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第9回早桜会講演会の報告

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岡野支部長の講演者紹介

  第9回早桜会講演会は9月9日(土)、講師に岐阜大学名誉教授 木内一壽先生をお迎えし、開催いたしました。木内先生は平田研究室にて「活性汚泥法による廃水処理」についてご研究される中で、酵素を中心とする生化学の研究に進まれたのち、神経化学分野で長年に渡りご研究をされています。今回は、“ヒト脳の特性”と題し、神経細胞や脳に関する基本的な知識から、脳機能の解明に至るまで幅広くご講演いただきました。

 

   皆さまは脳の存在を意識して過ごされていますか?日本人にとって脳を身近に感じる機会は滅多にありませんが、アメリカではなんと小学校教育の中で、神経信号の伝搬の仕方や、前頭葉の機能など“brain power 脳力”に関する授業が行われているそうです。

  人間は他の動物よりも脳が非常に発達していますが、チンパンジーと我々ホモ・サピエンスの遺伝子はわずか1.23%しか変わらないと言われています。霊長類の進化とともに、脳は非常に大きく進化し、20万年前からホモ・サピエンスは約1350mLサイズの脳を持っていると解説いただきました。

  ではヒトの脳はなぜここまで成長しているか、それは他の動物よりも未熟な状態で生まれてくるからこそ、学習することで脳を鍛え、成長できるのだそうです。人間の脳は遺伝子の影響50%、外部環境の影響50%で決まり、脳のネットワーク形成が人類の進化の始まりにつながっていると解説いただきました。さらに大脳皮質前頭葉の働きが人間の脳の発達につながっていると述べられました。

  最後に、脳神経細胞に関する最新の研究動向もご紹介いただきました。f MRIによる脳の位置ごとの機能の解明、脳内の信号のやりとりの可視化など大変刺激的な内容でした。

  “研究は気力、体力、知力だ”という木内先生の研究スタイルを象徴するような大変広く深い内容で、質疑の時間が予定をオーバーするなど参加者一同、探究心を刺激されるご講演でした。

 

  講演終了後は、集合写真を撮り、特別食堂での懇親会に移りました。初めてご参加の方、お久しぶりの方のスピーチを挟み、大変賑やかな会となりました。筋肉と同じように脳も鍛え続けるべし、との木内先生のお言葉を持ち、大盛況の中閉会いたしました。

(文責 桜井)

 

 

出席者:

木内一壽(新24回)、津田實(新7回)、井上征四郎(新12回)、市橋宏(新17回)、田中航次(新17回)、岡野泰則(新33回)、和田昭英(新34回)、原敬(新36回)、中野哲也(新37回)、柘植知彦(新41回)、髙島圭介(新48回)、數田昭典(新51回)、陳鴻(新59回)、桜井沙織(新64回)、御手洗健太(新65回)

豊倉賢名誉教授 瑞宝小綬章 叙勲

2017年4月29日、豊倉賢名誉教授は、瑞宝小綬章を叙勲され、5月11日に、伝達式が行われた。

豊倉名誉教授ごあいさつ

先生のご功績は、工業装置内晶析現象で新しく考案した無次元結晶粒径・溶液過飽和度を用いて所望結晶製品を工業規模で生産出来る晶析装置・操作の設計理論を世界に先駆けて確立したことに加え、工業晶析装置内の2次核発生や結晶精製の新現象も発表して製品結晶品質向上や生産コスト削減を容易にし、世界の晶析研究・結晶生産工業の発展に貢献した点にある。

豊倉名誉教授に、ご薫陶を受けたOBが、2017年7月29日(土)リーガロイヤル東京 サファイアに参集し、盛大な祝賀会を実施した。海外から、マルティンルター大学 ヨアヒムウーリッヒ教授も、急遽来日し、OBとともに、恩師の叙勲をお祝いした。同門のOB会としては、先生のご退職以来の実施であり、18年ぶりの再会に話が盛り上がり、飲食も忘れて昔話に花が咲いた。


瑞宝小受章 勲記

豊倉名誉教授ご夫妻とウーリッヒ教授

祝賀会の記念写真

 

 

 

 

 

(新18回 鶴岡洋幸、新26回 平沢 泉)

早稲田応用化学会中部支部第14回交流会開催のご案内

早稲田応用化学会中部支部第14回交流会

 

早稲田大学 特任教授 逢坂哲彌氏
     “最近のエネルギー・蓄電池の話題~自動車EV化に伴って~”

第14回中部支部交流会を下記要領で開催致します。今回の講師は、現在、特任研究教授の一号としてスマートエネルギーシステム・イノベーションセンター長としてご活躍中の逢坂哲彌先生にお願いしました。
講演内容は何方様にとっても大変興味ある内容となっております。講演後は懇親会も予定しております。お誘いわせの上、多数ご出席下さいますようご案内致します。
                          早稲田応用化学会中部支部
                          支部長 三島 邦男

1.演題  最近のエネルギー・蓄電池の話題~特に自動車EV化に伴って~

2.講師  逢坂哲彌先生
      早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構特任研究教授・名誉機構長
                      早稲田大学理工学術院名誉教授

3.日時  2017年10月14日(土)
                     受付16:00より
                     講演会 16:30~18:00
                     懇親会 18:00~20:00

4.場所  名古屋ダイヤビル1号館 (JR名古屋駅桜通口より徒歩3分)
      アクセスはこちら(リンク終了)
       講演会 131号室
       懇親会 同ビル1階喫茶「サンディア」

5.会費  講演会 無料
                     懇親会 3,000円

         参加申し込みはこちらから→ここをクリック。
         準備の都合上、来る10月6日( 金)までに申し込み願います。
         お問い合わせ先:応化会中部支部幹事 堤 正之
       Tel. ;059-353-7639
          E-mail; m.tsutsumi @fuga.ocn.ne.jp

第30回、第31回交流会講演会の資料を資料庫に収納しました。

第30回講演会講演会(突破力 株式会社キャステム代表取締役社長 戸田拓夫氏)、第31回交流会講演会(タケダのグローバル化への挑戦 武田薬品工業株式会社 相談役 長谷川 閑史氏)の資料を資料庫に収納しました。

資料庫への入室は → こちらから

(資料庫への入室はID,パスワードが必要です)

第9回早桜会講演会・懇親会のお知らせ


 早桜会(早稲田応用化学会関西支部)では、第9回講演会を下記要領で開催します。今回の講師には、岐阜大学特任教授の木内一壽先生(新24回 平田研究室)にお願いしています。どなたにとっても大変興味深い講演内容と思います。講演後は、同倶楽部で懇親会も予定しています。初めての方もぜひ奮ってご参加ください。

演題

ヒト脳の特性

講師

木内一壽先生
(岐阜大学生命科学総合研究支援センター 放射性同位元素実験分野 特任教授)

日時

2017年9月9日(土)
    講演会  15:00 ~ 17:00
    懇親会  17:00 ~ 19:00

場所

中央電気倶楽部(大阪・堂島浜)
大阪市北区堂島浜2-1-25  06‐6345‐6351
    講演会  215号室
    懇親会  特別食堂

会費

講演会  無料
懇親会  5,000円
(ただし、学部卒業後または大学院修了後2年間は、2,000円)

講演要旨:
この講演では、最初に、脳を構成する神経細胞について簡単に説明します。次に、ヒト脳の進化に影響を及ぼした遺伝子について例を挙げ、分かり易く解説します。最後に、ヒトで発達した前頭葉について、エピソードを交え、その機能について話していきたいと思います。

早稲田応用化学会 交流委員会主催 第31回交流会講演会の報告

『タケダのグローバル化への挑戦』
~ 世界をとりまくパラダイムシフトのなかで ~

講演日時:2017年7月13日(木)17:00~19:00(学生代表とのパネルディスカッションを含む)
講演会場:63号館2階03室、04室、05室  引き続き63号館1階ロームスクエアで懇親会を実施

講演者;長谷川 閑史 (はせがわ やすちか) 氏 武田薬品工業株式会社 相談役

1970年 早稲田大学 政治経済学部卒業
 同   年 武田薬品工業株式会社入社
1998年 医薬国際本部長
1999年 取締役
2003年 代表取締役社長
2011年 公益社団法人 経済同友会 代表幹事(2015年まで)
2014年 代表取締役 取締役会長
2015年 東京電力株式会社(現 東京電力ホールディングス株式会社) 社外取締役
2015年 取締役会長(2017年まで)
2016年 旭硝子株式会社 社外取締役
2017年 相談役

保谷交流副委員長の司会のもと、まず早稲田大学名誉教授である竜田邦明・栄誉フェローから講師紹介が行われた後、教員・OB/OG・講演会関係者67名、学生73名、合計140名(来場者ベース)の聴講者を対象に講演が始まった。なお、講演会場内で投影された説明資料は印刷物としても用意して頂き、聴講者一人ひとりに配布された。講演は基本的にこの説明資料に基いて順を追ってなされており、本報告書でもこの説明資料を引用した部分がある。

保谷交流副委員長からは、竜田邦明先生が、武田薬品と深い関係にあり育英事業を行う公益財団法人尚志社において長年評議員及び理事の役職にあり、長谷川閑史氏ともお付き合いが長いこと、また竜田邦明先生ご自身も尚志社から奨学金を受けた奨学生であることが紹介された。

竜田邦明氏による講師の紹介

長谷川閑史氏の講演

長谷川閑史氏の講演

講演内容は下記の3項目に大別されている。
(講演内容要旨は下記の項目をクリックしてご覧になれます)

1.世界のパラダイム・シフト

2.医薬品産業の現状と今後

3.タケダのグローバル化への挑戦

 

質疑応答(要旨)

講演の最後に聴講者の1人から次のような質問があった。

*研究拠点を湘南Research Centerからアメリカに移した、という話があったが、武田薬品において創薬が出てこなかった原因は何か? また、拠点を海外に移した理由は何か?

これに対して講師から下記のような説明があった。

*2つ理由がある。

1つは、1990年代の初頭位まで、市場に出ている製品の9割は低分子化合物で、錠剤とかカプセルとかの経口薬であった。ところが、Unmet Medical Needsとして残された病気は治療が難しく原因の究明も難しい。ましてや治療法が出てきてもそれは注射剤であり、経口剤では難しい。経口ということは水に溶けなければいけないが、それが中々難しい。そのスペースを埋めたのが抗体を中心とした生物学的製剤である。日本は低分子化合物でTopであったが、それだけに生物学的製剤への切り替えが遅れた。例えば抗体のTechnologyは1970年代の半ばに分かっていたが、そのTechnologyを使って具体的に治療薬を出すのに約20年位掛かった。当社も含めて日本の企業は抗体の研究を行ったが、うまくいかず途中で投げ出してしまった。ところが欧米の企業は、自分のところで出来なければHigh Risk、High Returnを覚悟のBio Ventureを取り込むことによって、抗体の技術を自らのものにしていった。日本は、某製薬会社1社を除いては抗体の研究を最後まで続けて製品化したという成功体験のある企業は無い。成功体験のある所へ行って取って来ることも難しい。
残念であるが、Bostonが世界のResearch Hubでinnovativeな薬の6~7割を出している。そういうEco Systemを作れない日本で頑張るといっても、それは根拠のないGambleのようなものである。今は、そういう世界のResearch Hubに行ってInsiderになって研究開発を行う道を選んだ。それが究極的に正しいかどうか分からない。ただ、今の延長線上で行く将来の姿と比べて、何かの改革をやることで成功確率、あるいは将来の絵姿が少しでも良くなるのであればそれに賭ける、というのが経営者としての判断であると思うので、そういう改革を行ったという事である。

講演の後、講師を囲んで学生によるパネルディスカッションが開催された。

学生によるパネルディスカッション

テーマ「私達のパラダイムシフト」

パネルディスカッション

参加学生:

M1 田中 徳裕(Facilitator)
M1 石原 真由
M1 福井 宏佳
B4 政本 浩幸
B4 柳川 洋晟

パネルディスカッション

学生によるパネルディスカッションの内容、および学生の講演会に対する印象については、学生交流委員のページで報告されています。   ⇒ 学生のページはこちら

第31回交流講演会Gallery

懇親会

学生によるパネルディスカッションの後、会場を63号館1階ロームスクエアに移して懇親会を開催した。(懇親会参加者;教員・OB/OG・講演会関係者51名、学生60名、合計111名)

町野交流委員長の司会のもと、応用化学会三浦会長の挨拶、そして竜田栄誉フェローの乾杯のご発声の後、懇親会が始まった。今回は特に講師所属の会社説明のため、武田薬品工業株式会社 社長室から下記4名の方にも参加して頂いた。

渉外・秘書担当部長 田村 聖彦 様
主席部員 小泉 雄介 様
課長代理 高際 辰之 様
課長代理 片野 詩子 様

また今回は学生参加者も多く、講師を取り囲んでの輪は勿論、上記4名の方を取り囲んでの輪も会場のあちこちに開いて盛大な催しとなった。帰国子女である学生が講師と英語で話している姿も見られた。

懇親会

橋本副会長の中締めの挨拶の後、松方主任教授から閉会の挨拶を頂いた。松方先生はこの日海外出張からの帰りの日で、空港から直ちに懇親会場まで駆けつけて頂いたとのことである。最後に上宇宿学生交流委員による、武田薬品の製品を引用した魅力ある挨拶と一本締めにて解散となった。

第31回交流講演会懇親会Gallery

(文責:交流委員 小林幸治、写真撮影:相馬威宣、橋本正明)

――― 以上 ―――

 

 

第26回早桜会懇話会(今年度第1回)の開催報告

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 第26回懇話会を、6月24日(土)15時~17時、中央電気倶楽部(大阪堂島浜)で開催しました。

 今回の講師は、株式会社オー・ジー(新59回平沢研)の陳鴻氏で「台湾海峡西岸経済区」(以下海西経済区)と題して、急速に経済発展を遂げている該地区の様子について、その地理的、歴史的な観点も取り入れて解説されました。

 

 海西経済区は主体地位を有する福建省と周辺の広東、浙江、江西3省の一部から構成されており、その人口は約6,500万人で、東は台湾と海を隔てて向き合っていて、北は長江デルタ、南は珠江デルタに隣接している。中国沿海の経済帯を構成する重要な地域であるとともに、科挙の制度があった時代には最も多くの進士を産み、現代では、学者、専門家を輩出する教育レベルの高い地域である。また客家人、華僑の故郷で億万長者が多く商売に長けた人の多い地域でもある。

 かつては経済的に遅れていたが、台湾と向き合う地域で戦略的にも重要視されて2009年5月に中国国家レベルの事業として戦略的に経済を発展させる決定がなされました。その狙いは 「海西経済区」の開発を加速させて、珠江デルタ、長江デルタと一体化し、太平洋西岸最大経済地帯を形成させることにある。発展は驚くほど急速で、決定から10年足らずで既に長江デルタ、珠江デルタと台湾海峡西岸地域を結ぶ高速鉄道、高速道路を完成させ、主体の福建省の2016年のGDPは、2009年より倍増、人当たりGDPは1万ドルを突破している。

 講師の陳鴻氏は海西経済区の中心部に位置する福州の出身で、豊富な経験に裏付けられた語りに引き込まれました。ことに「華僑が成功している要因として、ネットワークの活用と共に、功夫茶と言って商売を焦らずお茶を飲みながらゆっくり話し、情報交換して新しい商機につなげるのが彼らのスタイルである」との言葉が印象に残りました。

 講演の後は、今年卒業して関西に着任した4名の新人の歓迎会を兼ねて、いつもの居酒屋で懇親を深めました。

出席者

津田實(新7回)、前田泰昭(新14回)、市橋宏(新17回)、岡野泰則(新33回)、斉藤幸一(新33回)、斉藤広美(新35回)、脇田克也(新36回)、中野哲也(新37回)、髙島圭介(新48回)、澤村健一(新53回)、陳鴻(新59回)、桜井沙織(新64回)、前田駿(新65回)、御手洗健太(新65回)、古山大貴(新65回)、前田傑(新65回)

「第5回 未来社会創成フォーラム」開催報告

第5回 未来社会創成フォーラム ―低炭素社会に貢献する材料技術の最前線と展望- が下記にて開催された。
日時:2017年6月2日(金)13:30~19:30
場所:早稲田大学 西早稲田キャンパス63号館2F-03, -04, -05室、及び1F-Rohm Square
主催:早稲田大学 先進理工学部 応用化学科
早稲田応用化学会
参加数:参加企業/団体/組織等総数=40
フォーラム参加者(講演者は除く)=71名 (内 応用化学科OB/OGは10名、14%)
応用化学科研究室の参加学生・教員=48名

1. 今回のフォーラムについて

 「未来社会創成フォーラム」は平成25年に第1回を開催し、今回で第5回目を迎えた。
 (未来社会創成フォーラムの趣旨は、こちら)。
今回のフォーラムは、早稲田大学応用化学科創立100周年記念事業の1つとして開催されたもので、Worldwideな対応が必要とされている「地球温暖化対策のために実行すべき低炭素化と、それを支える材料技術」をテーマとして設定し、従来のフォーラムと同様に産学官の各方面から次のような視点に立った講演が行われた。

  • : 炭素繊維    -省エネルギー最前線

       黒鉛負極    -蓄エネルギー最前線

  • : ナノチューブ・シリコンと蓄電池・太陽電池      -蓄・創エネルギー萌芽技術
       太陽電池の世界情勢    -創エネルギー世界情勢と日本の課題

  • : 低炭素社会と素材産業   -日本の戦略

今回のフォーラムは応用化学科 野田教授が主管となり、また先進理工学部 若尾学部長を講師としてお招きする等、産学官の多彩な講師陣にて多方面からの切り口により本テーマに関する講演が行われた。

2.  今回のフォーラムのプログラム

1) 13:30-14:15 
   「航空機用炭素繊維複合材料の開発と多用途展開」
    大皷 寛(東レ株式会社 ACM技術部 航空・宇宙技術室 主席部員)

2) 14:15-15:00 
    「リチウムイオン電池黒鉛負極材の開発動向と将来展開」
   西田達也(日立化成株式会社
      機能材料事業部 開発統括部 蓄電摺動材料開発 部長)

3) 15:00-15:45  
     「 材料とデバイスの革新を目指した萌芽技術: 
         カーボンナノチューブ・シリコンと蓄電池・太陽電池」
    野田 優(早稲田大学 先進理工学部 応用化学科 教授)

**15:45-16:00 休憩

4) 16:00-16:45 
    「太陽光発電におけるシステム技術の現状と展望
              ~さらなる大量導入に向けて~ 」
   若尾真治(早稲田大学 先進理工学部 学部長、同研究科長)

5) 16:45-17:30 
    「低炭素社会創成に向けた新しい素材産業の戦略」
    井上悟志(経済産業省 製造産業局 素材産業課 革新素材室長)

6) 17:30-17:45 おわりに
    松方正彦(早稲田大学 先進理工学部 応用化学科 主任教授)

##18:00-19:30交流懇親会(名刺交換および質問・懇談):63号館1F-Rohm Square

3. 各講演の内容について

参加者には各テーマの講演の内容を一冊に纏めた要旨集が配布され、各講演は基本的にそこに記載された内容に沿ってご説明頂いた。ここでは各講演における概要を記した。

1) 「航空機用炭素繊維複合材料の開発と多用途展開」          大皷 寛 主席部員

大皷 寛氏

炭素繊維の開発の歴史、市場の現状(航空機中心)から今後の展開まで、幅広く講演を頂いた。炭素繊維の素材本体の構造制御と高強度化に加えてマトリクス樹脂および犠牲粒子層などとの複合化など、技術的な積み上げにより多くの課題を解決し航空機への本格採用を実現した経緯は、我が国のものづくりの強みの根源を理解する上で貴重であった。また、現在注目されている航空機での省エネルギーと低炭素化に加え、風力発電でのブレードによる創エネルギーや建築物の構造体による快適・安全など多様な展開があることが限られた時間内で紹介され、他の追従を許さない世界トップの材料技術は東レという大企業の事業の新しい柱になることが良く分かる講演であった。

2)「リチウムイオン電池黒鉛負極材の開発動向と将来展開」        西田達也 部長

西田達也 氏

リチウムイオン電池と負極の開発の歴史、市場の現状(モバイル中心)と今後の予測(自動車)まで、幅広く講演を頂いた。リチウムイオン電池は日本発の技術で当初は日本がシェアを独占していたものの、中韓との厳しい競争にさらされていること、日立化成も厳しい競争の中で日進月歩の高容量化と高出力化により負極材料のトップシェアを維持してることが紹介された。高容量化は充填率向上により可能だが、一方で空隙減少と黒鉛の面内配向化により低出力化を招くこと、このトレードオフを面直配向という理想ではなく不規則化という現実解で解決した技術思想も紹介された。更なる高容量化に向けた新材料の動向やそれに対する取り組みなど、トップを維持するものづくりの在り方が良く分かる講演であった。

3)「 材料とデバイスの革新を目指した萌芽技術: 
                     カーボンナノチューブ・シリコンと蓄電池・太陽電池」
                                                                 野田 優 教授

野田 優 教授

注目を集める新材料の概略と実用化への取り組み、蓄・創エネルギーの革新を目指した萌芽技術など、大学の最新の研究開発の一端が紹介された。カーボンナノチューブに期待される多様な応用、製造技術の現状と課題、および高速高収率な独自の合成技術が紹介された。また、リチウムイオン電池や電気化学キャパシタの現状、新材料の適用の際の課題、ナノチューブを基盤とした新構造の電池の構想と開発状況が紹介された。現在の太陽電池技術の概略、鍵となる高結晶性シリコン膜の独創的な高速製膜技術、簡易なシリコン-ナノチューブヘテロ接合の萌芽技術とフレキシブル太陽電池への挑戦の状況が紹介された。低炭素化とそれを担う材料技術の次の一手と、1を100にする化学工学の貢献と展開が分かる講演であった。

4)「太陽光発電におけるシステム技術の現状と展望 ~さらなる大量導入に向けて~」
                                                           若尾真治 学部長

若尾真治 先進理工学部学部長

太陽光発電の世界情勢と我が国の現状・課題から、更なる大規模導入と電力安定供給まで、包括的な視点とシステムの立場から講演を頂いた。海外での太陽光発電の急速な低コストと我が国の割高な現状、その低コスト化に向けた多様な取り組みの重要性、今後の目標、および太陽光発電以外への多角化の重要性などが説明された。また、太陽光発電の大規模導入に向け、狭域および広域での異なる問題、電力システム全体での安定化、負荷追従制御から負荷予測制御、さらには柔軟なシステム設計のための蓄電技術の重要性なども解説された。化学が担う材料・デバイスのハードを社会で活かすソフト・システム面と、両者の協働の重要性が良く分かる講演であった。

5)「低炭素社会創成に向けた新しい素材産業の戦略」
                                                               井上悟志 室長

井上悟志 氏

低炭素化と材料技術の具体論から、オープン・イノベーションの方法論まで、幅広く経済産業省の戦略を講演頂いた。まず、低炭素化での環境制約と成長の両立の重要性と、それに対するマルチマテリアル化の機運が紹介された。続けて、川上の素材企業に対して積極的・主体的な提案を期待する川下のユーザー企業の要望と、そのためのオープン・イノベーションの重要性と大企業の抱える課題が紹介された。それに対し、材料の革新ではなく材料による革新という考えが示され、研究開発の加速のためのシミュレーションやAIの重要性が説明された。最後にSociety 5.0を実現するためのConnected Industriesというパラダイムが解説され、経済産業省の戦略が良く分かる講演であった。

6)「おわりに」                        松方正彦 主任教授

松方正彦 応用化学科 主任教授

フォーラムに御参加いただいた方へのご挨拶と御礼、および応用化学科の紹介があった。

講演会場Galleryへ

4. 講演後の交流会について

各テーマの講演の後、63号館1F-Rohm Squareに場所を移して名刺交換・質問・懇談等による活発な交流会が行われた。講師側としては講演で伝え切れなかった情報の提供、また参加者側としては聴講だけでは不十分と感じた情報の獲得が出来たのではないかと考える。また、当然ながら今後進展が期待される新しい人と人との繋がりが得られたと考える。 

交流会場Galleryへ

5. 総括

各講師の講演とも本フォーラムの趣旨に沿った広範囲のもので、且つ本フォーラムのテーマにあるように「最前線」の情報を盛り込んだものであり、参加者に対して極めて説得力のある講演が行われたと考える。従ってこれまでの4回のフォーラムと同様、「研究活動の価値ある展開と研究成果の社会への還元」というフォーラムの目的達成のために、今後大いに貢献することを期待したい。 

<参加者よりのアンケート結果概要>

本フォーラムの参加者にはアンケートの記入をお願いした。特筆すべきコメントの幾つかを下記する。

*先端材料の知見を得ることができた。
*他企業との交流が図れた。
*開発、研究、世の中の動きが見えて、バランスのあるフォーラムだと思う。
*産官学の講演をまとめて聴講できた。
*中・長期かつ広い範囲の視点やアカデミックな内容に触れることができた。
                                           ~~等々

総じて、前回と同様参加者には本フォーラムの趣旨について認めて頂き、開催が有意義であったことについて賛同が得られたと考える。
その他多くの参加者から、本フォーラムに対する好意的なコメントや、今後もこのような企画を期待する旨の言葉をいただいた。

(文責:未来社会創成フォーラム実行委員会)

 

 

7月13日(木)第31回交流会講演会のご案内

早稲田応用化学会 交流委員会主催 第31回交流会講演会のご案内(7月13日(木))

講演者 :長谷川閑史(はせがわやすちか)氏 武田薬品工業株式会社 取締役会長
演題 :『タケダのグローバル化への挑戦』
 副題 ;「世界をとりまくパラダイムシフトのなかで」

今回は、売上高において国内トップであり、世界的にも著名な医薬品企業である武田薬品工業株式会社の取締役会長であり、経済同友会代表幹事等の要職も歴任された長谷川閑史氏をお迎えし、『タケダのグローバル化への挑戦』という魅力あるテーマにてご講演をして頂きます。

講演者ご略歴
1970年 早稲田大学 政治経済学部卒業
同年 武田薬品工業株式会社入社
1998年 医薬国際本部長
1999年 取締役
2003年 代表取締役社長
2011年 公益社団法人 経済同友会 代表幹事(2015年まで)
2014年 代表取締役 取締役会長
2015年 東京電力株式会社(現 東京電力ホールディングス株式会社) 社外取締役
2015年 取締役会長
2016年 旭硝子株式会社 社外取締役
その他、日本経済団体連合会、日本製薬工業協会等で要職を歴任され、日本を代表する経営者の一人として幅広く活躍しておられます。

武田薬品工業株式会社の概要
売上高において国内一位の医薬品企業
設立;1925年(創業;1781年)
資本金;652億円(2017年3月末時点)
2017年3月期の連結決算内容;
 売上高;1,732,051百万円、営業利益;155,867百万円
医療用医薬品が売上高の大半を占めています。
そのうち、潰瘍性大腸炎、癌、高血圧症、消化性潰瘍等の治療薬が主な製品です。
国内に下記の技術・生産事業所を保有しています。
 湘南研究所(神奈川県藤沢市)
 大阪工場(大阪市淀川区)、光工場(山口県光市)

ご講演の趣旨
「近年、人口動態の変化、経済のドライバーの新興国への移行、AI(人工知能)を含めたIT化といった劇的なパラダイムシフトが起こりつつある。このように加速度的に変化していく世界のなかで、「何もしないこと」は、結果として、国家、企業、個人にとって、「最大のリスクテーキング」となる。
医薬品業界においても近年、劇的な環境変化が起こっている。そのような変化に対応するためにタケダがとってきたグローバル化戦略、リーダーの役割、経営の基本精神などについて紹介する。」

日本の経済界の重鎮であり、政治経済学部卒業の大先輩と身近に接することの出来る貴重な機会です。長谷川会長は医薬品企業の役員ですので化学関連のお話も期待出来ますし、学生にとって興味のある大学時代のお話も期待出来ます。従いまして学生諸君は勿論ですが、社会で活躍中のOB/OG諸君、更にはシニアOB/OGの方々にとっても大変貴重なお話しを聞くことが出来る絶好の機会であると確信致します。
なお、講演開始時に講演者の簡単な紹介を下記の方にお願いしております。
竜田邦明様(早稲田大学名誉教授・栄誉フェロー、第99回日本学士院賞受賞、第13回交流会
講演会講師)
皆様お誘いの上、是非奮ってご参加ください。

講演期日;2017年 7月13日(木)
講演会場;早稲田大学 西早稲田キャンパス 63号館2階03室、04室、05室
講演時間;17:00~18:15(受付開始 16:30、参加自由、無料)
学生代表とのパネルディスカッション
;18:15~19:00
懇親会 ;19:15~20:30 (63号館1階 Rohm Square)
講演者を囲んで懇親会を開催します。(懇親会費:3千円、学生無料)

申込みはこちらから

 

事前登録を7月9日(日)までに頂いた方には、当日受付で名札をお渡しいたします。
それ以降の登録の場合は、名札の準備が出来ませんので自筆でお書き頂く事になりますことをご了解ください。
講演会場、懇親会場では応化会ホームページ掲載用の写真を撮影いたしますのでご了承願います。
また講演会場ではビデオ撮影も予定しております。

第10回中部支部総会と交流会の報告

2017年4月15日(土)「北京料理百楽名古屋店」にて、第10回中部支部総会と交流会を開催しました。東京大学総合研究博物館特招研究員吉田邦夫氏をお招きし、関西支部よりは市橋宏副支部長と田中航次事務局長に参加して頂いた。

第10回支部総会

三島支部長の開会挨拶に引き続き、 堤幹事より、2016年度の活動および経費実績並びに2017年度活動計画案が上程され出席者全員の賛同が得られました。→第10回中部支部総会上程資料(HP掲載用)


吉田邦夫氏による講演「縄文人の食卓~同位体食生分析~」

吉田氏は放射性炭素(C-14)が規則正しく壊れる現象を時計として使うことによって、人間と自然の営みに関する時間情報について研究してこられ、考古学、環境学、美術史など幅広い分野で研究活動を行っておられます。今回の講演では、人骨と土器に残された炭素・窒素同位体情報をもとにして、縄文人の食卓を再現されました。

①あなたは、あなたが食べたもの(同位体食性分析)

地球にある炭素、窒素には、わずかに重さが違う 兄弟原子「同位体」が存在し、その比率(安定同位 体比)は炭素については12C(98.90%)、13C (1.10%)、素については14N(99.63%)、15N (0.37%)である。これら炭素や窒素の同位体は 質量が異なるため、植物に取り込まれてセルロースや デンプンに変化したり、タンパク質に合成される際に、 反応速度の違いから安定同位体比からずれることが わかっている。これを同位体分別効果といい、食材の グループによって同位体の割合がわずかに違う。 この違いを利用して、人が食べていた食材を推定するのが、同位体食性分析である。例えば人の髪の毛の炭素・窒素同位体比を分析すると、ベジタリアンの人かどうかを調べることができる。(ベジタリアンの場合、重い13C、重い15Nの同位体比は共に低く、一般的な人と比較して特異なデータが得られる。)安定同位体比の測定は、分析試料を燃やして出来る気体、二酸化炭素と窒素ガスを質量分析計で測定する元素分析計-質量分析計システムによって行う。

②縄文人の食卓への二つのアプローチと日本列島の食料資源

縄文人の食卓を推定するため、「人骨のコラーゲンの分析」(長期間の情報、年齢、男女差などの個体の情報)と「土器付着物の分析」(短期間の情報、一回または複数回の調理の情報)」の二つのアプローチを行い、過去の日本列島の食料資源の炭素・窒素同位体比の情報(C3植物、C4植物、草食動物、海産貝類、海産魚類、海産哺乳類)から、縄文人の食卓を推定した。

③縄文人骨に残された痕跡

縄文人骨から硬タンパク質(コラーゲン)を取り出し、同位体比を分析すると、居住地域による特徴が見られる。北海道では、およそ6000年の間、海獣に依存した食生活が続いていた。内陸部では、草食動物に依存していた。貝塚人は、海産物の依存が多いものの、貝類のみを食していたわけではなく、草食動物を多く食していたことがわった。また、人骨分析を行った集団の中で、集団から離れた個体の存在が見つかった。異なる食文化をもつ個体(シャーマンなど)? あるいは、食文化が異なる集団から移り住んだ個体?があったと推定される。

④土器に残された痕跡

火炎土器は祭祀のため、神に献げるものの煮炊きに使用されていたと推定される。火炎土器に付着した炭化物(調理した食材のおこげ)の炭素同位体比とC/N比の分布を測定することで、食材の種類を特定することができる。火炎土器付着物から次のことがわかった。堅果類(どんぐり、トチの実など)を単独で煮炊きした例はない。遺跡ごとにややまとまりが見られる(祭祀のために決められた特別なメニューはなかった)。(信濃川)上流部では、主としてC3植物と陸上動物が調理されていた。(信濃川)下流部と(佐渡)島では、海洋魚、サケ・マスを含む食材が調理されていた。

最後に新たな展開として、脂質分析(分子レベル炭素同位体比分析)の紹介があった。


懇談会

後藤顧問の挨拶と乾杯の音頭で懇談会に入った。両関西支部来賓および大高理事、新村理事および初めて参加頂いた浜名氏にスピーチを頂いた。テーブル毎や吉田氏を囲んだ懇談が盛んで、2時間があっという間に過ぎてしまいました。全員写真を撮った後、フィナーレは堤幹事の「1本締め」で、母校及び早化会の発展と各位のご活躍を期し散会しました。

参加者(敬称略)

(講 師)吉田邦夫(新21回) (関西支部会員)市橋宏(新17回)、田中航次(新17回)、
(中部支部会員)澤田祥充(旧31回)、近藤昌浩(新9回)、三島邦彦(新17回)、堤正之(新17回)、白川浩(新18回)、後藤栄三(新19回)、小林俊夫(新19回)、柿野滋(新 19回)、秋山健(新19回)、谷口至(新22回)、須藤雅夫(新22回)、木内一壽(新24 回)、山崎隆史(新25回)、浜名良三(新29回)、服部雅幸(新32回)、新村多加也(新 39回)、大高康裕(新41回)。

(文責:大高、堤)