中部支部第14回交流会報告

早稲田大学応用化学会中部支部第14回交流会報告

逢坂名誉教授によるご講演

平成29年10月14日(土)に、現在、早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構特任研究教授・名誉機構長、早稲田大学理工学術院名誉教授を務めておられる逢坂哲彌名誉教授をお迎えして、ご講演して頂きました。 演題は“エネルギー・蓄電池の将来展望-特に自動車 EV化に伴って-”であり、誰にとっても大変興味ある 内容を説明して頂きました。 東京から参加頂いた方も含め、多数の逢坂研OBの 方に参集いただき、総勢26名の盛会となりました。

講演の要旨

①蓄電池1

蓄電池はエネルギーを発生するもではなく、ためるものであり、容量の増加に伴って、その開発も盛んになっている。携帯電話(Wh)→車(kWh)→系統電源(MWh)と容量増加に伴い、生活に必須のものとなっており、CO2削減等の環境問題も背景となって、その重要性が更に増している。
電池の発展にはその開発だけではなく、コントロール技術(評価・診断)も重要になる。HV車に使われて戻ってきたニッケル水素電池が診断方法によっては、3割ぐらい再生可能であることが分かる。直近はリチウムイオン二次電池(LIB)の比重が高まっているが、安定性があり、実績のあるニッケル水素電池はHV車用で一定の地位を占めている。
LIBは他の先進部材と同じ問題を抱えている。日本企業の携帯用LIBはある一定の事業規模になったところで、DRAM,LCD等と同様に世界でのシェアが急低下している。車載用LIBはまだ高シェアであるが、中国のEV大増産が始まれば、シェアは低下していく。技術で先行して、ビジネスで負けるのは構造的な問題が潜んでいる。

②EV化

トヨタは2020年に本格的にEVを投入する。その背景は、カリフォルニア州のZEV法、中国のNEV法がある。英仏の2040年、エンジン車禁止もある。フォルクワーゲン(VW)は本格的なEV開発に舵を切り、中国メーカーはまだ技術レベルは低いが、国策に従って、EV化を進めている。2015年のEV, PHEV販売量は①テスラ、②日産リーフ、③三菱となっているが、今後順位が大きく変動する。CO2排出量比率の高い自動車は環境対策の面でもEV化を強く求められる。

③蓄電池2

電池は他の部材と異なり、材料費比率が高い。事業として利益を出すには工夫が必要で、川下のアプリケーションとの連携が欠かせない。エネルギー密度をいかに上げていくかがkeyになるが、正極はCo-Ni-Mnの3元系、負極はカーボンからSi系への移行が図られている。次世代は硫黄系の正極に特徴が見出されている。
トヨタは2020年に全固体電池EV車の実用化を発表している。固体電解質では安全性が焦点になる。硫化物の電解質が検討されている。
早稲田は材料開発だけでなく、電池を試作して評価までできる施設を構築している。インピーダンス法の適用により、電池の非破壊検査ができるようになっており、電池内部評価への需要は非常に強い。電池はどうすれば壊れるかは分かってきているが、どうすれば壊れないかは不明な部分も多い。評価技術の進展は重要である。


懇談会

榊原彰良氏以下若手7名と東京より臼田雅彦氏と渡辺佳織氏の逢坂研OBの参加および関西より御手洗健太氏と、多くの若手会員の参加を頂いた盛大な懇談会となりました。逢坂先生との旧交を温めると同時に、新婚の渡辺ご夫妻のスピーチを頂くなど和やかなや雰囲気で、活発な会員間の交流が図られ瞬く間に懇談時間が過ぎてしまいました。小林幹事の若手へのエールを以って閉会とし、全員写真と逢坂研OB写真を撮り散会致しました。
中部支部交流会として、久しぶりに多くの若い会員に集まって頂いた有意義な時間でした。


参加者

逢坂哲彌名誉教授、(愛知県)近藤昌浩(9回)、三島邦男(17回)、後藤栄三(19回)、小林俊夫(19回)、山崎隆史(25回)、服部雅幸(32回)、加藤啓(38回)、榊原彰良(46回)、角友秀(53回)木藤広樹(54回)、小幡裕之(55回)、秋山直久(56回)、工藤聡(56回)、渡辺優太(65回)、(三重県)堤正之(17回)、秋山健(19回)、友野博美(22回)、櫛谷文彦(39回)、新村多加也(39回)、大高康裕(41回)、(岐阜県)白川浩(18回)、木内一壽(24回)、(滋賀県)御手洗健太(65回)、(東京)臼田雅彦(36回)、渡辺佳織(65回)

(文責:新村、堤)
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