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卒業生へのインタビュー(第1回) アステラス製薬・Rx+事業創生部 向井華さん

卒業生へのインタビュー企画:
多くの応用化学科卒業生が社会に出られて活躍されています。実社会での経験は業種や職種によっても様々であり、卒業生の体験談は実社会で日々活躍されている卒業生の新たな視点への着眼点になったり、在校生にもこれから進むべき未来において貴重な体験が含まれていると思います。

そこで、各方面で活躍している卒業生に現在の自分の立ち位置について語っていただくとともに、インタビュー形式をとることで現役学生を含めた各世代の応化会会員間のコミュニケーションラインの構築と、社会における経験値をほかの卒業生にも共有していただくことを目的とした企画になります。

向井華さんには、一億総活躍の旗印のもと人材活躍推進の制度として整備されているジョブリターン制度*について話を伺いました。転居、留学や介護などの理由により離職を選択された方がそのスキルを活かすために復職できる制度としてもジョブリターン制度は注目されるべきものであり、向井華さんにはその制度活用の先駆けとなった卒業生です。

*ジョブリターン制度は一般的に使われている用語ですが、各企業においては「re-member制度」、「キャリアリターン制度」など会社固有の呼称を用いている例もあります。厚生労働省の調査によると、生産年齢人口は今後20年で約1,400万人減少することが予想されており、企業による優秀な人材の獲得競争がシビアになること見込まれることから企業側でも注目されている制度です。

向井(三沢)華さん 《ご略歴》
1996年 早稲田大学入学 (理工学部応用化学科)
1999年 竜田研究室 配属 (有機合成化学)
2000年 早稲田大学大学院理工学研究科
2002年 アステラス製薬(株)入社 (旧山之内製薬) 創薬化学研究所、知的財産部、ファーマコヴィジランス部を経て2020年より現職

*2013年-2016年:退職期間(再雇用制度・シンガポール在住)、2017年:アステラス製薬へ再雇用登録制度により復職

大切にしていることは、「人/場所/経験、あの時を・毎日を、大切に」、アジア料理や旅行が趣味だそうです。

Q. 向井さんはアステラス製薬を一度退職後にまた復職されていますが、大学に入られた頃から医薬品についての興味などあったのでしょうか

A. 私は早稲田大学入学前から数学やサイエンスに興味があり、迷いなく早くから研究職を希望していました。複雑な化学骨格を構築していくことができる精密有機合成に興味をもち、研修室は有機合成化学の竜田研究室を志望しました。不斉点の導入や天然化合物の全合成や修飾の面白さを研究室で知りました。そこで当時の山之内製薬から竜田邦明先生に開発候補品を見出すための化合物として全合成のご相談のあった化合物(Quinolactacin)を卒業研究対象にすることになったのが山之内製薬への就職のきっかけです。

Q. 産休・育児休暇制度の充実は進んできましたが、ジョブリターン制度はまだ3割程度の企業のみにおいてに導入されている(厚生労働省の「平成29年度雇用均等基本調査」による)段階でこれから整備が進む制度と感じています。アステラス製薬を退職されるにあたり、復職を考えられた経緯について教えて下さい。また、この制度の認知度はいかがでしょうか。

A. アステラス製薬では退職後5年以内に復職を希望し、会社とのニーズがマッチした場合に、退職時に所属していた部署への再雇用の可能性があるいるということを、退職手続きの際に説明を受けていました。復職を希望する社員に対して連絡先を会社に届出しておくことにより退職後の連絡が取れるように運用されています。私自身、アステラス製薬から離れて違う針路を進みたいと思ったことは一度もなく、復職は退職前から希望しておりました。

退職の理由は家族とともにシンガポールへの転居によるものでしたが、その海外赴任も5年以内には帰任となる見込みでしたし、退職中の海外経験を復職時に活かせるのではという発想が私には自然でしたので、新しいことに挑戦したいという気持ちから退職を決意しました。

再雇用登録制度に関してはまだ事例は少ないようでしたが、退職時の元先輩と連絡をとれていたことから私の復職に向けた相談を元上司としてくださいました。復職後、私以外にも再雇用制度で同じように復職された社員たちとも再会することも出来、とても嬉しい経験でした。当時弊社では、退職時に再雇用登録申請フォームが退職届に添付されていたことから、自己都合で退職される社員にはこの制度は知られていたものだと思います。

働き方の多様化で、育児休暇に関しても女性も男性も取得する例が見られるようになりました。育児休暇についても周囲の理解が大切で復帰後も仕事との両立で苦労する点はありますが自分が明るく頑張ることによって家庭内も含めていい影響があると思いますし、私の周囲では夢を諦めてしまう方は数年前と比べてだいぶ減ったように思います。

復職制度につきましても私が知る限りですが数名程度の社員がこの制度で復帰されていると思います。アステラス製薬でも制度そのものは早い時期に導入されていましたが、前例が少ないなか、復職させて頂けたことは大変有難いと思います。

Q. 退職から復職までの道のりについて教えて下さい。

A. 海外生活3年目くらいに帰任が決まり、退職時の元先輩に帰国と復職希望について伝えました。再雇用はキャリア入社と同様、履歴書提出、面接(一次~三次)の審査がございました。一次は在職時の上長、続いて二次は在籍していた部署がグローバル組織でありそのグローバルリードが米国拠点にいましたので、グローバルリードと、最後に三次は人事部門の担当者を交えた面接であり、業務内容や採用に向けた確認に到るまで、各面接での内容はそれぞれ異なりました。復職の確定後、契約社員として半年間の試用期間を経て、正社員に復職できました。

Q. 復職してよかったと思われることは何ですか

A. 数年離れていてもたくさんの同僚、仲間がそこにいてくださっていることが一番よかったです。仕事や職場に慣れるのも早かったと思います。仕事上のコミュニケーションも復職直後からスムーズに進むこともあり、業務の効率もよいと感じています。また、復職後に同期や元同僚などと交流する機会もあり、制度そのものが社内において認知されてきたように思います。

Q. 実際にジョブリターンを活用して何か感じることはありましたか

A. 退職前に在籍していた部署に戻ることになりますので、かつて自分が担当していた業務にひもづいて実戦に戻るまでの勘を取り戻すのは早かったと思います。また、キャリア採用と比べて、ジョブリターンの場合は職場の同僚と復職者が初対面ではないので、相互理解が進んでいることで安心感もあるのだと思いました。

Q. 海外では転職を繰り返してキャリアアップしていくケースが多いように思いますが、その点でも日本のジョブリターン制度は独特な印象がありますね。日本ではキャリア入社(転職者)は採用された部署での業務を継続しているケースも多いように思いますが、復職者のキャリアプランも転職者と同様なのでしょうか。

A. キャリアアップに関しては、キャリアビジョンを部下が上長と相談できる機会があります。また、社内リクルートシステムもあり、人材を必要としている組織、及び応募したい社員が随時、システムを介してお互い連携できるようになりました。日本にいても様々な可能性や選択肢が広がったのではと思います。私も実際に入社後に知的財産部に移籍、また女性が多く活躍している職場としてファーマコヴィジジランス部(注)を希望し、現職についても新たに会社が立ち上げる業務への興味で応募し現在に到っています。
(注:ファーマコヴィジランスは医薬品の副反応(副作用)の情報収集と評価、上市後の医薬品のリスク検証などを行い患者さんへ医薬品を安全かつ適正に使用していただくための知見を構築する業務になります)

Q. 後輩に対して伝えたいことを教えて下さい。

A. 不確実で多様で曖昧な時代のなか、人間は孤立しがちです。様々な制限があるなかでも、機会を逃さずチャレンジや周囲との出会いを大切にしてください。小さな出会いもその場限りのものではなく繋がっていくことで意外なことが数年後大きな意味をもつことがあります。10代、20代で見える世界にはやはり限りがあってその中で自分の将来などを決めていかなければ行けない難しさはあると思いますが、だからこそ果敢にチャレンジすることで多くのものが得られると思います。また、大学時代の過ごし方として、日々のレポート課題や試験対策を早めにやっておくことも大切だと思います。何事も時間的余裕をもって楽しみながら準備する習慣をつけておくとよいと思います。
大学時代の同級生とは日本全国各地で仕事をされている関係で定期的に連絡を取る機会は少なくなってしまいましたが、仲間とのコミュニケーションは社会人経験が長くなるとその重さが実感できる様になると思います。

学生時代にはもっと勉強しておけばよかったと思うこともあります。研究室に入ると実験などで時間がたくさん必要です。空いた時間が少しで勉強することが難しい時期もありましたが、就職後に業務が変わるなどで段々とサイエンスの世界から離れていくようになると、最近の論文を読み直して科学者としての心得を持ち続けていると、自分の専門分野だけでなく幅広い知識への興味が湧いて、自身の生活も楽しくなると思います。

インタビュー後記:
インタビュー当日は、設定させて頂いた設問以外にグローバル化する業務や、今後の目標などについて闊達な議論があり、在校生にも新たな刺激になったのではないかと思います。

(聞き手) B3.甲斐田敬済、M1.内田梨花、LD1.疋野拓也、新39.加来恭彦(広報委員)

2020年度 企業が求める人材像

11月14日(土)に「企業が求める人材像」が開催されました。本企画は、学生の役にすぐに立つような就職活動セミナーや企業説明会とは異なり、テーマに沿って会全体で活発に意見交換と議論をして、将来どこかで役に立てるように見識を広げることを目的としています。

本年度のテーマは「アントレプレナーシップに学ぶ」となりました。「アントレプレナーシップ」は初めて聞く言葉であったためすぐに調べ、起業を指す言葉だと分かった際は、「起業について学ぶことが将来の役に立つことはないだろう」と思いました。結論として、この考えは間違っていました。

実際に本企画では、アントレプレナーシップを専攻して日本人で初めて博士号を取得された、早稲田大学商学学術院の東出浩教教授をお招きし、二部構成で会を進めました。

第一部は東出教授によるアントレプレナーシップについての講義でした。起業を行う目的とは「お金を稼ぐこと」のみならず、自らのアイデアをベースとして、何かに没頭できたりその行動に意味を見出せるような環境を自ら構築し、自分の理想とする形を作り上げることであると学びました。また東出教授は起業のための必要条件が「失敗を恐れずに行動してみること」であることも強調されていました。

第二部ではアントレプレナーシップについての海外の動画(アイデオ社のショッピングカートを5日間で作る)を鑑賞した後、東出教授と学生間で円滑な討論を行いました。動画はすべて英語であったものの、参加者たちが自由な発想のもと討論したり実際にカートを試作してみて、和気あいあいと何日間も改善を何度も繰り返し、その中で利便性も追求した独自のカートを完成させる様子が映っておりました。またその後の討論では、学部1年から修士2年の学生および参加されたOBの方まで、日本や諸外国の文化の違いにも踏み込みアントレプレナーシップにも着眼点をおきながら、今後の社会についても深く議論を行いました。

私はこの企業が求める人材像に参加して、応用化学科の学生はただ研究を行うだけでなく、アントレプレナーシップを持つことで、世界全体を大きく動かす可能性があるのだと学びました。和田先生が会の途中で「iPhoneをただ買う人間であってはいけないよ」とご発言された通り、「今後の社会を良くしていくのは自分たちだ」という意識のもと、主体的に行動することが大切であることに気づきました。

そして最後に、新型コロナウイルス感染症下においても感染対策を徹底することで、対面での開催を実現でき、学生たちの視野を広げる貴重な会となりました。講義をされた東出教授、企画構成の主導をされた和田先生および運営にご協力頂きました皆様に厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

文責: M1 藤田聖也

 

 

「先輩からのメッセージ2021」タイムスケジュール

                        早稲田応用化学会 交流委員会

 「先輩からのメッセージ」は、新型コロナウィルス対策としてリモートによる懇談会を中心とすることでご案内しておりましたが、当日のタイムスケジュールが決まりましたのでお知らせいたします。

1.日 時 2021年1月16日(土) 9時~19時10分

2.実施方法

本年度はZoomによるリモート懇談会といたします。

「先輩からのメッセージ」は、一般の企業説明会と異なり、企業概要、仕事の紹介にとどまらず、応化OB/OGより直接に、会社生活や日常、普段考えていることや雰囲気などを親しく聞けることを特色としています。

 リモート開催においてもこの特色を活かす懇談会を中心にすべく、企業により下記のような方式から選択し、実施していただきます。

 ①開催日の10日前から事前のプレゼン動画を配信、当日のリモート懇談会はOB/OGとの懇談を中心とします。

 ②開催日の10日前から事前のプレゼン動画を配信、当日のリモート懇談会で更にプレゼン、続いて懇談を実施します。

 ③事前のプレゼン動画はなしで、当日懇談会にてプレゼンと引き続き懇談を実施します。

    当日の懇談会は企業ごとにZoomによる懇談会とし、下記タイムスケジュールにより開催されます。Zoomへの参加URL、ID、PW等は参加申込者に配信されます。

3.参加企業、タイムスケジュール → こちらから

   申し込みをされると折り返しZoomの参加方法が返信されます。

4.申し込み方法

   申し込み⇒こちらから

  応化生諸君はメルマガからの申し込みをお願いします。

5.対象学生

 学部生、大学院生(修士、博士、一貫制博士)およびポスドク

   (進路決定を間近に控えた学部3年、修士1年、博士、一貫制博士課程修了予定者およびポスドクを主体としていますが、将来へ備えての学部1・2・4年生、修士2年生の参加も大歓迎です。)

6.対象学科 応用化学科および応用化学専攻、化学・生命化学科および専攻、生命医科学科および専攻、ナノ理工学専攻、生命理工学専攻等

  (その他学部・研究科・学科・専攻を問いません。)

7.お問合せ 本件に関する問い合わせ・要望等は下記の専用アドレスまでお願いいたします。

       guidance_2020@waseda-oukakai.gr.jp