月別アーカイブ: 2017年9月

パネルディスカッション

パネラー:長谷川 閑史氏
参加学生:田中 徳裕(Facilitator)、石原 真由、福井 宏佳(以上 M!1)
      政本 浩幸、柳川 洋晟(以上 B4)

田中 徳裕

田中「こんにちは。今回司会をさせていただく田中徳裕です。本日は、よろしくお願い致します。早速、質問をさせていただきたいと思います。まず、私たちを取り巻くパラダイムシフトですが、このパラダイムシフトに対して私たちはどのように向き合っていけばいいでしょうか?」

長谷川さん「それは、まず自分たちで考えることが大切。それから、一番いい方法は、日本の中だけに目を限定しないこと。パラダイムシフトが起きている最先端の現場に自分で飛び込んで肌身感覚で感じとるというのが大切です。」

田中「ありがとうございます。次に政本さんどうでしょうか?」

政本「AI(人工知能)に関して、悲観論、楽観論、中立論というそれぞれの考えがありますが、長谷川さんはどのようにお考えですか?」

長谷川 閑史さん

長谷川さん「これはまだ起こっていないことだからわからない。新しいテクノロジーが、新しい仕事の創生に繋がると言われている。だから、そういった点においてはあまり心配する必要はないと思います。新たに現れた仕事に対して、新たに社会に出ていく人がチャレンジするのは何とかなるかもしれない。実際に仕事について10年や20年たった人たちの仕事が置き換えられてしまったらどのように仕事を維持するかが難しい。そこはまだ答えはない。だから、悲観論と楽観論のどちらかに決めつけるのは早計かなと思う。」

田中「ありがとうございます。次に石原さんどうでしょうか?」

石原 真由

石原「パラダイムシフトの中で必要とされる素養というのは変わっていくと思いますが、具体的に世界で活躍するためにはどのような能力が必要なのかと、将来的に日本人が活躍できるために行っている人材育成の方法などがありましたら教えていただきたいなと思います。」

長谷川さん「日本の教育システムの弱点として、与えられた問題を解く、あるいは設問に対する答えを最速で見つけ出す、そういった能力には結構長けているかもしれないが、問題を与えられるのではなく、状況を観察してそこから問題点を見つけ出し、解決に導く方法を見つけ出して実行に移す、こういうことが出来る能力が、ベーシックな部分で言えば、世界に通用するためには必要。例えば、人口増加によって生ずる問題など、今見えている問題に対してどういう答えを自分なりに考えだし、どう貢献できるか考えることは無駄ではないし、一つのやり方であると思う。」

田中「ありがとうございます。今度は学生時代のことや人生観についてお聞きしていきたいと思います。柳川さんどうでしょうか?」

柳川 洋晟

柳川「これからどうなるのかという不安があります。長谷川さんが学生時代に思い描いていた将来像と現状でどのような差異があるのかお教えください。」

長谷川さん「前にスタンフォードで講演をした時に、どのようにしたらCEOになれるのかと質問されたことがある。その時に、そんなフォーマットがあるならば誰でもするだろう、そしたらみんな同じスタートから行うので全く意味のない質問であるよと答えた。柳川さんの質問に戻るが、私が大学を卒業したのは1970年です。半世紀も前と今とで皆さんの参考になれるようなそういう答えは出せません。時間の流れ方も違っていたし、ちょうど日本は、高度成長の真っ盛りだった。そういう時代に育つと、明日は今日よりも豊かであると、企業というものは成長するものだと、物価も毎年上がるものだと、そういうのが当たり前であった時代に育った人間が、そんなに将来を深刻に考えない。しかも、私は1966年に入学しましたから、試験を受けたときは機動隊に守られて、正門はロックアウトされており、細い道から入って試験を受けた。4月に大学の入学式もなければ、学校が始まっている時期になっても授業は始まらなくて、5月の半ばころから授業が始まった。姉と一緒に下宿していたため、姉に勧められたバイトが本業となり、あいつは留年するとか言われていた。このように時代の背景も違うし、みんなが明日は今日よりも豊かになると、そう思っていた時代に描いていたことを、いくら言ってもあなたたちの参考にはならないと思う。ただ、一つだけ言えるのは、授業がないときに本をしっかり読んだ。乱読と言われるくらい、いろんなあらゆる本を読みました。そういうことが少しは役に立った。だから、自分たちが何を目標にしたらいいかというのは自分たちが置かれている環境と現実を見て、考えるしかない。」

田中「ありがとうございます。次に人生観についてお聞きしたいと思います。福井さんどうですか?」

福井 宏佳

福井「長谷川さんが、今振り返った時にこれをやっておけばよかったということが何かあればお伺いしたいです。」

長谷川さん「いくつかありますが、もう少し勉強しておいたらよかったなというのと、それから本当は運動部に入りたかったが、入れなかったので、もう一度やり直せるのであったら、大学でも運動部に入って仲間を作るということをやりたいなと思います。ちなみにもう一つ言い忘れましたが、入学は第一次早稲田紛争時で、卒業は第二次早稲田紛争時でしたので、入学式もなければ卒業式もない。そういう特殊な時代に学校に来ましたから、前総長の白井さんからは、あんたたちの世代が一番勉強していない世代だと言われている。それでも通用した私はいい見本で、いい社会であると思っています。」

田中「ありがとうございます。柳川さんどうですか?」

柳川「自分には行動の軸になるようなものがなくて、長谷川さんご自身に座右の銘などがあればお伺いしたいと思います。」

長谷川さん「推薦図書のセブンマスターズを是非お読みになることをお勧めします。できれば瞑想をおやりになることをお勧めします。瞑想をやるということは、自分との対話です。だいたい瞑想をやっていると自然に考え付くのは、自分はやっぱりどんな人生を送りたいであるとか、自分の生きる目的って何だろうかとか、紆余曲折あってもたどり着くものであると思います。そのうえで、私の経験から言うと、多くの人が、自分の職業や行動を通じて人の役に立ちたい、あるいは社会をいいものにしたいと思うようにできているのではないかと思う。そこは自分で確立をすれば、どんなことが与えられてもチャレンジしても、軸はぶれないと思う。例えば会社の経営者として、部下を昇進させるときに見るのは、業績、実績を上げた人が大事ではあるが、もっと大事なのは価値観が確立をしていて、ぶれない人。ぶれる人は状況によって臨機応変に変わるという見方もあるが、肝心のところで、経営者としてはまずい判断をする可能性がある。一つの例として、私が経営企画部長をしていた時に、医薬非関連事業を売却するという交渉をやっていた。某化学品会社と交渉が大詰めに来た時に、その製品を生産している工場から問題が生じた。どうするかとなった時に、周りは混乱していた。私はその時に問題を隠さず、先方にそれを伝えて、そのうえでまだ処理方法は確立していませんが、処理方法が確立した段階で私どもが責任をもって対処させて頂きますから、それでご了解いただけませんかと話をした経験がある。そういうことの一つ一つです。だから、単純に言えば正直に生きるということだと思いますよ」

田中「ありがとうございます。次に政本さん何かありますか?」

政本 浩幸

政本「今まで多くの方のご講演を聞く機会を頂きましたが、中々失敗談を聞く機会というのはありませんでしたので、もし宜しければお聞かせください。」

長谷川さん「失敗談はいっぱいありますよ。いっぱいあるが、結論から先に言うと失敗を認めて、ダメージを最小限にするように一生懸命にやる。これしかない。入社して2年目くらいに私は工場の勤労課というところにいた。500人くらいの従業員がいる工場で、ボーナスの査定結果に基づいて個人の計算をしていく。それに対して本社から予算が来る。予算の連絡が電話で来るのですが書き間違えて、かなりの金額を多めに配布してしまった。本社の方に連絡して、正直に話し何とかしてもらいました。また、一番の冷や汗をかいた失敗は、私がアメリカの現地法人のジョイントベンチャー、アメリカのパートナーと50:50のジョイントベンチャーだったんですけど、そこの副社長をしていて、社長はポーランド人の2 mくらいあるハイパーアクティブな男だった。しかし、残念なことにアル中でした。ナショナルセールスミーティングなんかでも酔っていたりして、問題が何回もあったため、私は手に負えなくなって、パートナーの親会社の人事部長に相談をした。そのあと、その本人の車に乗せてもらって、親会社の方に向かっている途中に人事部長から電話がかかってきて、こないだの話と言ってきた。当時は今の携帯ではなくカーフォンで、そのパートナーの本人が取って、人事部長から電話だけど、お前はいったい俺の会社の人事部長に何の用があるのだと。とりあえず、後で電話すると切った時にしつこく聞かれたから、全部言いました。お前が、あまりにも手に負えないので相談しに行ったのだと。そう言ったら、本人もムッとはしたけど、それで終わってしまいましたけどね。だけど予想もしない二つの例は、数多くあることの例ですが、そういうことは起きますよ。やはり常に真正面から向き合って、ごまかしたり隠したりしないで、ベストの選択をしていったほうが良い。そうじゃないと後悔する。後悔しない方がいいと思いますよ。皆さんにはそれぞれやり方があると思いますからこういうのも参考にしながら、適宜対応してください。」

田中「ありがとうございます。最後に早稲田の学生に向けて何かメッセージがありましたらよろしくお願い致します。」

長谷川さん「自分が4年間身を置いて感じたのは、結構自立していていろんなことにチャレンジする人が多いように感じます。どこに行っても稲門会というのはある。あと三田会も。どこ行っても三田会とゴルフやソフトボールをしたりする。早稲田は大体負ける。というのは数はいるのに来ない。あまり協力もしない。では学校を嫌っているかというと、そうではなくてそれなりの誇りは持っている。私は、それは決して悪いことではないと思っています。見方を変えれば、別にそういうところでみんな集まってやることを否定はしないけれど、他に予定があれば自分がやりたいことをやって、ただ誰かが本当に困っているときは、ずいぶん私も助けられましたが、助けてくれる。そういうやり方の方がいいのかなというのが一つ。もう一つは、私が学生時代、社会人生活を始めた時よりもはるかに世界は狭くなりグローバル化は進み、日本は自国だけではリソースは人材だけしかない国だから、海外とビジネスをやらないと生きていけないと、あるいは豊かさを維持していけないというのは間違いはないので、そういった意味で皆さんは全員が飛び出せと言っているわけではないですが、ある程度チャレンジ精神と冒険心がある人は、世界で是非飛躍して頂きたいなというのが一先輩からのメッセージです。」

田中「本日は長谷川さんありがとうございました。」

(文責:交流委員会)

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第9回早桜会講演会の報告

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岡野支部長の講演者紹介

  第9回早桜会講演会は9月9日(土)、講師に岐阜大学名誉教授 木内一壽先生をお迎えし、開催いたしました。木内先生は平田研究室にて「活性汚泥法による廃水処理」についてご研究される中で、酵素を中心とする生化学の研究に進まれたのち、神経化学分野で長年に渡りご研究をされています。今回は、“ヒト脳の特性”と題し、神経細胞や脳に関する基本的な知識から、脳機能の解明に至るまで幅広くご講演いただきました。

 

   皆さまは脳の存在を意識して過ごされていますか?日本人にとって脳を身近に感じる機会は滅多にありませんが、アメリカではなんと小学校教育の中で、神経信号の伝搬の仕方や、前頭葉の機能など“brain power 脳力”に関する授業が行われているそうです。

  人間は他の動物よりも脳が非常に発達していますが、チンパンジーと我々ホモ・サピエンスの遺伝子はわずか1.23%しか変わらないと言われています。霊長類の進化とともに、脳は非常に大きく進化し、20万年前からホモ・サピエンスは約1350mLサイズの脳を持っていると解説いただきました。

  ではヒトの脳はなぜここまで成長しているか、それは他の動物よりも未熟な状態で生まれてくるからこそ、学習することで脳を鍛え、成長できるのだそうです。人間の脳は遺伝子の影響50%、外部環境の影響50%で決まり、脳のネットワーク形成が人類の進化の始まりにつながっていると解説いただきました。さらに大脳皮質前頭葉の働きが人間の脳の発達につながっていると述べられました。

  最後に、脳神経細胞に関する最新の研究動向もご紹介いただきました。f MRIによる脳の位置ごとの機能の解明、脳内の信号のやりとりの可視化など大変刺激的な内容でした。

  “研究は気力、体力、知力だ”という木内先生の研究スタイルを象徴するような大変広く深い内容で、質疑の時間が予定をオーバーするなど参加者一同、探究心を刺激されるご講演でした。

 

  講演終了後は、集合写真を撮り、特別食堂での懇親会に移りました。初めてご参加の方、お久しぶりの方のスピーチを挟み、大変賑やかな会となりました。筋肉と同じように脳も鍛え続けるべし、との木内先生のお言葉を持ち、大盛況の中閉会いたしました。

(文責 桜井)

 

 

出席者:

木内一壽(新24回)、津田實(新7回)、井上征四郎(新12回)、市橋宏(新17回)、田中航次(新17回)、岡野泰則(新33回)、和田昭英(新34回)、原敬(新36回)、中野哲也(新37回)、柘植知彦(新41回)、髙島圭介(新48回)、數田昭典(新51回)、陳鴻(新59回)、桜井沙織(新64回)、御手洗健太(新65回)

応用化学科創立百周年記念展示

「江戸後期 知の探究者たちが切り拓いた世界」
2017年10月5日より11月9日まで
10:00~18:00
早稲田大学総合学術情報センター2F

応用化学科の創立100周年を記念して題記記念展示が開催されます。会場は早稲田大学総合学術情報センター(早稲田大学中央図書館の建物)の2階展示室です。
江戸末期の貴重な文物が展示されます。
特に宇田川榕菴は江戸末期(1798 – 1846)の蘭学者で、今日我々が使っている基本的な化学用語を翻訳し、日本に定着させた人です。
その宇田川榕菴の主要著作である舎密開宗』(せいみかいそう)も展示されます。
またシーボルトから榕菴に贈られた顕微鏡なども展示される予定です。
江戸末期には本草学をはじめ多くの自然科学者たちが知のネットワークを作って活躍しました。
日本の化学も、そうした知の探求者たちによって基礎が作られました。
我々の学問のルーツを是非この機会に訪ねてみましょう。

 

応用化学科の創立100周年につきましては、いろいろな催しや行事が企画されています。10月7日(土)には記念祝賀会も開催されます。下のLinkの応用化学科のHPにて詳細をご参照の上、本記念事業への積極的なご参加をお願いいたします。

応用化学科創立100周年記念事業ご案内

豊倉賢名誉教授 瑞宝小綬章 叙勲

2017年4月29日、豊倉賢名誉教授は、瑞宝小綬章を叙勲され、5月11日に、伝達式が行われた。

豊倉名誉教授ごあいさつ

先生のご功績は、工業装置内晶析現象で新しく考案した無次元結晶粒径・溶液過飽和度を用いて所望結晶製品を工業規模で生産出来る晶析装置・操作の設計理論を世界に先駆けて確立したことに加え、工業晶析装置内の2次核発生や結晶精製の新現象も発表して製品結晶品質向上や生産コスト削減を容易にし、世界の晶析研究・結晶生産工業の発展に貢献した点にある。

豊倉名誉教授に、ご薫陶を受けたOBが、2017年7月29日(土)リーガロイヤル東京 サファイアに参集し、盛大な祝賀会を実施した。海外から、マルティンルター大学 ヨアヒムウーリッヒ教授も、急遽来日し、OBとともに、恩師の叙勲をお祝いした。同門のOB会としては、先生のご退職以来の実施であり、18年ぶりの再会に話が盛り上がり、飲食も忘れて昔話に花が咲いた。


瑞宝小受章 勲記

豊倉名誉教授ご夫妻とウーリッヒ教授

祝賀会の記念写真

 

 

 

 

 

(新18回 鶴岡洋幸、新26回 平沢 泉)