2023年度早桜会講演会(報告)

2023年度早桜会講演会を2023年11月11日(土)にWEB形式(Zoom)にて実施いたしました。今回の講師には松田謙次郎先生(神戸松蔭女子学院大学文学部教授)をお迎えし、「社会言語学は越境する」という演題でご講演して頂きました。

【講師】松田謙次郎氏 (神戸松蔭女子学院大学文学部教授)

【概要】

松田先生は社会言語学を御研究されています。社会言語学とは、言語を社会という枠組みの中で捉える学問です。社会との関わりの中で考えるので、この世にある言語データほぼ全てがデータ対象となります。

その中で特に国会会議録に着目してお話して頂きました。講演の中で特に取り上げて頂いたのが集団語と当用漢字、法令の言葉になります。

集団語とは特定グループのメンバーのみが理解できる表現であり、国会会議録においては国会議員のみが理解できる表現、ということになります。集団語がどのようにして用いられ始め、それがどのようにしてより広い意味を持って使われるようになっていったのか、ビッグデータを用いて解析されており非常に興味深く感じました。

当用漢字についてもビッグデータを用いた解析が為されており、速記者の癖が反映されていると思われるデータもあり興味深かったです。実際にどの会議をどの速記者が担当したか分かれば、出身地や年齢等が癖に与える影響も分かってくるのではないかと思います。

法令の言葉のようにブレはほぼ無いだろう、と我々が考えている物でさえ、有さない→有しない、命ずる→命じる等の変化があることが分かりました。このように言葉は絶えず変化してきているものなのだということがよく分かりました。

今回社会言語学に初めて触れました。言語を社会との繋がりで考えることで分かることもあり、特に科学技術の進歩によりビッグデータが活用できるようになったというのは非常に大きな意味を持つと思います。言語は人間が扱うものであり、人間は社会的動物ですので言語を社会との繋がりで捉え、それがどのようにして変遷してきたか考えるのは自然なことだと改めて認識しました。そして様々な学問がそれ単体ではなく、学際的・越境的になってきているのだということも再認識できました。

お忙しいところ、快くご講演をお引き受けくださった松田先生に改めて感謝の意を表し、報告書を締め括らせて頂きます。

(文責:三品)

【出席者(7名)】

井上征四郎(新12回),田中航次(新17回),和田昭英(新34回),高田隆裕(新37回), 陳鴻(新59回),三品建吾(新59回),古田武史(新61回)