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卒業生へのインタビュー(第5回)

日時:2023年5月28日(日本時間)/5月27日(アメリカ西海岸時間):オンラインにて実施。

春日 孝夫さん(新39)

1985年 早稲田大学高等学院卒

1989年 早稲田大学理工学部応用化学科 森田・菊地・研究室

1991年 早稲田大学理工学研究科(触媒化学)修了

1995年 Ph.D. in Genetics from Aberdeen University (UK)

2008年 Research Molecular Geneticist,
United States Department of Agriculture,
Agricultural Research Service (USDA-ARS),
and Department of Plan Pathology,
University of California, Davis

学生時代に応用化学科から短期留学でカリフォルニア大学デイヴィス校(以下,UCD)に夏季休暇などを利用して留学した卒業生が比較的多く、また応用化学科の卒業生でもある春日孝夫さんが現在同校にて大学スタッフとして教鞭を取り研究を進めていることから、それぞれの立場から留学で得た経験とUCDのプログラムの紹介など相互理解を深める場をオンラインで設けることにしました。今回卒業生からはUCD留学経験のある3名に参加頂きました。カリフォルニア大学にはキャンパスが10あり、UCDはそのうちの一つで州都サクラメントの近郊に位置します。

 

短期留学先にUCDを選択した理由は?

- 語学留学の側面も持ちつつ、理科系の留学者向けカリキュラムがあるのがUCDだった

- 大学での教育プログラムに加えてシリコンバレーの見学など魅力的な実地研修があったから、などの意見がありました。

UCDの短期留学プログラムは特色ある内容のようですね。もう少し詳しく教えていただけますか?

- 早稲田大学以外にも東京理科大や明治大学などから毎年留学生が来ています。理科系学生向けのプログラムを提供している背景には、UCDがUCの中でも理科系の割合が多いキャンパスだということもあると思います。3万5千人ほどいる学生の6~7割は理科系の学生ではないでしょうか。プログラムの特色の一つに、留学生が複数の研究室を回り研究内容を体験できることがあります。大学院生の必修科目に専攻内の研究室を5週間単位で回って経験を積むというものがありますが、それと近い内容を体験できることになります。

UCDのカリキュラムや制度についても特徴・魅力を教えてください。

- カリキュラムの方向性は教授会で決まりますが、その教授の採用に関して学生側が採用側として検討に関われる面白い制度があります。つまり、学生は教授候補が他大学からどのような技術や知識を持ってくるかいう観点で教授を選ぶことが出来るので、代謝が繰り返されていることになります。勿論、研究は長いスパンで考えることも重要なので、一人の教授が退官された後同じようなテーマを研究する別の方が来られることもあります。

- セミナーに関しても、学生が主体となって他大学の教授を招聘することがあります。学生はその教授の研究論文を事前に確認し、セミナー時には質問事項を用意していたり、ランチブレイクの際にコミュニケーションを取ったりしています。準備に掛ける時間は学生にとっても負荷がかかりますが、他大学の先生を呼ぶと費用も掛かっていますし学生はしっかり準備してセミナーに臨んでいます。

学生の負荷という点では、大学院の学生はどれくらいの授業を受けているのでしょうか?

- 平均して1コマ50分の授業を1日2コマほど受けていると思います。その内容は濃密で、予習復習に多くの時間を取られるため最初の2年間は勉強時間が主体となっているはずです。大学院での経験を続けるためにQualifying Examがあり、学生(博士課程の大学院生)はこれをパスする必要があります。全てのコースを修了したあとには、授業が持てるほどの実力が大学院生には付きます。

大学院に進む基準のようなものはありますか?
日本では内部からは同じ研究室に進学するケースが多く、外部からの進学者も基本的には内部からの受験者と同じ試験を受けたのちに大学院に進学していると思いますが。

- UCDでは大学院に入学するための試験はありません。また内部進学はごく少数で大学と大学院では別の大学に行くのが一般です。大学院における学費(tuition)は基本的に教授が支払いすることになりますので、教授は質の高い学生を集めるようにしています。そのため学生の選抜方法はよく研究されていてエビデンスに基づきます。基本的には書類選考と面接です。大学院に進学するための共通テストGRE(Graduate Record Examination)と言われる試験もありますが、GREのスコアと大学院の学生の能力には相関がないことが示されているのでUCDにおいて数年前からGREを受けなくてもよいことになりました。大学院では学術論文を書けるか(つまり研究を行う力があるか)どうかを指標として見ているケースが多く、大学院で論文を書く力と学部での専門教科の成績には相関があるということ。学部の指導教授からの推薦状は非常に大切です。

- 同様に大学生の選抜もエビデンスに基づきます。学部がまず欲しいのは大学でいい成績を取って卒業できる学生。高校時代の成績から大学の成績が予測できるのでアメリカの大学には入学試験がありません。各高校のトップ10%に入っていればUCへの入学が保障されますが、そうすると生徒全体のレベルが高い受験校の生徒が不利になるのでレベルの高い高校で10%に入れなかった学生もカリフォルニア全州の共通テストで上位10%に入っていればUCへの入学が認められます。高校生の受ける共通テストですが学生選抜にはあまりメリットがないことが指摘されて近年は受けなくてもいいことになりました。

学費の話が出ましたが、留学に際しては学費も考慮すべき一つのファクターになりますか?

- 確かに、学費は高いと思います。学生数の増加とともに州の予算では賄いきれなくなっている現状もあります。カリフォルニア州の学生は年間100万円ほどの授業料になりますが、オレゴン州からの学生は400万円ほどになる例もあります。ただ、入学後にカリフォルニア州に1年居住するとカリフォルニア州の登録居住者となるので授業料が減額します。外国籍の学生はカリフォルニア州登録居住者にはなれませんが大学院が差額を出してくれることもあります。学生はTAをやることで授業料を免除されるシステムもあり、これは日本人を含む外国人に対しても適用されています。また、学部別ではありますが外国人にスカラーシップを用意しているところもあります。

早稲田大学も奨学金制度の充実を目指しています。

- 学生へのサポートが充実するのは喜ばしいことだと思います。もちろん米国においても卒業生の寄付により授業料が賄われている例もあります。UCDではありませんがスタンフォード大学では両親の収入が1000万円以下の場合に学生の授業料が免除されるといったシステムもあります。スカラーシップ制度は充実しています。大学院では学生自身がスカラーシップを取ることもあれば教授が研究費から学費と生活費を払うこともあります。

応用化学科への思いを。

- 応用化学科の最大の課題は女性研究者の育成に対して積極的な意識付けがこれまでなされて来なかったことでしょう。応用化学科が学科の競争力を強化しまた豊かな社会の実現に貢献するために早急に解決しなければならない問題と考えます。これは時間が解決するような問題ではありません。学生の男女比が半々になってもなかなか教授の女性比が増えないこと、女性教授を採用しても様々な障害にぶつかり転職をしてしまうなどの事例は現在でも散見され、で欧米の大学でも問題解決策が模索されています。これは制度的性差別(Institutional sexism)つまり女性が不利になる仕組みが社会や組織の構造に組み込まれていて目に見えない不平等があるためでしょう。社会やアカデミアだけの構造的な問題ではなく私たち一人ひとりが問題の一部となっているため、アカデミアだけを批判するのは建設的ではありません。定期的な勉強会のようなことを企画し(1)女性研究者はなぜ必要なのか、(2)育成には何が障害になっているのかを議論をすることが必要だと思います。

今回、短期留学ではあまり耳にしない大学の側面も伺うことが出来、今後もUCD経験者の繋がりを維持していくことを確認しました。


参加者:春日孝夫さん(新39)、井川華子さん(新66)、仲谷孝道さん(新67)、春原晴香さん(新67)、ファシリテータ:加来恭彦(新39、広報)

早稲田応用化学会100周年講演会・祝賀会報告

応用化学会は,大正12 年 (1923年) 5 月に設立されて以来、令和5年5月に100周年を迎えました。これを記念して応用化学会100周年記念講演会・祝賀会を以下のスケジュールで開催いたしました。

【記念講演会・祝賀会】

以下リンクをクリックしていただければ、記念講演会・祝賀会の詳細を閲覧可能です。

  1. 記念講演会

  2. パネルディスカッション

  3. バーチャル・ツアー

  4. 記念祝賀会

    開会ご挨拶:濱逸夫 会長
    ご祝辞:田中愛治 早稲田大学総長
    乾杯ご挨拶:平沢泉 副会長
    名誉会員ご祝辞:河村宏 元会長
    名誉会員ご祝辞:西出宏之 前会長
    中締めご挨拶:橋本正明 副会長
    校歌斉唱動画

  5. フォトアルバム(2023年末まで公開)

    記念講演会_総長講演
    パネルティスカッション
    記念講演_集合写真・スナップ
    記念講演会_準備風景
    記念祝賀会_祝辞・挨拶
    校歌・集合写真
    祝賀会準備・スタッフ写真
    祝賀会スナップ

(文責:交流委員長 新36 椎名聡)

第43回早桜会懇話会(報告)

 第43回早桜会懇話会を2023年5月27日(土)イーセップ株式会社(京都府相楽郡精華町)にて開催しました。イーセップ株式会社は京都府相楽郡精華町にあるけいはんなオープンイノベーションセンター内に本社を構え、主にナノセラミック分離膜の開発や分離膜ユニットの製造・販売を行っています。現状の化学産業では分離工程にて多くのエネルギーを消費しておりますが、分離膜を用いると従来の蒸留等のプロセスと比較して省エネルギーで目的物を分離することが可能になります。昨今の環境問題への意識の高まりも追い風となり、膜分離技術に対する期待が高まっています。

 イーセップが今後力を入れていく開発テーマの1つにバイオマス資源からの燃料合成があります。具体的にはバイオマス資源のガス化から得られた二酸化炭素と水素を原料にメタノール水を合成します。得られたメタノール水を水素キャリアとして用いて必要に応じて水素を取り出すというプロセスを想定しています。またメタノールからガソリンを合成するプロセスは既存技術として存在するので、必要に応じてガソリンに転換することも想定しています。このプロセスのどこで分離膜が必要になるかというと、二酸化炭素と水素からメタノール水を得る工程においてです。二酸化炭素と水素からメタノールと水が出来る化学反応では逆反応も起こっており、収率が上がらないのが現状です。そこで分離膜を用いてメタノールと水を選択的に取り除くことで、逆反応が起こるのを防ぎ、メタノール水の収率が上がるという原理です。見学会ではイーセップの分離膜製造設備及び評価装置(写真1)を皆様に見学して頂きました。

写真1:イーセップ社の分離膜製造装置及び評価装置の様子

そしてまだ立ち上げ中ではありますが、分離膜と組み合わせたメタノール水製造装置についても外観を見て頂きました。(写真2)

写真2:現在立ち上げ中のメタノール水製造装置

今後開発されていく新技術ですが、地球の未来に確実に必要な技術であり見学会に参加して頂いた皆様におかれましては、大変に興味を持って話を聞いていらっしゃいました。

 メタノール水関連以外にもイーセップでは分離膜の製造や評価を行っていますのでそれらの設備についても見学して頂きました。特に10年前の会社設立当初、資金が十分無かった時に如何にして分析装置を揃えていったかという苦労話などは大変印象的であり、参加者の皆様も、よくぞここまで会社が成長したと、早稲田の同窓の活躍を喜んでいる様子でした。見学の最後には参加者の皆様で集合写真を撮影しました。(写真3)


写真3:参加者集合写真

見学会後は、久しぶりに懇親会を実施致しました。(写真4)

写真4:懇親会の様子

ここ何回か対面での開催を実施しておりましたが、懇親会は未開催でした。皆様久しぶりの懇親会ということで、イーセップ見学会の感想を始め、これから応化会、そして日本をどうやって盛り上げていくのか等、非常に話が弾みました。オンラインでの開催は懇話会の講師の先生の選択肢が広がる等、便利な部分もある一方で対面開催ならではの良さもあるということを改めて認識致しました。今年度の懇話会は対面を基本とする方針ですので、懇親会での議論も含め益々応化会が盛り上がっていくよう役員一同努めて参りたいと思います。(文責:三品)
【出席者(12名):敬称略】
津田實(新7), 市橋宏(新17),田中航次(新17) ,斎藤幸一(新33),和田昭英(新34), 中野哲也(新37), 脇田克也(新36) ,高田隆裕(新37), 澤村健一(新53), 陳鴻(新59),三品建吾(新59), 古田武史(新61)

新17回同期会開催報告:2023年5月20日 於 金城庵

コロナ禍の影響で長らく開催できなかった新17回同期会を12名が参加して4年ぶりに開催しました。今回は参加者の都合も考え、応用化学会設立100周年記念講演会・祝賀会と開催日を合わせ、正午から2時までの昼会として開催しました。

金子君の司会で、先ず前回開催以降にご逝去された内田健君、加賀山正己君、川崎勝敏君、桑原豊君、見並勝佳君、杢嘉雄君、横山功夫君(五十音順)のご冥福をお祈りし、一分間の黙祷をさせて頂きました。

コロナ禍をはじめ多難・激動する社会の中で、元気に集うことができたことを喜ぶ開会挨拶に続いて、全員で乾杯して会が始まりました。
次に、各自により順次近況報告や最近の関心事項などについての紹介がありました。
現役時代から続く月例麻雀会が生活リズムになっている人、海外勤務時代からの付き合いが今も続く人、老人ケア施設に入居し日々カラオケやゲームを楽しむ人、健康維持のため毎朝90分のジョギングが日課の人、元気にゴルフを頑張っている人、野鳥写真に興じる人など、夫々に充実した生活を楽しんでいる様子が分かりました。中でも西海君の名誉ある瑞宝中綬章受章の紹介、坪田君の声量を押さえた詩吟披露、三島君の足腰がちょっと不自由な人が靴下を楽にはけるように工夫した自作プラスティック治具の紹介等が印象的でした。質問やコメントも交えての和気あいあいとした楽しい時間でした。

会の冒頭には「これが最後の同期会かな」との声もありましたが、やはりリアルの会は楽しく印象的だったものと見え、2回/年の開催提案もあったほどの盛り上がりでした。
卒業後56年経っていますが、改めて「学生時代の仲間はいいものだ、技術屋魂は健在だ。」ということを感じるひとときでした。

会の終りは校歌斉唱と記念撮影が定番。今回は会場が本部キャンパスに近かったので、私達が学部時代に学んだ旧9号館の「応用化学実験室」の掲額を背景にしての記念撮影を行い応用化学会100周年にあやかる会のシメとし、元気での再会を約して散会いたしました。出席者の半数は100周年記念行事にも出席、充実した一日でした。

出席者:石井利典、大林秀仁*、金子四郎*,高橋志郎、高畑忠雄、高安正躬、塚原雅人、
経沢実、坪田正行、西海英雄*、三島邦男、室賀五郎。(五十音順。(*:幹事))。

(文責:大林秀仁)

早稲田応用化学会中部支部活動報告
(第19回山口先生交流講演会)

【第19回中部支部交流講演会(山口先生講演会)開催報告】

1. 開催日時; 4月8日(土)15:30~17:00
2. 開催場所; ウインクあいち1008号室
3. 出席者;  16名
4. 講師;   山口潤一郎教授
5. 議題;   『応用化学科の現状と分子レベルのものづくり研究』
6. 講演要旨の報告;

山口潤一郎教授のご講演
「応用化学科の現状と分子レベルのものづくり研究」の要旨

●応用化学科の現状
 初めにご自身/研究室/応用化学科の状況について触れられていました。日本最大の化学ウェブサイトChem-Stationについてご説明があり、2000年設立以来、23年間運営されているライフワークで、日本化学会化学教育賞等を受賞されていることが紹介された。
 2016年のご着任時には助教1名、学部生3名からスタートした研究室は現在、准教授1名、講師2名、博士課程8名、修士課程14名、学部生8名の34名で運営されている。博士課程への進学率も高い。
 応用化学科はモットー「役立つ化学」「役立てる化学」のもと、7つの研究部門「無機化学、触媒化学、応用物理化学、化学工学、応用生物化学、高分子化学、有機合成化学」があり、それぞれに社会課題の解決に向けて、研究活動されていることが紹介された。新任のご先生等の2016年以降の教室の変化、121号館(早実跡地)での研究活動開始、52,53,54,59号館での増築計画、学科独自の奨学金等が充実してきている事もご紹介されて、応用化学科が進化し続けていることが実感された。

●分子レベルのものづくり研究
 初めに、ものづくりとしての有機合成化学のイロハを「分子をつなぐ」「分子をぶっ壊す」「革新的な分子を創る」というキーワードで分かり易く教えて頂きました。具体的事例として芳香環同士が直接連結した分子を取り上げて、医薬品成分としても多数存在していることが紹介された。如何に作るか、芳香環同士をどうつなぐかは昔から研究されているが、難しい課題であると述べられた。芳香環同士を連結する方法の一つはクロスカップリング反応で、その中の一つで2010年に鈴木章教授がノーベル化学賞を受賞している。この反応は芳香族ハロゲン化物と芳香族ボロン化合物を原料としてパラジウム(Pd)触媒/アルカリ存在下で行う。この反応は安定で収率も高く取り扱いやすいが、原材料には難点がある。原料は共に高価、製造は多ステップで廃棄物多、パラジウムは高騰中である。

 次世代型のクロスカップリング反応を開発することで、医農薬等の有用化合物を製造できるようにすることは、有機合成化学者の仕事の一つである。具体的な研究としては、製造難の芳香族ボロン化合物代替として粗原料の芳香環のC-H結合を直接活性化・切断すること、触媒として安価なニッケル(Ni)化合物を使用することを検討している。適用例として、痛風治療薬フェブキソスタットや複雑な天然有機化合物が紹介された。
 また、エステル化合物適用の研究内容も紹介された。山本明夫教授が錯体レベルで反応機構を解明していた脱エステル型変換反応については、多種の求核剤を発見し、各種の新規合成法を開発していった。不活性なエステル化合物を反応させるためには、金属触媒(Pd,Ni)の機能UPが必要で、独自開発の新規な配位子を開発したことが重要であった。この配位子はDCYPTといい、現在では関東化学より全世界で発売されている。
 開発された反応、各種の研究内容が紹介された。エステルからの脱カルボニル型エーテル合成、エステルダンス、光触媒による安定結合の切断、結合交換反応、ヘキサアリールベンゼン(置換基の芳香環が全て異なる)、植物の生物時計制御分子(AMI-331という名で東京化成より発売中)、パーキンソン病早期診断ツール、たんぱく質を固定する分子、・・・・・・

 最後に一期生からの博士課程卒業生の業績、受賞歴、海外留学等について紹介があり、学生と共に研究室が育まれ、大きく成長してきていることが伺われた。「根本的に研究が好きであるが、教育が中心にして、化学の面白さと可能性について学生に伝えていきたい、いい学生を輩出したい」とのお言葉で締めくくられていた。
 学生時代の有機化学講義以来、有機化学構造式、反応式にあまり縁のなかった多くの中部支部諸氏に対して、研究成果を平易に説明頂きました。ご講演後、質疑も行われ、博士課程比率の高さ、構造同定について、学生の教育、ケムステーション、山口研のディスカッション文化、海外アクセスの多さ等について活発に議論された。

*尚、講演終了後、集合写真の撮影と懇親会が行われた。

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2023年度早稲田応用化学会中部支部総会実施報告

【中部支部2023年度総会 実施報告】

1. 開催日時; 2023年4月8日(土)14:30~15:30
2. 開催場所; ウインクあいち1008号室
3. 出席者;  16名
4. 議題;   
   第1号議案: 2022年度事業報告
   第2号議案: 2023年度事業計画
   第3号議案: 2022年度会計報告および2023年度予算案
   第4号議案: 2023年度中部支部役員構成
   第5号議案: 若手部会の活動方針とIT化の考え方について
5. 議事内容; 
   添付のpower point資料に基づき、第1号、2号、4号議案
  については友野支部長より、第3号議案については加藤会計担当理事
  より、また第5号議案については山本若手部会・IT化担当理事より
  説明が行われた。第1号議案~第4号議案は総会承認事項であり、
  拍手をもって承認された。
   第5号議案については、若手会員の意見について活発な質疑応答が
  行われた。特に育児中の若手会員にとって、土曜日に開催される
  支部のイベントに出かけて長時間参加することは負荷が大きく困難
  であり、ハイブリッド化を推進いただければありがたい、とのご意見
  に執行部としても同意見であること。対応するため、2023年度の
支部予算としてハイブリッド化設備の購入費を申請している旨の
回答があった。

以上  

2023年度早桜会総会後講演会(報告)

 2023年度早桜会総会を2023年4月15日(土)にWEB形式(Zoom)にて開催し、その後講演会を実施いたしました。今回の講師には和田昭英先生(神戸大学理学研究科教授)をお迎えし、「へそ曲がりの光化学」という演題でご講演して頂きました。

【講師】和田昭英氏 (神戸大学理学研究科教授)
【概要】
 和田先生には光化学の新しい切り口について,神戸という街の紹介も交えてお話しいただきました。お話の前半は「答えから考える光化学」という研究テーマのお話で,遺伝的アルゴリズムと呼ばれる最適化手法を超短パルスレーザーのパルス形状に適用することで光化学反応を逐次的に制御する方法について紹介して頂きました。通常は反応物の時間変化を追跡して反応機構を調べていくところを,“へそ曲がり”なこの手法では波形最適化により理屈抜きにして光反応の制御を実現して,得られた波形を詳しく解析することで制御機構(理屈)を明らかにします。この手法の応用例として,ペリレン結晶の励起状態制御を実現し,さらに得られたパルス形状を解析することで明らかにされた制御メカニズムについて説明して頂きました。
 後半は「俯瞰して見る光化学」という研究テーマのお話で,太陽光の様な白色光で駆動される光化学反応を調べる新しい手法についてご説明頂きました。通常は照射する光(単色光)の波長を変えて反応の進行度の波長依存性を調べるところを,この手法では白色光を干渉計に通して波長ごとに異なる周期で変調する“へそ曲がり”な方法を採用することで,単色光照射では観測の難しい多色多段階の反応まで観測できます。非常に感銘を受けました。この手法の応用例として,アゾベンゼン誘導体について青色と赤色の2色の光が関与した多段階光異性化反応の観測例について説明して頂きました。
 また,お話の合間合間に神戸の紹介が入り,例えば神戸大学周辺の紹介や,神戸の山(摩耶山)の上から見える景色や神戸港の遊覧船から見られるクルーズ船や海上自衛隊の潜水艦などの紹介もして頂き、神戸の街を訪れたくなりました。
(文責:三品)

【出席者(15名)】
津田實(新7回),井上征四郎(新12回),市橋宏(新17回),田中航次(新17回), 井上昭夫(新17回),熊谷和夫(新31回) ,斎藤幸一(新33回),和田昭英(新34回),脇田克也(新36回),高田隆裕(新37回),中野哲也(新37回),澤村健一(新53回),陳鴻(新59回),三品建吾(新59回),古田武史(新61回)