早稲田応用化学会の設立五十周年の記念事業の一つとして、昭和47年(西暦1972年)に「早稲田大学応用化学半世紀の回顧」が発行されました。応化会事務局に保管されていた本回顧録を広報委員会でPDF化致しました。
本回顧録では理工学科の開設と応用化学科の誕生のいきさつや、教員、OB、学生との交流と教室・学生への後援を目的として、応用化学会が設立されたことの理解を深めると共に、本年百周年を迎える応用化学会の基盤を顧みることができると思われます(一部、本文引用)。
ぜひご一読ください。
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卒業生へのインタビュー(第4回)
元第一三共株式会社代表取締役、元早稲田大学創造理工学部客員教授 荻田健さん
2022年1月15日:オンラインにて開催。
1973年 早稲田大学理工学部応用化学科卒
1980年 東大農学系研究科博士課程修了(応用微生物研究所)
三共株式会社入社
研究所で医薬の研究(約20年)
開発部門で医薬の開発(約10年)
第一三共株式会社(2007年、第一製薬と合併)
取締役 専務執行役員(2009年~2016年)
早稲田大学創造理工学研究科客員教授 (2017年-2021年)
今回は研究からグローバルプロジェクトマネジメント、経営に至るまで幅広い経験に基づくお話を伺った後Q&Aに答えて頂く流れでのインタビュー記事になります。荻田さんから学生・若手へ以下の内容での話がありました。
- 製薬会社の主力製品について(ドラッグストアで購入できる一般医薬品と、医療用医薬品について
- 新規医療用医薬品を世に出す:探索ターゲットから臨床試験以外の研究分野まで
- 新薬ビジネスの特徴:研究開発費と研究の成功確率について
- 荻田さん自身のキャリアパスについて(研究~プロジェクトマネジメント~グローバル変革への対応~経営戦略(取締役専務執行役員としてのタスク)
- 製薬企業のおかれた状況
新薬創生の難しさ、複雑化
多様な経営戦略 - これからの時代と経営戦略、社会との持続的成長とご自身の経験としてのこれまでの社会変化への重ね合わせからの振り返り
- これから社会に踏み出す若き才能に向けてのエール
荻田さんからのメッセージを受けてのディスカッションでは以下のようなやりとりがありました。
-Be Professionalについてどうすればその領域に近づけるとことが出来るのか教えてください
(荻田さん):皆さんは学部生あるいは大学院生として既にProfessionalな仕事に触れていると思いますが、自分の好きなことを一生懸命に取り組んでいるうちにその意識づけが出来てくる様に思います。会社での研究におけるプロ意識もその延長線上にあると思います。
一朝一夕には行きませんが、繰り返し仕事に取り組んでいくうちに、この領域なら自分が強みを発揮でき、他の人にはそう簡単に負けないという意識が自然に持てるようになりました。そうなるとしめたものだと思います。
-自分がこれなら(社会人として)やっていけると自信を持たれたきっかけなどありますでしょうか。
(荻田さん):私の専門は狭い研究領域でしたが、その仕事はほかの誰にも負けないという意識は自分自身の考え方にプラスに働きましたし、学会での受賞経験は外的な評価という点からも自分に勇気を与えました。ポジティブな経験を積み重ねていくことが重要です。仕事のの目標設定を必要以上に高く設定する必要はないと思います。ハードルをクリアーするたびに自分自身の仕事に自信が持てるようになりました。
-大学生生活もまだ十分にいろいろなことが経験できていると自覚できる立ち位置にいません。様々な経験をこれまでされてきている中で経営者の視点からアドバイスを頂けますでしょうか。
(荻田さん):私の学生時代はキャリア形成に関する考え方もはっきりしていませんでしたが、現在では環境も大きく変わり、積極的に自分のキャリアを積上げていくことは重要だと思います。たとえば会社での所属部署が変わるようなとき、それはその後の自分の進むべき方向に役立つかどうかはその時にはわからないかも知れませんが、広く経験されることにより将来に生かされる事案は多いと思います。
-医薬品の研究開発で成功確率が低いことに驚きました。日々の研究において自分自身もうまくいかないことが多いですがその中でもモチベーションを維持できる意識づけについて教えてください
(荻田さん):私自身は研究していること自体が非常に面白いと感じていました。研究成果も重要ですが、その研究に興味をもって没頭することで探求心は研ぎ澄まされて行ったように思います。また、同僚との議論の中で目的意識を共有、確認することも大切でした。。「うまくいかない」のではなく、その結果も含めて研究は興味を持って考えていくことが一つのヒントになるのではないでしょうか。
-マテリアル・インフォマティックスのようにビッグデータを扱うことで研究環境も変わるのでしょうか(例えば研究室で一人がAIを駆使して研究を進めていくような環境になるのでしょうか)
(荻田さん):この質問は私にはちょっと難しい質問です。なぜなら、私の時代にはビックデータを扱う研究環境はなかったからです。従って一般論としてしかお答えできませんが、IT革命が進む中での化学との付き合い方も当然変わってくると思います。例えば今から5年前に現在の姿が想像できたかといえばそれはまた違った成果として現在があるわけです。少なくともこれまで以上に新しいことにポジティブに取り組んでいくという姿勢が必要だと思います。何が正解かは私にもわかりませんが前向きに考える姿勢が重要だと思います。
-研究を離れてマネジメントに転身された際に、研究者としての道を続けたいと考えましたか
(荻田さん):研究もある程度キャリアが長くなってくると研究自体もスペシャリストというよりは全体を見渡すような役割に段々と変わってきます。その時点ではジェネラリストとしての意識づけも自分自身の中でありましたのでマネジメントへの移行はしやすかったと思います。部下が多くなってくると人間関係などにも気を配ることが多く、それがグローバルになるとさらに考え方の違いなどにも考慮しながらマネジメントするエネルギーが要求され、自分自身から積極的に飛び込んで行くようにしました。
(写真:社内理科系社員による稲門会)
インタビュー参加者:
学生委員会:高田こはる(B4)、吉田七海(B4)、横尾拓哉(B3)、原田拳汰(B2)、吉村尚(B2)、
春原晴香(67期)、加来恭彦(39期、広報委員会)
第26回 先生への突撃インタビュー (梅野太輔教授)
「先生への突撃インタビュー」は2021年度に新たに応用化学科にお迎えした梅野 太輔教授にご登場をお願いし, 最終回といたしました第25回より再開いたします。今回は学生2名, OB 1名の組み合わせで対面でのインタビューを行い, 応化会の本来の姿である, 先生・学生・OBの3者によるインタビュー記事の作成を目指しました。
梅野先生にはインタビューのご快諾並びに入念なご準備・熱のこもったお話を頂きましたこと, この場を借りて御礼申し上げます。
・1994年 九州大学 工学部 応用化学科卒業
・1998年 九州大学大学院 工学研究科 分子システム工学専攻 博士課程修了・博士(工学)
・1999年 カリフォルニア工科大学 化学工学科 博士研究員 (Frances H. Arnold Group)
・2003年 ワシントン大学シアトル校 病理学科 シニアフェロー (Larry A. Loeb Group)
・2005年 千葉大学 工学部 共生応用化学科 助教授
・2019年 千葉大学 工学部 共生応用化学科 教授
・2021年 早稲田大学 先進理工学部 応用化学科 教授
Q. 先生が研究に本格的に取り組み始めたきっかけはなんですか?
~ かっこいい数学者と出会って化学を目指した? ~
❶ 化学科への道
子供の頃は, 社会も宇宙もひっくるめ, この世界のすべてに興味がありました。だから進むべき道は, むしろ哲学や社会学にあるのかしら, と思っていました。中学・高校時代は6年間, 学校の授業はほとんど聞かず, ただひたすら読書でした。しかし, 大学受験シーズンを前にして自分の5年間を総括すると, じつに見窄らしい。読書によって自分が世界を知れたとは全く思えませんでした。そして勉強を初めて見ると, 教科書や入試対策問題でさえ, 私の世界(宇宙)の理解が着実に深まってゆく実感がある。自分はなんと遠回りをしたものだと… そして世界の探針として, 科学とは, なんと優れた手法なのだろうと…。
高2の秋, 運命的な出会いがありました。その日, 九州の片隅にある私の前に, 前触れもなく, どえらい学者がやってきたのです。この先生は, 米国ミシガン大学教授の菊池昇先生, のちにトヨタの研究所長に就任する高名な数学者です。この奇蹟をしかけたのは, 私の地元福岡に九大の客員研究者として滞在していたJohn Bolanderさん(現カリフォルニア大学土木工学科教授)。あるきっかけで知り合い, 私のオートバイの師匠になった人です。この人自身も, 研究者という生き方を見せてくれ, 高校生の私の理系帰依を後押しした恩人です。私の人生によき影響をもたらすはずだと, 自分の尊敬する学者を半強引に連れてきちゃった。いきなり「見知らぬ若者にためになる話をしろ」と言われた菊池先生はおおいに困惑されたでしょうが, Bolanderさんの熱意に押され, 予備校時代から大学時代, 渡米して成功してゆくまでの波乱万丈の物語を, 一気に語ってくれました。私が追体験させてもらったその半生は, 爽やか, 軽やか, 冒険に満ちたものでした。自分が持つカビくさい学者像は吹っ飛び, 僕も学者になりたい!と。いや正確には, キクチノボルになりたい!…これが私の人生の目標になりました。
なぜ化学を選んだか。それも菊池先生の影響です。その日, 「将来の進路は決めてるの?」と聞かれた私は, 「環境問題の解決みたいなことに貢献できればいいと思って…」とナイーブな言葉をモゴモゴと…。菊池先生は, 少し黙って, 首を振って言いました。「環境問題も人口問題も食料問題も, それは, 解くべき課題であって, 学問の名前ではない。それらの問題の解決のために, 君はどんなexpertiseを提供するのか?」と。まごついている私に, 彼は助け舟を出します。「数学, 物理, 化学, の3つのどれかひとつを極めなさい。もちろん, どれを選んでも正解!」。なるほど, それなら僕にも選べる。数学・物理より, よりダイレクトに世界とつながっている(気がした)化学に決定です。ここは雑な直感ですが, 菊池先生が確約した正解のひとつなので, 信者に迷いなどありません。
❷ アカデミアへの道
分野より先に, まず大学人になることを決めていた私ですが, 卒論研究をすすめるにつけ, アカデミアは研究者にとっての「最高の場所」だと納得を深めてゆきました。アカデミアの最大の魅力は, 理科の民としての「行の純度」にあります。経済合理性がなくても, エネルギー負荷が高すぎても, 同時代の同業者が価値を認めてくれなくても, 応用可能性に明確な展望がなくても…自分が「価値ある」と認定すれば, その研究を続けることが許されます。完全なる選択の自由! …これは塀の外(社会)では, なかなか許されない自由ではないでしょうか?
応化を選んだ学生の中には, 世の中に直接役立つ化学研究に興味ある人が多いかもしれません。しかし考えてみて欲しい。応用分野でも, 本当に破壊的発展やブレイクスルーは, 煮詰まった業界の内ではなく, 予期せぬ方向から突然やってくるものです。そしてその「事件」の萌芽は, 基礎研究の所産であることが圧倒的に多いのです。化学分野ならば, 「みたことない」「きいたことない」現象の発見, 「いまは存在しない」分子機能が生み出された瞬間。しばしば, 周辺分野に破壊的な解決をもたらします。この「突然」を半ば必然的に生み出すために, 物質科学の辺境を探検するのが僕らアカデミアンなのです。だれも歩んだことのない「ぼくたち」「わたしたち」だけの冒険なのだから, 計画・実行する段階から楽しいし, 結果がどうころんでも, 無条件に楽しい。こんな業務で給料もらえるなんて, サイコーだとは思いませんか?世の中に役立ちたいからといって, アカデミアを選択肢に入れないのは, 理系人としてもろもろ矛盾しています。製品よりも産業を創出しようとする厨二病を, 子供扱い(食わず嫌い)するのは, とてもおすすめできません。
❸ 本格的に研究を始めたのは?
卒論でもらった最初の研究テーマは, 二重鎖DNAに合成ポリマーを共有結合的に固定し, 面白い性質をもつ材料を創ろう, というものでした。DNAの化学研究といえば, 遺伝情報保存の本質, 塩基対形成の超分子化学だと思います。しかし私の指導者(前田瑞夫先生)は, 縦横比が大きく剛直, そして高密度に電荷を帯びた電解質高分子としてのDNAの物性に着目し, その本質を突けば, まだ未整理な重要な現象が見つかると直感しておられたようです。その直感の正しさを私が実証することはありませんでしたが(残念), 私の直属の後輩だった森 健さん(現九大准教授)によって証明されました。そして, その成果が裏書きした確信をもとに, 先生は「ソフト界面の化学」という学術領域を創始した。卒業後, 分野をタンパク質工学に転向した私ですが, 私のタンパク質工学は「孤立し進化する特殊なソフト界面」の設計学と見立てて実践していることを考えると, 結局のところ, その物質観, 研究観はしっかり伝承していることになる。三つ子の魂なんとやら, ってやつです。
博士号を取得後, 米国に移った私は, 進化分子工学を始めました。博士研究員は, 何か新しいことを始めることが求められます。高分子材料学で学位を得た私ですので, おそらくは, 高分子化・高分子分解にかかわる酵素の進化分子工学などが「落とし所」だったのでしょう。しかし私は, それこそが, 一番やっちゃいかんことだと, 強く感じていました。自分のバックグラウンドを留学先で直接活かせれば, 短期間に成果は出ますが, その代償として, それは私が心から大事だと思えるテーマ設定には足枷になる。自分を進化工学という「技術」の輸入・転売業者に貶めないためには, 自分が学生時代に修得した技術や経験はいったん全部捨てようと。テーマ設定において流用してよいのは, 培った物質観・感性だけに限定しようと。
結局私は, 5年近くもかけて, 納得ゆく自分の行くべき道をじっくり設定することができました(自己責任において!)。この時期が一番キツく, そして一番楽しかった。そしてこの段階で私の学者としてのゆく道は明快になったのです。以後研究者としてのアイデンティティに悩むことは一切ありません。菊池先生にもういちど「何のexpertiseを提供するの?」聞かれたら, 「化学です」と即答するでしょう。そして「何に熱中しているの?」と聞かれれば, 「分子の協働機能の進化デザイン学です」とこたえるでしょう。ちなみに, これが自分の人生を成功に導く正解だったかなんて, どうでもいいことです。自分のちっぽけな人生を賭けるに足る学問であると, 自分自身が確信していることが大事なのだと思います。この確信が研究者に安定した幸福とモチベーションを与え, この職業を全うする力となる。論文数も予算獲得額も, ポストとるためには大事だけど, 場渡的に成果を貪った人は, ポストをとったあとも自分探しで苦しむ。大事なものは, 自分を賭けるべきものとの出会いです。トレーニング期間は十分にとること。これは, アカデミアにおける目指す若き研究者に私が進言したい, 唯一のメッセージがこれかもしれません。
Q. 技術的内容で先生がポイントと考えておられる点はなんですか?
~ 生物の能力(化学)の拡張, 生物の進化プロセスのデザイン~
自分はいま, 合成生物学, 進化分子工学という分野の研究者として研究室を運営しています。 合成生物学(Synthetic Biology)は, 生物に化成品やバイオ燃料をつくらせたり, 環境保全や診断を行わせたり, 情報記憶や演算をさせたりすることを目標に, 細胞を遺伝子レベルで再デザインする学問です。環境問題, 食料問題, 温暖化問題などの解決の切り札として, 大きな期待が寄せられている分野です。そして合成生物学は, 生物学の新しいアプローチとしても注目を浴びています。20世記生物学は, 現存する生物の最大公約数をとることによって, 「生命とは何か」という問いにこたえてきました。そして21世紀, 合成生物学たちの「生物をどこまで機能拡張できるか」という挑戦は, 生命のありえるかたちを探索する, 新しい生命科学の方法論と認識され始めている。工学部だからこそできる学術っていうのも, あるのです。産業にも貢献したいけど, 基礎科学にも後ろ髪ひかれる…そういうよくばりな人には, とても向いた分野だと思います。
もう一つの専門, 進化分子工学(Directed evolution)も, 同じ魅力を持っています。この分野では, 自然界にある酵素・タンパク質などを実験室内で超高速に人工進化させ, その性能改良や, 新機能創出を目指します。この技術はすでにたくさんのスーパー酵素を世に提供していますが, いまやその対象を, 生合成経路や情報処理・演算回路, 分子モータやエネルギー変換デバイスにまで広げつつあります。その集大成として目指されるべき未来は, 「分子の自動進化装置」です。ほしい分子機能をコンピュータに打ち込めば, それを実現する分子や分子システムを吐き出してくれる「機能のタイプライター」のようなもの。ドラえもんみたいだって?いやいや, 全く根拠があるのです。生体高分子(DNAやタンパク質など)の最大の特徴は, その機能と構造が, すべて文字列として符号化されている点にある。そしていったん文字列化した高分子機能は, 人為的に進化させ, 様々な機能をそこから生み出せることが, すでにわかっています。あとは, 粛々と技術課題をつめてゆき, , , , , ドラえもんに納品するだけです。
Q. 先生の研究理念を教えてください。
~競争ではなく冒険性を大事にしたい~
最近は競争が激しく, 世界700万人の研究者たちが, 生馬の目を射るような先陣争いを日々繰り広げています。頭脳と腕を鍛えあげた究極の戦士たちを尊敬はしますが, 英勇的努力をして初めて「一番槍」が立つ世界に, どれほどの「理科の徒」が憧れるでしょうか。梅野研では, アカデミア研究は, 「競争」ではなく「協働」によって, 僕らの努力は同業者に勝つためではなく, 課題の解決のために使われるべきだと考えます。そもそも「誰よりも早く, うまくやり遂げた!」という報告は, 個人の能力証明, 「匠の技」の実証ではあっても, 新たな工学技術の誕生とは質的にちがう。むしろ「素人の僕らにさえ, それができちゃった?」くらいのところに, 破壊的技術の萌芽があるのではないか。
研究とは, とどのつまり冒険です。我々が最大価値をおくのは, その冒険としての「ワクワク度」です。一年卒論研究をがんばって, なにかを明らかにしたとして。その「明らかできた」ことが, どれほど僕らにとって, いや人類にとって, 「Aha!体験」なんだろう?これを問わねばならない。「やっぱり(仮説通り)そうなったか!」も嬉しいですが, 「なぬぅ?そういうことなの?」というびっくりエンディングの余地が見込めるとき, 私たちのなすべきテーマが1つできましたね, ということになります。
Q. これからの研究の展望を聞かせてください。
~ Encoding Chemistry, そしてMolecular Sociology~
1. 化学技術のDNA翻訳:たとえば有機合成化学は, 生命系(organisms)の営む精緻な化学を学び再現するための学問として生まれました。しかし200年のうちに有機化学は大発展し, すでに多くの面において, 自然界を追い越しています。レアメタルの利用, 各種カップリング反応, 保護・脱保護反応, クリック反応など, 化学者が使う技の多くを, 自然界は知りません。私たちは, これら人類だけがもつ化学技術を, 生物界へ技術移転することに興味を持っています。具体的には, 有機, 無機化学者が発明したさまざまなケミストリーを再現できるタンパク質を創り出す。生体高分子は, 遺伝子文字列としてエンコードされていますので, どの生命体に導入しても, その機能はちゃんと働く。合成生物学者の手にかかると, ケミストリーは, 人種どころか生物種を超え, カビもバクテリアも植物もヒトも隔てずglobalにシェアされる共通知になります。これってちょっとロマンチックじゃないですか?
2. 分子社会学へ:僕らが生物に作らせたいもの, やらせたいこと, は, 化学的には, たかだか数ダースくらいの素過程で事足りることばかりです。しかしその数ダースの化学反応は, 数千数万の酵素が共存する「分子のるつぼ」の中で, 実現させねばならない。我々が導入する分子たちに, 細胞内の先住民たちとコンフリクトをおこさずに正しく協働させるのは, 極めて困難です。社会科学分野では150年前に社会学が創設され, 社会の維持・発展に大きな役割を果たしてきた。無数の分子がつくる複雑な分子「社会」である生物の再デザインを目指す生物工学は, いわば分子の「社会工学」といえます。凝縮系, 非平衡系, 超並列多成分系におかれた分子「群」の協働・共同形態のデザイン学もまた, 僕らが挑戦すべきChemistryのフロンティアだろうと考えています。
Q. 応用化学会の活動への期待を聞かせてください。
~ 日本産業界に不足する基礎科学の推奨・育成の場として ~
日本の産業界に不足しているのは, 基礎科学に対するリスペクトだと思うことが多々あります。カリフォルニア工科大で研究員をしていた時分, 近所の宇宙論研究者が, 民間の経済・金融研究所からしばしば講演依頼を受けると伺って, 新鮮に驚いたことがあります。金融に超ひも理論は不要ですが, 聞く耳さえあれば, 役立つインスピレーションはあるのでしょう。直接関係がみとめられない分野の言葉にも耳を傾ける文化こそが, イノベーションのゆりかごとなり, 破壊的創造のもとになるのではないかと。
ゆえに我が国の化学産業界も, 大学を, 単なる即戦力人材のリソースとして見るのではなく, 破壊的な技術革新やゲームチェンジに必要なインスピレーションの発生源として, じっくり守り育ててほしい。盃を交わした1万の構成員を擁する, 日本最大勢力「応化会」は, その「脱日本型」産学協働のロールとなりえるのではないでしょうか。
Q. 100周年を迎えた応用化学科についてコメントを聞かせてください
~ 産学で化学者の未来課題をともに模索できたら ~
応化会のスケールメリットを生かして, たんなる相互扶助組織, 同窓会の域を超えた, 発展的なエコシステムとしてのあり様を模索できたらステキだと思います。変貌しゆく産業界で活躍できる化学人材を育てるため, 早稲田応化はどう変わってゆくべきなのか。企業サイドから学生に働きかけるとき, いまの企業人の有り体をそのまま見せることが, 果たして良いことかどうかも疑問。同窓という特殊なconnectivityをもった応化会だからこそ, Industrial/ Academic Chemistsの抱く問題意識(とくに自己に対するもの)をもとに, いまから必要とされる, 育つべき未来人像を模索すべきかもしれません。
Q. 21世紀を担う皆さんへのメッセージをお願いします。
~ 不確実な未来を歓迎できる冒険的精神を持って欲しい ~
21世紀はとんでもない世紀になりました。温暖化や食料/水/エネルギー不足など, 科学者に託された課題は難題ばかり。さらには, この数年で, パンデミック問題や紛争問題が追加されてしまった。本当に我々科学者は, これらすべてを克服できるのか。みんな未来に大きな不安を抱いている。
しかし, 十分な基礎学力を身につけ, 問題解決の成功体験を積んだ若者は, 不安にいたずらに身を竦めることはしない。難題にぶつかっても, まだ希望が残っていることを正しく理解し, 正しく努力をし続ける。まわりのみんなが不安で脳停止に陥っても, 最後の最後まで努力できる。こういう人たちを, リーダー(勇者)というのではないか。究極の知恵とは, 「希望をみつけるちから」なんだと思います。そしてそれを持つひとこそ, 早稲田が作るべき人物じゃないか。
例えば皆さんの卒業研究。先生の言った通りの「いい」実験結果がでるまで, ずっと不安だろうか?ついに思い通りの結果が出たとき初めて, ほっとした? それじゃ, じきに研究が嫌いになるし, その他あらゆる知的生産活動も, 苦痛になってしまうだろう。なぜなら, そういう気持ちで研究している人たちは, 価値創造の可能性よりも, 成果の所有と安心に心を奪われているからだ。そりゃ, 誰だって成果は出したいし, 褒められたい。しかし究極には, 価値ある目標と仮説を持つことが一番大事。ワクワクしながらその検証過程を楽しむひとに, 負けはないのだから。
未来創造が僕らの本分。未来の不確定さ(uncertainty)を見たとき, ただそれを不安がるのではなく, 冒険要素(volatility)を見出す人になってほしい。これができるようになった人にとって, 難題山積のいまの時代は, まさしく祝福とチャンスに満ちた「大冒険時代」です。
参考情報(教員・研究紹介):
https://www.waseda-applchem.jp/ja/professors/umeno/
インタビュアー&文責: 疋野拓也 (博士1年), 原田拳汰(学部2年), 真野陽子(新47回)
NACs企画:企業が求める人材像を超えて~次世代共創に向けてのキャリア戦略を考える~(活動報告)
2022年12月3日(土)に「企業が求める人材像を超えて~次世代共創に向けてのキャリア戦略を考える~」が開催されました。
NACs(若手会)発足当初より若手OB/OG向けのキャリアに関する企画の需要が高く、講師として市場洋之さん(豊倉研究室1994年修了、新42回)をお呼びし、第1弾NACsキャリアイベントの開催に至りました。
市場さんは国家資格であるキャリアコンサルタントを取得され、企業でのキャリア支援に従事されています。この度応化会若手OB/OGを対象としてキャリア戦略を考える会をアレンジいただきました。
様々なキャリア戦略の理論の紹介や、ワークショップでの自己理解、自己開示を通じ、キャリアのモヤモヤの整理方法、仕事への向き合い方について学ぶことができました。
理論では、様々な研究者のキャリア戦略に関する理論が紹介されました。ワークショップ、ケーススタディでは年代の近い3-4名のグループごとに、個人ワークでの結果共有や意見交換などが行われました。
グループのメンバーに対して共有することで、言語化の過程で、モヤモヤとした自身のキャリアへの考えの整理が進みました。加えて、フィードバックにより自身がうまく言語化できなかった箇所や気づかなかったことも指摘され新たな発見がありました。
市場さんのお話の中で非常に心に残った言葉が、「視点を変えて物事を見てみる」、「キャリアは一人で悩まない」です。
一つの事象に対しても、見方を変えることでポジティブにもネガティブにも捉えることができます。例えば、「つまらない」と感じる仕事であっても、「この仕事から何か今後に役立つ技術を身に付けよう」、「今持っているスキルでどのように効率的に終わらせようか」といった、視点を変えることの重要性を学びました。
「キャリアは一人で悩まない」については、積極的にキャリアに関するモヤモヤを、親しい仲間や先輩と共有し議論することが悩みを解決していく大きな手段であると感じました。また、雑談や飲み会といったコミュニケーションの機会も大事であると再認識しました。
本企画は若手OB/OGを対象とした企画でありましたが、学生参加者も多く、社会人、学生共にキャリアへの関心は非常に高いことがわかりました。
若手OB/OGのアンケート結果では、「自分自身をメンテナンスするとてもいい機会にもなりました」、「キャリアのモヤモヤの整理の仕方を学ぶことができました」などといった感想が多く、若手OB/OG自身のキャリアを見つめるよい機会となりました。
また学生からは、「学生のうちからキャリアについて考えることができる、貴重な機会だった」、「今後も様々な世代の方と交流して視野を広げていきたい」といった感想がありました。
本イベントを通じて、近い境遇の早稲田の仲間と集まれ、共に語り合える環境が早稲田応化会の財産であると再認識しました。NACs(若手会)として今後もキャリア企画の拡充に努めていきたいと感じました。
追伸、国家資格キャリアコンサルタントの方、事務局まで連絡をお待ちしております。
(文責:政本)
第9回早稲田応用化学会シニア会開催報告
現在早稲田応用化学会シニア会は、早稲田応用化学会活動に参加してきたシニアの対象を(70歳以上)として開催致しております。第9回シニア会は新宿中村屋Grannaで12月17日(土)、25名が参加して開催されました。
コロナ感染の影響で実に3年間以上開催が見送られてきました。本年に入り世話人会で感染状況を注意深く見守りながら開催に向けた準備をして参りました。応用化学会100周年も来年に控え、第7波が終息した時点で開催可能と判断し会員に案内を致しました。直前で若干のご出席ご辞退はありましたが、25名が参集することが出来ました。大学関係者として、竜田邦明栄誉フェロー及び応用化学会元会長の西出宏之特任研究教授(新20)がお忙しい中、駆けつけて下さいました。
世話人でもある下井将惟氏(新13)が司会を勤めさせて頂きました。先ず第8回懇親会(2019年10月6日)以降、この3ヵ年でご逝去された上田忠雄氏(旧32)、太田昭氏(旧25)、坪井彦忠氏(新15)、見並勝佳氏(新17)、中岡敏雄氏(旧17)、中川文博氏(新07)のご冥福をお祈りしシニア会として1分間の黙祷をさせて頂きました。
最初に河村宏氏(新9)の乾杯ご発声で懇親会は開始されました。ご挨拶では、本会の前身のグランドシニア会や本会シニア会発足の経緯をご紹介頂きました。グランドシニア会は20数回開催されたとの事で参加者一同認識を新たに致しました。そしてこのシニア会が末永く開催されることを祈念されました。
その後新たに会員となられました井上健氏(新19)、津田信吾氏(新22)よりご挨拶を頂きました。同じく新会員の黒田一幸先生にはご出席は叶いませんでしたが、ストックホルムで日本と北欧・バルト諸国との国際学術交流の発展にご努力されているというメッセージが案内されました。
その後食事やお酒を楽しみながら会員同士の歓談が各テーブルで盛り上がりました。3年間の自粛生活で限られた活動しか出来なかったので、応化役員として注力を傾けた当時の活性化活動や当時の思いその当時行った奨学金募金活動等の話しが各テーブルで盛んに交わされていました。
ここで監事でもあり世話人でもある河野恭一氏(新14)より来年度の応化会100周年に関する案内がA41枚にまとめた資料とともにありました。100周年式典や応化会給付奨学金の次世代展開に関して簡潔にご説明され会員諸氏へ協力が依頼されました。元会長の西出宏之先生からも関連して補足のご説明も頂きました。
引き続き各テーブルでは歓談が盛んに行われました。食事が終わると席も移動して久し振りの再開を喜びまた新たな歓談が続きました。世話人会では、現在も現役バリバリでビジネス第一線でご活躍されている大矢毅一郎氏(新14)、大林秀仁氏(新17)、西出宏之氏(新20)、里見多一氏(新22)、宮坂勇一郎氏(新26)に近況のご紹介も頂く予定でしたが、各テーブルであまりにも話しがはずんでいるので割愛と致しました。
久し振りのこともあり直接の歓談が尽きることは有りませんでしたが、里見多一氏(新22)に里見奨学金や早稲田応用化学会への思いも触れた締めのご挨拶を頂きました。あっという間にお開きの時間を迎えてしまいましたが記念の総合写真を撮影し、100周年式典での再会を約して散会となりました。
シニア会はシニア同士の懇親をあたためる場となっておりますが、応用化学会の発展をあたたかく見守り、影ながら支援するコミュニティとして存続できればと考えております。引き続き、よろしくご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。
世話人:下井將惟(新13)、河野恭一(新14) 、河野善行(新25)
文責:世話役一同、写真:広報委員会 平中勇三郎(新14)
2022年 短信
新制卒業生(1回~10回)
●樋渡 章訓(昭和28年卒・新 3 回)
92才になりました。歩く速度が大分遅くなりましたが、毎朝 2 kmを40分で散歩しております。
●矢部 賢(昭和28年卒・新 3 回)
ご盛会を祈っております。
●杉田 米藏(昭和32年卒・新 7 回)
コロナ禍の一日も早い終息が待たれる昨今ですが、小生お陰様にて相変わらずです。尚、先般同期の中川文博氏のお逝去の訃報に接し、心よりお悔み申し上げると共に、ご冥福をお祈りします。
●安部 建治(昭和34年卒・新 9 回)
1964~66年化学品ビジネスに係わった米国の地で、今、大谷翔平が大活躍しているのをテレビで楽しんでいる。
応用化学の分野でCO 2 等を原料として化学製品、人口木材、人口植物(食物)を作る時代の到来を願っています。
新制卒業生(11回~20回)
●岡野 毅(昭和36年卒・新11回)
この 2 年、殆ど電車に乗ることもない生活、日常凡ミスが増えていますが、まずまず健康に過ごせています。ウクライナのことが心痛むばかりです。
●堀内 弘雄(昭和36年卒・新11回)
84才になって多くの友が彼岸へ。みやげ話に秋の応化祭には一度出かけてみたいものです。若い方の活躍がうれしいです。早大応化の発展を祈ります。
●井上 征四郎(昭和37年卒・新12回)
最近、身体のあちこちで小さな異常を感じますが、年相応の元気さは保っています。関西支部の活動に参加してます。
●加藤 匡紀(昭和43年卒・新18回)
家を新築して今引っ越しの最中です。飼い犬が最近死んだので、本当に一人きりで新居住まいです。でも元気です。
●柿野 滋(昭和44年卒・新19回)
里山生活を楽しみながら元気でやっております。
●原 宗一(昭和45年卒・新20回)
7 月に後期高齢者の仲間入り、記憶力、体力等それなりに衰えていますが、週に一度の陶芸と、ジムで水泳をして、なるべく身体を動かしています。
●福田 雅允(昭和45年卒・新20回)
卒業して50年、まだ60代のつもりで、この夏、北海道に 4 度目のバイクツーリングに行くべく、ワクワクしています。
●山本 浩一(昭和45年卒・新20回)
今年から後期高齢者ですが、週 5 日出社して化学品の輸入の仕事に精を出しおります。2021/10/ 1より顧問になりました。
新制卒業生(21回~30回)
●角 仁(昭和49年卒・新24回)
当方、日々囲碁ざんまい。博士課程(後期)の応援致したく、若干ですが寄付をさせて頂きます。
●植村 順一郎(昭和49年卒・新24回)
コロナで旅行も控え気味で、ゴルフと散歩の日々を送っています。
●馬場 健郎(昭和49年卒・新24回)
お世話様です。高橋研の皆さま、馬場健郎は他界いたしました。生前中は大変お世話になり感謝申し上げます。ありがとうございました。 馬場久子
●前田 哲郎(昭和50年卒・新25回)
YouTubeを見て、30年以上毎週続けている水泳のホームを改造しました。古希を越えても改善の余地があったとは。
●渡辺 明男(昭和51年卒・新26回)
退職しました。
●帯金 芳秀(昭和52年卒・新27回)
早稲田大学高等学院での化学の授業、他に渋谷区代々木中学校で理科の授業、放課後は三鷹市立第二中学校で卓球部の指導をしております。
●井上 和雄(昭和53年卒・新28回)
昨年2021年末退職いたしました。44年よくやったと勝手に思っています。この44年間早稲田を意識して勤務していた感があります。応化会の増々の発展を祈っております。
●吉田 利彦(昭和53年卒・新28回)
元気にしています。高齢者ですが幸いにもお仕事があり、毎日はりきってます。
●木村 賢一(昭和54年卒・新29回)
総会等の盛会を祈念します。親との共同生活を始めています。
●森本 聡(昭和55年卒・新30回)
再生医療製品の開発を行ってきましたが、定年となりコンサルタントを始めました。医薬品のライセンスをお手伝いします。
新制卒業生(31回~40回)
●小澤 喜久夫(昭和57年卒・新32回)
ISO規格の審査、食品安全の研修コース講師などをしています。多くの工場、施設におじゃましています。
●小岩 一郎(昭和57年卒・新32回)
2023年 4 月から表面工学学系が新設されます。そちらに移動します。
●相賀 浩嗣(昭和58年卒・新33回)
単身赴任を61才にして経験しています。
●前田 和哉(昭和59年卒・新34回)
まだ会津でタンタル粉末を作っています。(定年後 3 回目の契約です。)COVID-19、ロシアのウクライナ侵攻と世界が目まぐるしく動いているなか、何とかやっています。
●小林 昭仁(昭和60年卒・新35回)
新コロナの為殆ど在宅勤務です。60才を過ぎエキスパートエンジニアという肩書になりましたが、仕事は変わらず、化学物質のリサイクル法規対応業務を行っています。
●佐久間 雄一郎(昭和60年卒・新35回)
残り少ないサラリーマン生活を楽しんでいます。
●相田 冬樹(昭和61年卒・新36回)
元気で現役研究員としてがんばっています。
●松村 好章(昭和61年卒・新36回)
定年(10月)まで、あと半年を切りましたが、最後まで、頑張って会社に貢献していきたいと思います。
●田坂 東(昭和62年卒・新37回)
元・妻の急逝から 5 年以上、コロナ禍になって 2年以上が経ちました。良い事が無くても「健康に生きていることが重要」と最近は思えるようになりました。
●本田 淳(昭和63年卒・新38回)
アストラゼネカ製ワクチンの製造と供給で忙しくしてましたが、やっと落ち着いてきました。
●三田村 聡(昭和63年卒・新38回)
皆さまお元気でしょうか?令和 4 年 6 月 1 日より、消費者庁にて勤務することとなりました。私にとって第三の人生というべきスタートとなりますが、精一杯頑張ります。
●徳田 幸紀(平成 1 年卒・新39回)
今後のグローバル会社において研究開発力や技術力を支えていかれる学生や会員の皆様のご健康とご活躍をお祈り申し上げます。
●柳沢 真澄(平成 1 年卒・新39回)
会費の支払いがLINEpayとかPaypayなどのスマホ決済に対応していただけると有難いです。支払いにおけるハードルも下がると思います。
●蔵野 裕之(平成 2 年年卒・新40回)
コロナで新しく取り組み始めたこともあり、悪い事ばかりではないと思っています。60才まで頑張ります
新制卒業生(41回~)
●加藤 昌史(平成 3 年卒・新41回)
技術開発を離れ、工場運営に取り組んでいます。老朽化した設備の健全化とGHG削減が課題です。
●佐藤 知子(平成 5 年卒・新43回)
会報もそろそろペーパーレスにしても良いかもしれないですね。昨年久しぶりに西出先生にお会いしました。全くお変わりなくてびっくりです。
●穐山 徹(平成 6 年卒・新44回)
GWに東京の実家に帰省、高校生の息子と理工キャンパスに行きました。残念ながら中には入れませんでしたが正門で記念撮影して帰りました。
●吉澤 恵(平成 6 年卒・新44回)
紙の会報は廃止するのが時代の流れと考えます。ホームページで十分と思います。ご検討下さい。
●重元 亮二(平成 7 年卒・新45回)
コロナ禍の中、リモート参加の機会が増えてきました。大学のOB会もリモート参加という選択肢が出てきたので、大阪に住んでいる私にとっては嬉しい限りです。
●森 昭仁(平成15年卒・新53回)
この返信はインターネット上で行うようにしていただけないでしょうか、手間、コスト利便性の観点からもインターネットで回答できるようにした方がよいと考えています。以上ご確認よろしくお願いいたします。
●乗峯 絵里(平成19年卒・新57回)
新博士紹介の欄に同級生の名前を見つけました。コツコツと頑張っていたのかなと思い刺激をもらいました。
●米山 依慶(平成19年卒・新57回)
事業譲渡により、新会社の一員として業務を遂行しております。
大修修了博取得生
●横田 昌明(昭和54年修・大27回)
同門諸兄の益々のご健康とご活躍を祈念しております。
●十時 信太郎(昭和62年修・大35回)
6 月 1 日付で花王式会社を定年退職いたしました。
●趙 俊相(平成13年修・大46回)
12年間の倉敷での単身赴任を終え、 5 月より東京本社へ移動となりつくば自宅から電車通勤を開始しました。今後共よろしくお願い致します。
NACs&学生交流会:キャリアぶっちゃけトークの場(活動報告)
2022年12月3日(土)に開催される「企業が求める人材像を超えて~次世代共創に向けてのキャリア戦略を考える~」の事前企画として、2022年11月19日(土)にNACs(若手部会)と学生の交流会「キャリアぶっちゃけトークの場」が開催されました。
当日は二つの部屋に分かれ、B1-B2学生向けの企画とB3以上学生および社会人に向けた企画を実施しました。登壇者含めて全42人が参加し、B3以上の学生および社会人向けの企画では遠方からの参加も考慮して一部ハイブリッドで行われました。交流会後に実施された満足度アンケートでは5段階評価で回答者の平均点は4.5となっており、学生・社会人ともに本交流会を楽しんでくれたことがわかりました。特にB1-B2学生の満足度が高かったようです。
B1-B2学生向けの企画では学生時代の過ごし方について社会人3年目の政本さんおよび社会人2年目の神守さんの2名に講演をしていただきました。政本さんは学生時代、11か国に渡る海外旅行をしていた経験や応化委員で学生時代に自ら企画を立ち上げた経験、さらに社会人になってから挑戦していることなどについて話をしていただきました。神守さんからは学生時代のサークル活動や研究室生活の過ごし方、社会人になって携わっている業務の紹介などがありました。「未来につながる今の過ごし方」、「大学は何のために行くのか?」というテーマでも個人的な見解を話していただきました。
B1-B2学生向け企画での参加人数は10名程度でしたが、登壇者と参加者で双方向の活発な会話がなされていました。入学して間もない学生の皆さんにとっては先輩の実感がこもった話を聞けて参考になったようです。
参加していた学生からは「先輩の学生時代の過ごし方を聞けて刺激になったし挑戦しようと思った」、「普段なかなか聞く機会がなかった研究室生活や社会人生活の話が参考になった」という感想がありました。 講演している政本さんと真剣に聞き入る学生
B3以上学生および社会人向けの企画では三菱ケミカルに勤務して15年になる劉さんに自身の職務経歴やキャリアデザインの考え方について講演をしていただきました。当日はオンラインを含めて5~6名を1チームとして計6チームでのグループディスカッションも数回実施されました。
劉さん自身の職務経歴を紹介する場面では劉さんが事前に用意していたキーワード(例:やりがい、Love&Leadershipなど)に対して各チームからひとつづつキーワードを選んで質問をする場面がありました。参加者からの質問に対してぶっちゃけトークの名の通り、劉さんの個人的な見解やエピソードを交えた話をしていただき非常に盛り上がっていました。 自ら用意していたキーワードに対して学生から質問を募りぶっちゃけトークをする劉さん
キャリアデザインの考え方について話す場面ではキャリアデザインを大事にしたい社会的背景から始まり、キャリアの築き方(夢や目標に基づくものか偶然によるものか)に関する理論なども話していただきました。昨今はリカレント教育という言葉をよく耳にします。筆者も経営大学院で授業を受けていますが、社会人になってからも学び続けることが主体的なキャリアデザインにつながることを劉さんの公演で改めて感じました。
参加していた人たちからは「劉さんのエピソードを交えたキャリアの説明が参考になった」、「日本社会の現状について詳しく知ることができた」などの感想がありました。
交流会企画終了後は参加者同士の懇親会も実施されました。学生も社会人も世代を超えた縦のつながりを楽しんでいました。筆者も社会人の立場として学生と交流していました。学生にとっては社会人の先輩とつながりが持てることそのものが非常に有意義だと感じているようでした。最近は新型コロナウイルス感染防止対策の影響で対面での交流会や懇親会があまり行われていなかったので特にそう感じたのかもしれません。
12月3日に開催される「企業が求める人材像を超えて~次世代共創に向けてのキャリア戦略を考える~」にむけた事前企画として非常に充実していたと感じました。
第41回早桜会懇話会(報告)
第41回早桜会懇話会を2022年11月26日(土)に対面(中央電気倶楽部)とWEB(ZOOM)のハイブリッド方式にて開催いたしました。今回の講師には大阪大学の岡野泰則氏(新33回,平田研)をお迎えし、-化学プロセスと人工知能-という演題でご講演頂きました。
人工知能の苦手なこと、人工知能の得意なことを先生の最新の研究成果も交えながらご講演して頂きました。人工知能とは膨大なデータを入力し、その時に得られた結果に対して関数を見出すことで、何か新しいデータを入力した時にその関数に基づいて結果を導き出すというものです。したがって内挿は得意ですが外挿については精度が高いとは言えません。
シミュレーションと実験を組み合わせて研究開発を進めていく時に、従来用いられてきたCFDはテクニックが必要で誰にでも扱えるものではありませんでした。また計算に時間を要する為、実験しながらリアルタイムで計算結果を表示することは出来ませんでした。先生が現在開発されている人工知能系のソフトを用いた手法ですと、瞬時にしかも物理法則を満足した計算が可能であり扱いも容易です。数年後にはエクセルのように誰でも簡単に利用出来る時代が来るとのことで、実現すれば研究開発の現場は大きく変わるのでは無いかと思います。
人工知能の話に加え、バルセロナ出張報告、早稲田大学での講義、日本について思うこと等、幅広くお話しして頂きました。中国の台頭、日本人に立ちはだかる英語の壁、コロナ渦での若者の状況等、課題は色々あります。しかし日本及び日本人の良い部分もたくさんあります。先生のお話しされていたことで個人的に非常に共感した部分があります。それはどうも昨今、日本人に自信を失わせよう失わせようという傾向が一部にあるのでは無いかということです。しかし日本人として世界に誇れるものはたくさんあります。理工系修士修了の人材のレベルが世界一だというのもその1つです。
近い将来、人工知能が発達すれば労働力不足や言葉の壁の問題も解決していきます。また、世の中が便利になればなるほど、日本の基礎重視の考え方は結果的に強みになると個人的には思います。先生のご講演を通して色々と考えることがあり、大変有意義な2時間を過ごさせて頂きました。今回の懇話会の内容について日頃から考え、仕事にも活かしていきたいと思います。
(文責:三品)
【出席者(16名):敬称略】
<現地>
津田實(新7), 加藤文義(新20), 岡野泰則(新33), 斎藤幸一(新33), 和田昭英(新34), 高田隆裕(新37), 數田昭典(新51), 澤村健一(新53), 古田武史(新61), 三品建吾(新59)
<zoom>
井上征四郎(新12), 市橋宏(新17), 田中航次(新17), 脇田克也(新36), 陳鴻(新59), 桜井沙織(新64)