早稲田応化会中部支部 第20回交流講演会のご報告

開催日時;2023年11月18日(土) 15:00~17:00
開催場所;“ウインクあいち”1207号室
出席者; 21名(オンライン・トライアルでの出席者3名を含む)
講師;小柳津研一教授
ご略歴;

1990.3早稲田大学 理工学部 応用化学科 卒業

1995.3早稲田大学大学院 理工学研究科 応用化学専攻 博士後期課程 終了

1995.4-1997.3早稲田大学 理工学部 助手

1997.4-2003.9早稲田大学 理工学総合研究センター 講師

2003.10-2007.3東京理科大学 総合研究機構 助教授

2007.4-2012.3早稲田大学 理工学術院 准教授

2012.4-現在早稲田大学 理工学術院 教授

主な研究テーマ:
機能性高分子、特に高密度レドックス高分子を用いた有機電池、水素キャリア高分子、高屈折率高分子、低誘電損失高分子など

受賞

1995.3水野学術賞(早稲田大学)

2002.3日本化学会進歩賞

2013.4科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞

2022.5高分子学会賞

演題;「エネルギー貯蔵機能性高分子、および早稲田のエネルギー・ナノマテリアル研究」
要旨;

●初めに早稲田大学の現在、キャンパスの変化など、ご自身/研究室/応用化学科の状況を含めて、
ユーモアを交えながらご紹介がありました。

トピックスとしては、西早稲田キャンパスに加えて早稲田キャンパスの研究開発センターエリアに2020年に竣工した新研究開発棟「リサーチイノベーションセンター(121号館)」があり、小柳津先生の研究室も機能高分子実験を行なっておられるとのこと。
早稲田大学としては、カーボンニュートラル「Waseda Carbon Net Zero Challenge」1)を2021年11月1日に宣言し、文理融合の研究推進体制によりカーボンニュートラルの実現を目指して2022年12月1日には「カーボンニュートラル社会教育研究センター」2)が設立されました。
1) https://www.waseda.jp/netzero/
2) https://www.waseda.jp/inst/wcans/research/realize

●Storing Energy in Organic Material:

1.有機電極活物質の設計・合成と有機電池の研究動向

エネルギー貯蔵機能を有する有機・高分子材料の科学とそのデバイス技術についての研究の基本として、高分子はレドックス部位の結晶化を防ぎ、多くの量を溶かすことができるので、材料として有用です。電荷蓄積のためのレドックス高分子として、密度が高く反応性を高く保つことができるのも大切な点です。電極の反応過程は、単分子吸着のような挙動から厚みのある高分子層の拡散過程まで多様です。

エネルギー貯蔵のための高分子研究のレビューとしては、1997年2月に発刊されたPetr Novákらの “Electrochemically Active Polymers for Rechargeable Batteries” [Chem. Rev. 1997, 97, 1, 207–282] が例に挙げられます。また、西出先生や小柳津先生も中心となったドーハでのセッション “Polymers in Energy” をきっかけとして、早稲田大学での国際会議 ”Organic Battery Days 2021”3) 等でコミュニティが広がってきており、論文も急増しています。
3) https://w3.waseda.jp/assoc-obd2021/ ・・実際は、オンライン形式

近年注目されている有機空気二次電池は、ラジカルではなくキノン体が電荷を担います。有機物は分子設計が容易であり、性能も多様性があり予測もできます。また、伸縮性・柔軟性・屈曲性にも優れています。エネルギー貯蔵機能には双安定性(Bistability)が必要で、蓄電特性を示す高分子の性能指針の一つになっています。

一方、リチウムイオン電池の充電速度を短縮するために、高分子物質による「電池触媒」が有効であることが分かってきました。少量のレドックス高分子を含む酸化物ハイブリッド電極の構成で、電子移動メディエーション効果による高速充放電が可能となります。

2.水素キャリア高分子の展開

既に見出していた水素を可逆的に貯蔵する水素キャリア高分子をアノードに適用し、プロトン導電膜との組み合わせにより、充電可能な燃料電池を山梨大学との共同研究で開発しました。通常の燃料電池では電解膜でのO2/H2分離が必要ですが、高分子によるGreen水素製造では蒸気圧の無い物体から水素をガス状態で取り出せるので膜が不要です。種々の利点があり、将来は家庭への展開も目指しています。

3.実践的MIによるLiイオン電池の新しい固体電解質

イオン伝導度が高く、安定性、強度、合成難易度、コストの点で優位な物質を作成するために、オリジナルのデータベース(DB)を作成しました。材料実験のデータは104のオーダーで保有しており、また数百件の文献も含めて、繰り返し単位の化学構造/分子量/共重合比/共重合の構造など、選定したパラメータを記録しました。AIシステムを使用して実験結果や文献データを自動解析することで、新材料の製造を想定しうる重要な構造や実験因子を抽出できました。

このMIにより導出したLiイオン高伝導性高分子は、芳香族系高分子の電荷移動錯体からなるこれまでに無い材料となりました。

4.早稲田のエネルギーナノマテリアル研究4)

早稲田大学のスーパーグローバル大学(SGU)創成支援「Waseda Ocean 構想」における7つのモデル拠点の1つである「エネルギー・ナノマテリアル拠点」では、応用化学の多くの先生方が参加されカーボンニュートラル社会の実現を目指した様々なエネルギー・マテリアル関連の研究が行われています。当研究室での有機電池や水素を安定かつ可逆的に貯蔵できる高分子もその例です。また、国際化を推進するために、Joint Appointment Professor 制度を採り入れ、海外教員が長期間早稲田に滞在して教育・研究を行っています。最近はその流れで「高屈折率高分子に関する共同研究」をドイツのミュンヘン工科大学と進めています。機能性高分子の可能性を見出すことにより、革新的科学技術を応用し、地球規模の課題解決に向けて、これからも挑戦していきたいと思います。
4) https://www.waseda.jp/inst/sgu/unit/

●質疑応答(Q&A)

Q:水素貯蔵について、吸脱着の繰り返しは?

A:実験上は50回。材料として具体的にはこれから詰めていく必要があります。家庭用へ展開する目安としては1000回は必要でしょう。値段や経済性も検討しなければなりません。

Q:触媒開発について、水素は固体高分子とどのように反応しますか?

A:高分子はGel(ゲル)状で、触媒は溶媒に可溶性です。

Q:電池のなかで高分子はどのように分散していますか?

A:元素マッピングで解析すると、顕微鏡レベルでは充分に分散しています。実験室では乳鉢で粉砕し、溶媒を投入します。分散している固体に溶存する高分子という状態でしょう。形態を問わず、繰り返し特性もOKです。

Q:Gel状の固体に水素を吹き付けて、どのように内部に溶解させますか?

A:実際は架橋体なので細孔があります。表面拡散律速状態だと思います。

Q:セラミックス系では固いですが、高分子系は耐久性が高いのが利点ですね。有機・無機材料へのアプローチも検討されていますか?

A:ソフトマテリアルとしての特徴を活かして,様々な材料・デバイスとの界面形成が容易である点は高分子の良さです。構造の詳細はこれからです。

まだまだ質問が続きましたが、懇親会の場でお願いすることとなりました。
なお、今回の交流講演会には、関西支部より和田支部長および三品幹事が出席されました。
また、中部支部としては初めて「ZoomによるNet配信」を試験的に行ないました。次回、2024年4月の交流講演会から、会場とNet配信のハイブリッド形式での開催となります。 (文責 浜名)

ご講演中の小柳津教授

ご講演後に、出席者と記念撮影

懇親会で談笑。 和田_関西支部長と友野_中部支部長

以上

新制20回(1970年卒)応化同期会の開催報告

2023年11月24日(金)西早稲田(旧大久保)キャンパス内にある56号館理工カフェテリアで新20期の同期会を開催しました。当初、卒業50周年を記念して2020年に開催予定でしたが、コロナ禍のために断念しておりました。その間、2年を掛けて連絡先の確認、名簿の改定、同期メンバー間での情報共有等に取組みました。名簿改訂に当たっては、評議員の協力者として、各研究室のメンバーの中からキーマンを選定して研究室単位での情報収集を行い、さらに応化会の寺嶋事務局長のご協力を頂きました。また、年数回、数人の方に近況報告を依頼して同期で情報を共有し、同時に同期会の開催に関する意見交換をしながら準備を進めました。

新型コロナウイルスが感染症5類扱いとなり、自粛対応が緩和されたことから、前回開催から丁度10年ぶりに、ようやく開催できました。

当日は、今回初めての方6名を含め、30名の方々が参加しました。出席者の中には、福田君(愛媛)、飯塚君(鳥取)、加藤君(大阪)、山本(富)君(愛知)のように遠方からの参加された方もいました。また、欠席のメンバーからも丁寧なあいさつが届くなど、久しぶりの同期会の開催に対して、多くの仲間に関心をもって貰いました。

会の実施計画に関しては、キャンパス内の施設の使用や具体的な懇親会の実施内容について、同期の西出君(名誉教授)や寺嶋さんの協力を頂きました。

今回の同期会は、前回同様、2本立てで行い、第1部としてキャンパスツアー、次いで第2部として懇親会を計画しました。キャンパスツアーは、西出君並びに篠原博士と修士の学生さんの案内で、理工学部周辺の大久保地区の最近の景観、55、65号館の最新の分析センター、基礎物理・化学実験室等、また、理工学部の新建屋の建設中の状況を見学しました。皆在籍当時の感慨と共に、それぞれ大きく変貌し、将来へ向けて発展するキャンパスをみて感慨にふけっていたと思います。

キャンパスツアー後、理工カフェテリアに移動し、会を始める前に、猪狩君の協力で集合写真を撮影した後、懇親会を行いました。
懇親会の冒頭、同期の逝去者を偲び黙祷を捧げた後、主催者を代表して評議員の竹林からの開会の挨拶、西出君から最近の学内状況が紹介されました。その後、加賀谷君の音頭により乾杯したのち、歓談に移りました。

途中、井上、斎藤、篠崎、福田、水上、飯塚、加藤の各君から最近の状況報告があり、中締めは、山本浩一君にお願いしました。
2時間弱あまりの懇親会でしたが、往年の思い出に話が弾み楽しい一時を過ごしました。

同期会終了後、評議員の入江から、メールで集合写真と共に、当日参加しなかった同期のメンバーを含めて当日の報告書を送り、同期会の開催に当たり送付された便りを、近況便り同期会特集としてまとめ、近々発行する予定であることを伝えました。

評議員としては、当日参加者の意見を参考に、次回は、同期の足腰が元気なうちに傘寿を目途に開催できたらと思っております。

謝辞:

今回の同期会では、多数の方々のご協力をいただきましたので、報告すると共に、感謝の念をお伝えします。

・理工カフェテリアの会場予約、学内設備の利用に関する適切なアドバイスをしていただきました応化会の寺嶋事務局長に感謝申し上げます。

・キャンパスツアーの案内、さらに懇親会にもお手伝いをいただいた篠原博士、原田氏(M2)、鈴木氏(M1)に感謝申し上げます。

・キャンパスツアーの企画を始め、今回の懇親会の当初からサポートしていただいた西出名誉教授に心から感謝申し上げます。

以上

報告 新20期評議員 朝山、入江、竹林

学内講演会のお知らせ
「Chemical modification revives nitroxide radicals in catalysis and energy storage」

下記の要領で学内講演会が開催されます。

演 題 Chemical modification revives nitroxide radicals in catalysis and energy storage
講 師 Zhongfan Jia
所属・資格 フリンダース大学准教授
日 時 2024年1月22日(月)10:00-11:40
場 所 西早稲田キャンパス 55号館S棟610教室
参加方法 入場無料、直接会場へお越しください。
対 象 学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方
主 催 早稲田大学先進理工学部 応用化学科
問合せ先 早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000

参考:https://www.waseda.jp/fsci/news/2023/12/15/28977/

応用化学会報 No.108 December 2023 を会報アーカイブスに収納しました

2023年12月13日付で「応用化学会報 No.108 December 2023(早稲田大学応用化学会100周年記念誌)」を会報アーカイブスに収納しました。

入室はこちらから ⇒  会報アーカイブス

早稲田応用化学会事務局/広報委員会

第10回早稲田応用化学会シニア会開催報告

現在早稲田応用化学会シニア会は、早稲田応用化学会活動に参加してきたシニアの対象を(70歳以上)として開催致しております。第10回シニア会は新宿中村屋Grannaで11月25日(土)、29名が参加して開催されました。


本年は中村屋の予約スペースをほぼ満席とする29名が参集し開催することが出来ました。大学関係者としては、竜田邦明栄誉フェロー及び応用化学会元会長の西出宏之特任研究教授(新20)がお忙しい中駆けつけて下さいました。
今回初めての試みとして、去る8月26日に開催された「里帰り企画;給付奨学金受給者の集い(新51~新60回生・博士号取得者)」で参加者の中からめざましい活躍されたお二方が選出されましたのでご招待いたし、お話を伺う機会も持ちました。本年のシニア会懇親会では、世話人である下井将惟氏(新13)が司会を勤めました。

最初に河村宏氏(新9)の乾杯ご発声で懇親会は開始されました。
食事やお酒を楽しみながら会員同士の会話が各テーブルで盛り上がりました。応化会役員として注力を傾けた当時の活性化活動や当時の思いまた現在のそれぞれのアクティビティが各テーブルで盛んに会話が交わされていました。
ここで当日の参加者のなかから、現役として活量を落とさず活躍を続けておられる3名の近況をお聞きしました。
大矢毅一郎氏(新14)からは、海外2社と独占契約を結びペプチド医薬の開発に携わっておられること、中谷一泰氏(新13)からは、現在も講演活動を行っておられることやパーキンソン病やアルツハイマー病を防いでいる可能性のあるタンパク質シヌクレインを発見、シヌクレインの医薬品開発にも携わっておられること、宮坂勇一郎氏(新26)からは、社長として醸造業に注力されており、来週より真澄「あらばしり」が発売されること、等々お話いただき参加者の関心を呼んでおりました。
各テーブルでは歓談が盛んに継続され席も移動して久し振りの再開を喜びまた新たな話題で歓談が続きました。

引き続き里帰り企画で選出された米久田康智氏(新51)、澤村健一氏(新53)に今後よりいっそうのご活躍を祈念しての褒賞が行われました
西出先生よりその意義を簡潔にご説明頂いた後、河村さんより奨励賞が授与されました。今回の褒賞者はそれぞれコメントを求められ、米久田さんは今までの有機ELおよび半導体レジスト等の研究開発のご経験を紹介された後、研究マネージャーとして今後有機光電変換材料等の社会課題へのチャレンジをしていくことを力強く語られました。澤村さんはネットワークを広げることは応化会活動でも学んできたこと、またそれを活用して現在エネルギー分野のスタートアップを立ち上げ現在40名を率いていることを語られました。


その後も歓談が尽きることは有りませんでしたが、里見多一氏(新22)に中締めのご挨拶を頂き、井上健氏(新19)の会場にとどろくエールもいただきあっという間にお開きの時間を迎えてしまいました。記念の総合写真を撮影し今後のシニア会での再会を約して散会となりました。
シニア会は早稲田応用化学会に関与してきたシニア同士の懇親をあたためる場となっております。新たな会員もお迎えしたいと考えております。応用化学会の発展をあたたかく見守り、影ながら支援するコミュニティとして今後とも存続できればと考えております。

世話人:下井將惟(新13)、河野恭一(新14)、河野善行(新25)
文責:世話役一同、写真:相馬威宣(新13)、平中勇三郎(新14)