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第11回「στの会」開催報告

第11回στの会集合写真

第11回「στの会」を3月17日(土)に大隈会館教職員食堂「楠亭」で開催しました。今回は佐藤先生の23回忌という節目の年であり、先生への感謝の意を新たにすると共に、佐藤先生のご薫陶を長い間受けられました村山栄五郎氏に話題提供を頂き、在りし日の先生を偲ばせて頂きました。今回も参加者は30名超となりました。
多田先生、佐藤先生のご家族をはじめ、幅広い年代層の集いとして続いていますが、佐藤研と多田研は親密な交流と相互啓発が続いた研究室同士であり、改めて出席者はその繋がりを再確認しました。

多田先生と佐藤先生のご家族ほか

話題提供は、「医療用医薬品と一般用医薬品と機能性食品」―年寄りの冷や水―佐藤匡先生を偲びつつーとの題で、先生のお人柄を思い起こさせるエピソードや典型的な業績集である本の紹介等を含め熱く語って頂きました。
その後、会は多田先生のご挨拶と乾杯の音頭により会食が始まり、懇談が進みました。恒例の全員によるスピーチでは、近況報告や趣味、社会貢献、などに加え佐藤先生にまつわる話題も多彩で、相互刺激にも一役買った時間となりました。この会は新入会員が入らない平行移動で年を重ねる会ですが、社会参加への意欲が強く、そして相変わらず笑顔の多い会で3時間の会食時間もあっという間に過ぎ、集合写真を撮った後、名残惜しげに散会となりました。
次回、来年は会場(大隈会館・楠亭)の都合で、3月の第4土曜日(3月23日)を開催候補日としますので、是非、会員の皆様におかれましてはスケジュール調整にお含みください。
末尾になりますが、今回のこの同門会便りで開催を知った方も居られると思いますが、メールアドレスの判明している方々への呼びかけで開催に漕ぎ着けていますので、ご理解を頂きたいと同時に、不備のあったことはお詫びしたいと思います。次回以降に向けてメール連絡網を整備するためにも、会員の方々のアドレス登録を幹事役の井上まで(下記アドレス)お願いいたします。

(文責:幹事役、新制19回井上健:takeshi.inoue@akane.waseda.jp)

川上浩良先生講演趣意

 

Big Ideas In Chemistry

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本日は、このような機会を与えていただき、応用化学科の先生ありがとうございます。私は、1991年3月に早稲田大学応用化学科高分子研究室で西出研先生のご指導をいただきで博士号を取得させていただきました。その後、直ちに米国に留学、2年後都立大学(後の首都大学東京)に戻り研究を続けております。水野賞(第4回)も受賞させていただきました。その折非常に助かりました。ここに改めて感謝申し上げます。2006年から教授をつとめています。今日受賞の皆様奨学金受給者の皆様誠におめでとうございます。

川上浩良先生

今日少し大きめのタイトルをつけさせていただきましたが、必ずしも私がこのようなことをしているというわけではなくて、是非皆様方にこういう大きな仕事をしていただきたい、社会に出てアカデミックな分野あるいはビジネスの分野であっても社会を変えるような大きな研究をまたはイノベーションを起こす研究を行っていただきたいという意味を込めて付けたタイトルです。

今日3っつほどのことをしゃべらせていただきたい。先ほど三浦応化会会長からのお話にも出ましたように、日本の産業界あるいはサイエンスの分野は厳しい状況にあります。(皆様ご存知のこと思いますが)いくつかの例示させていただいた上で私共の研究を紹介させていただきますが、これは皆様方がこれから独立されるあるいは社会にで出て研究されるときの一つの考え方のツールになればと思い紹介させていただきます。最後に皆様の思いををもって締めくくりといたしたいと思います。

これは2000年の世界時価総額になります。20から30年まえにバブルがはじけた状況といわれておりますがそれでも2000年では世界のTop10のなかに2社の日本企業が入っていましたし、13位にトヨタとかホンダが入っています。2018年1月の時価総額になりますと残念ながら日本の企業はTop10にはなく、代わりに中国が入ってくる。日本が誇るトヨタでも43位と非常に厳しい情勢になっています。世界で見る日本の影がどんどん薄くなっているのが現状です。

GDPでは世界3位なので大丈夫ではとおもいますが、これは総和であるので単純に個人当たりにすると世界の順位は25位、シンガポールに2万ドルの差をつけられています。平均給与に至っては20から30年は世界の結果はどのどんあがっていくのに反して日本はほぼ一定の456万円で18位で産業界は厳しい状況にあります。

研究の分野では高いよといわれますが、化学、物理、電子工学ではNatureへの論文数ではTop10の中に入っています。ただ、新しい学問分野、例えばAIを見た時には日本はTop10(7位)に入っていますが、どんどん地位が下がって日本は追い出されて状況です。機関別論文数を見ると日本Top10に入っていません。日本の機関では東大が64位、二位が東工大で262位でもうほとんど影すらない状況です。つまり、従来型学問では世界の好位置をキープしていますが、新しい学問ではもう影すらない状況です。これは大学の状況も同じことで早稲田も本学もアジアの人々を取り入れており、従来の学問領域ではアジアの学生さんも日本を目指してくるが、新しい学問分野になると日本の学生ですらアジアにいって学ぶことになる そんな時代が来ているということです。

2004年から携わっている仕事ですが、私が卒業した1991年の頃ですと5ないし10年先を見透うせる社会でしたが、現在の世の中の成長は指数関数的ですので、例えば5年後もなかなか見透せない時代に来ている。ネット接続機器(2015年80億台、2020年500億台)、ヒトゲノム解析については2000年には日米英の3か国で3000億円をかけて人一人を解析していましたが、2015年では一人1万円で解析できるようになっています。3Dプリンター(2007年 4万ドル、2014年 100ドル)になり、このような早いイノベーションが起きている中で皆さんは社会に出て活躍しなければならないわけです。また、人生100年時代になり、昨年生まれた子供の平均余命は107歳まで生きると予測されているのでこのような社会に出た後で、恐らく80歳位まで働かなければ日本の経済が破たんしてしまいます。そういうことを考えるとこのように世の中の変化が早く、長がく働かなければならない社会で皆様は活躍しなければならないということになります。

このような社会の中で自分たちが研究するうえで、学生に何を伝えるかということになります。私の研究室では学生にはPlatform技術を作るとよいといっている。新しい現象を発見してそれを基礎から実用化にもっていくということを意味している訳ですが、学生に訴えるときには解りやすい言葉でインパクトのある言葉で伝えることが重要ですので「Platform技術を作りましょう」といって学生と研究に励んでおります。一番の考え方としては現象を見つけた時はそれを技術まで昇華する。ですからここに当然時間を割くということも重要でしょうが、実用化のところを常に見据えながら研究をすすめたいなと思って研究を進めてきております。
それからスピード感は大事です。ノーベル賞を取られた先生は、一つのことを長くやることが重要だとおっしゃられております。確かにそうだと思いますが、但し、これからは研究のスパンはどんどん短くなってくると思います。iPSは6年でノーベル賞をもらっています。そういう意味からするとこれからいろんなビックアイデアといわれるものは短いスパンでどんどん出てきて、そこの中で勝負をしていかねばならないのです。そう言う意味で学生にはいつもいつもスピードスピードといっていますが、スピード感を持って研究を進めていくことが大事です。

そして研究のレベルがあらゆる分野で高くなってきていて1研究室で研究を終わらせるということはほぼ不可能になってきます。ですからいろいろな研究者の協力、あるいは企業の協力を得ながら研究を進めていかなければいけないので 特許を取得した後は世界にオープンにして多くの研究者と研究を進めてきております。

川上浩良先生のご講演

我々のところはスタッフも多く、恵まれた研究室になっています。そこでは8つのテーマを研究しています。田中先生も早稲田大学応用化学科の出身者で、助教で頑張っておられます。学生は30名位で研究を進めております。今日はこの中の電解質とナノファイバーに関する内容についてご紹介させていただきます。

ご存知のように水槽や蓄電池これはエネルギー分野で必修の技術になってきます。昨年度内閣は安部首相の下で水素戦略基本方式を立てましたけれども、首都大学東京の支持母体であります都庁は、2020年にオリンピックのときに「水素社会をlegacyで残す」ということになりまして、大学の中に水素エネルギー社会構築推進センターを作ってサポートしている状況です。必ずしもそれのためというわけではありませんが、「固体電解質膜の重要性」にかんがみ、燃料電池用の個体電解質膜の研究を進めてきております。ここで出てきた技術を全個体型のリチウム電解質膜のほうに応用するという研究を進めています。これが一つのPlatform技術になって一つの研究からその横の展開としてさまざまな分野に応用できるとしてこういう研究をしております。

「燃料電池用電解質膜の課題」に関しましては、すでにトヨタとかホンダで燃料電池車が走っているので多くの皆様は、終わった技術と思われるかもしれませんが、価格が非常に高くてトヨタでは売れば売るほど赤字になる。実際に我々が安価に使うためには多くのブレイクスルーが必要になってくるわけです。電池ですので抵抗が低いとか燃料がガスですのでガスが抜けてしまってはまずいのでリークが起きないこと、当然長い間使えることが必要になってきます。抵抗を下げるためには伝導性を上げることも重要ですが、一方で膜厚を薄くすることも重要になってまいります。 いま世界中の研究者たちの最大のフォーカスは膜厚をいかに薄くするか薄くするということはそれだけでコスト低減につながりますのでこれが最も手っ取り早いということで世界中でいかに膜厚を薄くするという競争が進んでいる。

ところが薄くするとガスが多く抜けていってしまい、安定性も損なわれることになりますのでこういったところのTrade-Offをいかにクリアしていくかが重要になってきます。プロトンは水を介して移動するので今の燃料電池は加湿器を付けて80℃くらいで膜が濡れる状態でプロトンを移動させています。これが車のコストを上げる原因になっていますのでこのような状況を改善する必要性がでてきます。今申しあげてきたところを整理しますと現状の膜はこのようなところにありますがターゲットとしましてはこういうところに電解質膜ができないといけない。ところが湿度を下げてまいりますと水を介している、あるいは酸をたくさん入れている状態ですので、加湿が低い状態ではプロトンがうまく輸送しないということになって伝導性が著しく下がってしまう、ということが挙げられています。

酸をいっぱい入れた状態にしなければいけないので安定性は膜が柔らかくなるので下がって、また、燃料である水素とか酸素がプロトンで高いところでは膜が柔らかい状態になりますのでどんどん抜けていくことになります。ですからエネルギー効率も悪くなる。こういったTrade-Offの関係を如何に打破するかということが燃料電池のコストを下げながら安定的に使える材料になる。

私達は高分子のナノファイバーを持ち込んで先ほどのTade-Offの関係をを打破できないかという研究を進めてきております。 ナノファイバーは表面積が広く、ナノレベルになると今まで知られていないような現象がでてくる、例えば、ナノファイバー表面ではほとんど摩擦が発生しない、ファイバーの中では高分子がかなり高度に背向してくる。ですから通常のポリマーでフィルムを作るのとは違う現象がでてくるのでそれをうまく使いながら電池にしようと進めております。ナノファイバーの内側の表面に近いところにスルフォン酸基が形成されるパスあり、プロトンはスルフォン酸基を介して迅速に移動することができるようになる。グラフト化されたブロックポリマー中のプロトン移動をみるとフィルム状とファイバー状では二ケタの違いが出てきた。いろいろな効果が重なると早い伝導性がでてくることが判明した。

その他、超比表面積効果、ナノサイズ効果、超分子配列効果、ナノファイバーの化学的・熱的安定性等の結果が示されたが、企業との研究があるのでデータは割愛します。

 終わりに、Big Ideas In Chemistry について言及します。色々なアイデア、特にバイオ分野で新しいアイデアが出てきております。私は、現在東京都のバイオベンチャー支援事業又はライフサイエンス事業の支援委員長をしている。例えばユーグレナ(ミドリムシ)のサポートをしています。
当初は研究者たちも自分達の研究のところを主張する方が多かったのですが、当然自分の研究はするが、最近は、それに合わせて実用化のphaseまで一緒に考えるようになってきました。例えば、iPS細胞を作ります。といった時にiPS細胞を作るところまでは自分たちの技術でしようと主張しますが、それを作るうえでの自動化ロボット等を含めてアイデアとして提案する。最近ほとんどの分野でそのような形になってきている。彼らもスピードを重視してオープンイノベーションでいろいろな分野の人達を巻き込んで研究を進めている。今それを実施している研究者は、若いです。ほとんどが25歳位でたまに35歳まで、このような研究者がどんどん提案してきている。従って、この分野では日本の未来は明るいのではと思っている。

一方で心配しているのは量子コンピュータで量子化が進展して来た時に、果たして合成しているChemistryの分野の研究者が残るのか否かが心配です。米国では「マテリアルゲノム」という大きなプロジェクトがスタートして瞬時にこのような化合物を作らせるために量子コンピュータを使って計算して目的物を合成してしまう。今後10年後ぐらいには従来の合成分野でもデジタルに負けるということになると合成化学として更に厳しい状態に陥ることになる。私の研究室ではバイオの研究も行っているのでバイオ研究をしている学生で、博士後期課程に進む予定の人には半年間インフォーマティクス、DNA、最近ではRNX、など徹底的に勉強させて情報とマテリアルの融合をしていかないと生き残れないのではと推測しています。試験的に現地に送り込んで勉強させております。

 働き方改革が国会で議論されていますが、欧米のまねではないかとの違和感がありますが、若い時代に厳しいトレーニングを積んでいると社会に出たときに役立つことがわかっています。若い時には体力、気力が充実しているのでここで鍛えておかないとその先では無理。従って、体力、気力が一番充実しているこの時期に先生方に鍛えていただき、卒業してください。その鍛えた方ですが、米国の教育学などで言われていることですが、高めの要望、チャレンジングな仕事を与えることが必要です。

 最後に、フォーブスが2017年にベンチャーで起業化して成功したほとんどが米国人(日本人はたった一人)の30歳以下の人々に起業化の際に重要なことはないかをアンケートした結果です。第3位はビジョン(20%)、2位が情熱(50%)、最も多かったのは根性であったとのことです。即ち、やる気があれば人生成功するとのことです。

以上で本日の講演を終了です。

Floorからも活発な質疑討論がありました。

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各受賞者の研究テーマ

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水野賞受賞者

山本 瑛祐 君
メソポーラスシリカナノ粒子の精密作製に基づいた新規ナノ粒子結晶の構築

吉川 昌 君
Synthesis and Polymerization Behavior of Oligosiloxanes Possessing Alkoxy Groups

川井 拓真 君
キノン置換レドックスポリマーの有機二次電池への展開

佐藤 歓 君
ラジカルポリマーにおける電荷輸送の高速化と充放電デバイスへの応用

白江 宏之 君
Fast, High-Yield Fabrication Processes of Low-Resistivity, Flexible Carbon Nanotube Films

露木 康博 君
Reaction Mechanism Analysis of Si Electrodeposition Process in Ionic Liquids

真鍋 亮 君
Low Temperature Catalysis via Surface Protonics

水野敏行奨学金受給者

須澤 徹生 君
糸状菌Aspergillus luchuensis WU-2014 由来フィターゼの利用を目的とした酵素的性質の解明

林 宏樹 君
電界効果トランジスタバイオセンサにおける糖鎖固定化界面のインフルエンザウイルス捕捉能の評価

吉岡 育哲 君
糸状菌Aspergillus nigerにおけるシアン非感受性呼吸酵素遺伝子の有機酸代謝工学への応用

諏訪 康貴 君
ホール輸送高分子の合成とペロブスカイト太陽電池への導入

斎藤 晃 君
金属担持ゼオライト触媒によるエタン脱水素芳香族化反応

牛木 涼友 君
アルカン脱水素反応に対するPt,Feイオンを交換したゼオライトの触媒特性

藤平 誉樹 君
磁気記録応用に向けた化学合成FePtナノ粒子の配列形成と熱処理効果

里見奨学金受給者

海野 城衣 君
FBRMとFT-IR-ATRによる有機物結晶における核化・成長速度パラメータの算出

小松田 雅晃 君
脱芳香族的官能基化反応の開発

応用化学会給付奨学金受給者

吉岡 育哲 君
糸状菌Aspergillus nigerにおけるミトコンドリア局在型輸送体遺伝子の機能解析とクエン酸高生産への応用

小池 正和 君
積層方向に細孔を有する層状ケイ酸塩の最適な設計によるゼオライト膜の作製及び分離膜への応用

池 勇樹 君
超音波誘導核化手法を用いたアミノ酸結晶の多形制御

海野 城衣 君
FBRMとFT-IR-ATRによる有機物結晶における核化・成長速度パラメータの算出

 

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三浦千太郎応化会会長の祝辞

三浦会長の祝辞

本日は各賞受賞の皆様、誠におめでとうございます。
早稲田応用化学科は、先輩諸氏の寄付により大変充実した奨学制度を持っており、途切れることなく現在も運用され続けており、応用化学で学ぶ学生諸君にとって大変恵まれた環境が用意されております。
今日、いただいた水野敏行奨学金、応用化学会給付奨学金、(中曽根奨学金)、里見奨学金の四つの賞がありますが、これらはそれぞれ個人の先輩諸氏の寄付金によって成り立っております。その中で個人名の冠を付したものには原資に限りがありますのでいずれ終焉する宿命があります。ただ、過去に平田賞や古賀賞のように個人の冠を付したものはいくつかありましたが、終わると直ちに里見奨学金あるいは中曽根賞のように新しい先輩の熱い思いが後輩の諸君にそして母校に対して寄付されるという恐らく他の学校では類を見ない早稲田大学応用化学科固有の大変素晴らしい伝統があると自負しております。一昨年新しく賞を創られました中曽根先輩はその対象が応化全体ではなく高分子に限定されておりますが、中曽根先輩の後輩に対するそして母校に対する熱い思いが、そして、最大規模を持つ水野敏行奨学金、河村さんはこの水野家の代表で水野家の思い、応用化学会には応化会550名の先輩及び先生方の思いがあります。また、里見さんも自分が社長になったらすぐに早稲田の応化に寄付制度を作るという風に言っておられましたし、それぞれの賞には先輩諸氏の後輩に対する熱い思いがあります。
今日受賞された皆様は、肝に銘じて発奮して勉学に勤しんでいただきたいと期待しております。
明治以来、我が国は高度な科学技術をもって国力を高めてきました。敗戦後も民間の力を使ってこの高度な科学技術力は益々向上し、現在の繁栄に繋がっています。
しかしながら、国際情勢は大きく変わり始めています。特に途上国の驚異的な発展により化学界も従来主流であったエネルギー素材系、いわゆる基盤インフラから生命、医療、ナノテクなどの新しい技術を加えた新しい科学に転換しようとしています。
第2ステージを迎えようとしているこの時代、しかしながら大変憂慮すべきことでありますが我が国を支えてきた科学技術が世界の序列の中で大きく著しく後れを取り始めているという意見が多く出てきております。ノーベル賞は、ここ数年、化学、生命医療、を初めとして多くは二度も受賞して喜びをもって受け止めていますが、ノーベル賞受賞者である大隅教授は、「これも思うに、20年から30年前の研究成果に対する評価であります。研究者が非常に減っていく中でこの状況が継続できる、あるいは将来にわたって持続できるのかどうか自分は憂慮している」と発言している。ご多分に漏れず早稲田大学応用化学科も博士後期課程進学者をなかなか集めにくいという嘆きを先生方から漏れ聞いております。
皆様は、化学界の最高学部の代表選手になったわけですから先輩方、先生方の熱い思いを是非ご自分の今後の研究生活に反映させて我々の期待に応えていただくよう精進をお願いします。
最後に諸君が卒業して社会で活躍し、少し手元に奨学金以外のお金が入ってくるようになった時にこの日のことを思い起こしていただきたい。
今度は諸君が後輩たちのために寄付をする、応用化学会に寄付を預けていただくことを切にお願いいたしましてお祝いの挨拶といたします。

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2017年度 応用化学専攻 褒賞、奨学金 授与式

司会 細川誠二郎准教授

2018年3月8日(木)午後3時30分から理工学術院西早稲田キャンパス62号館W棟1階大会議室にて細川誠二郎准教授の司会により式次第に則り2017年度 応用化学専攻 褒賞、奨学金 授与式が執り行われました。

先ず、開会にあたり松方正彦主任教授から水野賞、水野敏行奨学金、里見奨学金、応用化学会給付奨学金を受賞される皆様に、誠におめでとうございますとお祝いの言葉と、それぞれの褒賞・奨学金の成り立ちの説明があり、最後に「水野敏行さま、河村宏さま、及び応用化学科、応用化学会の数多くの諸先輩方のお気持ちによる褒賞、奨学金の重みを、受賞者の皆さんには噛みしめて欲しいと思います。」 と結ぶご挨拶を頂きました。

松方正彦主任教授

引き続き大学院先進理工学研究科長 若尾真治教授から祝辞として、「応用化学科は、1917年に本科として設立してから名前が変わることなく、100周年を迎えた非常に歴史のある学科で、9000人を超えるOGOBがおり、世界規模での活躍があるとともに母校への多大な寄与もある伝統の重みがあります。若い方々はこの重みを励みとして更に研鑽を積んでいただき、ご発展されることを心から祈念いたします。」とのお言葉を頂きました。

先進理工学研究科長 若尾真治教授

水野賞、水野敏行奨学金、里見奨学金、応用化学会給付奨学金 授与式

大学院研究科長の若尾真治教授から、水野賞、水野敏行奨学金、里見奨学金、応用化学会給付奨学金が、各表彰、奨学金受給者一人ひとりに賞状、証書を授与されました。

なお、松方正彦主任教授から里見奨学金、応用化学会給付奨学金についての説明が追加されました。

  • 水野賞受賞者

山本瑛祐君、吉川昌君、川井拓真君、佐藤歓君、白江宏之君、露木康博君、真鍋亮君(川井拓真君は体調を崩し、小柳津先生が代理受賞)

  • 水野敏行奨学金

須澤徹生君、林宏樹君、吉岡育哲君、諏訪康貴君、斎藤晃君、牛木涼友君、藤平誉樹君 (斎藤 晃 君は所用のため欠席)

  • 里見奨学金

海野城衣君、小松田雅晃君

  • 応用化学会給付奨学金

吉岡育哲君、小池正和君、池勇樹君、海野城衣君

 

来賓ご祝辞  早稲田応用化学会会長 三浦千太郎 様

三浦千太郎 応化会会長

 三浦会長からは「本日は本当におめでとうございます。ご案内のように早稲田大学応用化学科には大変多くの褒賞制度が作られてきており、諸先輩達の学生を支援する非常に強い、そして稀有な思いがこれらの充実した制度を作り上げてきたものであります。本日受賞された皆さんは早稲田大学の誇るべき人材でありますが、この制度の恩恵に預かったお返しに、後輩達への責務を今日から担っていくと言うことをお考え下さい。そして、いずれ皆さんも社会に出て行くわけで、それなりに経済的な自立が出来た折には、是非今日の日を思い起こしてください。」とのご挨拶を頂きました。

 

受賞者代表挨拶 吉川昌 君 

吉川昌君

受賞者代表として吉川昌君より次のような挨拶がありました。

このたび水野賞を応用化学専攻より授かる幸運に恵まれ、受賞者一同身に余る光栄と深く感謝しております。今回の受賞および博士の学位の取得は、学部入学から今日に至るまで化学の面白さ・奥深さをご教授いただいた諸先生方、応化会をはじめとした応用化学科を支えてくださいます諸先輩方のお蔭であり、厚く御礼申し上げます。この度、名誉と伝統のある水野賞をいただいたことに対して、水野敏行様ならびにご遺族の方々に深く感謝いたします。今後、私たちは各々の進路は異なりますが、応用化学科で学んだ「役立つ化学、役立てる化学」の精神を胸に、科学技術の発展と普及に貢献すべく、より一層、精進していく所存でございます。今後ともご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申しあげます。

2018年3月8日 受賞者代表 吉川昌

 

記念講演会  首都大学東京 都市環境学部 川上浩良教授

第1回水野賞受賞者の菅原義之教授から川上浩良教授のご略歴のご紹介があり、また多々ある受賞歴(1991年第4回水野賞、1996年日本MRS若手奨励賞、1999年日本膜学研究奨励賞、2005年ポルフィリン研究会奨励賞、2005年日本人工臓器学会論文賞)についてもご紹介がありました。
引き続き、「Big Ideas In Chemistry」と題する講演が行われました。

首都大学東京 都市環境学部 川上浩良教授

 

引き続き、各受賞者の対象論文のポスター発表が同じフロアで行われました。

  • 水野賞受賞者
  • 水野敏行奨学金受給者
  • 里見奨学金受給者
  • 応用化学会給付奨学金受給者

 

懇親会 

懇親会は、ポスター発表に引き続き同じフロアで開催されました。まず、水野家代表の河村宏名誉会員のご挨拶と乾杯のご発声でスタート。記念講演をされた川上浩良教授を交えて和やかに談笑の輪が広がり、予定通り19時過ぎにお開きとなりました。

河村宏名誉会員による乾杯のご発声

 

写真、文責・広報委員会 相馬威宣(新13回)

 

2017年度 褒賞・奨学金授与式 Gallery

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第16回 先生への突撃インタビュー(下嶋 敦教授)

下嶋敦教授

「先生への突撃インタビュー」の再開の4番バッター(第16回)として下嶋敦教授にご登場願うことにしました。
今回も学生にインタビュアーとして参加をしてもらい、応化会の本来の姿である先生・学生・OBの3者による合作を目指しました。下嶋先生にも快く賛同していただきましたことを、この場をお借りしてお礼申し上げます。
下嶋先生は、1995年 早稲田大学理工学部応用化学科卒、1997年 同大学院理工学研究科修士課程修了、1997-1999年 昭和電工(株)、2002年 早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了・博士(工学)、2002-2005年 日本学術振興会特別研究員(PD)、この間(2004〜2005年) カリフォルニア大学サンタバーバラ校訪問研究員、2005年 科学技術振興機構CREST研究員、2006年 東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻助手、2007年同助教、2008年同准教授、2013年4月より早稲田大学理工学術院准教授、2017年4月より同大学教授となられています。また、2006年度に日本セラミックス協会進歩賞を、2017年度には早稲田大学リサーチアワードを受賞されています。

・先生が研究に本格的に取り組み始めたキッカケはなんですか?
     ~社会人になりたてで、学術誌に2報の論文が掲載されたことも大きかったですね~

子供の頃からファインセラミックスや炭素繊維などのいわゆる「新素材」に関心があり、またその一方で昆虫や魚などの生き物が好きでバイオにも興味を持っていましたので、早稲田の応用化学科に入りました。学部時代はあまり勉強熱心な学生とは言えませんでしたが、研究室に配属されて黒田先生、菅原先生のご指導のもと卒論研究に着手すると、材料合成の楽しさに目覚めました。最初にいただいたテーマが分子の自己組織化に基づくユニークなもので、何か新しい材料が生まれそうだとワクワクしながら実験していたのを覚えています。修士課程修了後は化学メーカーに入社し、2年ほど電子材料の研究開発に携わりましたが、この間に大学時代の研究成果が2報の論文として学術誌に掲載されたことで、大学で基礎研究を続けたいという想いが強まり、意を決して大学に戻りました。博士後期課程からポスドク時代を含めた数年間は、主に分子設計に基づくシリカ(SiO2)系ナノ構造体の合成研究に没頭する日々を過ごし、多くの失敗を積み重ねながらも、その過程でさまざまな経験と知識を蓄積し、現在の研究につながる基盤を築きました。応用化学科の教員に着任する前の東京大学在職中(2006〜2013年)には、より工学的な研究の視点を養うと同時に、企業との共同研究で産学連携の貴重な経験を多く積むことができました。

・技術的内容で先生がポイントと考えておられる点はなんですか?
      ~無機合成を高度化するために幅広い知見を活用していくこと~

無機材料の合成というと焼成などの高温プロセスによるものがイメージされますが、温和な液相プロセスをベースとすることで、有機物とのハイブリッド材料の合成や、有機合成のようなstep-by-stepの精密合成、さらに分子や粒子の自己組織化を利用した高次構造体の構築などが可能となります。ガラスのようなありふれた材料であっても、分子スケールからマクロスケールで精密かつ階層的に構造制御することで、これまで報告されていないような新たな機能発現が期待できます。そのためにはさまざまな手法を取り入れた高度な合成技術が必要となります。また実用化に向けては、資源豊富な原料を用いて、いかに効率的かつ低環境負荷のプロセスで有用な材料を創出するかが、これからの時代は重要と考えています。

・先生の研究理念を教えてください。
    ~学術的新規性とオリジナリティがベースに~

 研究テーマ設定の際は、具体的な応用の出口を見据えつつ、何よりも学術的な新規性やオリジナリティ、さらに波及効果を重視しています。研究の目的は明確である必要がありますが、一見マニアックな合成研究でも、その価値や意義を信じて何年かかっても粘り強く遂行することが、革新的な技術開発につながると考えています。合成研究はいまだトライアンドエラーに依存する部分が大きく、思うような結果が得られないことも多いですが、どんなささいな現象でも見逃さず、そこから新たな展開に結びつけるよう常に心掛けています。

・関連質問として企業の研究と大学の研究の違いは?

企業の研究テーマは一般的にはニーズ先行型で、その評価は比較的短期的なスパンで行われることが多いと思いますが、大学の研究は新たなシーズを創出し育てることも重要な使命であり、また、自由な発想に基づいて自分が納得できるまで長く粘り強く継続できる面白さがあります。個々人でどちらに向くかは違いがあると思いますが、自分としては短い期間ながらも企業の研究を経験できたことがその後の学術研究にも大きなプラスになったと感じています。

・これからの研究の展望を聞かせてください。
    ~新しい機能創出につながるシーズプッシュ的な合成研究を目指したい~

 現在、黒田先生、和田先生と連携して研究活動を行っております。研究室としては環境・エネルギー・医療などさまざまな分野への応用を目指し、多孔体をはじめとするナノ材料の合成に特に力を入れています。世界でもこの四半世紀の間に、自己組織化プロセスや、各種鋳型を用いた無機ナノ材料の合成化学は大きく進歩しましたが、まだまだ未踏の課題が多く残されており、今後大きな発展の余地があります。たとえば、触媒や分離など広範な応用のあるゼオライトのような結晶性シリカ多孔体を自在に設計できる新しい合成ルートの開拓に長年取り組んできましたが、最近になって大きな進歩が見られています。また、新たな機能材料の創出にも積極的に取り組んでいます。ガラスのようなSi-O-Si骨格をベースとした動的機能材料はそのひとつであり、現在のところ、光照射によって可逆的に変形する材料や、pHや温度変化によって表面の親水性/疎水性を変化させる材料、また、ひび割れなどの損傷を自発的に修復する材料などを主なターゲットとして研究を進めています。いずれも材料設計の鍵となるのは、精密な構造制御となりますが、そのためには合成化学をさらに深化させて行く必要があります。

・応用化学会の活動への期待を聞かせてください。
     ~学生にとって情報の宝庫~

 応用化学会では、様々なイベント・講演会の企画や積極的な情報発信を行っていただいており、学生・教員ともども大変お世話になっております。特に就職活動に関しては、多方面で活躍されているOB・OGの皆様に学生が気軽に相談し、貴重な情報やアドバイスをいただける環境はとても有意義と思います。是非これからも活発な活動を継続していただけたら有り難く存じます。

・100周年を迎えた応用化学科についてコメントを聞かせてください。
      ~歴史の重みの上に発展を~

 100周年を機にこれまで応用化学科が歩んできた歴史を振り返り、諸先輩方が積み上げてきた伝統の重みをあらためて感じております。それらをしっかりと継承しつつ、応用化学科が国内外でさらにプレゼンスを高め発展していけるよう教育、研究に力を注ぎたいと思います。

・21世紀を担う皆さんへのメッセージをお願いします。
     ~個を活かす活躍を期待~

持続可能な社会の構築に向けて、応用化学が貢献できる分野は多いと思います。一方、国際的な競争は激しさを増しており、研究開発で世界をリードするためには分野横断的な考え方や独創的なアプローチが必要です。応用化学科の学生の皆さんにはぜひ深い専門性と広い視野を身につけたうえで、自らの個性や創造力を活かして世界で活躍できる人材に成長していただきたいと思います。

参考資料:

応用化学科・教員・研究紹介
 https://www.waseda-applchem.jp/ja/professors/shimojima-atsushi/

研究室紹介
    http://www.waseda.jp/sem-kuroda_lab/

インタビュアー&文責: 村瀬菜々子(学生広報班チーフ)、井上 健(新19回)

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2018年度定期総会・先進研究講演会・交流会(懇親会)のご案内

早稲田応用化学会会員の皆様へ

2018年2月

早稲田応用化学会 会長 三浦 千太郎

今年は5月の土曜日開催といたします。又昨年に引き続き先進研究講演会を応用化学科と共催で開催します。応用化学科の研究に関する理解を深めて頂くために企画いたしました。万障お繰り合わせの上、ご出席いただきますようお願い致します。
出席申込は、ご指定の住所へ応用化学会会報と共に送付されております 「返信 用記入用紙」で返信頂くか、”こちら”からお申込下さい。
尚、個人情報に変更のある方は、必ず 会報同封の「返信用記入用紙」の個人情報を修正頂き返送下さい。

日 時:

2018年5月12日(土)13:00-19:00

場 所:

早稲田大学西早稲田キャンパス
57号館 2階教室(受付・会場) ※予定:変更する可能性があります。
63号館1階カフェテリア旧馬車道(交流会)

※定期総会      13時00分~14時15分
※応用化学科百年史     14時30分~15時00分
※先進研究講演会      15時00分~17時00分 

「応用化学最前線-教員からのメッセージ」 プログラム

  1. 15:00-15:30  化学工学分野 花田 信子 講師
        「演題 水素エネルギー活用に向けた水素貯蔵技術開発」
  2. 15:30-16:00  無機合成化学分野 下嶋 敦 教授
       「演題 精密構造制御に基づくシリカ系材料の機能開拓」
  3. 16:00-16:30  応用生物化学分野 木野 邦器 教授
        「演題 新たな酵素反応プロセスの開発」
  4. 16:30-17:00  無機合成化学分野 菅原 義之 教授
        「演題 無機ナノ材料と高分子材料のクロスロード」

※交流会(懇親会)  17時30分~19時00分 
             懇親会費 3,000円(夫婦同伴の場合 5,000円)

総会会場、懇親会場では応化会ホームページ掲載用の写真を撮影いたしますのでご了承願います。

以上