パネルディスカッション

パネラー:長谷川 閑史氏
参加学生:田中 徳裕(Facilitator)、石原 真由、福井 宏佳(以上 M!1)
      政本 浩幸、柳川 洋晟(以上 B4)

田中 徳裕

田中「こんにちは。今回司会をさせていただく田中徳裕です。本日は、よろしくお願い致します。早速、質問をさせていただきたいと思います。まず、私たちを取り巻くパラダイムシフトですが、このパラダイムシフトに対して私たちはどのように向き合っていけばいいでしょうか?」

長谷川さん「それは、まず自分たちで考えることが大切。それから、一番いい方法は、日本の中だけに目を限定しないこと。パラダイムシフトが起きている最先端の現場に自分で飛び込んで肌身感覚で感じとるというのが大切です。」

田中「ありがとうございます。次に政本さんどうでしょうか?」

政本「AI(人工知能)に関して、悲観論、楽観論、中立論というそれぞれの考えがありますが、長谷川さんはどのようにお考えですか?」

長谷川 閑史さん

長谷川さん「これはまだ起こっていないことだからわからない。新しいテクノロジーが、新しい仕事の創生に繋がると言われている。だから、そういった点においてはあまり心配する必要はないと思います。新たに現れた仕事に対して、新たに社会に出ていく人がチャレンジするのは何とかなるかもしれない。実際に仕事について10年や20年たった人たちの仕事が置き換えられてしまったらどのように仕事を維持するかが難しい。そこはまだ答えはない。だから、悲観論と楽観論のどちらかに決めつけるのは早計かなと思う。」

田中「ありがとうございます。次に石原さんどうでしょうか?」

石原 真由

石原「パラダイムシフトの中で必要とされる素養というのは変わっていくと思いますが、具体的に世界で活躍するためにはどのような能力が必要なのかと、将来的に日本人が活躍できるために行っている人材育成の方法などがありましたら教えていただきたいなと思います。」

長谷川さん「日本の教育システムの弱点として、与えられた問題を解く、あるいは設問に対する答えを最速で見つけ出す、そういった能力には結構長けているかもしれないが、問題を与えられるのではなく、状況を観察してそこから問題点を見つけ出し、解決に導く方法を見つけ出して実行に移す、こういうことが出来る能力が、ベーシックな部分で言えば、世界に通用するためには必要。例えば、人口増加によって生ずる問題など、今見えている問題に対してどういう答えを自分なりに考えだし、どう貢献できるか考えることは無駄ではないし、一つのやり方であると思う。」

田中「ありがとうございます。今度は学生時代のことや人生観についてお聞きしていきたいと思います。柳川さんどうでしょうか?」

柳川 洋晟

柳川「これからどうなるのかという不安があります。長谷川さんが学生時代に思い描いていた将来像と現状でどのような差異があるのかお教えください。」

長谷川さん「前にスタンフォードで講演をした時に、どのようにしたらCEOになれるのかと質問されたことがある。その時に、そんなフォーマットがあるならば誰でもするだろう、そしたらみんな同じスタートから行うので全く意味のない質問であるよと答えた。柳川さんの質問に戻るが、私が大学を卒業したのは1970年です。半世紀も前と今とで皆さんの参考になれるようなそういう答えは出せません。時間の流れ方も違っていたし、ちょうど日本は、高度成長の真っ盛りだった。そういう時代に育つと、明日は今日よりも豊かであると、企業というものは成長するものだと、物価も毎年上がるものだと、そういうのが当たり前であった時代に育った人間が、そんなに将来を深刻に考えない。しかも、私は1966年に入学しましたから、試験を受けたときは機動隊に守られて、正門はロックアウトされており、細い道から入って試験を受けた。4月に大学の入学式もなければ、学校が始まっている時期になっても授業は始まらなくて、5月の半ばころから授業が始まった。姉と一緒に下宿していたため、姉に勧められたバイトが本業となり、あいつは留年するとか言われていた。このように時代の背景も違うし、みんなが明日は今日よりも豊かになると、そう思っていた時代に描いていたことを、いくら言ってもあなたたちの参考にはならないと思う。ただ、一つだけ言えるのは、授業がないときに本をしっかり読んだ。乱読と言われるくらい、いろんなあらゆる本を読みました。そういうことが少しは役に立った。だから、自分たちが何を目標にしたらいいかというのは自分たちが置かれている環境と現実を見て、考えるしかない。」

田中「ありがとうございます。次に人生観についてお聞きしたいと思います。福井さんどうですか?」

福井 宏佳

福井「長谷川さんが、今振り返った時にこれをやっておけばよかったということが何かあればお伺いしたいです。」

長谷川さん「いくつかありますが、もう少し勉強しておいたらよかったなというのと、それから本当は運動部に入りたかったが、入れなかったので、もう一度やり直せるのであったら、大学でも運動部に入って仲間を作るということをやりたいなと思います。ちなみにもう一つ言い忘れましたが、入学は第一次早稲田紛争時で、卒業は第二次早稲田紛争時でしたので、入学式もなければ卒業式もない。そういう特殊な時代に学校に来ましたから、前総長の白井さんからは、あんたたちの世代が一番勉強していない世代だと言われている。それでも通用した私はいい見本で、いい社会であると思っています。」

田中「ありがとうございます。柳川さんどうですか?」

柳川「自分には行動の軸になるようなものがなくて、長谷川さんご自身に座右の銘などがあればお伺いしたいと思います。」

長谷川さん「推薦図書のセブンマスターズを是非お読みになることをお勧めします。できれば瞑想をおやりになることをお勧めします。瞑想をやるということは、自分との対話です。だいたい瞑想をやっていると自然に考え付くのは、自分はやっぱりどんな人生を送りたいであるとか、自分の生きる目的って何だろうかとか、紆余曲折あってもたどり着くものであると思います。そのうえで、私の経験から言うと、多くの人が、自分の職業や行動を通じて人の役に立ちたい、あるいは社会をいいものにしたいと思うようにできているのではないかと思う。そこは自分で確立をすれば、どんなことが与えられてもチャレンジしても、軸はぶれないと思う。例えば会社の経営者として、部下を昇進させるときに見るのは、業績、実績を上げた人が大事ではあるが、もっと大事なのは価値観が確立をしていて、ぶれない人。ぶれる人は状況によって臨機応変に変わるという見方もあるが、肝心のところで、経営者としてはまずい判断をする可能性がある。一つの例として、私が経営企画部長をしていた時に、医薬非関連事業を売却するという交渉をやっていた。某化学品会社と交渉が大詰めに来た時に、その製品を生産している工場から問題が生じた。どうするかとなった時に、周りは混乱していた。私はその時に問題を隠さず、先方にそれを伝えて、そのうえでまだ処理方法は確立していませんが、処理方法が確立した段階で私どもが責任をもって対処させて頂きますから、それでご了解いただけませんかと話をした経験がある。そういうことの一つ一つです。だから、単純に言えば正直に生きるということだと思いますよ」

田中「ありがとうございます。次に政本さん何かありますか?」

政本 浩幸

政本「今まで多くの方のご講演を聞く機会を頂きましたが、中々失敗談を聞く機会というのはありませんでしたので、もし宜しければお聞かせください。」

長谷川さん「失敗談はいっぱいありますよ。いっぱいあるが、結論から先に言うと失敗を認めて、ダメージを最小限にするように一生懸命にやる。これしかない。入社して2年目くらいに私は工場の勤労課というところにいた。500人くらいの従業員がいる工場で、ボーナスの査定結果に基づいて個人の計算をしていく。それに対して本社から予算が来る。予算の連絡が電話で来るのですが書き間違えて、かなりの金額を多めに配布してしまった。本社の方に連絡して、正直に話し何とかしてもらいました。また、一番の冷や汗をかいた失敗は、私がアメリカの現地法人のジョイントベンチャー、アメリカのパートナーと50:50のジョイントベンチャーだったんですけど、そこの副社長をしていて、社長はポーランド人の2 mくらいあるハイパーアクティブな男だった。しかし、残念なことにアル中でした。ナショナルセールスミーティングなんかでも酔っていたりして、問題が何回もあったため、私は手に負えなくなって、パートナーの親会社の人事部長に相談をした。そのあと、その本人の車に乗せてもらって、親会社の方に向かっている途中に人事部長から電話がかかってきて、こないだの話と言ってきた。当時は今の携帯ではなくカーフォンで、そのパートナーの本人が取って、人事部長から電話だけど、お前はいったい俺の会社の人事部長に何の用があるのだと。とりあえず、後で電話すると切った時にしつこく聞かれたから、全部言いました。お前が、あまりにも手に負えないので相談しに行ったのだと。そう言ったら、本人もムッとはしたけど、それで終わってしまいましたけどね。だけど予想もしない二つの例は、数多くあることの例ですが、そういうことは起きますよ。やはり常に真正面から向き合って、ごまかしたり隠したりしないで、ベストの選択をしていったほうが良い。そうじゃないと後悔する。後悔しない方がいいと思いますよ。皆さんにはそれぞれやり方があると思いますからこういうのも参考にしながら、適宜対応してください。」

田中「ありがとうございます。最後に早稲田の学生に向けて何かメッセージがありましたらよろしくお願い致します。」

長谷川さん「自分が4年間身を置いて感じたのは、結構自立していていろんなことにチャレンジする人が多いように感じます。どこに行っても稲門会というのはある。あと三田会も。どこ行っても三田会とゴルフやソフトボールをしたりする。早稲田は大体負ける。というのは数はいるのに来ない。あまり協力もしない。では学校を嫌っているかというと、そうではなくてそれなりの誇りは持っている。私は、それは決して悪いことではないと思っています。見方を変えれば、別にそういうところでみんな集まってやることを否定はしないけれど、他に予定があれば自分がやりたいことをやって、ただ誰かが本当に困っているときは、ずいぶん私も助けられましたが、助けてくれる。そういうやり方の方がいいのかなというのが一つ。もう一つは、私が学生時代、社会人生活を始めた時よりもはるかに世界は狭くなりグローバル化は進み、日本は自国だけではリソースは人材だけしかない国だから、海外とビジネスをやらないと生きていけないと、あるいは豊かさを維持していけないというのは間違いはないので、そういった意味で皆さんは全員が飛び出せと言っているわけではないですが、ある程度チャレンジ精神と冒険心がある人は、世界で是非飛躍して頂きたいなというのが一先輩からのメッセージです。」

田中「本日は長谷川さんありがとうございました。」

(文責:交流委員会)

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