豊倉先生のご逝去について

豊倉先生は、ながらくご入院されていましたが、9月8日にご逝去されました。

謹んでお悔やみ申し上げます。

通夜等は行わず、下記の通り、葬儀を執り行いますので、ご参列いただきたく存じます。

 

日時:9月16日 月曜日 11:30から

場所:湘和会堂町田

https://syouwa-kaidou.co.jp/kaido/machida/

学内講演会のお知らせ
「Facile Access to Chiral Phosphorus Compounds via Transition Metal-catalyzed Asymmetric Hydrophosphinationphination」

下記の要領で学内講演会が開催されます。

演 題

Facile Access to Chiral Phosphorus Compounds via Transition Metal-catalyzed Asymmetric Hydrophosphinationphination

講 師 汪君
所属・資格 香港浸会大学・教授
日 時 2024年9月24日(火)16:20~18:00
場 所 早稲田大学 121号館 コマツ100周年記念ホール
参加方法 入場無料、直接会場へお越しください。
対 象 学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方
主 催 早稲田大学先進理工学部 応用化学科
問合せ先 早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000

参考:https://www.waseda.jp/fsci/news/2024/09/04/31326/

「先輩からのメッセージ2024」の開催日程

早稲田応用化学会 交流委員会

本年度の「先輩からのメッセージ」は、学生の皆様の企業への理解を深める時期が余裕をもって確保できるよう、開催日を2024年12月7日(土)とし、準備を進めています。

学生の皆様には参加へ向けてのスケジュール確保をお願いいたします。

当日は、日本を代表する企業に在籍されているOB・OGの方々から直接、皆様の疑問や不安について適切なアドバイスがいただけますので、将来の進路決定にも必ず役立つものと確信しております。

本年度の実施形態は、講演、懇談会とも対面での実施を予定しています。

詳細な内容ならびに参加の申し込みは、改めて10月下旬にホームページおよびメールマガジンにてご案内いたします。

  1. 日 時
    2024年12月7日(土)
    時間 12時30分ころ~(詳細は10月中旬に決定)

  2. 会 場
    早稲田大学西早稲田キャンパス
    講演会  52号館2F、3F教室
    懇談会  63号館ロームスクエア

  3. 実施方法
    実施方法詳細は10月下旬にご案内いたします。 
    「先輩からのメッセージ」は、一般の企業説明会と異なり、企業概要、仕事の紹介にとどまらず、応化OB・OGより直接、会社生活や日常、普段考えていることや雰囲気などを親しく聞けることを特色としています。

  4. 対象学生
    学部生、大学院生(修士、博士、一貫制博士)
     進路決定を間近に控えた学部3年、修士1年、博士、一貫制博士課程修了予定者を主体としていますが、将来へ備えての学部1,2,4年生、修士2年生の参加も大歓迎です。

  5. お問い合わせ

    本件に関するお問い合わせ・要望等は下記の専用アドレスまでお願いいたします。
    guidance_2024@waseda-oukakai.gr.jp

「2024年度第1回先輩博士からのメッセージ」開催報告

【イベント名】

2024年度第1回先輩博士からのメッセージ

【イベント詳細】

開催日時:2024年7月27日(土)

開催場所:西早稲田キャンパス54号館101~104室+63号館ロームスクエア

開催形式:対面開催

14:00~14:05;開会挨拶

14:05~15:05;博士OB及び博士後期課程学生による講演(2件)

15:15~15:55;座談会(20分×2セット)

16:00~16:10;応化及び応化会関連の奨学金説明

16:30~17:55;懇親会

17:55~18:00;閉会挨拶

昨年12月に実施した「第2回 応化卒の多様なキャリア形成」に引き続き、対面開催となった。今回は学位取得後、企業にて活躍されているOBおよび博士後期課程学生による博士課程での研究や博士取得後の企業研究に関する講演を実施した。また、座談会では、学部1年~修士2年生と博士学生〜博士OBOGを少人数のグループに分かれ、研究生活など様々な疑問に答えた。これらを通じて、博士課程進学というキャリアパスに対する理解度を上げてもらった。加えて、懇親会では様々な立場の学生・OBOGが交流する場を得ることができた。参加者は、学部~博士学生、OB/OG、応化会関係者合わせて50名程度の参加となり、盛会に終わった。

開会挨拶: 下村副会長:

下村副委員長

2024年はパリオリンピックの開催年であり、その開会式を見ても世界には多種多様な人がいると感じられる。また、日本においては高齢化が進み、人生100年時代が到来すると言われている。そのため、働く期間は今後伸びていくのではないか。したがって、若いうちに博士過程に進学することで、勉強する期間を長く取ることも、これから来る時代を乗り切るのに重要なことかもしれない。特に博士人材は、緊急時などに臨機応変に考えて行動できる力を得ていることが多く、今後の日本に求められる人材となり得るのではないかと思われる。また、高齢になっても長く仕事を続けることができる。これはこれからの時代に優位であろうと考えている。「先輩博士からのメッセージ」という本イベントで、皆さんの未来に繋がるきっかけになることを願っている。

OB・博士学生による講演:
今回、企業で働く博士OBと現役の博士学生の2名に、これまでの自身の博士研究での経験・博士進学の動機などについてご講演いただいた。尚、司会進行は、応用化学科 林宏樹講師が行った。

講演者①;会田 和広さん(博士後期課程3年,山口研究室(有機合成化学部門))

題目:「研究人生のはじまり」

会田 和広さん

会田和広さんは、有機化学研究室の博士学生として研究に従事されている。学会参加やアメリカへの研究留学など、幅広い経験をされている。

学生実験と研究の違い・博士進学での動機について
学生実験は実験項目が皆同じで、答えが決まっているものを再現することがほとんどであり、実験操作や考え方の基礎を学ぶものである。一方で、研究室での研究は、答えがわからないものから答えを見つけ出すための実験を繰り返すものである。答えがないからこそ、思った通りの結果が出ないことが長く続くことがあるが、答えを見つけたいという思いが強くなることもある。会田さんは、学部1年生の時に卒業後の進路を考えた際に、薬を作って多くの人を救いたいと思い、有機化学の研究者になろうと決めた。製薬会社の研究所では、博士人材の需要が高まっていることから、博士進学も視野に学部生活を送ってきた。そして、博士進学を決めた動機は、研究室に入って有機合成方法の研究を初めた当初、200通りの実験を行ったが、その収率はほぼ0%であった。その後もなかなか収率が増えずに15%程度までにしかならなかった。就職活動をするかどうかを決断する時期が近づき、このまま卒業してしまったら、自分のテーマを後輩に託すことになるが、それならば自分でやり遂げたいと思い、博士後期課程進学を決めた。

研究室での研究について
有機研究室では、分子を作る新たな有機合成方法論の開発を行っている。実験には時間がかかることから、朝から晩まで実験室にいることが多いが、その中でも実験室のメンバーと食事休憩を取って、メリハリを付けた生活を送っている。その他にも、研究室のイベントや運動などもしてリフレッシュもしている。
また、実験以外の研究室の活動としては、学会発表や研究留学がある。研究室を進めていくに連れて成果が出てきたので、学会にも参加するようになった。学会では、自身の研究を国内外の研究を発表するだけでなく、他大学の同期や有名な先生、企業の人など多くの人と交流している。また、博士後期課程では、アメリカのUCバークレー大学へ留学する機会を得ることができた。現在の研究テーマは分子を作る新たな方法論を開発しているが、天然物合成をする技術を学ぶことが企業での研究に活きてくると考えて、全合成を行う研究所を選択した。アメリカで感じたことは、トップレベルの大学であっても、研究レベルに大きな差はないことだった。英語はあまり得意ではなかったが、有機化学は構造式や反応機構を手書きで表せば議論できた。また、漫画や音楽など日本のカルチャーを好きな海外の人も多いので、日々色々なことに興味を持っておくと会話が弾むことを実感した。

学生へのメッセージ
学部、修士、博士さまざまな選択肢がある中で自分に何が必要か、将来何をしたいのかよく考えて選択し、自分が後悔しない道へ進んで欲しい。

講演者②;女部田 勇介さん(AGC株式会社,本間・福永研究室(応用物理化学部門), 2022年修了)

題目:「博士までの経験と企業での研究生活」

女部田勇介さん

女部田勇介さんは、応用物理化学研究室に所属され、日本学術振興会特別研究員(DC1)として博士研究をされていた。現在は、AGC株式会社 材料融合研究所 無機材料部にて研究に従事されている。

博士進学を決めたきっかけ
初めに、博士学位取得者の基礎情報を紹介いただいた。全人口のうち、50%が大学進学、6%が修士、0.6%が博士ということで、ごく少数である博士はそれだけ価値が高い肩書きかもしれない。収入面では、統計データから学位取得者は30代後半くらいからの収入の伸びが大きく、60代以降も比較的高い水準で働けることを紹介された。また、博士後期過程への進学の利点として、国際学会への参加や留学など貴重な経験ができることや、自分のやりたい研究が思い切りできるようになること、学位を取得すれば、研究者として一目置かれるようになることが挙げられる。これらの基礎情報を踏まえて、博士進学を決めたきっかけは、第一に将来長く働きたいこと、そして第二に学会で海外に行くことを挙げていた。さらに、修士課程時代に、理系に限らない企業インターンシップに参加してみて、自分が研究を好きなことを再認識したことも進学理由になった。加えて、指導教員や研究室の先輩を尊敬できたことも、博士課程を過ごす上での環境面として重要な点であると卒業後に感じた。

企業での研究について
博士進学を決める前からビジネスの場に近い研究をしたいと思い、学位取得後は企業に就職した。大学での研究は自分の実験は自分でやり、基本的に1人でテーマを進めていく。コアタイムだけでなく自分の裁量で実験ができ、自由度も高く細かなコストなどを気にせずに10年先の課題などに向き合える。一方、企業での研究は、市場規模などをもとにビジネスに繋がる研究を、作業員に実験内容を指示して協力して進めていくことになる。そして、定時にやりきる必要があるため、実験計画をしっかりと立てることが重要である。また、企業で働いてみて特に驚いたのは安全やセキュリティの高さだった。たくさんのチェックすべき項目があり、安全性に配慮して作業を行っている。また、博士号を取得したことで、就職後も専門性に合った研究に従事できているように感じる。

学生へのメッセージ
博士進学を少しでも考えたら、まずは親に相談すること、そして指導教員にも相談することが大事である。博士課程に進学すると同年代の多くが働いている中、学生を続けることになり、不安もあるかもしれないが、勇気を持って研究の世界に飛び込んで欲しい。

座談会
学部1年生~修士2年生と博士学生と博士OBOGがそれぞれ2〜3名程度の小グループに分かれて座談会を実施した。講演会を踏まえて気になったことや、研究生活や博士進学のきっかけなど、各自が疑問に思ったことを博士人材に直接聞く良い機会となった。

応用化学科及び応化会関連の奨学金説明:須賀先生

須賀 先生

早稲田応用化学会は1923年5月に設立された会員数11000人超えの組織であり、卒業生との太いパイプがある。博士後期課程の進学に対して経済面がひとつの問題になり得ることから、応用化学科及び応用化学会の充実した奨学金制度について紹介があった。また、最近の博士後期課程への進学率とその後の進路先の割合について紹介があった。博士後期課程修了者は、2010年以降2022年までの間で約90名である。博士号取得者のおよそ6割は企業で活躍している。次いで国内大学、海外大学、省庁・研究機関となっている。
博士後期課程の支援体制として、学内外の奨学金制度は、貸与型と給付型がある。学外では日本学生支援機構(JASSO)、学内では早稲田オープンイノベーションエコシステム挑戦的研究プログラム(W-SPRING)がある。応用化学科および応化会独自の奨学制度は早稲田大学の中でも郡を抜いて充実しており、全て給付型となっている。また、最近では「応用化学科卒業生による優秀な人材の発掘と育成の支援」のために、応用化学会給付奨学金は対象を学部生まで拡充している。早期から優秀な人材を発掘・支援したいという目的から、すそ野を広げる形となった。このような支援の存在を早い段階から知ってもらい、各自の必要に応じて応募して欲しい。

乾杯の挨拶(懇親会):原副会長

原 副会長

今回のイベントは今後のキャリア選択の参考になったと思う。特に低学年の学生の方々は、まだまだ先の将来を考える時間はあると思うが、博士進学がとても魅力的に感じたと思う。ぜひ先輩たちと懇親会で交流をして、今後のキャリアを考える良い機会にしてもらえればと思う。

閉会挨拶:橋本監事

橋本 監事

海外では、日本とは異なってドクターを持っているかどうかでの待遇が大きく違うことを自分の経験上でも大きく感じたことがある。博士は面白いチャンスを得られると思うし、自分の興味のある研究に関わることができる。少しでも興味を持ったら博士進学を検討して欲しい。

懇親会の様子

 

(早稲田応用化学会 基盤委員会、交流委員会、広報委員会)
以上

2024/6/22-23新入生オリエンテーション合宿

2024年7月31日、五反田のレンタルスペースにてレクリエーションが行われました。学部1年生から3年生までが参加し、レクリエーションの企画を進めながら、学年関係なく仲を深めました。

詳しくは、学生委員会HPをご覧ください→こちら

2024年度定期総会、先進研究講演会、交流会の報告

Ⅰ.定期総会(議長:濱会長、司会:梅澤庶務理事)

2024年5月25日(土)13時30分~

会 場: 早稲田大学西早稲田キャンパス 52号館304教室

参加者:87名(卒業生・教員67名、学生20名)

総会議事アジェンダ→こちらから

1.濱会長挨拶

濱会長

応化会100周年記念行事から約1年が経過する中で議論を進めてきた「これからの100年の応化会の在り方」について方針をお聞きいただき、忌憚のないご意見をいただきたいとのご挨拶がありました。

2.総会議事

 

1)第1号議案:2023年度事業報告と会計報告について (⇒資料庫注):②事業報告 説明資料と決算案

梅澤庶務理事より100周年記念事業を含めた2023年度の活動が報告され、井村会計理事より会計報告がなされました。会計報告の中では、2022年度会計報告中の誤記載についても報告され、発生原因及び再発防止策について説明がなされました。

<監査報告:1号議案に対して>

津田監事より、4月30日に監査を行い、会計部門については領収書、通帳等の各種帳票確認した結果、適正に処理されており決算書は正当であると報告されました。業務部門についても議事録等を精査した結果、基盤、交流、広報の三委員会とも会議のオンライン/ハイブリッド化等の工夫を重ねながら順調に運営されていると判断したと報告がありました。また、各委員会において情報基盤構築を中心に世代間・世代内および各地域での連携強化に向けた取り組みが始まるなど、応化会活動の益々の発展が期待される運営状況であった旨が併せて報告されました。第1号議案は出席者の満場一致で承認されました

梅澤庶務理事

井村会計理事

津田監事

 

2)第2号議案:2024年度事業計画と予算案について (⇒資料庫注):③事業計画 説明資料と予算案)

2024年度の事業計画について梅澤庶務理事より報告があり、それに伴う予算案を井村会計理事が報告したのち、出席者の満場一致で承認されました

3)第3号議案:名誉会員の承認 (⇒資料庫注):④審議事項)

本年3月に定年退職された平沢泉先生が名誉会員に推挙され、出席者の満場一致で承認されました

下村副会長

4)第4号議案:会長の選任 (⇒資料庫注):④審議事項)

下村副会長をより役員会において濱逸夫氏を会長として選出(再任)したのでこれを承認いただきたいとの提案がなされ、出席者の満場一致で承認されました

濱会長からは再任挨拶として、「全世代にとって魅力ある応化会活動への進化」を目指していく活動方針の説明がなされました。
実現のための2つの柱

① Innovation in Technology & Business (Innovativeな発想を習慣とする人材育成)

② Diverse Ecosystem (多様なる人材プラットフォームの醸成)

3.報告事項

 

1)2024年度役員体制について (⇒2024年度役員体制)

濱会長より2024年度の役員体制と新任役員(理事)及び退任役員について報告されました。

2)奨学生の紹介 (⇒資料庫注):⑤報告事項 応化会奨学金 奨学生一覧表)

橋本副会長(奨学生推薦委員長)より、今年度の奨学生8名が紹介されました。奨学生の店網さん(M2)、田島さん(LD2)、市村さん(B4)、佐藤さん(B4)、筒井さん(B4)、杉本さん(B4)、水谷さん(B3)、大山さん(B2)が揃って登壇し、代表して店網さん、田島さんから挨拶がありました。

その後、梅澤庶務理事(選考委員)より今年度選考した里見奨学金、水野奨学金、中曽根奨学金の奨学生、森村豊明会奨励賞の受賞者が紹介されました。

24年度奨学生(8名)

奨学金目録授与(濱会長)

橋本副会長

下嶋副会長

4.閉会の挨拶

下嶋副会長による閉会のご挨拶により総会は終了しました。

 

 

 

Ⅱ.先進研究講演会:「応用化学最前線-教員からのメッセージ」

(早稲田大学先進理工学部応用化学科、早稲田応用化学会の共催(司会: 松方庶務理事))

先進研究講演会「応用化学最前線-教員からのメッセージ」は、応用化学科の各研究室の教員が、企業の研究者・技術者や学生に、自らの研究分野を紹介し、その先進性、先導性を熱く語りかける企画です。その後の交流会(懇親会)で、教員、社会人および学生の間の交流を深め、応用化学科の研究についてより一層理解を深めていただく狙いもあり、毎年総会とあわせて企画されています。本年も3名の先生方にご講演いただきました。

1)有機合成化学部門 細川 誠二郎 准教授
演題 「太古の化合物の化学合成」

2)ものづくり工学部門 江口 美陽 准教授
演題 「電荷分布制御によるものづくり」

3)無機合成化学部門 菅原 義之 教授
演題「ユニークな構造をもつナノシートの作製と機能」

松方庶務理事

細川准教授

江口准教授

菅原教授

講演は早稲田応用化学会ホームページの資料庫に格納されております。⇒こちらから

Ⅲ.交流会(懇親会)

場所を63号館1階ロームスクエアへ移し、原・新副会長による乾杯のご発声で交流会(懇親会)がスタートしました。
 懇親会会場では終始和気あいあいとした雰囲気が漂い、卒業生・教員・学生会員の皆さんの間で様々な交流が行われました。中盤には23年度をもって退任される河野委員(監事)、平中委員(広報委員)からのご挨拶があり、拍手の中、記念品が贈呈されました。続けて24年度応化会新任理事ご挨拶、奨学生挨拶が行われました。

盛り上がりが続く中、最後は下村副会長のご挨拶と井村理事による一丁締めにて閉会となりました。

原副会長(新)

          退任記念品贈呈

交流会風景

 

注) 資料庫に入るためには、ID、パスワードが必要です。ID、パスワードを持っていない方は資料庫入室入り口、もしくは、資料庫入室問い合わせより、ID、パスワードを取得してください。

早稲田応用化学会主催 第39回交流会講演会

2024年6月15日(土)15:00~16:30 (対面と遠隔方式を併用して開催)

講演者;小岩一郎先生
関東学院大学 理工学部 理工学科 表面工学学系 特約教授

演題;『ドイツ、シリコンバレー、シンガポールでの産業創成方法の比較』

副題;「ドイツで2018年度1年間研究して、以前訪問した地域についても感じたこと」

                         
小岩一郎先生

講演者略歴

1982年3月早稲田大学 理工学部 応用化学科 卒業 (逢坂研究室 新制32回)

1984年3月早稲田大学 大学院 理工学研究科 博士前期課程 応用化学専攻工業物理化学 修了

1986年4月~1988年3月 早稲田大学 理工学部 助手

1987年3月早稲田大学 大学院 理工学研究科 博士後期課程 応用化学専攻工業物理化学 修了

1988年4月~2005年3月 沖電気工業株式会社 研究開発本部、研究本部 研究員、管理職

2005年4月~2013年3月 関東学院大学 理工学部 工業化学科 教授

2013年4月~2023年3月 関東学院大学 理工学部 理工学科 化学学系 教授

2023年4月~2024年3月 関東学院大学 理工学部 理工学科 表面工学学系 教授

2024年4月~関東学院大学 理工学部 理工学科 表面工学学系 特約教授

はじめに

今回は、対面と遠隔方式を併用して開催致しました。

対面方式で使用した会場;西早稲田キャンパス 57号館 201教室

遠隔方式で使用したソフト;遠隔会議用ソフト Zoom

参加者:対面方式;50名(卒業生35名[講演者、先生を含む]、在校生15名)

遠隔方式;22名(卒業生18名[先生を含む]、在校生 4名)

合計  ;72名(卒業生53名[講演者、先生を含む]、在校生 19名)

まず椎名交流委員長による開会宣言と自己紹介、及び視聴に当たっての依頼事項の説明があった後、早稲田応用化学会の濱会長から開会のご挨拶を頂きました。

濱会長
椎名交流委員長

濱会長の開会のご挨拶
椎名さん、ご紹介有難うございます。
この交流会講演会、1年半振りとなります。昨年は応化会100周年記念イベントがありまして、その後初めての交流会講演会となります。そういう意味では応化会の次なる100年のスタートとなる記念すべき交流会講演会になると思います。その記念すべき講演会に、本日はお忙しい中小岩先生に来て頂き、様々な海外での色々な経験をベースに、外から見た日本の今の状況を、厳しいご意見もあると思いますがざっくばらんにお伺いしたいと思います。私も非常に楽しみにしております。
今日はリアルとオンラインで多くの方が聴講されているそうです。是非お話を聞くだけでなくて、今日の先生のお話を起点に、自ら何を考え、どう行動するか、そして今の日本をどうやって立て直していくか、というところにうまく繋げていって欲しいと思います。
小岩先生、是非宜しくお願いします。

続いて椎名交流委員長から講演者の略歴が紹介された後、講演が始まりました。
講演の概要 ==⇒ こちら【新しいタブで開きます】

講演終了後、対面で参加された松方先生、及び学部4年 北村悠真さんと質疑応答が行われました。

松方先生
B4 北村さん

質疑応答の概要 ==⇒ こちら【新しいタブで開きます】

最後に、早稲田応用化学会の原副会長から閉会のご挨拶を頂きました。

   
  原副会長  

原副会長の閉会のご挨拶
小岩先生、本日は貴重なお話し、有難うございました。
私も過去にアメリカとイギリスに住んだことがありまして、ドイツのお話しをお聞きしますとやはり日本とは違うということで、外を見ることが大事だと思います。1つの会社とか1つの研究所にいると外を見る目が失われていくと思います。外の世界はすごく刺激になるんですね。小岩先生は日本に対する期待がすごく高いので、日本の出来ていないところを色々仰って頂きましたが、私が日本に帰ると必ず思うのは日本の良さです。海外に住めば日本の良さを認識することがありまして、こんな良い日本が世界の中で経済でも負けて、皆さんがすごく勉強しているのに活躍出来ない、そして色々な製品において負けてしまう、ということについて悔しい思いがあります。日本が世界に向けてしっかりポジションを取れるのが、私としては良いことだと思います。これから社会に出る人、出て間もない人も色々なところを見て、自分の力を培って成果を出してくれたら、と思います。先生の仰って頂いた、目標を持つ、Visionを持つというところで、やはり自分の中で目標を持つと色々な事で努力出来ることがあるな、と思います。
私は会社へ入って37年も経ってしまいました。途中で目標が変わったりしますが、目標があったからこそ出来たこともありました。これから社会に出られる方も若い方も色々な事にチャレンジして、目指すものを持ったらすごくいいなと感じました。
今日はどうも有難うございました。

この後、椎名交流委員長からアンケート回答についてお願いがあった後、閉会となりました。

当日の参加者の写真
対面での参加者

遠隔での参加者

対面での参加者は講演会場での写真撮影後、63号館1階ロームスクエアに場所を移し、懇親会を行いました。

懇親会

鈴木交流委員 関谷交流副委員長

鈴木交流委員の司会により、まず関谷交流副委員長の開会のご挨拶と乾杯のご発声の後、懇親会が始まりました。

小岩先生を囲んだ人たちの輪とか、旧交を温めるOB/OGの人たちの輪が会場のあちこちに出来て、大いに盛り上がりました。

応援部学生のパフォーマンス

懇親会の終盤には早稲田大学応援部の学生によるパフォーマンスが披露されました。校歌、エールで参加者が声を合わせ、応化会の団結を確認し今後益々の発展を誓いました。

下村副会長 石崎学生委員長

最後に、早稲田応用化学会の下村副会長からいつもの力強い中締めのご挨拶を頂き、石崎学生委員長の一丁締めにて散会となりました。

講演会・懇親会のスナップ写真は下のボタンをクリックしてご覧ください。

 

(文責;交流委員会)

早稲田応用化学会主催 第39回交流会講演会講演内容

講演の概要

講演者ご自身の経験や見解に基づいて、興味深く、また示唆に富んだお話が展開されました。
講演の概要を下記しましたが、詳細については講演者が講演時に使用されましたプレゼンテーションファイルを、応化会HP内の“資料庫”に格納しておりますので、是非そちらもご覧下さい。なお、“資料庫”に入室するためにはID(ユーザー名)とパスワードが必要です。

“資料庫”==⇒ こちら【新しいタブで開きます】

導入部

問題解決について世界各国の特徴を記述した資料が公開されていますが、その中で残念ながら、「問題を直ぐに解決するドイツ」に対して、
 「大人数で会議やって何も解決しない日本」
と紹介されています。

本講演では、

  • 日本より労働時間が短いにも関わらず、GDPや労働生産性において日本を凌駕しているドイツ
  • 2019年に工業競争力世界一位を獲得したシンガポール(台湾も同様)
  • 急激に発展しているシリコンバレー

での経験を元に、日本が置かれている状況、世界が日本をどう見ているかについてお話しします。また、日本的な失敗例についてもお話しします。

1.初めに

2018年4月から1年間、ドイツのアーヘンに滞在し、アーヘン大学のフリードリッヒ教授の研究室でサバティカルを経験してきました。そこで感じた下記のような点について報告します。

  • カルチャーショック
  • ドイツと日本の違い
  • 日本は、どうしなければいけないか?

2.ドイツの現状

ドイツに来て感じたこと
パン屋の態度が悪い。不動産屋の、約束を守らない態度に憤慨。寝具屋やスーパーで大量購入しても包装無し。ビールは安くて美味しかった。
住民登録や銀行口座開設が首尾良く出来ない。
 Keypoint1 相手の立場に立って仕事をする、という考えが殆んど無い。
ドイツでの生活を始めるときに驚いたこと
最初に、フリードリッヒ教授に言われたこと⇒遅くまで働かないでくれ!ドイツでは問題になることがある。日本人は長時間労働だ!
短い時間でも生産性が高いので、景気が良くなっているのでしょう。
ドイツの生産性
ドイツが生産性を高めていることを考察する上でのポイントとして、

  • 日本でやっているが、ドイツではやっていないこと!
  • ドイツではやっているが、日本ではやっていないこと!

を考えてみましょう。
ドイツでのコミュニケーション
ドイツで生活や仕事をして驚くのが、「メールが少ない」、「電話が少ない」、「会議が少ないし、短い」、「説明のための資料作りが殆ど無い」ことです。
 Keypoint2 コミュニケーションに使う時間が少ない。
ドイツで、日本より厳密に多く作成するのは契約書です。生活のあらゆる場面で必要です。
 Keypoint3 ドイツは契約社会である。
ドイツでの会議
フリードリッヒ教授が招集した会議では、会議がうまく進行するように日本での会議でよく行われる下記のようなことはしません。

  • 根回しをする。
  • 説明のためのパワーポイントファイルと配布資料を用意する。
  • 研究の内容について多くの参加者を集めて説明する。
  • 議事録を作成して会議の最後に確認する。

ドイツでは会議のために費やす時間が圧倒的に短い。仕事の評価はあくまで結果であって、会議でのコンセンサスを得ることが重要ではない。そのため自分の仕事に注力していて、自分のすべき仕事のみを行います。
前述のようにドイツは契約社会ですが、契約社会の最も根幹にあるのが「労働契約書」です。
ドイツで、答えに窮した質問
私の研究所にいた一人から「東日本大震災があったが、日本は原子力発電についてどう考えているの?ドイツは原子力を止めると決めたし、フランスは止めない。日本は、あれだけの被害があったのに・・」との質問に「日本には原発賛成派と反対派があって、まだどちらとも決めていない」と答えましたが、その人は不思議そうな顔をしていました。
東日本大震災に対応してメルケル首相は、原発推進派であったにも関わらず福島原発事故からわずか4ヶ月で脱原発を法制化しました。
日本は東日本大震災で甚大な被害を受けたにも関わらず、事故後の総括も十分でなく、是正処置ができていません。原発をどうするのかも決めていません。
日本は政治も産業界も細部まで決まらないと判断できない社会になっています。ドイツは決断をすべき人が決断をし、実行する人が実行するので効率が高いのです。

3.日本との違い(カルチャーショック)

脱原発を決めたドイツは、再生可能エネルギーの拡大へと舵を切りました。 ドイツの電力料金の4割は税金だそうです。さらに、ドイツでは再生可能エネルギーの割合を100%にしようとする動きもあります。
日本人の、言わば「木を見て森を見ない」態度に対して、メルケル首相の「森を見て木を見ない」態度で判断し突き進む姿勢はカルチャーショックでした。
ドレスデンのフラウンフォーファーについて
クリーンルームも狭いし、古いし、最先端ではないですが、装置は8インチと12インチの両方を設置しているとのこと。フラウンフォーファーはマックスプランクのような研究所ではなく、技術を産業に結び付けるために設立されたとのことです。その目的を明確にして、全員で同じ方向に進むので早く、しかもトップを取れると納得しました。
IMEC(Interuniversity Microelectronics Centre)について
次世代の露光機であるASML製のEUV(Extreme ultraviolet lithography)があります。
嘗て世界中の露光装置は、NIKONやCANNONによる日本の独占市場でした。今はASMLが2019年予測で80%以上のシェアとなっています。このような状況に至った理由は作り方にありました。NIKONやCANNONのR&Dは自前主義モデルであるのに対して、ASMLは分散統合主義モデルとなっています。すなわちASMLのR&Dには多くの企業や大学、研究機関が関わっており、夫々の強みが合わさる仕組みとなっています。

4.米国、シンガポール、台湾との比較

シリコンバレーについて
シリコンバレーの特徴として次の3つが挙げられます。

  • ダイバーシティ(多様性)
  • 急激な拡大(シリコンそのものよりもITとしてGoogle、Amazon、Facebookなど)
  • スピードの重視(特許を取るより、公開して協力者を得る方が良い)

シリコンバレーでは、10年に2,3の大きなビジネスができて、大きな企業ができています。
谷上さん(シリコンバレーで成功した日本人の一人)の言葉;

  • Be creative! (人と同じことをするな!人と違ったアプローチをしなくてはならない)

日本の横並びの護送船団方式は、もはや過去のモデルです。
日本の企業も大学も変わらなければなりません。

  • 企業は、新しい分野を独立性の高い小集団のスピンアウトに任せなければなりません。
  • 大学は、学生の個性を高めるような教育をすべきです。

シンガポールについて
リー・クワンユー元首相の政策が「外国資本誘致による輸出志向型工業化戦略」でした。
そのため下記のことを行いました。

  • 外国の公的機関、企業をシンガポールに呼び込む
  • そのためのインフラ整備(直接、間接)
  • 自前でニッチ分野
  • シンガポール独自の整備体制

シンガポールのセールスポイントは安全、公用語が英語、異民族社会、清潔で透明な政治と社会、清潔で美しい都市、です。
2006年に科学技術機構ができました。バイオメディカル フェーズⅡ、環境と水処理技術、インタラクティブ&デジタルメディアに力を入れることを決めています。
台湾について
台湾政府の強力な後ろ盾を得て創設されたTSMC(台湾積体電路製造)が目覚ましい発展を遂げています。
シンガポールやマレーシアは、半導体分野において韓国を見倣おうとしましたが、サムスンほどの成功は挙げられずにいました。
そして、もともと台湾は半導体サプライ・チェーンの最下段という立ち位置を維持するだけでも、絶えず技術を磨いていく必要がありました。
一方中国は今や経済的な脅威へと変わり、台湾の貧困脱出の手段となった基本的な製造や組立の仕事を誘致し、台湾から仕事を奪い取ろうとしていました。価格で中国と張り合うのは不可能だ、となれば、台湾はみずから先進技術を生み出すしかなかったのです。

5.日本で成功した例

富士フイルムの躍進(コダックは無くなったが、富士フイルムは躍進)
世界最大のフイルムメーカーで、使い捨てカメラなどのイノベーションを起こしてきたコダックは、フイルムとともに消え去りました。
富士フイルムは化粧品や薬などで、益々発展しています。
自社の組織内には、まったく異なる分野で成功する機能がない場合が多いので、新しい組織を自社内に作るようにしないと成功しません(または、M&Aで社外から導入します)。
マツダのスカイアクティブ
「Be a Driver」のためには、エンジンを最高のものにするためにクリーンディーゼルを開発しました。自動運転などには手を出さず、自分たちの目標を達成しました。
ワールドカップでの南アフリカ戦の勝利(史上最大の番狂わせ)
どうして、日本がスプリングボクス(南アフリカ)に勝てたのでしょうか?
エディー・ジョーンズがJAPAN WAYを考え、実践したから、と考えます。JAPAN WAYを下記します。

  • キックを、できるだけしない!!
    「地域」より「攻撃権」維持の方が重要と考え、そのためキックをできるだけしない。
  • ディフェンスは複数で!!
  • 後半になっても、運動量が落ちない!!

戦略とは、本質的に、しないことを決めることです。エディー・ジョーンズは、トレードオフ対策をした上で「キックをしない」と決めました。  日本人は、目的と手段を取り違えてしまいます。目標を明確にして、その目標を現実にするために、何をするのかを考えて、実行することが大事です。このことは人生においても、仕事の仕方においても同じです。
iPS細胞について
iPS細胞の生みの親である山中伸弥教授は、一生懸命研究をしていたつもりでしたが、目の前の研究費獲得や論文発表などに囚われ、目標を見失っていたことに気付いたそうです。
基礎医学で研究者として治療法を見つける方が、役に立てると考えました。このように、目標を明確にすることで「iPS細胞」は生まれたのです。

6.日本で失敗した例

半導体のあすかプロジェクト
日本半導体産業の復権のための仕組みが作られています。問題は、復権のための鍵が何か、そしてフォーカスすることです。権威者8人の意見は一致しているのか?これだけ広がっていてフォーカス可能なのか?具体的に、いつ、何を、どのようにするのか?
部品内蔵の標準化 ⇒ 省略
技術標準WGの現状 ⇒ 省略

7.まとめ

問題点の克服のために
日本の欠点と対策

  • 着手が遅い。(全員の合意が前提条件になっている)
    ⇒ この指とまれ方式で、テーマに早く着手する。
  • 不確定なことに、資金を出す人がいない。
    ⇒ 資金は、政府と民間のファンドをつくる。
  • 作った組織の独自性が無い。(上部組織の意思が決まらないので行動できない)
    ⇒ 独立性の高い組織に運営させる。

――― 以上 ―――