2023年度早桜会総会を2023年4月15日(土)にWEB形式(Zoom)にて開催し、その後講演会を実施いたしました。今回の講師には和田昭英先生(神戸大学理学研究科教授)をお迎えし、「へそ曲がりの光化学」という演題でご講演して頂きました。
【講師】和田昭英氏 (神戸大学理学研究科教授)
【概要】
和田先生には光化学の新しい切り口について,神戸という街の紹介も交えてお話しいただきました。お話の前半は「答えから考える光化学」という研究テーマのお話で,遺伝的アルゴリズムと呼ばれる最適化手法を超短パルスレーザーのパルス形状に適用することで光化学反応を逐次的に制御する方法について紹介して頂きました。通常は反応物の時間変化を追跡して反応機構を調べていくところを,“へそ曲がり”なこの手法では波形最適化により理屈抜きにして光反応の制御を実現して,得られた波形を詳しく解析することで制御機構(理屈)を明らかにします。この手法の応用例として,ペリレン結晶の励起状態制御を実現し,さらに得られたパルス形状を解析することで明らかにされた制御メカニズムについて説明して頂きました。
後半は「俯瞰して見る光化学」という研究テーマのお話で,太陽光の様な白色光で駆動される光化学反応を調べる新しい手法についてご説明頂きました。通常は照射する光(単色光)の波長を変えて反応の進行度の波長依存性を調べるところを,この手法では白色光を干渉計に通して波長ごとに異なる周期で変調する“へそ曲がり”な方法を採用することで,単色光照射では観測の難しい多色多段階の反応まで観測できます。非常に感銘を受けました。この手法の応用例として,アゾベンゼン誘導体について青色と赤色の2色の光が関与した多段階光異性化反応の観測例について説明して頂きました。
また,お話の合間合間に神戸の紹介が入り,例えば神戸大学周辺の紹介や,神戸の山(摩耶山)の上から見える景色や神戸港の遊覧船から見られるクルーズ船や海上自衛隊の潜水艦などの紹介もして頂き、神戸の街を訪れたくなりました。
(文責:三品)
【出席者(15名)】
津田實(新7回),井上征四郎(新12回),市橋宏(新17回),田中航次(新17回), 井上昭夫(新17回),熊谷和夫(新31回) ,斎藤幸一(新33回),和田昭英(新34回),脇田克也(新36回),高田隆裕(新37回),中野哲也(新37回),澤村健一(新53回),陳鴻(新59回),三品建吾(新59回),古田武史(新61回)