月別アーカイブ: 2019年5月
先進研究講演会
「応用化学最前線―教員からのメッセージ」
共催 早稲田大学 先進理工学部 応用化学科、早稲田応用化学会
於 早稲田大学 西早稲田キャンパス 57号館201教室
14:45-15:15 有機合成化学部門 細川誠二郎准教授
「演題 真ん中から作る:多段階合成を革新する合成戦略」
目的の化合物を短工程で作ることは合成化学の普遍的な課題である。当研究室では、生物活性天然物を効率的に合成するための反応や合成戦略(合成の考え方)を研究している。従来、複数の不斉炭素を持つ鎖状化合物の合成においては「端から順に構築する」ことが常法となっている。これに対し、我々は「中央部を構築した後に左右を修飾する」方針をとることによって、従来よりも著しく工程数の少ない合成経路を確立してきた。最近では、この考え方を環状化合物に適用している。本講演では、我々の最近の取り組みを紹介した。
15:15-15:45 触媒化学部門 関根泰教授
「演題 表面プロトニクス・イオニクスと低温作動触媒」
関根グループでは、不均一系触媒を用いた化学反応において、表面イオニクス(酸化物イオンならびに 水素イオン)を活かした反応系を世界に先駆けて構築し、従来に比して大幅に低温で高い活性を有する 触媒反応系を確立した。これによって、水素製造やアンモニア合成、天然ガスからの有用化合物合成な どを、150度程度の低温・オンデマンドで実現することが可能になった。その学理解明と、応用展開例に ついて紹介した。
15:45-16:15 高分子化学部門 小柳津研一教授
「演題 エネルギー変換と高分子」
化石燃料や再生可能エネルギーは,自然界に存在する一次エネルギーである。これらは主に電気や水素といったクリーンな二次エネルギーとして供給され,社会や生活を支えている。電気エネルギーは輸送インフラが整備されている一方,電流の形態では貯蔵できない。一方,水素エネルギーの利用拡大に向けては,水素の輸送・貯蔵インフラのさらなる整備が必須である。このようなエネルギーの輸送・貯蔵に関わる問題の解決手段として,電気や水素のエネルギーを化学エネルギーに変換し,再び電気や他のエネルギーとして取り出せる機能を持ったエネルギー変換材料が注目されている。導電性(電子伝導),イオン伝導から始まり,熱電変換,光電変換・発光の次に,高分子機能の新たなターゲットとして位置付けられつつある蓄電・水素貯蔵を担う,斬新な高分子材料について述べた。
16:15-16:45 化学工学部門 平沢泉教授
「演題 晶析工学の知恵を実践する」
晶析工学研究を推進し、40年が経過した。アートと呼ばれた晶析も、20世紀に結晶群の粒径を操作し うる時代に至っている。21世紀においては、結晶品質のさらなる高度な制御が求められ、純度、構造(多 形)、晶癖(外見的形状)、粒径などの品質を設計する(QbD)工学理論を模索、活用している。過飽和溶 液内の核化は、いまだ解明されているとは言えず、晶析現象の速度論的な現象をよく理解して、希望の 結晶品質を創ることがなされている。本講演では、装置内の過飽和度を制御するためのフィーディング( 原料供給)、シーディング(種添加ポリシー)により、結晶品質の制御を実践した成果の一端を説明した。
以上
2019総会会場Gallery
2019年度定期総会
2019年5月18日(土)13:30~19:00
場 所: 早稲田大学西早稲田キャンパス
57号館2階201教室(定期総会・先進研究講演会)
ロームスクウェア(交流会)
本年度も、昨年同様、定期総会と、それに引き続き先進研究講演会「応用化学最前線-教員からのメッセージ」、そして交流会を開催した。
総会108名、講演会118名にご参加頂き、交流会(懇親会)では104名の会員の皆さんが集い、盛会な総会の一日となった。
1. 定期総会
議 長:西出会長
司 会:和田庶務理事
13時30分より和田庶務理事の司会で開催された定期総会では、最初に西出宏之応用化学会会長より挨拶が述べられた。
議 案:
2018年度事業報告案及び決算案の審議
和田庶務理事及び門間会計理事より各々「2018年度事業報告案」及び「決算案」の説明がなされた。特に、収支決算書では、「先輩からのメッセージ」の参加費用が改定されたため、当初予定していた収支補填準備金を取り崩さず、逆に支出減に努めた影響もあり、1.2百万円繰り入れすることが出来たことを説明した。
引き続き、河野監事より、5月9日に監査を行い、会計部門においては領収書、通帳等の各種帳票確認した結果、適正に処理されており決算書、貸借対照表は正当であると報告された。また、業務部門においても議事録を精査した結果、三委員会とも、計画通り概ね順調に運営されたと判断したと報告された。
以上により、2018年度事業報告案及び決算案が承認された。
2019年度事業計画案及び予算案の審議
和田庶務理事より、事業計画(案)について説明がなされ、引き続き門間会計理事より、それに伴う予算(案)について説明がなされた。
2019年度は特に、事務局長の円滑な引継ぎと事務局体制の確立の立場から事務費を昨年より1.9百万円増額での予算立となっているが、その分は収支準備補填金の取り崩しで手当てすることを説明した。
本内容で2016年事業計画案、予算案は承認された。
報告事項:
- 2019年役員の体制について
資料に基づき西出会長が説明した。要点は以下の通り。
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- 副会長:安達博治氏が2018年9月8日より就任
- 会計理事:2018年9月8日より本間敬之氏が退任、門間聰之氏が就任
- 2018年9月8日より入江伸一氏と常見宏一氏が理事就任
- 2019年5月18日より関西支部長が交代:退任 岡野泰則氏、新任 田中航次氏
- 2019年5月18日より交流委員長が交代:退任 町野彰氏(理事としては残留)、新任 椎名聡氏
- 交流会講演会の紹介
和田庶務理事より7月6日(土)開催予定の宮坂氏の交流会講演会の紹介があった。
また、今後の交流会講演会の講師の推薦と仲介をお願いした。
- 応用化学会奨学金給付学生の紹介
門間主任より2018年度応用化学会奨学金給付学生と里見奨学金給付学生が壇上で紹介された。壇上に上がったのは下記の6人。
応用化学会奨学金給付生:
浅子貴士さん(山口研)、海野城衣さん(平沢・小堀研)、女部田勇介さん(本間研)、鳥本万貴さん(関根研)、村上洸太さん(関根研)
里見奨学金給付生:
松野敬成さん(黒田・下嶋・和田研)
引き続き門間主任より初の森村豊明会からの奨励賞の授与式の様子と対象となった成績優秀者が紹介された。
教室近況:
門間主任より、応用化学科・応用化学科専攻の現状が報告された。
1)今年は126名の新入生が入学した。(定員135名:秋入学含む)
2)教室は福永明彦教授(JXTGエネルギーより)が着任し25名体制となった。
3)山口教授が文部科学大臣表彰技術賞を、関根教授が日本化学会学術賞を受賞した。
閉会挨拶:
濱副会長より、それぞれの世代がわくわくする応化会活動を実現する為には、各世代が活動に参加してインスパイアされるような企画の充実が必要であるが、同時にそれを実行する委員会等の活動を、しっかりとサポートする体制を各年代層で作ることが重要とした。
最後に、出席メンバーに是非その強力なサポーターになってほしいこと、そして様々な魅力的なアイデアの提案を依頼して、閉会とした。
2. 先進研究講演会 「応用化学最前線–教員からのメッセージ」 (応用化学科と共催)
先進研究講演会「応用化学最前線-教員からのメッセージ」(共催 早稲田大学 先進理工学部 応用化学科、早稲田応用化学会)は、応用化学科の各研究室応用化学科の教員が、企業の研究者・技術者や学生に、自らの研究分野を紹介し、その先進性、先導性を熱く語りかけるもので、 その後の交流会(懇親会)で、教員、社会人および学生との交流や懇談を深め、早稲田応用化学科の研究に関する理解を深めていただくために、毎年総会とあわせて企画される。本年は西早稲田キャンパス57号館201教室において下記の4先生にご講演をいただいた。
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- 14:45-15:15 有機合成化学部門 細川誠二郎准教授
「演題 真ん中から作る:多段階合成を革新する合成戦略」 - 15:15-15:45 触媒化学部門 関根泰教授
「演題 表面プロトニクス・イオニクスと低温作動触媒」 - 15:45-16:15 高分子化学部門 小柳津研一教授
「演題 エネルギー変換と高分子」 - 16:15-16:45 化学工学部門 平沢泉教授
「演題 晶析工学の知恵を実践する」
- 14:45-15:15 有機合成化学部門 細川誠二郎准教授
多彩なスライドを用いて興味深い研究内容をわかりやすく説明していただき、学生、卒業生ともに研究への理解を深めると共に研究室への親近感を強めることが出来た。
3. 交流会(懇親会)
2時間の講演会の後、場所を63号館1階ロームスクエアへ移し、橋本副会長の司会により、西出会長の開会挨拶、そして安達副会長からは応用化学会の益々の発展を願って乾杯のご発声を頂き、交流会(懇親会)がスタートしました。
今年の交流会は卒業生・教員・学生合わせ104名の会員の皆さんで和気あいあいとした雰囲気で進み、途中で奨学金受給者の挨拶があり、最後に黒田副会長の中締めのご挨拶と神守学生委員会委員長の一本締めにて散会しました。
(文責:広報委員会・応化会事務局)
以上
会長挨拶
それぞれの行事、交流、広報、基盤の活動、支部活動が概ね順調に推移していることを報告するとともに、推進力となっている理事、委員会、支部、会員の皆様に感謝を述べた。現役のOB・OGが活動に参画しスピード感のある企画・運営がなされ、学生はじめとする若手会員の活動も活発化してきている。その表裏で、事務量が増加してきており、この点をどのように補い、引き継いでいくかが課題となってきている。今年度は事務局を2人体制とし事務局長の引継ぎを円滑に行うと同時に、事務内容を精査・マニュアル化することとし、予算も計上しているので審議していただきたいとした。
応用化学会は、卒業生、教員、学生が一体となって学科の発展を盛り立てる組織であり、そのためのボランティア活動である性格上、ボランティアとして何ができるか、またボランティアとしてどこに満足な点を置いていただけるか、課題である。会として最も大事なことは会員の確保及び把握であること、そして会費収入も大事だが、世の中が変わっていく中で会費の問題をどのように考えていくか、基盤委員会中心に議論していくと述べた。
トピックスとして次の二点を挙げ、学生を含む若手からシニアまでの幅広い層に対応したプラットホーム作りが大切なことを強調した。(1)グランドシニアの発案により応用化学会給付奨学金受給者の近況を披露するホームカミングデーを昨年11月に開催し手ごたえを得た。(2)新たな冠奨学支援の形として「森村豊明会」による奨学金を発足させ、奨学制度の幅を広げた。
最後に今年度は(2019年度)は事務局体制を強化し継続していけるようにすることが急務と会長として考えていること、また2023年に応用化学会100周年を迎えるにあたり「昔を語り、夢を披露する」楽しく、気持ち良く過ごせるプラットホーム体制を整えながら、その実例を一つでも創っていきたいので、引き続きのご参画、ご支援をお願いして挨拶を終えた。
2019年7月6日(土)第33回交流会講演会のご案内
早稲田応用化学会 交流委員会主催 第33回交流会講演会のご案内
2019年7月6日(土)15:00~16:45
講演者 :宮坂力先生 (桐蔭横浜大学 医用工学部 特任教授)
演題 :『理工の応用化学科から発展した光発電の研究』
副題 :「ペロブスカイト太陽電池の飛躍的研究展開」
今回は、光電気化学、及び環境エネルギー科学を専門分野とされておられます、桐蔭横浜大学の宮坂力(みやさかつとむ)先生をお迎えし、『理工の応用化学科から発展した光発電の研究』というテーマにてご講演をして頂きます。
本講演の概要
私は応用化学科において、炭酸ガス還元の高分子触媒の実験を経験したことがきっかけで、光合成のモデルとなる光エネルギー変換の研究を大学院において始めました。このテーマが30年以上にわたる私の研究を支えてきました。化学工程で作る有機無機ペロブスカイト太陽電池はその延長で生まれた技術で、当初は予想しなかった高い効率レベルまで進化しました。講演では、これまでの研究生活を振り返りながら、学際的色彩の強いペロブスカイト太陽電池の先端研究の現状も紹介し、若い研究者に向けてのメッセージを伝えます。
(講演者から寄せられた紹介文より)
講演者略歴、及び趣味
1976年 理工学部 応用化学科 卒業(新26回、土田研究室)
1981年 東京大学大学院 工学系研究科 合成化学博士課程 修了
1981~2001年 富士写真フイルム(株) 勤務
2001年 桐蔭横浜大学 工学部 大学院工学研究科 教授就任
2017年1月 日本化学会賞 受賞
2017年4月 桐蔭横浜大学 医用工学部 特任教授就任
2017年9月 『効率的なエネルギー変換を達成するためのペロブスカイト材料の発見と応用』がクラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞
受賞上記の栄誉賞はノーベル賞受賞の有力候補者として、ノーベル賞受賞者が発表される前の毎年9月に発表されている賞で、論文の被引用件数や重要度の観点から受賞者が決まる。
2019年3月 応用物理学会業績賞 受賞
*宮坂力先生の趣味
宮坂先生はバイオリン演奏や弦楽器製作の研究を趣味としておられます。また日独化学会の混成オーケストラのコンサートマスターを経験されており、バイオリンの名器に関する論文を英国の権威ある弦楽器専門誌に寄稿しておられます。
皆様お誘い合わせの上、是非奮ってご参加下さい。
講演期日:2019年7月6日(土)
講演会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス 57号館201教室
講演時間:15:00~16:45(受付開始14:30、講演聴講は無料)
懇親会 :17:00~18:15(63号館1階ロームスクエア、懇親会費:3千円、学生無料)
講演者を囲んで懇親会を開催します。
事前登録を7月2日(火)までに頂いた方には、当日受付で名札をお渡し致します。
それ以降の登録の場合は、名札の準備が出来ませんので自筆でお書き頂く事になりますことをご了承下さい。
講演会場、懇親会場では応化会ホームページ掲載用の写真を撮影致しますのでご了承願います。
また講演会場ではビデオ撮影も予定しております。
――― 以上 ―――