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早稲田応用化学会 第38回交流会講演会―懇談会の概要

2022年9月10日(土)15:00~17:10 (Zoomによるリモート開催)

懇談会(17:15~18:00)
   <参加者>

 ・講演中は講師お二人ともかなり緊張したとのことですが、講演が無事終了し、安心してホッとしているところだそうです。
  以下、講師お二人との質疑応答を交えた懇談の概要です。
質疑応答
Q1. (参加者) 望月さんにお聞きしますが、今ドイツで走行している車両の種類、すなわちガソリン車とかディーゼル車とかHybrid車とかEVの事ですが、何か傾向がありますか?
A1. (望月氏) ご質問に対する関連情報になりますが、ドイツ国内のスーパーマーケットに充電ステーションがあります。その中には無料で充電可能なステーションがかなりあります。従ってEVに乗っている人はそこを利用すれば無料で走れることになります。チェーン店ですからドイツ国内全域で利用出来るわけです。これには驚きました。ご参考までに私はHondaのHybrid車に乗っています。最近ドイツ国内で増えているのは現代とかキアといった韓国車です。低価格車が選ばれているようです。
Q2. (参加者) カーボンニュートラルの実現のため、ジャンル毎の削減目標はどういう方法で決められたのでしょうか。
A2. (望月氏) ドイツの場合は気候保全法という法律で、省別に削減量を分担させ、全体として何%という削減量が実現するように決めています。
Q3. (参加者) ということはドイツ政府というか国が決めていると思うのですが、その際国は民間レベルとしての産業団体のようなところとの合意の基に決めているのか、それとも国からの上意下達のような状況で進めて行くのか、そのプロセスについて教えて頂けませんか。
A3. (望月氏) ドイツの場合そのプロセスは単純でして、現在産業分野別にどれだけCO2を出しているかというデータがあります。2050年までにそれをここまで削減するためには、それをどういうふうに振り分けたら良いか、現状のデータと目標値との違いをインプットし割り振っています。
Q4. (参加者) エンジンのスパークプラグ先端の材料を研究しています。従って車両がEVになると仕事が無くなるという状況です。会社自体は貴金属全般を扱っているので克服可能と思っているのですが、カーボンニュートラルの重要性も分かるので複雑な思いでいます。先程の質問にもありましたが、ドイツでのEV化の流れはどうなんでしょうか。
A4. (望月氏) この件に関する統計データが発表されていると思うのですが、未だ見ていません。街中での印象ですが、殆ど見かけない状況です。日本と同じような状況と思われます。
A4. (宍戸氏) これにはMilestoneがあって、世界の潮流からするとIEA(International Energy Association)というところが、EVとかPHEVの出現に関し悲観的なシナリオと楽観的なシナリオの2つで予測しています。極端に脱炭素の方向に行くと8~9割がEVで、そうでなくても2~3割はEVになるという資料があります。実際には日本も欧州もそこまでは動いていないのが現状です。中国は2035年までにとか言われていますが、結局のところ、本日の望月さんのお話しの中にも出て来ましたが、何らかの経済的なインセンティブが強く掛かった瞬間に急にドライブが掛かると考えられます。それが今の時点でドイツでもcriticalに働いていないと思われます。日本にはEVの助成金がありますが、これから本気で税制改革が行われたり、EVを買ったときにLife Cycle的なコストが安くなる、といったことが見えてこない限りは、急激には伸びて来ないというのが現状だと思われます。車業界のお客さんと色々やり取りをしていますが、AT車は残ってくれますよね、というようなことを言われていまして、何時がTrigger Pointなんだということで議論になっているところです。その中でウクライナ危機があって、脱炭素は少し待ってもいいよね、という雰囲気に、欧州も含めてなっているのが事実です。何時から撤退するかが読めないみたいです。
Q5. (参加者) 私は水素ステーションを運営する会社をサポートする会社に派遣社員として2年半位在籍したのですが、水素自動車というのは日本を含めて世界的には普及しないなと結論付けました。その理由として、欧州はずるいと思うのですが、ISOがその例でして世界標準を先に取るじゃないですか。ドイツもすごくうまいと思うのですが、日本は下手だと思います。日本は今一生懸命やっていますが、普通乗用車で5,000台を割るのではないでしょうか。建設とか設計とかメインテナンスに携わってきましたが、これはダメだと思いました。欧州ではどうなんでしょうか。
A5. (望月氏) ドイツでは水素自動車というのは全く話題になっていないです。EVが先行している状況です。
Q5.続き (参加者) そうですか。水素は820気圧に圧縮して貯蔵容量を減らしていますが、配管は溶接出来ず漏れが絶えないです。その結果、事故扱いというか休業扱いになると官庁への報告が必要です。パーツの劣化も激しく、トラブルが多かったです。今の状況は不明ですが、変わっていないようです。東京オリ・パラが1年延期されて普及が遅れたと思うんですが、日本政府はどうして補助金を出し続けるのでしょうか。
A5.続き (宍戸氏) 水素は厳しいですね。圧力が高く第一種圧力容器が必要ですし、運搬コストも掛かるので厳しいです。二酸化炭素と水素からメタンを合成するMethanation技術を用いて、水素をメタンに変えて運ぶことが考えられていますが、正直言ってなぜ水素を使い続けているかというと、再エネを十分に導入出来ないので、最終的に水素に頼らざるを得ないのが日本の状況だと思います。省エネして再エネして森林とかでOffsetする、というのが一番綺麗な形ですが、日本では再エネを導入するPotentialが少ないのが現状です。そうした中で、代替燃料としてCO2 FreeのH2を、例えばオーストラリアから輸入してそれを燃料として使う、というのが国の説明です。但し、ご指摘のようにCostとMaintenanceを含めて沢山の障害があるので、難しいところです。因みに製鉄関連では水素還元技術で水素を使うということで、水素自動車というよりは、何とか製造側で使おうということで今は頑張っているのが日本の現状だと思います。
Q5.続き (参加者) 去年の今頃日本政府が脱炭素に向けての方針を示しました。時を経ずしてカーボンニュートラルの技術戦略Road Mapも示されました。技術に関してはそのRoad Mapに書かれていますが、では実際の製油所とかコンビナートがどうなっていくかについては書かれていません。既存の産業がどうなっていくか、1年前は見えなかったですし、今も変わっていません。今日の講演でドイツは再エネが進んでいると思いました。日本では既存の化学工場がどの方向に進んでいくのか分からないですし、最近の日本政府が原発を無理して稼働させようとして、それが却って再エネ化を抑えているような気がします。最近アクセルを踏みだしたように見えるのですが、既存の設備がどう変わっていくのか見えないので、ヒントがあったら教えて頂けないですか。
A5.続き (参加者) 今日の望月さんのお話しによれば、ドイツでは全体の方向性というのが明確に示され、政府によってきちんと仕切られているようですし、宍戸さんのお話しからもそう思いました。一方、日本政府の場合は全ての顔を立てようとして、あらゆる利益集団を満足出来る方向にどんどん持っていくようにしていると思います。
A5.続き (宍戸氏) ご指摘の通りだと思います。数値を出せないところが日本政府の弱いところでして、経済産業省が今Green成長戦略を立てており、私もお手伝いをしていますが、そのRoad Mapに書かれたものは各業界が作ったRoad Mapを単に足し合わせただけのものです。すなわち政府がリーダーシップを取って目標削減量を示し、それに基づいて各業界の削減量を割り当てるわけではありません。規制と経済成長の妥協点を考えなければなりませんが、その延長線上には多分カーボンニュートラルという絵はないと思います。そこをどうするかを考えなければならないですが、その辺はドイツを見習う、ということをコンサルタントとしては言えますが、国の立場からすると難しいということを良く聞きます。
Q6. (参加者) カーボンニュートラルはこの先重要なキーワードと考えますが、地産地消も考える必要があると思います。ドイツでは今回のロシアによるウクライナ侵攻により、ノルドストリームを通して供給されていた天然ガスが途絶えて深刻な事態になりました。日本でも、東日本大震災、あるいはアメリカの同時多発テロのような事態に対して、地産地消で対応出来る体制を取る必要があると思います。今までのグローバリゼーション、すなわち世界の市場の中から、より安いものを輸入すれば良いという発想だけでは、この先対応出来ない事態が訪れると思います。そのことと、カーボンニュートラルとの並立を達成するための解をどのように出したら良いか、考える必要があると思います。
A6. (宍戸氏) ご指摘の通りだと思います。各市町村とかPublic Sectorの方々が良く地産地消のことを言われますが、それが根底にあった上でカーボンニュートラルに向けて他の技術とかそういった飛び道具をいかに使っていくか、だと思います。
*以降、主に地産地消に関連する議論が終了時刻まで続きました。

最後に椎名交流委員長の閉会のご挨拶が有り、終了となりました。

早稲田応用化学会 第38回交流会講演会―望月浩二氏講演の概要

2022年9月10日(土)15:00~17:10 (Zoomによるリモート開催)

 

【講演第二部】
望月浩二氏 『サステーナブルな世界に向けて』 ~ 「ドイツのカーボンニュートラル」

講演は次のテーマに従って順に行われました。
①ドイツ国民の環境意識
②サステナビリティの重要な要素としてのカーボンニュートラル
③カーボンニュートラルの2050年実現を目指すドイツの取り組み
④カーボンニュートラルとリサイクル

以下、各テーマについての説明の中で、主要と思われるものをピックアップしてみました。
①ドイツ国民の環境意識
 ・ドイツ国民の環境意識調査が遇数年12月に連邦環境庁(UBA)から発表されます。ここではその結果を報告します。(特に2020年のデータについてのコメントです。)
 ・「我が国の直面するもっとも重要な問題は何だと考えますか」に対する回答において、「環境と気候の保全」が第四位(65%)を占めています。
 ・「環境/気候保全はどの政治領域で考慮されるべきですか」に対する回答において、「エネルギー政策」が第一位(70%)を占めています。
 ・「製品またはサービスの購買または利用におけるあなたの個人的な振る舞いについて」に対する回答において、「家電製品の購入時に、私は、とくにエネルギー効率クラスのよい器具を選びます。」が第一位(74%)を占めています。
 ・「気候変動と気候保全に関する質問」に対する回答において、あなたの関心の強さの程度は、「非常に強い」と「強い」の合計が74%、またあなたの情報入手の程度は、「非常によい」と「よい」の合計が60%となっています。
 ・同じく「気候変動と気候保全に関する質問」に対する回答において、気候変動の原因は「人間の行動のみ」と「主に人間の行動」の合計が77%、またコロナ禍によって、あなたにとっての気候保全の意味に変化があったかどうかについては、「より重要になった」との回答が16%となっており、注目されます。
 ・「気候政策とドイツの役割に関する質問」に対する回答において、ドイツのような工業国は、気候保全を推進する義務があるとの考え方に「全面的に賛成」と「どちらかというと賛成」の合計が83%に達しています。
 ・「気候保全を推進する政策に関する質問」に対する回答において、「気候に有害な補助金を廃止する」、「気候にやさしい製品と技術の開発の助成を強化する」、「気候保全のための教育と職業教育を強化する」などの回答が支配的です。
 ・「気候に有害なCO2の放出を減らすために、ドイツでは2021年から国家が燃料と化石の暖房燃料(例:暖房油、ガス)にCO2税を課します。その税収の用途に関する質問」に対する回答において、「この税収は将来のCO2排出の減少を可能にする助成プログラムのために使用されるべきです」との回答が55%で第一位です。

②サステナビリティの重要な要素としてのカーボンニュートラル 
 ・サステナビリティとは「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たす」ことであり、これを担保する諸要素として資源の持続可能性、気候の持続可能性(カーボンニュートラル)、廃棄物処理の持続可能性、開発の持続可能性、等が挙げられます。

③カーボンニュートラルの2050年実現を目指すドイツの取り組み
 ・ドイツでは2050年までに気候ニュートラルを実現することを気候保全法で定めています(2019年12月17日に官報告示)。
 ・この講演では、「2050年までにカーボンニュートラルを実現するためのドイツの取り組み」というテーマについて、ベルリンのシンクタンク「アゴラ」がドイツの次の三つの研究所に委託した研究の報告書の内容を紹介します。(発表:2020年10月)
  Prognos AG(プログノス研究所)
  Öko-Institut(エコ研究所)
  Wuppertal-Institut für Klima, Umwelt und Energie
     (気候、環境、エネルギーに関するブッペルタール研究所)
 ・気候ニュートラル2050(CN2050)のシナリオにおける政治的な対策として、下記の項目があります。
  Buildings(建物);Green retrofit (retrofit = 旧型装置の改装)
  Agriculture(農業);Reduce manure =(有機)肥料、こやしを減らす
           Reduce livestock = 家畜を減らす
  Industry(産業);DRI = Direct Reduced Iron(直接還元製鉄法)
  Industry(産業);CCS = Carbon dioxide Capture and Storage
  負のエミッション;BECCS = Bioenergy with Carbon Capture and Storage
                … by biomass combustion
             DACCS = Direct Air Carbon Capture and Storage
 ・ドイツはGHG(Greenhouse Gas) Emissionを、1990年の1,251から858(2018年)まで削減しました。(単位;MtCO2eq、以下同様)
 ・気候保全法の第一次改定が行われ(官報告示2021年8月18日)、気候ニュートラルの達成を2050年から2045年に前倒ししました。(GHGエミッション;858(2018年)⇒438(-65%,2030年)
 ・気候ニュートラルへの移行のため、下記の三つの柱があります。
  柱1:エネルギー効率の向上とエネルギー需要の削減
  柱2:再エネ発電と電化
   その1:総電力消費
   その2:正味発電量および正味輸入量
       2020年のドイツの発電電力の44%は再生エネルギーによるものです。
       ドイツは2022年に脱原発を達成します。(予備電源としての原発2基を、
       来年4月まで稼働可能な状態で残します。)
       ドイツはフランスから電力を輸入していますが、その輸入量の約2倍の
       電力をフランスへ輸出しています。
   その3:再エネ発電
  柱3:エネルギー源および原料としての水素
 ・セクター・カップリング;電力、熱、交通の分野間で再エネ由来の電力を融通しあうことです。

④カーボンニュートラルとリサイクル
 ・リサイクルは常にカーボンニュートラルに貢献します。以下は包装材料のリサイクルなどについての最新情報です。
 ・飲料ボトル・缶のデポジット(保証金);ポイ捨てを防ぎ、資源または再使用容器として活用するためです。
 ・包装廃棄物を出さない工夫;
  普通のスーパーが「量り売りコーナー」を設置しています。(欧州全域)
  飲料業界の大手が予告はしたがまだ実現していない「100%リサイクルPETの飲料ボトル」をベルリンのスタートアップ企業“Share”が実現しました。(ドイツ)
 ・廃棄物ゼロを目指すNPO:ゼロ・ウェイスト・ジャーマニー(ZWG);ZWGは、市民、企業、行政の協力によって、循環経済の考えを広く実現することを目指すNPOです。
 ・地下式ごみ回収容器;場所の節約、美しい外観、投入口が自動的に閉まるので、臭気が発散しない、投入口が低いので、老人や子どもや身障者でも楽に投入できる、等の特徴があります。
 ・食品用プラ容器包装に関するEUプロジェクトが始動しました。単一素材設計とリサイクルシステム確立を目指します。

 ご清聴、有難う御座いました。

早稲田応用化学会 第38回交流会講演会―橋本副会長のご挨拶

2022年9月10日(土)15:00~17:10 (Zoomによるリモート開催)

橋本副会長のご挨拶
宍戸さん、望月さん、本日はお忙しいところ貴重なお話を伺わせて頂き、有難うございました。とても興味深く拝聴致しました。お話し全体で感じたのは、皆さん一人ひとりがカーボンニュートラルって本当に必要だなと認識することが大事で、それが色々な活動のコンセンサスを生むと思います。カーボンニュートラルとか温暖化というと、80年で一度位上がる危機ですので、自分の生きている間には関係無いと思う人が結構いるので、それは実は大きな問題であることを我々が理解する必要があります。そのためにどうしたら良いか、ということを考えながらお聞きました。
カーボンニュートラルの活動のためには、その活動をした方が企業にとっても個人にとっても有利であるという仕組みを作ることが大事です。それを日本でどのように出来るのか、ということを考えるのも一つの課題と感じました。望月さんの発表の最後の方に、色々な小さな取り組みが多く示されました。これは実は個々の活動の効果というよりも、一人ひとりがきちんと意識付けして活動する出発点になる、という意味で非常に重要なインプットだったと思いました。また、全体的な意識付けを上げるのと同時に、企業にしても個人にしてもそういう活動をした方が自分にとって有利になるという認識をどうやって作るか、ということを考えるのも大事だと思います。
以上のようなことを考えながらお二人のお話を聞かせて頂きました。非常に貴重な時間となりました。有難うございました。

早稲田応用化学会 第38回交流会講演会―質疑応答の概要

2022年9月10日(土)15:00~17:10 (Zoomによるリモート開催)

質疑応答の概要
Q1. (参加者) 私は、今住んでいる市の環境政策の提言をする会に参加しています。市町村がイニシアティブを持って政策を進めていけるような切り口とかを教えて頂けないでしょうか。
A1.(宍戸氏)地域の枠組みとか仕組み作りがメインになると思われます。リサイクルとか再エネといった、住民の方々が気軽に参加出来るような仕組み作りをどのように行うか、ということが1つの考え方になると思います。ゴミ問題も対象になるでしょう。環境意識調査に関しての望月さんのお話しの中で、エコ電力を買う人の割合が半数を超えていましたが、環境に優しいことをすることが良いことであるという市民意識が芽生えていると思われます。このような観点もあるといいのではないでしょうか。
A1.(望月氏)ドイツでは原発を保有する電力会社の電力料金よりも、再エネオンリーの会社の料金の方が安いです。ドイツ国民は安い方を選びます。発電電力の44%は再エネによるもので、豊富な電力となっています。
Q2. (参加者) ドイツの原子力の見直しに関し、政権とか市民の方々の捉え方はどうなんでしょうか。もう一つは風力に関してですが、環境破壊の観点から反対の動きはないのでしょうか。
A2.(望月氏)ウクライナ侵攻によるエネルギー不足に対応して、2つの原発は来年の4月まで稼働可能な状態に保ちますが、CDU(キリスト教民主同盟、保守系)は4月に停止どころか、脱原発を止めることを国会で頻繁に述べています。しかし、ドイツ国民にはこの考えは受け入れられていないと思います。脱原発の方針は不変と見ています。風力に関してですが、風車を設置する場合に住居との最小距離を設ける規則があります。これを満たせば住民は設置に反対出来ず、田舎に行くと風車が林立している光景が多く見られます。
A2.(宍戸氏)日本では山岳地帯が多く、風力が利用されていますが、バードストライクとか風切り音とか種々問題があるので、洋上風力に対して補助金が出される状況にあります。北欧では、少し離れた所に陸地を置いて風車を回すということが行われており、商社とプロジェクトを組んで実施しているのが日本の状況です。

早稲田応用化学会 第38回交流会講演会―宍戸圭介氏講演の概要

2022年9月10日(土)15:00~17:10 (Zoomによるリモート開催)

【講演第一部】
宍戸圭介氏 『サステナビリティとは何か』 ~ 「日本のカーボンニュートラル」

講演に先立ち、演題及び副題に示された用語に対する理解度チェックのため、Zoom上でのアンケート調査が行われました。「聞いたことはある」人、及び「説明できる」人に大別されました。

本講演の要約
1.サステナビリティに関するトピックは、グローバルアジェンダとして重要性が増している。
2.日本においてもサステナビリティ、特に気候変動分野でのコミットメントが高まっており、産官学が協働してカーボンニュートラルを目指すことが求められる。
3.カーボンニュートラル達成のためには種々のアプローチが必要であり、応用化学会の皆様の知見や経験が大いに生かされることが期待できる。

講演は次のテーマに従って順に行われました。
①サステナビリティ入門
 ・サステナビリティとは?(SDGs, ESG, CSR/CSV等の用語解説)
 ・サステナビリティの潮流
②気候変動問題、カーボンニュートラルについて
 ・気候変動がなぜ問題になっているのか?
 ・カーボンニュートラルが求められる背景
③日本におけるカーボンニュートラルに向けた取り組みの現状
 ・国の動き
 ・産業界/企業の取り組み
④私がコンサルタントとして関与しているプロジェクト例
 ・【企業様支援】ネットゼロのロードマップ作成支援、情報開示支援
 ・【産官学連携】カーボンニュートラル技術の社会実装に向けた取り組み

以下、各テーマについての説明の中で、主要と思われるものをピックアップしてみました。
①サステナビリティ入門
・サステナビリティとは持続可能な社会、すなわち「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させる」(国連)ことであり、これを達成するためのアプローチがSDGs, ESG, CSR/CSV等と関連付けられます。
・SDGs(Sustainable Development Goals)とは国連が地球規模で取り組むべき課題を17個の目標として定義したものです。
・ESGは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の観点で、被投資企業の長期的な評価を行う基準です。
・企業の社会貢献活動が中心となっていたCSR(Corporate Social Responsibility)から、経営モデル自体の変化を目指したCSV(Creating Shared Value)が着目されつつあります。
②気候変動問題、カーボンニュートラルについて
・サステナビリティ関連リスクとして、「気候変動の緩和・適応の失敗」が「発生の可能性」トップ10の内のNo.2、「影響の大きさ」トップ10の内のNo.1に挙げられています。(世界経済フォーラム “Global Risks Report 2020”)
・世界平均気温が産業化以前から約1.0℃上昇しており、このままのペースだと2040年前後には1.5℃に達し、気候変動による影響が顕在化するリスクが高まります。このリスクを回避するため、日本を含む各主要国は経済成長を目指しながら、カーボンニュートラルを達成する目標を掲げています。
③日本におけるカーボンニュートラルに向けた取り組みの現状
・2050年カーボンニュートラル実現のための施策として「グリーン成長戦略」を策定し、その戦略として14分野のロードマップを検討中です。
・グリーン成長戦略を達成するために、開発・導入フェーズの工程表を作成し、企業に対して5つの手段(税、予算、規格・標準化、規制改革、民間の資金誘導)から政策支援を行っています。
・企業の脱炭素目標も1.5~2℃に沿ったレベル、もしくはそれ以上が求められつつあります。
④コンサルタントとして関与しているプロジェクト例
 【企業様】脱炭素に向けたロードマップ作成、仕組・開示内容の確立支援
 ・各企業様の脱炭素化に向け、①目標設定②ロードマップ策定③仕組・開示内容の確立といった観点で助言を実施しています。
 ・ロードマップ策定に関しては、2050年ネットゼロまでのパスについてシミュレーションを実施します。2050年までのカーボンニュートラル達成に向けた具体的な施策の積上をサポートします。
 ・仕組・開示内容の確立支援に関し、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、気候関連財務情報開示タスクフォース)は企業のガバナンスとリスクマネジメントの高度化、開示を求めるイニシアティブです。
 ・気候変動関連のガバナンス整備、リスク・機会の特定、シナリオ分析等が求められています。このシナリオ分析とは、将来の曖昧さ・不確実性を排除した経営戦略の策定メソッドのことです。
 【産官学連携】DTSTによるカーボンニュートラル技術の社会実装に向けた取り組み
 ・DTST(Deloitte Tohmatsu Science and Technology)にはデロイトトーマツグループ1万5千人から集まった、研究者・技術者など理系出身のハイブリッドなビジネスプロフェッショナルが約250人所属し、研究の優位性を理解した上でビジネスに落とし込む、科学技術とビジネスの橋渡しを実施しています。
 ・技術リストの作成により、今後の成長がわかりにくいカーボンニュートラルビジネスの道筋を明確にしたいと考えています。
 ・2022年6月10日に技術リストの第三弾を公開しました。有望技術を、CO2削減ポテンシャル、投資対効果の観点で比較しています。
 ・技術リストを一つのハブとして関連プレーヤーを巻き込み、カーボンニュートラル技術の社会実装を企画段階から実装まで一気通貫で取り組んでいきたいと考えています。

 ご清聴、有難う御座いました。

早稲田応用化学会 第38回交流会講演会―西出名誉教授のご挨拶

2022年9月10日(土)15:00~17:10 (Zoomによるリモート開催)

 西出名誉教授のご挨拶
先程放映されましたように、早稲田大学はカーボンニュートラルを宣言致しまして、プログラムコーディネーターとして応用化学科 本間敬之先生が中心的な役割を果たしておられます。先端研究では、先程ビデオに出ておられました関根先生は経産省やJST(科学技術振興機構)の政策委員としてもご活躍ですし、松方先生はGreen Sustainable Chemistry Networkの代表を、また化学工学の野田先生は社会実装の旗振りを務めておられます。東日本屈指の所謂電池ビルは、逢坂先生、門間先生が展開されておりますし、有機電池の国際会議を先達て小柳津先生が主催されました。太陽電池では須賀先生がペロブスカイトのNEDOのプロジェクトを展開されている、等であります。人材育成が大学にとっては大事なわけで、文科省の卓越大学院では、電気・情報生命工学科の林先生がリーダーで、PEPと称していますが(Power Energy Professional)全国13大学の拠点に早稲田大学がなっておりまして、Powerは東京電力と、Energyはエネオスと産学連携しております。例えばキャンパスの中にヨーロッパ仕様とアメリカ仕様と日本の住宅のプレハブがありまして、電圧とか家電だとか、あるいは窓の構造の違いによってどう電力消費が異なってくるのかを学生が実験するようなことも提供されております。総合大学として文理融合が早稲田の強みですので、先程ご説明がありましたカーボンプライスの有村先生は世界標準の日本代表でありますし、例えば社会科学部の赤尾先生は経済学から見た環境問題という演習科目を、理工の学生のために展開されております。キャンパスでは建築学科の田辺先生が省エネビルや住宅の専門でありますし、多くの学生のサークルがボランティアで活動し、まさにカーボンニュートラルでは早稲田が国内の大学では屈指の位置付けになっていると理解しております。謳われておりますSDGs等、社会全体を括るアセスメントを睨みながら、しかも安全安心が保証されている考え方でなければ、立ち位置のない時代になっております。今回のご講演の企画が参照になればと期待しているわけであります。企画されました椎名さんはじめ応用化学会の企画の委員の皆様、また準備して頂いている事務局スタッフの皆様、感謝申し上げます。新制20回西出から挨拶させて頂きました。

2022年度応化会総会挨拶 (2022.5.14 濱)

 本日はハイブリッド開催となりましたが、お忙しい中、多くの方にお集まり頂き、誠にありがとうございました。また平素は応化会活動に対して、格別のご支援を賜り、ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
 また学生メンバーも含めて、本日の総会開催準備にご尽力頂いた方々に、感謝申し上げたいと思います。

 さて先ず私の方から、冒頭の挨拶と言うことですが、“応化会活動の現状と課題”と題して、会長就任時に掲げた3つの基本方針毎に、その進捗と課題について、少し話をしたいと思います。

 先ず基本方針①「全世代にとって魅力ある応化会活動への進化」でありますが、これについては、コロナ禍が未だ継続しているにも拘わらず、各委員会、支部、若手の会、学生部会夫々が、リモート環境の充実を武器にして、新たな活動を活性化しています。
 しかしながら、活動が活性化しているが故に、執行部メンバーの負担が拡大しています。今後各活動に分散している課題を、各委員会、支部、若手の会、学生部会の連携により、整理、統合することが必要であり、同時に実働メンバー(特に若手、シニア)の拡充を実現したいと思います。
また会費納付率の向上策や会員名簿、情報発信ルートの充実については、個人情報管理にケアしながら、学内外が連携して課題解決していく必要があります。

 基本方針②「次世代情報基盤の構築」については、次世代の応化会活動活性化の為の情報基盤構想を、基盤委員会、若手の会が中心となり、デザイン中です。先ず広報委員会が中心となり、新情報基盤構築までの過渡的なシステムとして、現在の情報発信システムのアップデイトをしました。また次世代基盤については、構想アイデア、予算規模・資金、スケジュール、推進体制等を早期に明確化した上で、段階的に実現して行きたいと考えています。

 基本方針③「応化会100周年記念事業の準備」ですが、次の100年に向けた応化会の将来像を共有しながら、プロジェクト、各委員会の連携で準備を進めています。来年2023.5.20(土)の記念講演会、祝賀会に向けた詳細準備とアセットの確保、応化会報特集号の準備等、詳細は後程、下村副会長からご報告します。そして100周年記念奨学金基金についても募集中でありますので、皆様の強力なサポートをお願い致します。

 今お話ししましたような応化会活動の現状と課題をご理解頂いた上で、これからご説明します、総会各議案、報告事項について、ご出席の皆様からの忌憚の無いご意見、ご助言を賜りたいと思っておりますので、宜しくお願いします。

 

答辞 大学院修士課程二年 安井 浩太郎

大学院卒業生 答辞 安井 浩太郎君

 本日は、徹底した感染対策の上、最後にこのように一堂に会することができたこと、大変嬉しく思います。このように盛大な式典を運営・開催していただきましたこと、並びに本日ご臨席を賜りました先生方や来賓の皆様に、修了生を代表し、深く御礼申し上げます。
 六年前、大好きな化学を社会に役立てたいという強い思いを持って入学したこともあり、研究室配属後は企業と共同で製品の実用化を目指す、応用寄りの研究テーマを選択しました。しかし、自らが夢に描いていた『化学を社会に役立てる』ということは、実は非常に難しいということを、身をもって体験しました。社会に役立つ製品を作るためには、ただ単に高い性能を実現するだけでなく、個々の作製プロセスが十分に簡易・実用的で、かつ、実用に足る性能を再現良く実現する必要があります。また、社会に役立つ製品を作るためには、広い視野を持つことも重要です。時には数十年・数百年後の未来のために現在開発している技術の環境負荷について考える必要もあります。なかなか思うようにいかず、多くの失敗も経験しましたが、決して教科書では習得できない、貴重で実践的な学びを得ることができました。
 近年、社会の変化は目まぐるしく、特にコロナウイルスの感染拡大によって社会の状況は一変しました。予測不能で、求められるニーズが絶え間なく変化する社会であるからこそ、化学産業においても、迅速に社会のニーズを見極め、より短いスパンで付加価値の高い技術を生み出していくことが求められているのだと思います。
 社会に役立つ技術を生み出すことは簡単ではありませんが、応用化学科で学んだことを胸に、長年にわたって国内外問わず多くの人々から愛されるような技術を実現すべく、研究者・エンジニアとして活躍していきたいと考えています。そして、今まで多くの人々に支えていただいた分、今度は私が助けになれるよう、社会人として人間的にも成長していきたいと考えています。

 最後に、熱心にご指導くださいました先生方、私たちの日々の活動を支えて下さった大学職員の皆様、そして、卒業式の開催にご尽力くださいました皆様にお礼申し上げます。また、この六年間を通して、多くの素晴らしい友人に出会うことができました。頼もしく多くのことを教えていただいた先輩方、苦楽を共にしてきた同期、後輩のみんなには本当に感謝しています。そして、今まで二十四年間、常に温かく見守り、応援してくれた家族に本当に感謝しています。
 今後の早稲田大学及び応用化学科の更なる発展と皆様のご多幸・ご活躍をお祈りいたしまして、答辞とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。

二〇二二年三月二十六日
早稲田大学 先進理工学研究科 応用化学専攻 修士二年
安井 浩太郎   

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