第43回早桜会懇話会を2023年5月27日(土)イーセップ株式会社(京都府相楽郡精華町)にて開催しました。イーセップ株式会社は京都府相楽郡精華町にあるけいはんなオープンイノベーションセンター内に本社を構え、主にナノセラミック分離膜の開発や分離膜ユニットの製造・販売を行っています。現状の化学産業では分離工程にて多くのエネルギーを消費しておりますが、分離膜を用いると従来の蒸留等のプロセスと比較して省エネルギーで目的物を分離することが可能になります。昨今の環境問題への意識の高まりも追い風となり、膜分離技術に対する期待が高まっています。
イーセップが今後力を入れていく開発テーマの1つにバイオマス資源からの燃料合成があります。具体的にはバイオマス資源のガス化から得られた二酸化炭素と水素を原料にメタノール水を合成します。得られたメタノール水を水素キャリアとして用いて必要に応じて水素を取り出すというプロセスを想定しています。またメタノールからガソリンを合成するプロセスは既存技術として存在するので、必要に応じてガソリンに転換することも想定しています。このプロセスのどこで分離膜が必要になるかというと、二酸化炭素と水素からメタノール水を得る工程においてです。二酸化炭素と水素からメタノールと水が出来る化学反応では逆反応も起こっており、収率が上がらないのが現状です。そこで分離膜を用いてメタノールと水を選択的に取り除くことで、逆反応が起こるのを防ぎ、メタノール水の収率が上がるという原理です。見学会ではイーセップの分離膜製造設備及び評価装置(写真1)を皆様に見学して頂きました。
写真1:イーセップ社の分離膜製造装置及び評価装置の様子
そしてまだ立ち上げ中ではありますが、分離膜と組み合わせたメタノール水製造装置についても外観を見て頂きました。(写真2)
写真2:現在立ち上げ中のメタノール水製造装置
今後開発されていく新技術ですが、地球の未来に確実に必要な技術であり見学会に参加して頂いた皆様におかれましては、大変に興味を持って話を聞いていらっしゃいました。
メタノール水関連以外にもイーセップでは分離膜の製造や評価を行っていますのでそれらの設備についても見学して頂きました。特に10年前の会社設立当初、資金が十分無かった時に如何にして分析装置を揃えていったかという苦労話などは大変印象的であり、参加者の皆様も、よくぞここまで会社が成長したと、早稲田の同窓の活躍を喜んでいる様子でした。見学の最後には参加者の皆様で集合写真を撮影しました。(写真3)
見学会後は、久しぶりに懇親会を実施致しました。(写真4)
写真4:懇親会の様子
ここ何回か対面での開催を実施しておりましたが、懇親会は未開催でした。皆様久しぶりの懇親会ということで、イーセップ見学会の感想を始め、これから応化会、そして日本をどうやって盛り上げていくのか等、非常に話が弾みました。オンラインでの開催は懇話会の講師の先生の選択肢が広がる等、便利な部分もある一方で対面開催ならではの良さもあるということを改めて認識致しました。今年度の懇話会は対面を基本とする方針ですので、懇親会での議論も含め益々応化会が盛り上がっていくよう役員一同努めて参りたいと思います。(文責:三品)
【出席者(12名):敬称略】
津田實(新7), 市橋宏(新17),田中航次(新17) ,斎藤幸一(新33),和田昭英(新34), 中野哲也(新37), 脇田克也(新36) ,高田隆裕(新37), 澤村健一(新53), 陳鴻(新59),三品建吾(新59), 古田武史(新61)