
齊藤 杏実          (山口研究室)
女部田 勇介       (本間・福永研究室)
中村 夏希          (門間研究室)
林 泰毅             (下嶋研究室)
渡辺 清瑚          (小柳津・須賀研究室)
渡邊 太郎          (木野・梅野研究室)
曹 偉                (桐村研究室)
中軽米 純          (細川研究室)
松田 卓             (関根研究室)
加藤 遼             (西出・小柳津・須賀研究室 修了)
堀 圭佑             (野田・花田研究室 修了)

博士後期課程学生への支援体制:基盤委員 奨学生推薦委員 斎藤ひとみ委員

2010年以降の博士後期課程修了者は約90名に達し、進学者の内訳は内部進学が85%、他大学からの編入が6%、社会人が9%であり、ほとんどが修士課程からそのまま博士後期課程に進学している。学位取得後の進路としては過半数の約60%が企業に就職している。早稲田応用化学会では、早期から博士人材との交流機会を増やし、博士後期課程に関する真の情報を共有することで、様々なキャリアパスを示す体制を構築している。
博士課程学生の支援体制としての奨学金制度は学外のプログラムとして貸与型、給付型などあり、学科内の奨学金制度は全て給付型で応用化学会の奨学金制度は充実している。世界的にも博士人材の需要は高くなっており、日本でも博士人材への需要は増加傾向にあることの説明があった。

閉会挨拶:橋本 正明 副会長

本日のイベントを通して、博士課程についての具体的なイメージが、ある程度得られたのではないかと思います。今日の世界の情勢においては、Doctorレベルの研究者の活躍が国際競争力のキーとなっています。従来、日本で得意であった効率化や改善の積み重ねによる競争力は、IT技術や自動化の進展、そしてISOなどの標準化されたマネージメントシステムの普及によって以前ほどは大きな差を生まなくなりました。一方で技術的なブレークスルーを追求して大きな障壁を乗り越えていく力が今日の競争力の重要な基盤になっています。こうした状況からも、その技術力をベースに、世界において競合する技術分野の俯瞰的な視野を踏まえて活躍できるDoctorに対して、社会的な評価や期待は非常に高くなっています。特に日本だけではなくGlobalで活躍するためには、Doctorであることによってその活躍のポテンシャルは格段に高くなります。多くの人材が博士課程に興味を持って進学し実力をつけて、Globalのレベルで活躍していくことを期待しています。

講演や座談会を通じて参加者からは次のような意見があった。

博士人材交流会

講演や座談会にご参加いただいた博士人材の皆様にお集まりいただき、今後の開催に向けたご意見を収集する目的と、博士課程の皆様や博士号取得後社会で活躍されているOB/OGの皆さまとのコミュニケーションの場として交流会を開催した。ブレークアウトルームをいくつか設定し、自由に懇談していただいた。参加者からは良い刺激になったとのご意見を頂き、今後も皆様から頂いたご意見を参考に博士人材の交流の場として展開して参ります。

博士課程進学に対するハードル:

  • 能力の高い人物が進学すべきと考えていたが、研究が好きになれるかどうかが重要であるのではないかと思い、博士進学に対する精神的なハードルが下がったように感じた。
  • 博士課程は修士課程よりもハードルの高いイメージがあったけれど先輩方の話を聞いてイメージが変わった。博士課程進学の背中を押してもらえた気がした。
  • 博士は修士からさらに専門的になったものだろうと単純に考えていた。実際にはそれだけでなく企画する力や国際的な能力など、研究する専門分野の知識、能力以外にも様々な力を養う機会になることを講演を通して知ることができた。

博士課程進学におけるサポート体制

  • 博士における奨学金などの制度について詳細に知ることができてよかった。
  • 博士課程に進む上で経済的な不安があったが、話を聞いて和らいだ。
  • 企業就職後にアカデミアに戻られた方や社会人ドクター博士課程で研究されている方に対する奨学金制度に興味がある。

その他

  • 博士課程に進学後の生活が修士課程と大きくは変わらないと聞いて安心した。
  • 一貫性博士課程や卓越大学院プログラムなどを知ることができてとても勉強になった。
  • 博士課程に進学した後の進路選択や就活などにも興味がある。進路選択の理由や就職活動の流れについて社会人博士人材からも話が聞きたい。

次回開催は2021年12月18日予定

以上

(早稲田応用化学会 基盤委員会、交流委員会、広報委員会、奨学生推薦委員会)

 

 

 

2021年度 第2回若手会員定期交流会

8月7日(土)に第2回若手会員定期交流会をオンライン会議ツールZoomにて開催さされました。この会は第1回(5月15日開催)に引き続き主にB1~B3までの学生と若手OB・OGの交流を深める目的で行われました。初めに早稲田応用化学会の副会長も務められている平沢先生よりご挨拶をいただき、その後OBのお三方のご講演、テーマごとに分かれての懇談会という順で実施されました。
学生委員会のHPに報告が掲載されました。 ⇒ こちら

学生委員会

「リモート学生企業施設・工場見学(DNP)」レポート

これまで、“バスツアー”で関東近郊の企業の工場を見学する企画で運営してきましたが、コロナ禍の環境で、大学サイド/企業サイドいずれも団体での行動が制限されており、今回は新たな試みとして、大学と企業をリモートで結んだ “企業訪問” を行いました。

以下文中では リモートにおける行動、役割であることを明確にする場合に“ ” を付しています。

リモートの利点を活用し参加者は約50名、また、OB、OG懇談会ではDNP各サイトからの参加がありました。

1.概要

【日程】 2021年6月10日(木) 16時40分~18時40分

【”訪問”先】大日本印刷株式会社:DNP 

1)     パート1;P&Iラボテクノロジー

P&I:Printing Technology & Information Technology
参加学生の個々のデバイス(ノートPC、スマホなど)とDNP五反田をリモート接続ツール:Teamsで接続

2)     パート2:OB、OG懇談会

【参加学生】対象:学部1年生、2年生の希望者
                  (3,4年生、修士学生からも希望者の参加がありました)

参加者:約50名

【”引率”】山口潤一郎教授、須賀健雄准教授

【DNP】ファインオプトロニクス事業部 鈴木智之@五反田 新31 1981年 加藤・黒田研
    研究開発センター 那須慎太郎@つくば 新52 2002年 黒田研
    高機能マテリアル事業部 住田裕代@北九州戸畑 新68 2018年 小柳津・須賀研

2.詳細

1) パート1;P&Iラボテクノロジーの説明(DNP ホームページより)

DNPの技術は、モノづくりの基礎となる「微細加工」「精密塗工」「後加工」と、それを支える「企画・設計」「情報処理」「材料開発」「評価・解析」に大きく分かれ、それぞれの技術が拡がり、高度化することで、さまざまな技術に発展しています。印刷から発展したDNPの技術は、現在も進化を続けています。
しかし、DNPの強みは多くの技術を持っていることだけではありません。これらの複数の技術を掛け合わせ、新しい価値を持つ製品やサービスを生み出せることが特長です。
例えば「本」をつくる際は、基礎となる印刷技術や製本技術を掛け合わせ、さらに素材となる紙を掛け合わせて作られています。その後、素材となる紙をフィルムや金属に置き換え、さらに高度化した技術を掛け合わせることで、パッケージ、建材、エレクトロニクス部材などの製品やサービスを生み出してきました。

◎技術の樹

◎DNPの製品例

  • ICカード
  • フォトブース
  • 食品パッケージ
  • 生活空間関連
  • リチウム電池用バッテリーパウチ
  • 電子デバイス関連

◎参加学生の感想(代表的なものをピックアップ)

  • 印刷事業のみならず、幅広い分野にひろがっており、大日本印刷のイメージが変わった。
  • 印刷と化学との結びつきが想像以上に広範囲であることがわかった。
  • 印刷技術が細胞培養や毛細血管シートなど医療分野にも応用されており驚いた。

2)   パート2:OB、OG懇談会

 参加学生からの下記の質問を中心に、OB、OG懇談会を実施しました。

    • P&Iラボテクノロジーに関連したDNPのビジネス・技術に関するもの
    • 学生時代に取り組んだこと/学生時代にしておいた方が良いこと
    • 仕事の内容/就職の考え方

また、山口先生から下記の質問があり、OB、OGの経験の中から具体的な回答・説明がありました。

    • 海外駐在員の経験について
    • 博士の活躍の場について
    • DNPの魅力について

◎ 参加学生の印象に残ったこと(代表的なものをピックアップ)

    • 1、2年生の勉強が大事であること
    • 機器分析・分析実験を含め基礎的な積み重ねの重要性と、それらが将来に繋がっていくこと
    • 博士課程に進んだことで、研究の段取りやアプローチを決められる仕事についたこと

最後に応化会の活動として

  • 企業ガイダンス/先輩からのメッセージ
  • 交流会講演会

の案内を行いました。

 

以上

早稲田応用化学会 交流委員会主催 第36回交流会講演会

2021年7月3日(土)15:00~16:30 (Zoomによるリモート開催)

講演者 上沼敏彦氏  ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社
    NA事業部 カスタムバイオテック部 部長
演題 『COVID-19の現状と対策』
副題 「COVID-19にいかに立ち向かうか」

講演者 上沼敏彦氏

講演者略歴

1986年3月 早稲田大学 大学院 理工学研究科 応用化学専攻(宇佐美研究室)修了
1986年4月 株式会社 資生堂 基礎科学研究所
1989年1月 同社 ライフサイエンス研究所
1990-91年  東北大学 大学院 医学研究科 脳疾患研究施設 脳神経外科 留学
1996年    同社 スキンケア研究所
1997年    博士(工学)早稲田大学
1998年6月 旭硝子(現 AGC)株式会社 機能性商品開発研究所
2006年5月 ロシュ・ダイアグノスティックス(現在に至る)
2007年    ロンドンビジネススクール エグゼクティブプログラム
2015年    慶應義塾大学 理工学部 生命情報学科 非常勤講師

はじめに

 今回も前回と同様、リモート方式による交流会講演会として開催致しました。
参加者:134名(卒業生115名[講演者、先生を含む]、在校生19名)
本講演会には早稲田応用化学会の橋本副会長にもご参加頂き、ご挨拶を頂きました。

                               左:橋本副会長                                          右:椎名交流委員長

その内容については、本講演会の進行に合わせまして本文の最後のところに掲載させて頂きました。

まず椎名交流委員長による開会宣言、視聴に当たっての依頼事項、及び講演者の略歴紹介が行われた後、講演が始まりました。
なお、本講演会におきまして講演者が作成し、説明のために使用されましたプレゼンテーションファイルが応化会HP内の資料庫に格納されています。こちらのファイルも是非ご覧下さい。

(閲覧には資料庫のパスワードが必要です。)

講演会

ロシュグループについて

ロシュはスイス・バーゼルに本拠を置き、医療に関する早期発見から予防、診断、治療、さらにはQuality of Life(QOL)向上まで、患者と社会のための医療を体現している。

ウィルスについて

細菌や真菌の1/10~1/100ほどの大きさしか持たないウィルスは宿主に感染することで増殖し、COVID-19については、ウィルス膜タンパク上のスパイクが気道の感受性細胞のレセプター(アンジオテンシン変換酵素Ⅱ:ACE2)に結合することで細胞内に侵入することが知られている。このACE2は高血圧発症にも関与するレセプターであり、基礎疾患を有する患者へのリスク検討でも議論の対象となっている。

ウィルス感染から抗体獲得までの流れ

ワクチンの効能効果の基礎的な知識としてマクロファージやナチュラルキラー(NK)細胞による自然免疫と樹状細胞が認識した情報をもとにリンパ球で産生されるB細胞、T細胞による獲得免疫により浸入したウィルスは不活化されるが、mRNAしか有さないCOVID-19は遺伝情報の転写エラーにより変異を生じやすく、スパイクを形成する遺伝情報を持つアミノ酸配列の変異によりスパイクの形状が変化する(アミノ酸の変異個所と変異前後で入れ替わるアミノ酸の種類により変異株は命名されている:452番目のアミノ酸がロイシン(L)からアルギニン(R) に置換された場合L452R、など)。

感染・伝播性の懸念がある変異型ウィルス(VOC)はウィルスの変異株に国名を提示しないルールにより、確認されたイギリス、南アフリカ、ブラジル、インドそれぞれの変異種にα株、β株、γ株、δ株とそれぞれ命名され、感染伝播の懸念は確認されていないが直近で報告された変異株には注目すべき変異株(VOI)としてラムダ株が加えられた。

COVID-19の検査法

検査方法

PCR

抗原検査(定性)

抗原検査(定量)

抗体検査

検体採取

鼻腔・唾液

鼻腔

鼻腔

血液

検出対象

RNA

ウィルスタンパク

ウィルスタンパク

血中タンパク

精度・特徴

精度は高いがPCR走査に時間を要する

迅速で簡便だが精度が低く陰性判定のリスク

定性型抗原検査より精度は高いがPCRに及ばない

特異性低く、WHOも推奨なし

検出場所

検査機関・PCR導入機関であれば採取場所

採取場所

空港検疫など(採取場所)

検査機関

このほかにも新たな検査方法が各種研究機関により進められている。

ワクチンの種類と特長

ワクチンには弱毒化した生ワクチンや細菌毒素を取り出して無毒化したトキソイド、ウィルス遺伝子を除去し無毒化した膜タンパク(外殻部)のみで構成されるウィルス様粒子などもあるが、COVID-19に関しては不活化ワクチン、mRNAワクチン、ウィルスベクターワクチンが実用化されている。

不活化ワクチンは有精鶏卵にウィルスを接種増殖させたのちに回収してエーテルで不活化したものが使われ、mRNAワクチンはスパイクタンパクを標的としてその遺伝情報を持つmRNAをリポソーム内に封入しており、ウィルス遺伝子の本体は使用しないためウィルスによる感染リスクがない。ウィルスベクターワクチンはアデノウィルスの外殻部にCOVID-19ウィルスの遺伝情報の一部を封入することで抗原となるCOVID-19タンパクを創製し抗原抗体反応を惹起する。

世界のワクチン開発状況と接種効果

ファイザーやモデルナが開発したワクチンはmRNAによるもので、アストラゼネカ社やジョンソン・エンド・ジョンソンが開発したワクチンはアデノウィルスベクターを利用したウィルスベクターワクチンになる。

スパイクタンパクの結合部位に対する中和抗体(抗RBD抗体)の産生はファイザーのmRNAワクチン接種後1週間ではベースラインからほぼ変動しないが、3週目に掛けて個人差のバラツキの大きな産生を示し、ここで2回目の接種をすることで4週目以降ほぼ定常状態に達する。モデルナ製のmRNAワクチンは4週目で2回目の接種を実施している。

また、一度COVID-19に感染した患者については既に体内で抗体が作られていることから、ファイザー製のワクチンを1回接種した段階(接種後7日)でほぼ定常状態に近い抗体値が得られていることも明らかになった。

ワクチン接種後の副反応についてもデータが集まりつつある。国内においては定期的に厚生労働省が副反応の発現状況について公開しているが、現時点(2021年6月13日時点)でmRNAに接種による集積データでは重大な懸念は認められないとの評価が下されている。

mRNAワクチンの製造

ロシュはファイザー製ワクチンの生産受注をしているため、ここではファイザー製mRNAワクチン製造に関して説明された。まず、mRNAを作成するために必要なコロナスパイクタンパク産生情報を持つ遺伝子をプラスミドに組み込み、E.coli(大腸菌)へ組み入れる。E.coliは20分ほどで倍増するため、7時間ほど培養を繰り返したのちに、E.coliを後処理しプラスミドを回収、この時点で品質管理を実施してプラスミドから制限酵素を用いてコロナスパイク遺伝子を切り出す。その後切り出したDNAからmRNAへの転写により作製したmRNAを精製、その後リポソームにmRNAを組み込んでワクチン原液となるが、300Lの培養で75万回分接種相当のmRNAが製造できるとのこと。

日本でのワクチン開発状況について

国内でもmRNA、組み換えタンパク、不活化ワクチンなどワクチンの開発が進んでいる。ただし、ワクチン開発費用に関して、米国で開発補助金として国家がサポートする金額は、日本における開発補助金の10倍程度もある。

また、欧米ではリスクベネフィットを考慮してベネフィットがリスクを上回ると判断された場合には積極的治療が実施されるが、日本はゼロリスク志向の国民性ということも、早期承認への障壁の一つになっている。

ワクチンと臨床状況

ワクチン接種による副反応について懸念する声が聞かれるが、糖尿病や高血圧といった基礎疾患がある場合の接種は可能、またワクチンやワクチンの添加剤(ポリエチレングリコールなど)に対するアレルギーやその他食物アレルギーの既往がある場合でも接種は可能とされている。ただし、アレルギーの既往に対しては接種後30分の経過観察が求められている。手術や臓器移植などで免疫抑制剤を使用している場合や免疫不全の既往がある場合も接種は可能だが、免疫抑制剤の影響は注意すべきとの指摘もある。

妊産婦、授乳婦については接種可能で、小児に関しては12歳以上の接種は承認されているが12歳未満の被験者については臨床試験が開始されたところである。

仮にCOVID-19に罹患してしまった場合、国内においては抗ウィルス治療薬が承認されているほかサイトカインストーム抑制などの対症療法として2剤が承認されており、コロナ抗体カクテル治療など国内で承認申請段階にある薬剤が控えている。

ある疫学調査の結果からはCOVID-19に罹患した患者の87.5%に何らかの後遺症が認められたとの報告もあり、感染症症状の寛解後も疲労が抜けない(ウィルス後疲労症候群)や、感染時に誘発された肺や心臓への臓器損傷や呼吸困難など、感染時の症状の持続といったものが複合的に持続した事例が紹介されている。

Global企業に思うこと

特に学生諸君に訴えたいのは、辛いことがあっても頑張って究めていけば色々新しいものを掴むことが出来る、ということです。そのための手段の一つとしてお勧めするのがPh.D.を持つことです。これにより私の場合はロシュの中で幹部となり、幹部でなければ得られない経験が得られたと思っています。またPh.D.を持つことにより世界中の色々な場所でどんな人とも対等に話が出来て、経営にも入っていくことが出来ると思います。これから社会に飛び立っていく皆さんの活躍を楽しみにしております。

私は今年60歳になりますが、ここで立ち止まることなく別の仕事に打ち込んでいこうと思っています。またいつかどこかでお会いしましょう。

FAQ、質疑応答

  • 複数のウィルスへの同時感染:

COVID-19の変異株との同時感染の事例はあるが、科学的な根拠はないとのこと。

  • 飛沫感染に関して、ウィルスを含んだ飛沫のサイズからは数時間にわたり飛沫は浮遊し、地表への落下は遅いと考えられるが感染のリスクは:

より長時間浮遊しているというデータもある。接触感染という観点からの注意は必要ではあるが、種々の環境因子なども考慮すべきで何とも言えない。

  • 海外で1回目と2回目で別のタイプのワクチンを接種することで中和抗体化が高くなったとの報告もあるようだが:

いくつかの地域においてそのような報告があるのは承知している。ただ、収集された情報を検討するに症例数が十分ではなく、それがエビデンスのあるデータとして見るべきかの検討には早計であると言われている。

  • 副反応について、年齢層、性差等は認められているのか:

日本国内における集積データ(疫学調査)が蓄積されてきている。現時点で発現率にそれぞれ差はあるようだが2回目接種における副反応発現は認められている。

質疑応答後、早稲田応用化学会の橋本副会長から閉会のご挨拶を頂きました。

橋本副会長からのご挨拶

 色々興味深いお話を有難う御座いました。
これまで1年半に亘り世界中がこの感染症に振り回されており、何が信頼出来て何がPriorityの高い情報なのか分からない状況下の中、今日のお話を伺って今後色々なことを判断する上での明確な基準が持てたように思います。また、今回のように参加者全員が自分自身に関わる問題としてまさに直面しているテーマを対象として説明を頂いた講演会は前例が無いように思います。皆さんが本日得られた知識等を元に適切な判断をして無事にこの状況を乗り切り、早い機会にこの感染症を抑え込める日が来ることを期待しております。
お忙しい中時間を取ってご講演して頂きました上沼さんに心からお礼申し上げます。有難う御座いました。

――― 以上 ―――

(文責;交流委員会)