中部支部活動報告

 

第17回交流講演会を2021年11月13日(土)「ウインクあいち」にて開催しました。 最初に友野支部長より、中部支部の講演依頼に対してご快諾いただいた黒田一幸名誉教授への感謝の言葉と、先生のご略歴の紹介がありました。

黒田先生の講演「ナノ空間物質の化学」の要旨

黒田先生

ナノ空間物質の一つであるメソポーラスシリカは、孔径2-50nmの細孔が規則正しく並んだ多孔質シリカである。 一般の合成法としては界面活性剤のミセルを鋳型としてシリカを合成し、その後の焼成により有機物を除去することで、均一な細孔径のメソポーラスシリカが得られる。 
我々には、加藤忠蔵研究室から受け継いだ、材料の熱分析技術があったため、世界に先駆けて層状ケイ酸塩からのメソポーラスシリカ合成法を発見し、その論文を発表することができた。 その後、1992年に発表された米国モービル社のメソポーラスシリカに関する重要な論文には我々の1990年の論文が引用されている。
メソポーラスシリカのナノ空間は、吸着材、触媒担体などの反応場のみならず医療、分離、エネルギー分野にも有用であると考えられる。
我々が発見した当時は数えるほどだったメソポーラス材料に関する論文は、いまでは世界で年間9000件も発表されている。
SDGsには、マテリアルの革新が不可欠である。 有機物と無機物の複合化というこれまでのハイブリッド材料だけでなく、空間の設計という概念を加えた新たな「ハイブリッド材料」が役に立つに違いない。

先生のユーモアあふれる興味深いお話を、参加者一同熱心に拝聴しました。 思い通りの実験結果が得られなくとも、「できませんでした」だけではだめで、何がどうなったかを考えることが重要だ、という先生のお言葉が印象に残りました。

黒田先生は、2021年より日本セラミックス協会の会長に就任されたそうです。 ご講演後、技術的な内容に加え現在の先生のライフスタイルに関する質問にも丁寧にお答えいただけました。

コロナ感染防止のため、恒例の懇親会は開けませんでしたが、本当に久しぶりに対面で交流でき、参加者には満足していただけました。 その後、集合写真を撮り、研究室出身の山本理事から先生への謝辞と締めの挨拶でお開きとなりました。 

 

参加者26名(敬称略) 

堤正之(17回)、三島邦男(17回)、柿野滋(19回)、小林俊夫(19回)、友野博美(22回)、黒田一幸(24回)、木内一壽(24回)、浜名良三(29回)、鳥居良彦(29回)、服部雅幸(32回)、上宮成之(35回)、北岡諭(36回)、新村多加也(39回)、加藤克久(40回)、大高康裕(41回)、木村辰雄(44回)、浦田千尋(56回)、若林隆太郎(58回)、大西健太(62回)、山本瑛祐(63回)、永田皓也(64回)、斎藤翔平(64回)、村松佳祐(66回)、森ゆきの(66回)、山口真悠(67回)、齋藤由実(69回)

(文責 服部)

黒田先生の御略歴:
1974年早稲田大学理工学部応用化学科卒(新24回)
1979年同大学院博士課程修了工学博士(早稲田大学)
同年早大理工学部助手
1980-1981年 British Council Scholarship(英国アバディーン大学)、
1982年同専任講師
1984年同助教授
1989年同教授
2004年理工学術院教授、
2008-2010年ストックホルム大学, Affiliated Professor
2013年Ecole NormaleSupérieure de Chimie de Montpellier, Invited Professor
2017年パリ第6大学  Invited Professor

その他: 
早稲田大学環境保全センター所長7年間
早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構長
東大をはじめとする多数の国立大学の非常勤講師歴任
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究主幹、研究総括ほか
日本学術振興会 学術システム研究センター専門委員
日本化学会理事、同関東支部長、同筆頭副会長
日本セラミックス協会理事、同副会長、2021年 6月より会長
日本化学連合副会長
International Mesostructured Materials Association会長
ゼオライト学会会長、日本粘土学会会長、日本ゾルゲル学会会長、私立大学環境保全協議会会長等歴任

受賞等:
1996年日本粘土学会賞、
2007年日本セラミックス協会学術賞・同論文賞、
2013年文部科学大臣表彰(研究部門)、
2013年錯体化学会貢献賞、
2015年日本化学会賞、
2015年Life Time Achievement Award(IMMA)、
2019年日本セラミックス協会フェロー表彰
2019年 Life Achievement Award (International Sol Gel Society (ISGS))、
2019年 ISGS Fellow、
2019年大隈記念学術賞

以上