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早稲田応用化学会主催 第39回交流会講演会

2024年6月15日(土)15:00~16:30 (対面と遠隔方式を併用して開催)

講演者;小岩一郎先生
関東学院大学 理工学部 理工学科 表面工学学系 特約教授

演題;『ドイツ、シリコンバレー、シンガポールでの産業創成方法の比較』

副題;「ドイツで2018年度1年間研究して、以前訪問した地域についても感じたこと」

                         
小岩一郎先生

講演者略歴

1982年3月早稲田大学 理工学部 応用化学科 卒業 (逢坂研究室 新制32回)

1984年3月早稲田大学 大学院 理工学研究科 博士前期課程 応用化学専攻工業物理化学 修了

1986年4月~1988年3月 早稲田大学 理工学部 助手

1987年3月早稲田大学 大学院 理工学研究科 博士後期課程 応用化学専攻工業物理化学 修了

1988年4月~2005年3月 沖電気工業株式会社 研究開発本部、研究本部 研究員、管理職

2005年4月~2013年3月 関東学院大学 理工学部 工業化学科 教授

2013年4月~2023年3月 関東学院大学 理工学部 理工学科 化学学系 教授

2023年4月~2024年3月 関東学院大学 理工学部 理工学科 表面工学学系 教授

2024年4月~関東学院大学 理工学部 理工学科 表面工学学系 特約教授

はじめに

今回は、対面と遠隔方式を併用して開催致しました。

対面方式で使用した会場;西早稲田キャンパス 57号館 201教室

遠隔方式で使用したソフト;遠隔会議用ソフト Zoom

参加者:対面方式;50名(卒業生35名[講演者、先生を含む]、在校生15名)

遠隔方式;22名(卒業生18名[先生を含む]、在校生 4名)

合計  ;72名(卒業生53名[講演者、先生を含む]、在校生 19名)

まず椎名交流委員長による開会宣言と自己紹介、及び視聴に当たっての依頼事項の説明があった後、早稲田応用化学会の濱会長から開会のご挨拶を頂きました。

濱会長
椎名交流委員長

濱会長の開会のご挨拶
椎名さん、ご紹介有難うございます。
この交流会講演会、1年半振りとなります。昨年は応化会100周年記念イベントがありまして、その後初めての交流会講演会となります。そういう意味では応化会の次なる100年のスタートとなる記念すべき交流会講演会になると思います。その記念すべき講演会に、本日はお忙しい中小岩先生に来て頂き、様々な海外での色々な経験をベースに、外から見た日本の今の状況を、厳しいご意見もあると思いますがざっくばらんにお伺いしたいと思います。私も非常に楽しみにしております。
今日はリアルとオンラインで多くの方が聴講されているそうです。是非お話を聞くだけでなくて、今日の先生のお話を起点に、自ら何を考え、どう行動するか、そして今の日本をどうやって立て直していくか、というところにうまく繋げていって欲しいと思います。
小岩先生、是非宜しくお願いします。

続いて椎名交流委員長から講演者の略歴が紹介された後、講演が始まりました。
講演の概要 ==⇒ こちら【新しいタブで開きます】

講演終了後、対面で参加された松方先生、及び学部4年 北村悠真さんと質疑応答が行われました。

松方先生
B4 北村さん

質疑応答の概要 ==⇒ こちら【新しいタブで開きます】

最後に、早稲田応用化学会の原副会長から閉会のご挨拶を頂きました。

   
  原副会長  

原副会長の閉会のご挨拶
小岩先生、本日は貴重なお話し、有難うございました。
私も過去にアメリカとイギリスに住んだことがありまして、ドイツのお話しをお聞きしますとやはり日本とは違うということで、外を見ることが大事だと思います。1つの会社とか1つの研究所にいると外を見る目が失われていくと思います。外の世界はすごく刺激になるんですね。小岩先生は日本に対する期待がすごく高いので、日本の出来ていないところを色々仰って頂きましたが、私が日本に帰ると必ず思うのは日本の良さです。海外に住めば日本の良さを認識することがありまして、こんな良い日本が世界の中で経済でも負けて、皆さんがすごく勉強しているのに活躍出来ない、そして色々な製品において負けてしまう、ということについて悔しい思いがあります。日本が世界に向けてしっかりポジションを取れるのが、私としては良いことだと思います。これから社会に出る人、出て間もない人も色々なところを見て、自分の力を培って成果を出してくれたら、と思います。先生の仰って頂いた、目標を持つ、Visionを持つというところで、やはり自分の中で目標を持つと色々な事で努力出来ることがあるな、と思います。
私は会社へ入って37年も経ってしまいました。途中で目標が変わったりしますが、目標があったからこそ出来たこともありました。これから社会に出られる方も若い方も色々な事にチャレンジして、目指すものを持ったらすごくいいなと感じました。
今日はどうも有難うございました。

この後、椎名交流委員長からアンケート回答についてお願いがあった後、閉会となりました。

当日の参加者の写真
対面での参加者

遠隔での参加者

対面での参加者は講演会場での写真撮影後、63号館1階ロームスクエアに場所を移し、懇親会を行いました。

懇親会

鈴木交流委員 関谷交流副委員長

鈴木交流委員の司会により、まず関谷交流副委員長の開会のご挨拶と乾杯のご発声の後、懇親会が始まりました。

小岩先生を囲んだ人たちの輪とか、旧交を温めるOB/OGの人たちの輪が会場のあちこちに出来て、大いに盛り上がりました。

応援部学生のパフォーマンス

懇親会の終盤には早稲田大学応援部の学生によるパフォーマンスが披露されました。校歌、エールで参加者が声を合わせ、応化会の団結を確認し今後益々の発展を誓いました。

下村副会長 石崎学生委員長

最後に、早稲田応用化学会の下村副会長からいつもの力強い中締めのご挨拶を頂き、石崎学生委員長の一丁締めにて散会となりました。

講演会・懇親会のスナップ写真は下のボタンをクリックしてご覧ください。

 

(文責;交流委員会)

リマインド-早稲田応用化学会 交流委員会主催 第39回交流会講演会のご案内

2024年6月15日(土)15:00~16:30 (対面と遠隔方式を併用して開催)

講演者;小岩一郎先生

関東学院大学 理工学部 理工学科 表面工学学系 特約教授

演題;『ドイツ、シリコンバレー、シンガポールでの産業創成方法の比較』

副題;「ドイツで2018年度1年間研究して、以前訪問した地域についても感じたこと」

今回は、対面方式と遠隔方式を併用したハイブリッド開催と致します。関東学院大学 特約教授の小岩一郎先生をお迎えし、上記のテーマにてご講演をして頂きます。
ご期待下さい。
なお小岩先生は、Waseda Electrochemical Society(略称 WECS、すなわち応用化学科 応用物理化学研究室の吉田研究室・逢坂研究室・本間研究室・門間研究室のOB・OG会)の会長をされております。

本講演の概要

近年、ドイツに興味を持っていた。労働時間が短く、それでいてGDPは日本を超えている。人口が日本の7割程度と考えると、3割も高いことになる。また、労働時間を加味すると生産性は、日本より7割も高いと言われている。特に、フラウンホーファーの名前をいたるところで聞く。さらに、過去、複数回訪問した2019年に工業競争力世界一位を獲得したシンガポールと急激に発展しているシリコンバレーの状況も加えて、日本が置かれている状況、世界が日本をどう見ているかについて、私の意見を加えて、お話しする。また、私が経験した、日本的な失敗例についてもお話しする。

(講演者から寄せられた紹介文より)

講演者略歴

1982年3月早稲田大学 理工学部 応用化学科 卒業 (逢坂研究室 新制32回)

1984年3月早稲田大学 大学院 理工学研究科 博士前期課程 応用化学専攻 工業物理化学 修了

1986年4月~1988年3月早稲田大学 理工学部 助手

1987年3月早稲田大学 大学院 理工学研究科 博士後期課程 応用化学専攻 工業物理化学 修了

1988年4月~2005年3月沖電気工業株式会社 研究開発本部、研究本部 研究員、管理職

2005年4月~2013年3月関東学院大学 理工学部 工業化学科 教授

2013年4月~2023年3月関東学院大学 理工学部 理工学科 化学学系 教授

2023年4月~2024年3月関東学院大学 理工学部 理工学科 表面工学学系 教授

2024年4月~関東学院大学 理工学部 理工学科 表面工学学系 特約教授

講演者のご趣味、等

読書、囲碁、旅行

講演の日時、場所、形式等

開催期日;2024年6月15日(土)

講演時間;15:00~16:30(応化会役員挨拶、講師紹介、及び質疑応答等を含む。
講演会場での受付開始14:30、講演聴講は無料)

講演形式;対面方式、及び遠隔会議用ソフト Zoomを使用したリモート方式を併用.

対面方式での開催場所;西早稲田キャンパス 57号館 201教室

懇親会 ;16:45~18:15[対面参加者のみ]

懇親会場;63号館1階ロームスクエア(懇親会費:3,000円、学生無料)

その他 ;要事前申し込み.

申し込み方法について

応用化学科の学生、早稲田応用化学会会員であるOB・OGの皆様、及び同会会員以外で本学の学生、卒業生・修了生、教職員の方は下記のURLまたはQRコードから申し込みをお願いします。

申し込み先URL ⇒ https://forms.gle/jNXaK61JCZDAkSSD9

 

申し込み先 QRコード⇒

申し込み締め切り;6月6日(木)

参加申し込みをされた方には、6月11日(火)頃、申し込みの際にご入力いただいたメールアドレス宛にZoomによる参加方法、また対面参加の方への依頼事項等が配信されます。

なお、講演会場、及び懇親会場では応化会ホームページ掲載用の写真を撮影致しますのでご了承願います。

皆様、是非奮ってご参加下さい。宜しくお願い致します。

――― 以上 ―――

(文責;交流委員会)

早稲田応用化学会 交流委員会主催 第38回交流会講演会

2022年9月10日(土)15:00~17:10 (Zoomによるリモート開催)

講演テーマ;『カーボンニュートラルについて』
講演者;
【講演第一部】宍戸圭介氏  デロイト トーマツ グループ マネジャー
 演題;『サステナビリティとは何か』
 副題;「日本のカーボンニュートラル」
【講演第二部】望月浩二氏  ドイツ(欧州)環境規制調査
 演題;『サステーナブルな世界に向けて』
 副題;「ドイツのカーボンニュートラル」

宍戸圭介氏

望月浩二氏

講演者略歴
宍戸圭介氏
 2007年 早稲田大学 理工学部 応用化学科 卒業(新制57回、酒井・小堀研究室)
 2009年 早稲田大学 大学院 先進理工学研究科 応用化学専攻 修了(酒井・小堀研究室)
 2009年 サントリーホールディングス(株)入社
  ・国内外の環境戦略立案、再生可能エネルギー導入,オペレーション改善等のプロジェクトマネジメントに従事
 2018年 米州立ノースカロライナ大学チャペルヒル校 フルタイムMBA 入学
  ・コペンハーゲンビジネススクールに交換留学(半年)
  ・マッキンゼー・アンド・カンパニー、ヤンセンファーマにてインターン実施
 2020年 米州立ノースカロライナ大学チャペルヒル校 フルタイムMBA 卒業
 2020年 監査法人トーマツ ESG・統合報告グループに入所
  ・主に国内外のコンシューマー、パブリックセクター分野において、環境・戦略分野を中心としたESGに関するアドバイザリー業務を実施
  ・社内ベンチャーのコアメンバーとして、カーボンニュートラルに向けた技術の社会実装を目指すための技術リスト作成や関連プロジェクトの組成、執筆・講演活動を兼務

望月浩二氏
 1969年 早稲田大学 理工学部 応用物理学科 卒業

 卒業後、企業内でエンジニアとして品質管理および研究・開発の業務に8年間、従事した後、退職してドイツに移住。1991年以来、ドイツおよび欧州の環境規制の調査・コンサルティング業に従事。毎年一時帰国して企業、大学、学会、市民団体などのために報告講演を実施。ドイツのケルン市在住。

はじめに
今回は、リモート方式による交流会講演会として開催致しました。

参加者:98名(卒業生87名[講演者、先生を含む]、在校生11名)
本講演会には早稲田応用化学会の元会長である西出名誉教授、並びに橋本副会長にもご参加頂き、それぞれ開会と閉会のご挨拶を頂きました。

   
           西出名誉教授(元応化会会長)                                 橋本副会長

                                          椎名交流委員長

講演会開会前に、聴講者への依頼事項等をスライドショウで流しましたが、今回はそれに加えて早稲田大学のカーボンニュートラル宣言に関連する下記の方々のお話を放映しました。
  田中総長⇒ https://www.youtube.com/embed/frc_Kj8zDpk?autoplay=1
  政治経済学術院 有村 俊秀教授⇒
        https://www.youtube.com/embed/2m4Gx_4Ti64?autoplay=1
  理工学術院 応用化学科 関根 泰教授⇒
        https://www.youtube.com/embed/Ei4jL3T8sPM?autoplay=1

定刻になり、まず椎名交流委員長による開会宣言、視聴に当たっての依頼事項、及び講演者の略歴紹介が行われました。特に今回は講演者をお二人お招きし、第二部の講演者である望月浩二氏はドイツのケルン市在住で、交流会講演会の講演者として初めて海外から遠隔で参加される旨の紹介がありました。引き続き、早稲田応用化学会の元会長である西出名誉教授から開会のご挨拶を頂きました。
 西出名誉教授のご挨拶 こちら

続いて講演が始まりました。
なお、本講演会におきまして講演者が作成し、説明のために使用されましたプレゼンテーションファイルが応化会HP内の資料庫に格納されています。詳細はこちらのファイルをご覧下さい。(閲覧には資料庫のパスワードが必要です。) 資料庫こちら

【講演第一部】
宍戸圭介氏 『サステナビリティとは何か』 ~ 「日本のカーボンニュートラル」
本講演の要約

1.サステナビリティに関するトピックは、グローバルアジェンダとして重要性が増している。
2.日本においてもサステナビリティ、特に気候変動分野でのコミットメントが高まっており、産官学が協働してカーボンニュートラルを目指すことが求められる。
3.カーボンニュートラル達成のためには種々のアプローチが必要であり、応用化学会の皆様の知見や経験が大いに生かされることが期待できる。
本講演の概要についてこちら

【講演第二部】
望月浩二氏 『サステーナブルな世界に向けて』 ~ 「ドイツのカーボンニュートラル」
講演は次のテーマに従って順に行われました。

①ドイツ国民の環境意識
②サステナビリティの重要な要素としてのカーボンニュートラル
③カーボンニュートラルの2050年実現を目指すドイツの取り組み
④カーボンニュートラルとリサイクル
本講演の概要についてこちら

講師お二人の講演の後、質疑応答が行われました。
質疑応答の概要についてこちら

最後に、早稲田応用化学会の橋本副会長から閉会のご挨拶を頂きました。
橋本副会長のご挨拶 ⇒こちら 

   <参加者>

椎名交流委員長より
最後に椎名交流委員長から下記の2点についてお願いがあった後、本日ご講演いただいた宍戸様、望月様およびご参加いただいた多くの会員の皆様への感謝の言葉をもって閉会宣言となりました

1.講演者へのフィードバックならびに次回の講演会企画の参考とするため、メール配信されるアンケートへの回答のお願い
2.2023年5月20日(土)に開催される早稲田応用化学会100周年記念事業について、大隈記念小講堂における田中総長の記念講演ならびに記念祝賀会への参加、早稲田応用化学会給付奨学金への寄付協力のお願い

<ご参考>懇談会(17:15~18:00) ⇒こちら

――― 以上 ―――

(文責;交流委員会)

<Zoomによるリモート開催のみに変更>早稲田応用化学会 交流委員会主催 第38回交流会講演会ご案内

<ご注意:Zoomによるリモート開催に変更します!>

 対面方式と遠隔方式を併用したハイブリッド開催を計画しておりましたが、新型コロナウイルス感染拡大状況を鑑み、対面による講演は取り止め、全てZoomによるリモート開催に変更いたします。
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2022年9月10日(土)15:00~17:10 <リモート方式で開催>

講演テーマ;『カーボンニュートラルについて』
講演者;
【講演第一部】宍戸圭介氏  デロイト トーマツ グループ マネジャー
 演題;『サステナビリティとは何か』
 副題;「日本のカーボンニュートラル」
【講演第二部】望月浩二氏  ドイツ(欧州)環境規制調査
 演題;『サステーナブルな世界に向けて』
 副題;「ドイツのカーボンニュートラル」

宍戸圭介氏

望月浩二氏

 今回は、Zoomによるリモート開催と致します。
 本講演会は交流会講演会として初めて、講演者をお二人お招きしての開催となります。また、第二部の講演者である望月浩二氏はドイツのケルン市在住で、交流会講演会の講演者として初めて海外から遠隔で参加されます。
 講演のテーマについてですが、これまでの講演会参加者からのアンケートでは、環境、SDGs、カーボンニュートラルに関する講演企画依頼が複数ありました。環境、及びSDGsは対象範囲が広いため、応化会会員がシニアから現役世代、学生に到るまで専門性が多様化する中で多くの参加者に知識を得て頂くために、環境、SDGsの中でも化学系に馴染みの深いカーボンニュートラルにフォーカスし、一般知識から海外での規制や最近の話題まで分かりやすい説明を上記のお二人にお願いしたところ、快諾を頂きました。ご期待下さい。

【講演第一部】
デロイト トーマツ グループについて
 デロイト トーマツ グループは、日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり、各法人がそれぞれの適用法令に従い、監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務、法務等を提供しています。また、国内約30都市以上に1万名を超える専門家を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。

本講演の概要
 ①サステナビリティ入門
  ・サステナビリティとは?(SDGs, ESG, CSR/CSV等の用語解説を含む)
  ・サステナビリティの潮流
 ②気候変動問題、カーボンニュートラルについて
  ・気候変動がなぜ問題になっているのか?
  ・カーボンニュートラルが求められる背景
 ③日本のカーボンニュートラルに向けた取り組みの現状
  ・国の動き
  ・産業界・企業の取り組み
 ④コンサルタントとして関与しているプロジェクト例
  ・【産官学連携】カーボンニュートラル技術の社会実装に向けた取り組み
  ・【企業様支援】私が展開しているサービス事例(ネットゼロのロードマップ作成支援、情報開示支援)

講演者略歴
 2007年 早稲田大学 理工学部 応用化学科 卒業(新制57回、酒井・小堀研究室)
 2009年 早稲田大学 大学院 先進理工学研究科 応用化学専攻 修了(酒井・小堀研究室)
 2009年 サントリーホールディングス(株)入社
  ・国内外の環境戦略立案、再生可能エネルギー導入,オペレーション改善等のプロジェクトマネジメントに従事
 2018年 米州立ノースカロライナ大学チャペルヒル校 フルタイムMBA 入学
  ・コペンハーゲンビジネススクールに交換留学(半年)
  ・マッキンゼー・アンド・カンパニー、ヤンセンファーマにてインターン実施
 2020年 米州立ノースカロライナ大学チャペルヒル校 フルタイムMBA 卒業
 2020年 監査法人トーマツ ESG・統合報告グループに入所

 <業務内容>
  ・主に国内外のコンシューマー、パブリックセクター分野において、環境・戦略分野を中心としたESGに関するアドバイザリー業務を実施
  ・社内ベンチャーのコアメンバーとして、カーボンニュートラルに向けた技術の社会実装を目指すための技術リスト作成や関連プロジェクトの組成、執筆・講演活動を兼務

【講演第二部】
講演者の業務内容
 ドイツおよび欧州の環境規制の調査・コンサルティング業に30年以上従事
 毎年一時帰国して企業、大学、学会、市民団体などのために報告講演を実施

本講演の概要
 ①ドイツ人の環境意識
 ②ドイツのカーボンニュートラル制度、政策
  ・再生エネルギーの取り組み
  ・産業界、企業の取り組み事例など

講演者略歴
 1969年 早稲田大学 理工学部 応用物理学科 卒業

 卒業後、企業内でエンジニアとして品質管理および研究・開発の業務に8年間、従事した後、退職してドイツに移住。1991年以来、ドイツおよび欧州の環境規制の調査・コンサルティング業に従事。毎年一時帰国して企業、大学、学会、市民団体などのために報告講演を実施。ドイツのケルン市在住。

《講演の日時、形式、場所、スケジュール、等》
 開催期日;2022年9月10日(土)
 講演形式;遠隔会議用ソフト Zoomを使用した遠隔方式

 Zoomによる聴講者への案内       
 開会宣言、開会挨拶、講師紹介 
 講演第一部(遠隔) 
 第二部の講師紹介                       
 講演第二部(遠隔)                    
 質疑応答(遠隔)     
 閉会挨拶、終了宣言                    

;14:50~15:00
;15:00~15:10
;15:10~15:50
;15:50~16:00
;16:00~16:40
;16:40~16:55
;16:55~17:10

 
 

《申し込み方法について》
 応用化学科の学生、及び早稲田応用化学会会員であるOB/OGの皆様は、別途送付されるメルマガか下記のリンク先から申し込みをお願いします。
 上記以外で、本学の学生、卒業生・修了生、教職員の方は下記のリンク先から申し込みをお願いします。
 申し込み先  https://forms.gle/57S8ne113YAYrcrK8

 申し込みをされた方には、講演会聴講に必要なZoom情報(URL, Meeting ID, Pass Code)等を、9月6日頃にメールで配信致します。

 皆様、是非奮ってご参加下さい。
 宜しくお願い致します。

――― 以上 ―――
(文責;交流委員会)

早稲田応用化学会 交流委員会主催 第37回交流会講演会

   2022年5月28日(土)15:00~16:00 (対面と遠隔方式を併用して開催)

講演者 杉村 純子氏  日本弁理士会 会長
演題 『ワセジョが語る知的財産世界の魅力』
副題 「~グローバル経営資源に知財を活かそう!~」

 

 

 


                                       

                               講演者  杉村 純子氏

講演者略歴
1984年 早稲田大学 理工学部 応用化学科 卒業 (森田・菊地研究室 新制34回)
石油会社研究部門に所属後、弁理士登録
特許事務所勤務後、プロメテ国際特許事務所設立(2001年度)~現在に至る
裁判所調査官(2003年度~2005年度)・現在 裁判所調停委員・専門委員(知的財産)
日本弁理士会 副会長(2011年度)
内閣府 知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会委員、評価・検証・企画委員会委員、
   知財教育タスクフォース委員、等
講演者の現役職(日本弁理士会 会長 以外)
プロメテ国際特許事務所 共同代表 弁理士
早稲田大学ビジネススクール 非常勤講師
内閣府 知的財産戦略本部 本部員(同 構想委員会 委員)
裁判所調停委員・専門委員(知的財産)
Licensing Executive Society International Vice President(Licensing Executive
   Society Japan 元会長)
アジア弁理士協会 日本部会 理事
産業構造審議会 知的財産分科会 委員(同 特許制度小委員会 委員、不正競争防止
   小委員会 委員)
日本工業標準調査会総会委員・ISO知財マネジメント策定委員

はじめに
今回は、交流会講演会として初めて対面と遠隔方式を併用して開催致しました。
対面方式で使用した会場;西早稲田キャンパス 57号館 201教室
遠隔方式で使用したソフト;遠隔会議用ソフト Zoom
参加者:対面方式;28名(卒業生24名[講演者、先生を含む]、在校生4名)
    遠隔方式;58名(卒業生55名[先生を含む]、       在校生3名)
    合計  ;86名(卒業生79名[講演者、先生を含む]、在校生7名)
まず椎名交流委員長による開会宣言、視聴に当たっての依頼事項、及び早稲田応用化学会100周年記念事業が来年予定されており、本講演はそれに向かって応化会活動を盛り上げていくための第一弾としたいとのお話がありました。次に講演者の紹介が行われた後、講演に先立って早稲田応用化学会の濱会長からご挨拶を頂きました。

 

 

 

 

 

 

 

       濱会長                      椎名交流委員長

濱会長の開会のご挨拶
杉村先生、今回の講演を引き受けて頂き、有難う御座います。知的財産の世界で活躍されている「ワセジョ」の講演を是非お聞きしたいと思っております。
企業経営の中で、以前は売上とか利益といった財務的指標がメインでしたが、最近は特許、商標、意匠、あるいは著作権といった知的財産や社内ノウハウ等の無形資産に対して興味が持たれています。担当部門としてこれまでは特許は研究開発技術部門、商標や意匠についてはマーケティング部門というように明確に分かれていましたが、今では取締役会とかグローバル会議の中で戦略的な議論をするような時代になっています。これは大企業だけではなく、中小企業やスタートアップ企業においても生き残りのために不可欠な戦略となっています。先日、特許庁の森長官とこのようなことに関してディスカッションする機会がありました。
今日は専門的なお話以外に、知的財産の魅力について分かり易い事例を交えてお話頂けるとのことですので、知的財産に対する興味を高めて頂きたいと思います。
杉村先生、宜しくお願い致します。

続いて椎名交流委員長から講演者の略歴が紹介された後、講演が始まりました。

講演の概要
以下の各項目等について、講演者ご自身の経験や経歴、日本弁理士会でのお仕事、最近の話題を含む豊富なプレゼンテーション資料等を基に、魅力溢れるお話が展開されました。
弁理士になるまで
知的財産世界の魅力
弁理士の役割
弁理士の状況
日本弁理士会について
知的財産について
知的財産を取り巻く環境の変化
 最近のトピック1 経済安全保障
 最近のトピック2 IoT時代の特許紛争
 最近のトピック3 コーポレートガバナンスコード改訂
 最近のトピック4 特許をめぐるトラブルの裁定
 最近のトピック5 農林水産物
戦略的に知的財産をマネジメントする
技術の保護戦略(オープン・クローズ)
秘匿化(不正競争防止法の「営業秘密」)

終わりに
今回は最近の半年間で新聞報道された話題を取り上げてお話しをさせて頂きました。応用化学科で講演出来たことを有難く思っております。是非知的財産の魅力に触れて頂いて、この世界に入ってきて頂きたいと思います。本日はご清聴、誠に有難う御座いました。

質疑応答
講演内容について、参加者から日本とアメリカの企業の、投資に対する取り組みの違いに関する質問や、弁理士の醍醐味などに関する質問などに対して、杉村先生からこれまでの経験を元にわかりやすい説明をいただきました。

この後、桐村教授からご挨拶を頂きました。
桐村教授のご挨拶
本日は大変分かり易く楽しくお話を伺うことが出来、貴重な時間を過ごすことが出来ました。
私は1999年から3年間、弁理士の方々のためにバイオ特許を出す時の基礎講座の依頼を受け、担当した経験があります。弁理士会にも少しは貢献したことを自慢させていただきます。
杉村さんは私の1年後輩でして、学生時代(卒業論文研究の頃)は我々の研究室に杉村さんの友人がいたので時々寄って下さいました。本日久し振りにお会いしたのですが、応用化学会の交流会講演会ならではの、こういった奇跡的な出会いもあるのだなと思いました。
ところで、我々が社会に出た頃は知的財産という言葉はありませんでした。そして、米国が特許の申請の仕方をがらりと変えて来たのですが、その時の日本の対応において、かなり苦労されたのではないかと思います。今はグローバル化の新しい波があり、世界標準(制度)をどう作っていくかが重要だと思います。その点において、杉村さんは明るく先導的に道を拓かれていると感じました。大変なことですが、これからも良い世界を作るために貢献して頂ければと思います。本日は良いご講演を有難う御座いました。

 

 

 

 

 

 

 

      桐村教授                      下村副会長

次に早稲田応用化学会の下村副会長から閉会のご挨拶を頂きました。
下村副会長の閉会のご挨拶
杉村先生、面白い講演を有難う御座いました。
杉村先生とは同じ研究室、同じ部屋で一緒に実験をしており、とても楽しい方でしたが、それが何年経っても変わらないと感じました。
先程の桐村先生のお話しにもありましたように、早稲田応用化学会は素晴らしい再会の場を提供してくれる会です。来年5月20日には早稲田応用化学会100周年の記念講演会と祝賀会がありますが、ここではもっと色々な出会いがあると思います。今日の杉村先生のお話のような、素晴らしく、また楽しいお話を聞くためにはそこに集まるのが良いのではないか、と思いまして私のお礼と挨拶に代えさせて頂きます。有難う御座いました。

最後に椎名交流委員長から下記の2点についてお願いがあった後、閉会となりました。
1.メール配信されるアンケートへの回答のお願い
2.2023年5月20日(土)に開催される早稲田応用化学会100周年の記念講演会と祝賀会への参加のお願い

当日の参加者の写真
対面での参加者

遠隔での参加者

(文責;交流委員会)

早稲田応用化学会 交流委員会主催 第37回交流会講演会ご案内

2022年5月28日(土)15:00~16:00 (対面と遠隔方式を併用して開催)

講演者;杉村純子氏
    日本弁理士会 会長
 演題;『ワセジョが語る知的財産世界の魅力』
 副題;「~グローバル経営資源に知財を活かそう!~」

今回は、対面方式と遠隔方式を併用したハイブリッド開催と致します。
日本弁理士会会長の杉村純子氏をお迎えし、上記のテーマにてご講演をして頂きます。
弁理士は知的財産権に関わる仕事を行う国家資格者ですが、今回の講演については講演者より「あまり堅苦しい説明ではなく、身近なことを実例にあげて聞きやすい内容にしたい。」とのお話を伺っております。
ご期待下さい。

弁理士について(日本弁理士会HPより)
 特許権、実用新案権、意匠権、商標権などの知的財産権を取得したい方のために、代理して特許庁への手続きを行うのが弁理士の主な仕事です。また、知的財産の専門家として、知的財産権の取得についての相談をはじめ、自社製品を模倣されたときの対策、他社の権利を侵害していないか等の相談まで、知的財産全般について相談を受けて助言、コンサルティングを行うのも弁理士の仕事です。
 さらに、特許権、実用新案権、意匠権、商標権などの侵害に関する訴訟に、補佐人として、又は一定要件のもとで弁護士と共同で訴訟代理人として参加するのも弁理士の仕事です。

日本弁理士会について(日本弁理士会HPより)
 日本弁理士会は、弁理士及び特許業務法人の使命及び職責に鑑み、その品位を保持し、弁理士及び弁理士法人の業務の改善進歩を図るため、会員の指導、連絡及び監督を行うことを目的とし(弁理士法第56条)、研修を通した会員の能力研鑚と向上、知的財産権制度の研究と普及活動など多様な活動をしています。また、弁理士の登録に関する事務を行っています。

 日本弁理士会のHPは下記のURLから閲覧出来ます。より詳細な情報が得られますので是非ご覧下さい。
https://www.jpaa.or.jp/

本講演の概要
 最近、マスコミでも知的財産という言葉を見かける機会が増えました。知的財産はビジネスを展開する上では重要なツールです。DX、AIやIoTなどの新たな技術分野の進展、サプライチェーンの変革、グローバル競争の激化、更にはコロナ時代のビジネスサバイバルなど、知的財産を経営資源とする動きが加速しています。早稲田の精神を心に抱いて激動の知的財産世界を駆け抜けているワセジョが、グローバルな知的財産世界の魅力を、実経験をもとにお話したいと思います。

講演者略歴
 1984年 早稲田大学 理工学部 応用化学科 卒業 (森田・菊地研究室 新制34回)
 石油会社研究部門に所属後、弁理士登録
 特許事務所勤務後、プロメテ国際特許事務所設立(2001年度)~現在に至る
 裁判所調査官(2003年度~2005年度)・現在 裁判所調停委員・専門委員(知的財産)
 日本弁理士会 副会長(2011年度)
 内閣府 知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会委員、
   評価・検証・企画委員会委員、知財教育タスクフォース委員、等

講演者の現役職(日本弁理士会 会長 以外)
 プロメテ国際特許事務所 共同代表 弁理士
 早稲田大学ビジネススクール 非常勤講師
 内閣府 知的財産戦略本部 本部員(同 構想委員会 委員)
 裁判所調停委員・専門委員(知的財産)
 Licensing Executive Society International Vice President
   (Licensing Executive Society Japan 元会長)
 アジア弁理士協会 日本部会 理事
 産業構造審議会 知的財産分科会 委員
   (同 特許制度小委員会 委員、不正競争防止小委員会 委員)
 日本工業標準調査会総会委員・ISO知財マネジメント策定委員

講演者のご趣味、特技、等
 美味しい料理を探索すること
 タイ語

講演の日時、場所、形式等
 開催期日;2022年5月28日(土)
 講演時間;15:00~16:00(応化会役員挨拶、講師紹介、及び質疑応答等を含む)
 講演形式;対面方式、及び遠隔会議用ソフト Zoomを使用したリモート方式を併用.
 対面方式での開催場所;西早稲田キャンパス 57号館 201教室
 その他 ;参加費無料.要事前申し込み.

申し込み方法について
 応用化学科の学生、早稲田応用化学会会員であるOB/OGの皆様、及び同会会員以外で本学の学生、卒業生・修了生、教職員の方は下記のリンク先から申し込みをお願いします。
 申し込み先 ⇒ https://forms.office.com/r/iAwZw5yHas
 5月24日頃、申し込みメールアドレス宛にZoomによる参加方法、また対面参加の方への依頼事項等が配信されます。皆様、是非奮ってご参加下さい。
 宜しくお願い致します。

――― 以上 ―――
(文責;交流委員会)

早稲田応用化学会 交流委員会主催 第36回交流会講演会

2021年7月3日(土)15:00~16:30 (Zoomによるリモート開催)

講演者 上沼敏彦氏  ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社
    NA事業部 カスタムバイオテック部 部長
演題 『COVID-19の現状と対策』
副題 「COVID-19にいかに立ち向かうか」

講演者 上沼敏彦氏

講演者略歴

1986年3月 早稲田大学 大学院 理工学研究科 応用化学専攻(宇佐美研究室)修了
1986年4月 株式会社 資生堂 基礎科学研究所
1989年1月 同社 ライフサイエンス研究所
1990-91年  東北大学 大学院 医学研究科 脳疾患研究施設 脳神経外科 留学
1996年    同社 スキンケア研究所
1997年    博士(工学)早稲田大学
1998年6月 旭硝子(現 AGC)株式会社 機能性商品開発研究所
2006年5月 ロシュ・ダイアグノスティックス(現在に至る)
2007年    ロンドンビジネススクール エグゼクティブプログラム
2015年    慶應義塾大学 理工学部 生命情報学科 非常勤講師

はじめに

 今回も前回と同様、リモート方式による交流会講演会として開催致しました。
参加者:134名(卒業生115名[講演者、先生を含む]、在校生19名)
本講演会には早稲田応用化学会の橋本副会長にもご参加頂き、ご挨拶を頂きました。

                               左:橋本副会長                                          右:椎名交流委員長

その内容については、本講演会の進行に合わせまして本文の最後のところに掲載させて頂きました。

まず椎名交流委員長による開会宣言、視聴に当たっての依頼事項、及び講演者の略歴紹介が行われた後、講演が始まりました。
なお、本講演会におきまして講演者が作成し、説明のために使用されましたプレゼンテーションファイルが応化会HP内の資料庫に格納されています。こちらのファイルも是非ご覧下さい。

(閲覧には資料庫のパスワードが必要です。)

講演会

ロシュグループについて

ロシュはスイス・バーゼルに本拠を置き、医療に関する早期発見から予防、診断、治療、さらにはQuality of Life(QOL)向上まで、患者と社会のための医療を体現している。

ウィルスについて

細菌や真菌の1/10~1/100ほどの大きさしか持たないウィルスは宿主に感染することで増殖し、COVID-19については、ウィルス膜タンパク上のスパイクが気道の感受性細胞のレセプター(アンジオテンシン変換酵素Ⅱ:ACE2)に結合することで細胞内に侵入することが知られている。このACE2は高血圧発症にも関与するレセプターであり、基礎疾患を有する患者へのリスク検討でも議論の対象となっている。

ウィルス感染から抗体獲得までの流れ

ワクチンの効能効果の基礎的な知識としてマクロファージやナチュラルキラー(NK)細胞による自然免疫と樹状細胞が認識した情報をもとにリンパ球で産生されるB細胞、T細胞による獲得免疫により浸入したウィルスは不活化されるが、mRNAしか有さないCOVID-19は遺伝情報の転写エラーにより変異を生じやすく、スパイクを形成する遺伝情報を持つアミノ酸配列の変異によりスパイクの形状が変化する(アミノ酸の変異個所と変異前後で入れ替わるアミノ酸の種類により変異株は命名されている:452番目のアミノ酸がロイシン(L)からアルギニン(R) に置換された場合L452R、など)。

感染・伝播性の懸念がある変異型ウィルス(VOC)はウィルスの変異株に国名を提示しないルールにより、確認されたイギリス、南アフリカ、ブラジル、インドそれぞれの変異種にα株、β株、γ株、δ株とそれぞれ命名され、感染伝播の懸念は確認されていないが直近で報告された変異株には注目すべき変異株(VOI)としてラムダ株が加えられた。

COVID-19の検査法

検査方法

PCR

抗原検査(定性)

抗原検査(定量)

抗体検査

検体採取

鼻腔・唾液

鼻腔

鼻腔

血液

検出対象

RNA

ウィルスタンパク

ウィルスタンパク

血中タンパク

精度・特徴

精度は高いがPCR走査に時間を要する

迅速で簡便だが精度が低く陰性判定のリスク

定性型抗原検査より精度は高いがPCRに及ばない

特異性低く、WHOも推奨なし

検出場所

検査機関・PCR導入機関であれば採取場所

採取場所

空港検疫など(採取場所)

検査機関

このほかにも新たな検査方法が各種研究機関により進められている。

ワクチンの種類と特長

ワクチンには弱毒化した生ワクチンや細菌毒素を取り出して無毒化したトキソイド、ウィルス遺伝子を除去し無毒化した膜タンパク(外殻部)のみで構成されるウィルス様粒子などもあるが、COVID-19に関しては不活化ワクチン、mRNAワクチン、ウィルスベクターワクチンが実用化されている。

不活化ワクチンは有精鶏卵にウィルスを接種増殖させたのちに回収してエーテルで不活化したものが使われ、mRNAワクチンはスパイクタンパクを標的としてその遺伝情報を持つmRNAをリポソーム内に封入しており、ウィルス遺伝子の本体は使用しないためウィルスによる感染リスクがない。ウィルスベクターワクチンはアデノウィルスの外殻部にCOVID-19ウィルスの遺伝情報の一部を封入することで抗原となるCOVID-19タンパクを創製し抗原抗体反応を惹起する。

世界のワクチン開発状況と接種効果

ファイザーやモデルナが開発したワクチンはmRNAによるもので、アストラゼネカ社やジョンソン・エンド・ジョンソンが開発したワクチンはアデノウィルスベクターを利用したウィルスベクターワクチンになる。

スパイクタンパクの結合部位に対する中和抗体(抗RBD抗体)の産生はファイザーのmRNAワクチン接種後1週間ではベースラインからほぼ変動しないが、3週目に掛けて個人差のバラツキの大きな産生を示し、ここで2回目の接種をすることで4週目以降ほぼ定常状態に達する。モデルナ製のmRNAワクチンは4週目で2回目の接種を実施している。

また、一度COVID-19に感染した患者については既に体内で抗体が作られていることから、ファイザー製のワクチンを1回接種した段階(接種後7日)でほぼ定常状態に近い抗体値が得られていることも明らかになった。

ワクチン接種後の副反応についてもデータが集まりつつある。国内においては定期的に厚生労働省が副反応の発現状況について公開しているが、現時点(2021年6月13日時点)でmRNAに接種による集積データでは重大な懸念は認められないとの評価が下されている。

mRNAワクチンの製造

ロシュはファイザー製ワクチンの生産受注をしているため、ここではファイザー製mRNAワクチン製造に関して説明された。まず、mRNAを作成するために必要なコロナスパイクタンパク産生情報を持つ遺伝子をプラスミドに組み込み、E.coli(大腸菌)へ組み入れる。E.coliは20分ほどで倍増するため、7時間ほど培養を繰り返したのちに、E.coliを後処理しプラスミドを回収、この時点で品質管理を実施してプラスミドから制限酵素を用いてコロナスパイク遺伝子を切り出す。その後切り出したDNAからmRNAへの転写により作製したmRNAを精製、その後リポソームにmRNAを組み込んでワクチン原液となるが、300Lの培養で75万回分接種相当のmRNAが製造できるとのこと。

日本でのワクチン開発状況について

国内でもmRNA、組み換えタンパク、不活化ワクチンなどワクチンの開発が進んでいる。ただし、ワクチン開発費用に関して、米国で開発補助金として国家がサポートする金額は、日本における開発補助金の10倍程度もある。

また、欧米ではリスクベネフィットを考慮してベネフィットがリスクを上回ると判断された場合には積極的治療が実施されるが、日本はゼロリスク志向の国民性ということも、早期承認への障壁の一つになっている。

ワクチンと臨床状況

ワクチン接種による副反応について懸念する声が聞かれるが、糖尿病や高血圧といった基礎疾患がある場合の接種は可能、またワクチンやワクチンの添加剤(ポリエチレングリコールなど)に対するアレルギーやその他食物アレルギーの既往がある場合でも接種は可能とされている。ただし、アレルギーの既往に対しては接種後30分の経過観察が求められている。手術や臓器移植などで免疫抑制剤を使用している場合や免疫不全の既往がある場合も接種は可能だが、免疫抑制剤の影響は注意すべきとの指摘もある。

妊産婦、授乳婦については接種可能で、小児に関しては12歳以上の接種は承認されているが12歳未満の被験者については臨床試験が開始されたところである。

仮にCOVID-19に罹患してしまった場合、国内においては抗ウィルス治療薬が承認されているほかサイトカインストーム抑制などの対症療法として2剤が承認されており、コロナ抗体カクテル治療など国内で承認申請段階にある薬剤が控えている。

ある疫学調査の結果からはCOVID-19に罹患した患者の87.5%に何らかの後遺症が認められたとの報告もあり、感染症症状の寛解後も疲労が抜けない(ウィルス後疲労症候群)や、感染時に誘発された肺や心臓への臓器損傷や呼吸困難など、感染時の症状の持続といったものが複合的に持続した事例が紹介されている。

Global企業に思うこと

特に学生諸君に訴えたいのは、辛いことがあっても頑張って究めていけば色々新しいものを掴むことが出来る、ということです。そのための手段の一つとしてお勧めするのがPh.D.を持つことです。これにより私の場合はロシュの中で幹部となり、幹部でなければ得られない経験が得られたと思っています。またPh.D.を持つことにより世界中の色々な場所でどんな人とも対等に話が出来て、経営にも入っていくことが出来ると思います。これから社会に飛び立っていく皆さんの活躍を楽しみにしております。

私は今年60歳になりますが、ここで立ち止まることなく別の仕事に打ち込んでいこうと思っています。またいつかどこかでお会いしましょう。

FAQ、質疑応答

  • 複数のウィルスへの同時感染:

COVID-19の変異株との同時感染の事例はあるが、科学的な根拠はないとのこと。

  • 飛沫感染に関して、ウィルスを含んだ飛沫のサイズからは数時間にわたり飛沫は浮遊し、地表への落下は遅いと考えられるが感染のリスクは:

より長時間浮遊しているというデータもある。接触感染という観点からの注意は必要ではあるが、種々の環境因子なども考慮すべきで何とも言えない。

  • 海外で1回目と2回目で別のタイプのワクチンを接種することで中和抗体化が高くなったとの報告もあるようだが:

いくつかの地域においてそのような報告があるのは承知している。ただ、収集された情報を検討するに症例数が十分ではなく、それがエビデンスのあるデータとして見るべきかの検討には早計であると言われている。

  • 副反応について、年齢層、性差等は認められているのか:

日本国内における集積データ(疫学調査)が蓄積されてきている。現時点で発現率にそれぞれ差はあるようだが2回目接種における副反応発現は認められている。

質疑応答後、早稲田応用化学会の橋本副会長から閉会のご挨拶を頂きました。

橋本副会長からのご挨拶

 色々興味深いお話を有難う御座いました。
これまで1年半に亘り世界中がこの感染症に振り回されており、何が信頼出来て何がPriorityの高い情報なのか分からない状況下の中、今日のお話を伺って今後色々なことを判断する上での明確な基準が持てたように思います。また、今回のように参加者全員が自分自身に関わる問題としてまさに直面しているテーマを対象として説明を頂いた講演会は前例が無いように思います。皆さんが本日得られた知識等を元に適切な判断をして無事にこの状況を乗り切り、早い機会にこの感染症を抑え込める日が来ることを期待しております。
お忙しい中時間を取ってご講演して頂きました上沼さんに心からお礼申し上げます。有難う御座いました。

――― 以上 ―――

(文責;交流委員会)

早稲田応用化学会 交流委員会主催 第36回交流会講演会ご案内

2021年7月3日(土)15:00~16:10 (Zoomによるリモート開催)

講演者;上沼敏彦氏  ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社
NA事業部 カスタムバイオテック部 部長

上沼敏彦氏

演題;『COVID-19の現状と対策』
副題;「COVID-19にいかに立ち向かうか」

今回も、前回に引き続いてリモート方式による開催となります。
標記の会社でご活躍中の上沼敏彦氏をお迎えし、『COVID-19の現状と対策』というテーマにてご講演をして頂きます。
現在、日本のみならず世界各国で猛威を振るっている感染症の原因となっている新型コロナウイルスについて、皆様が知りたいと思っていることに答えて頂ける講演ですので、ご期待下さい。

ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社について
ダイアグノスティックスは、“診断(法)”の意味です。ロシュグループには、ファーマ(医薬)とダイアグノスティックス(診断)の2部門があり、ファーマ事業は、Roche Pharma, Genentech, 中外製薬で構成されていて、特にがん治療に特化した分子標的治療をターゲットとした抗体医薬品を開発及び製造販売しています。乳がん治療の“ハーセプチン“、大腸がん治療の”アバスチン“が多くの患者様の命を救っています。ダイアグノスティックス事業では、診断機器、診断試薬を開発及び製造販売しています。健康診断時に血液を採取して中性脂肪、コレステロール、γ-GTP等を測定するのもその一つです。特にPCR検査は、ロシュがその基本原理の特許を長らく有していたこともあり、現在のコロナ禍でのPCR検査においても中心的な役割を担っています。PCRは検査キットのみならず、その原料も多くの企業に提供し、毎日多くの検査が実施できています。その他、抗体・抗原検査も提供しており、抗体検査ではがんマーカーの検出、抗原検査ではHIV,HPV等のウイルス検出に使用されています。COVID-19の罹患の有無についても迅速検査として用いられています。ロシュグループには、診断から治療までの一貫した体制が整っており、例えば、患者様の遺伝子を調べることによりどの治療が最適かを判断するテーラーメイド医療が効率的に行われています。これにより患者様の利益を最大限に考えた治療が実現され、医療費の削減にも貢献しています。その中で演者が所属するカスタムバイオテック部は、少し異なったビジネスを展開しています。カスタムバイオテックの名前の由来は、お客様(カスタマー)にロシュの最先端技術(バイオテクノロジー)をお届けすることを目的に設置された部署です。すなわち、ロシュで開発した診断薬原料(COVID-19の診断として用いられるPCR、抗原検査、抗体検査向けの原料の販売も行っています)、Roche Pharma, Genentechで開発された医薬品原料、例えば、抗体医薬品を製造するための糖鎖、mRNAワクチンを製造するための原料、医薬品製造中の不純物を検出するキット、抗体を製造する細胞の培養が適切に行われているかを測定する装置です。すなわち、ロシュで開発された原料・装置を競合他社に販売する部署です。ヘルスケアー市場の活性化と、貢献を目標としています。 また、COVID-19の診断として用いられるPCR、抗原検査、抗体検査向けの原料の販売も行っており、2020年のロシュの売り上げは、医薬品事業、診断薬事業ともに世界1位を達成しています。

本講演の概要

現在COVID-19制圧に向け、全世界で様々な施策が行われています。日本でもニュース等で政府と感染症対策分科会からの情報が毎日のように更新されています。さらに日本では、17の医療機関がコロナ制圧タスクフォースを組織し、2020年5月より活動を開始しています。自然感染による、集団免疫獲得か、ワクチンによる中和抗体増加による防御か、いまだに多くの意見が出ているのが現状です。また、変異株の出現と感染についても脅威になっています。なぜウイルスは変異するのか。変異することにより何が起こるのか。変異によりワクチンの効き目は本当に影響を受けないのか。心配事が増えるいっぽうです。ウイルスの基本に立ち返ると風邪の原因物質はいったい何だったか疑問が出てきます。ウイルスか?細菌か?いまだに多くの人がウイルスと細菌の区別がはっきりしていないのでは、と考えています。ひと昔前は風邪をひいて高熱がしばらく続くと、抗生物質を処方されたことがよくありました。今は通常の風邪のほとんどがウイルスによるもので、抗生物質が効かないのが常識となっています。

COVID-19の検査であるPCR反応では、COVID-19の本体がRNAであるため、RNAを逆転写酵素でDNAに変換した後にウイルス特異的な構造部位ポリメラーゼ反応増幅させ、増幅されれば陽性として判定します。検体調整時間を含めておおよそ5-7時間程度かかります。抗原反応は、装置を用いない定性抗原検査が主流で、ウイルス粒子内のNucleocapsidを検出する方法で、鼻腔内液をぬぐい取り、セットすると陽性判断の場所にバンドが出て判定します。時間は15-30分と非常に短いのが特徴ですが、PCRに比べると感度が低下します。抗体検査は、過去にCOVID-19にり患したかを確認する方法です。化学発光法、ELIS法、イムノクロマト法がありますが、WHOからは、抗体検査を単独で診断に用いるべきではないとの勧告が出ています。

COVID-19ワクチンはアストラゼネカ、ファイザー、モデルナ製が日本国内で承認されています(2021.5現在)。

それぞれ、製造法が異なり、日本人にとってはあまり耳にしない、mRNAだとか、ウイルスベクターとかの方法でワクチンを製造しています。日本では長らく鶏卵を用いてウイルスを増殖させ、その後不活化する方法が用いられてきています。中国製、ロシア製のワクチンも多く供給されているのも現状です。国内外でのCOVID-19ワクチンの開発も加速されており、国もワクチン製造に向けて予算を確保しています。

本講演では、上記内容を踏まえて、ロシュグループの最新情報(non-confidential)を交えながら、以下について、わかりやすく解説します。

    • ウイルスとは何か。ウイルスの実態と変異について
    • ウイルス感染から抗体獲得までの流れ(特にCOVID-19を主に)
    • COVID-19の検査法解説(PCR, 抗原、抗体、その他)
    • ワクチンについての説明
    • ワクチンの種類と特長(COVID-19ワクチンを主に)
    • 世界のワクチン開発状況(COVID-19ワクチンを主に)
    • 日本でのワクチン開発状況(COVID-19ワクチンを主に)

講演者略歴

1986年3月 早稲田大学大学院 理工学研究科 応用化学専攻(宇佐美研究室)修了
1986年4月 株式会社資生堂 基礎科学研究所
1989年1月 同社ライフサイエンス研究所
1990-91年  東北大学大学院 医学研究科 脳疾患研究施設 脳神経外科 留学
1996年   同社スキンケア研究所
1997年   博士(工学)早稲田大学
1998年6月 旭硝子(現 AGC)株式会社 機能性商品開発研究所
2006年5月 ロシュ・ダイアグノスティックス(現在に至る)
2007年   ロンドンビジネススクール エグゼクティブプログラム
2015年   慶應義塾大学 理工学部 生命情報学科 非常勤講師

業務内容

資生堂

    • 固定化生体触媒による新規化粧品原料開発
    • 遺伝子組換ヒト型カルシトニンを用いた骨粗しょう症治療薬の開発
    • ハーバードメディカルスクールとの血管拡張ペプチド共同開発
    • 遺伝子組換ヒト型カルシトニン遺伝子関連ペプチドを用いたくも膜下出血後の脳血管攣縮予防薬の開発(東北大学)
    • スキンケア製品の開発

旭硝子

    • 遺伝子組換SODの医薬品開発(ASL, 潰瘍性大腸炎、間質性肺炎)
    • 生体触媒を用いた医薬品中間体の製造(Novartisより最優秀論文賞)

ロシュ・ダイアグノスティックス

    • 診断原料、医薬品原料、培養モニターリング装置の販売
    • カスタムバイオテック事業Global Board member(2007-2017)

講演の日時、形式等

開催期日;2021年7月3日(土)
講演形式;遠隔会議用ソフト Zoomを使用したリモート講演
開会挨拶、講師紹介、講演、及び質疑応答;15:00~16:00
閉会挨拶;16:00~16:10
その他 ;参加費無料.要事前申し込み.

 

申し込み方法について

応用化学科の学生、及び早稲田応用化学会会員であるOB/OGの皆様は、別途送付されるメルマガからの申し込みをお願いします。
上記以外で、本学の学生、卒業生・修了生、教職員の方は下記のリンク先から申し込みをお願いします。

申し込み先 ⇒ https://secure.waseda-oukakai.gr.jp/kouenkai-entryA/enquete.html 

折り返し、申し込みメールアドレス宛にZoomの参加方法等が配信されます。
皆様、是非奮ってご参加下さい。
宜しくお願い致します。

――― 以上 ―――

(文責;交流委員会)

第35回交流会講演会の報告

早稲田応用化学会 交流委員会主催 第35回交流会講演会
2021年4月24日(土)15:00~17:00 (Zoomによるリモート開催)

講演者   桜井公美氏  プレモパートナー株式会社 創業者・代表取締役
演題      『デザイン思考で医療機器開発を!』
副題      「テクノロジーPushか、ニーズDrivenか」

講演者 桜井公美氏

講演者略歴

はじめに:
今回は、交流会講演会として初のリモート方式による開催となりました。
参加者:83名(卒業生64名[講演者、先生を含む]、在校生19名)
本講演会には早稲田応用化学会の濱会長、及び講演者の恩師である酒井名誉教授にもご参加頂きました。お二人から頂きましたご挨拶の内容については、本講演会の進行に合わせまして本文の最後のところに掲載させて頂きました。

濱逸夫会長 と 酒井清孝名誉教授

また、本文の後半に記載しましたパネルディスカッションにおきまして、その司会は講演者と同じ酒井研究室出身の吉見靖男先生(芝浦工業大学工学部応用化学科教授、新制40回)にお願いしました。

吉見靖男教授 と 椎名聡交流委員長

まず椎名交流委員長による開会宣言、及び講演者の略歴紹介が行われた後、講演が始まりました。
なお、本講演会におきまして講演者が作成し、説明のために使用されましたプレゼンテーションファイルが応化会HP内の資料庫に格納されています。こちらのファイルも是非ご覧ください。(閲覧には資料庫のパスワードが必要です。)

講演会

医療機器について

医療機器の範疇は広く、非侵襲であるMRIやPETなど診断機器、メスの様な治療上のリスクが小さいものからステントや人工弁の様な体内に植え込むリスクの大きいものまであり、医療現場で使用されるまでの承認プロセスは異なっています。
演者がこれまで携わってきた治療領域や製品は主に循環器内科、心臓血管外科、脳外科などで使用される治療機器で、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の厳しい審査を経て厚生労働大臣の製造販売承認が必要な治療上のリスクの大きなものになります。
世界的には医療機器の市場規模は拡大を続けていますが、日本に関しては世界の市場拡大の伸びに比べると直近の5年で3%と微増、加えて貿易収支でも輸入額の伸びが顕著で日本発の機器輸出額が大きくないのが現状です。
厚生労働大臣の承認が必要な医療機器は医薬品と同様に、開発過程が複雑で医療上のニーズを検討、機器の試作にテストを重ねた後に非臨床試験、臨床試験を経て、この間に品質マネジメントも確認しながら承認に到りますが承認後も品質上の不具合の確認など多くの専門家による検証が必要になってきます。従って、開発期間を経て承認に到るまでのプロセスで5~6年、さらに承認後も成長維持から次世代への転換まで5~10年の長いライフサイクルとなる製品開発には

  • 簡単に後戻りできない
  • ニーズの見極めが重要で多くの医療関係者の協力が必要
  • 医学的根拠に基づき開発する
  • 臨床的意義・臨床的価値がないと判断されると承認が取れない
  • 技術力・製品力が市場浸透に不可欠
  • 開発に薬事(承認に向けた審査やPMDAへ提出する資料の取りまとめなど)、品質マネジメントなど専門的知識が不可欠

と言えます。

ベンチャー企業の活用

米国における大手の医療機器メーカーはこれらの複雑な開発プロセスをすべて自前で推進せず、ベンチャー企業を活用しています。大手ベンチャー企業はいくつもの異業種ベンチャーへ投資し、その成果として製品やライセンス、知的財産を買収することで回収しています。それぞれで以下の様な役割や性質分けがされています。

社会環境が大きく変わりつつある状況で従来型のビジネスモデルに固執することなく革新的な商品やビジネスモデルを実現していくためには自前主義からベンチャー企業への投資や買収、売却により他社技術の積極的活用によるオープンイノベーションの発想が重要になります。

昨今の医療機器のトレンド

体に装着できるウェアラブル医療機器が市場に新しいトレンドを生み出しています。
治療用機器としてはリハビリ用、呼吸器治療用、疼痛管理(ペインマネジメント)や糖尿病治療としてのインスリンポンプなど、診断機器としては胎児、睡眠、神経、バイタルサインなどのモニタリングを行うウェアラブル機器が開発されています。例えばアップルウォッチに搭載出来る心電図や心拍数を計測するアプリケーションも医療機器として認可されています。
また、AIの活用も重要な視点になります。健康維持や病気予防には、診断機器と健康データや生活習慣データ(ビッグデータ)へのAIの活用、治療期においては検査や診断支援としてのAI活用や、論文、集積された個別の症例データへのAIの活用による新薬開発の加速化などがあり、既に胸部CT、脳MRI、消化器内視鏡による病変検出に応用が進んでいます。

日本の医療機器開発事情

米国では、ベンチャー企業に対して、製品の開発段階に応じ、ベンチャーキャピタルからの投資やベンチャーが創生した技術を孵化させる(インキュベーション)など必要な支援が実施される体制が出来ているのに反して、日本においてはベンチャー企業がとても少なく、投資環境も支援体制も十分に整っておらず、米国の様な成熟した分業体制は確立されていません。従って少数のベンチャー企業を確実に育成していくことが不可欠だと考えられます。

バイオデザインとデザイン思考

バイオデザインは、医療現場のニーズを出発点として、医学や工学、ビジネスなど分野横断的な視点から革新的な医療機器の創出を目指す2001年からスタンフォード大学で開始されたプログラムです。医療従事者やエンジニアなど多彩な人材がチームを形成し、医療現場のニーズを探索しながらその解決に向けたアイデアを出し合い、プロトタイプ開発やその検証を行います。事業化の視点を取り入れて医療現場で実際に必要とされる医療機器の開発を実施することから、スタンフォード大学発ベンチャーは60社以上で、今や270万人以上の患者の治療に寄与しています。
このバイオデザインの根幹にあるデザイン思考とは、問題解決に向けた従来の分析思考(カイゼン思考)と異なり、プロセス自体や新しい価値を生み出すことを本質とした課題解決のための設計方法で、目的を設定してそのための攻略方法、戦略を立てていくやりかたではなく、顧客を観察し、ニーズを理解して新たな価値を生み出す思考法になります。

プロセスとしては、

1)注意深く観察し、出来るだけ多くの問題点をピックアップし
2)その問題点を吟味し問題の本質がどこにあるかを見極め、
3)可能な限り多くの解決法を考察し、
4)その中からいくつかのアイデアを抽出して研ぎすます
5)そのアイデアを検証し試作する(プロトタイプの作成)
6)試作品のテストを実施してフィードバックを得てブラッシュアップする

になります。

バイオデザインの取り掛かりとしては、最初の問題点の特定が重要なポイントで、チームは臨床現場に2か月ほど張りつき医療現場を様々な視点から観察したうえで200項目以上のニーズをリストアップします。これを何度も議論をかさねることで解決策を創出していきますが、対象となる患者、ニーズに対してアウトカムをどう評価するかまで明確に定義したうえで個別のニーズについては市場規模や患者や医療従事者へのインパクトなども調査、評価した上でそれらをスコア化(可視化)し最終的に4つほどにふるい分けをしていくことになります。
一般的に、ベンチャー企業は10社中1社しか残らないとされています。しかし、バイオデザインを取り入れて起業したケースでは成功確率が高くなっています(61社中でM&Aまで持っていったのが11社(M&Aまでの中央値が5年ほど)で上市まで進んだのが2社)。

社会貢献の観点からも成功した例として発展途上国の新生児を救う保温器「Embrace」の例があります。
現在、約1500万人の早産児と低体重児が生まれておりそのうち100万人ほどが低体温症のために生後24時間以内に死亡する実態がありますが、体温を保つための保育器は1台当たり2万ドル(200万円)もしていたことから開発途上国では導入が中々進まない問題がありました。そのために安価な(2万円)保育器の製作について検討が行われましたが、実際には安価な保育器を導入しても実際に使用される例が顕著に増大しませんでした。なぜなら、低体温症で死亡する新生児の多くが都市部ではなく医療機関から離れた農村部や郊外に多かったからです。自宅分娩で使用できる装置という観点が重要でした。誰の何を解決したいのかという視点で作られたものが、実際に使われるためには重要である事例であったと思います。
一方で失敗しがちな例として「イノベーションのジレンマ」を紹介します。エンジニアは常に改善を思考していくために持続的なイノベーションの進化が顧客の求めている性能ニーズを超えて行き、この両者の乖離が大きくなってしまう点で、顧客目線での開発を置き去りにしてしまうことによるリスクが増大します。製品開発に必要な視点は人がなぜその製品やサービスを購入して製品をどう使うのかにあり、人間の生活を中心とした考え方が重要です。
私たちを取り巻く環境はAIやビッグデータの活用といった技術革新や、グローバル化にともなう人の流れや高齢化、新興市場の都市化といった人口統計学的属性の変化、技術革新や社会情勢にともなう行動様式の変化など加速度的に進んでいます。課題解決と価値創出のプロセスはより重要なものになると思います。

パネルディスカッション:「未来をつくる人になろう」

司会進行:吉見靖男・芝浦工業大学工学部応用化学科教授
パネラー:西尾博道(M1)、本村彩香(M1)、五十嵐優翔(B4)

※詳細は学生委員会HPに掲載予定の記事を参照ください。

  • 講演を受けて起業に対する意識は

演者からは、「年齢を重ねて考えが変化した。就職当時はバブルで、企業に就職するのが既定路線で、学生だった当時は、起業など想定していなかった。」と。
現役学生からは、「演者の話を聞いて、一般企業の就職を考えているが将来的に環境変化や共同作業する人たちとの出会いのチャンスがあれば多様性が生かせる時代にもなりベンチャーも選択肢になると思う。」とのコメントがありました。

  • デザイン思考について

日本人が得意なところは「戦略思考」だと思う。一つのパイを取りに行く戦略的勝ち抜きのための一定のセオリーに基づいた行動など、日本人は実直に対応していける能力を発揮している様に思います。
「改善思考」については課題解決について検討するプロセスとしてはデザイン思考にも通じる部分があるもののPDCAサイクルを回して現在ある課題を解決してクオリティを高めていく点では、「現在」にフォーカスしたもので、デザイン思考は今ある課題を分析検討してこれからに活かす未来志向の考え方になります。
大学の授業では思考プロセスについて詳細に教えてもらう機会がないかも知れませんが、研究室生活で自分自身が従事している研究の最終的な目的や成果物がどの様に社会で活かされるかを考えながら研究することも大切だと思います。
アントレプレナーシップ教育も大学で取り入れられ始めています。テクノロジープッシュに偏らないように、前向きに起業家精神も身につけてほしいです。

  • 今の普通が将来的な普通ではない

ビジネスの環境は激変しています。現在おこなっている研究開発はそれが結実する頃には既に時代遅れになっているケースもあるので、「未来にこのような状況だったらいいな」といった変化を見据えて将来を考えるのがポイントだと思います。社会環境は自分で変えられるものではないため、起業してから環境変化を意識するようになりました。ベンチャーを立ち上げるとキャッシュフローも自分自身で考えるようになります。中長期的な戦略は短期的なキャッシュフローの影響も受けるため投資のタイミングや成功確率の見極めも考慮する必要があります。これらを解決するには一人の力では出来ないため、チームで動かして行く必要があります。
環境変化の見極めの重要性について、外資系のフィルムメーカーの例を紹介します。その会社はデジタル化の波がくることを予想して他社に先行してデジタルカメラを開発していました。しかし、フィルム市場でマーケットリーダーだったため、自社のコアテクノロジーに固執し、新規技術を封印してしまいました。戦略思考にフォーカスした結果として社会動向についていけなくなったのです。(イノベーションのジレンマの一例)。
大企業がベンチャー企業を買収する際にdue diligenceを実施します。その際には、知的財産がどれくらいあるかという点も重視します。ベンチャーの価値を高めるために、全方向的な視点での考慮と資金援助は不可欠ですが、それをアクセレレートさせるインキュベーターのパワーの必要性を認識しています。自分が今起業してモチベーションが維持できている理由としては、自分の好きなことをやっているという意識と、社会的環境は変えられないがプロセスは変えられるという意識がポジティブに働いているように思います。

質疑応答

Q1 日本の医療機器メーカーが世界上位に入るためには、環境含め様々な課題があると考えますが、その中でも日本企業の強みについて、ご意見頂ければ幸いです。

A1 日本企業もオープンイノベーションに舵を切っているように思います。M&Aや他社で切り離しをされた部門の買収なども進んでいるように思います。新規事業については従来の事業形態からは切り離して考えていく必要があります。品質など日本人の真面目な部分や協調性など日本の強みに成り得る部分かも知れません。

Q2 様々な人や情報に触れることで問題を発見したり、知識・考えを広げていったりすると思うのですが、それらをうまく整理する方法等、ご教示願えませんでしょうか。

A2 他の人の話は積極的に聞こうと考えています。自分自身が知らない分野の話はそれ自体が新しい気付きですし積極的に他の人との交流をするように努めています。「知の深化」と「知の探索」の両方がイノベーションには必要と言われていますが、探索にはコミュニケーションが必須であるので一つのコミュニケーションで一つの学びがあることを意識づけしています。

Q3 アカデミアの方々は論文を数多く出したいと考え、産業は儲けることを第一に考える。アカデミアはコストのことをあまり意識しないが、産業はコストが重要課題になってきますがこの相違をどう解消しますか。

A3 学術で考えることと産業のプロセスは全く違うのでその隙間を埋める必要がありインキュベーターにその役割が課せられているように思います。調整を適切に実施していくにはそれぞれでの経験が双方の立場を理解する上で重要だったと思います。

質疑応答後、恩師である酒井清孝名誉教授からご挨拶を頂きました。

酒井名誉教授からのご挨拶:

酒井清孝先生の挨拶

医療機器の開発において医工連携は重要で米国では医学部のスタッフも工学部など他学部から進んだ方も多いため連携は進みやすいが日本では厳しい面もあったことを踏まえて演者へ熱いエールが送られました。

本講演会の最後に、早稲田応用化学会の濱逸夫会長からご挨拶を頂きました。

濱会長からの閉会のご挨拶:

濱会長の挨拶

本講演について演者、関係者への謝辞とともに自社戦略でもデザイン思考について検討していた経験についてコメントを頂き、また学生向けメッセージとして多くの方とコミュニケーションをとって知見を広めて知識の探索も深めていただきたいとのエールも頂きました。

 

――― 以上 ―――

(文責;交流委員会)