第25回 先生への突撃インタビュー(福永 明彦 教授)

 

「先生への突撃インタビュー」の最終回に福永 明彦教授にご登場願うことにしました。
今回はコロナの影響が長らく続いていることもあり、前回に引き続き、Zoomによるリモートインタビューを学生2名、現役OB2名、シニアOB1名の組み合わせで行いました。
福永先生には、リモートインタビューに快諾を頂き、また、丁寧に原稿の作成に協力を頂きましたことをこの場をお借りしてお礼を申し上げます。

 

略歴
• 1982年早稲田大学理工学部金属工学科卒業。1984年同大学院理工学研究科博士前期課程修了。1999年 博士(工学)早稲田大学。
• 1984~2019年日本石油(株) (現ENEOS(株))。この間、1995~1997年米国カーネギーメロン大学大学院材料工学科修士課程修了。
• 2019年4月より早稲田大学先進理工学部応用化学科教授。
本年の応化会リモート総会で先生自身が自己紹介をされたU-tube動画のです。画面をクリックすると動画が始まりますのでご覧ください。

  • 先生が研究に本格的に取り組み始めたキッカケはなんですか?
    ― 電気化学から抜け出せない運命だったのかもしれませんね ―

今、思い返すと小学校時代に水の電気分解に強く惹かれた理科少年だったことが思い出されます。理数系が好きで得意でもあり、早稲田の理工に進みました。卒業後に、エネルギー会社に入社し3年目で研究所へ異動となり炭素繊維の研究を始めた際に、修士研究で行なった、金属表面の電気化学的評価手法が、炭素繊維の表面評価に適用できるのではないかと、ふと思いつき早大との共同研究を始めたことが研究に取り組み始めた端緒です。自ら思いついたことを実行に移し上手く行ったので、研究が面白くなりました。この研究を元に、特許を取得し、海外の大学を訪問し、米国の炭素学会で発表したりして、研究者の醍醐味を味わうことができました。ビギナーズラックかもしれませんがやればできるかもと思ったのがキッカケです。
しかしながら、その後、炭素繊維の製造工場に異動となり、研究ができなくなり、研究を行えた日々を懐かしく感じるようになりました。そこで、一念発起して、社内の留学制度に手を上げ、カーネギーメロン大学の大学院へ留学しました。コースに入ったので、当初は研究どころではなく、日々の授業についていくのがやっとの日々が続きましたが、当時最先端であった、カーボンナノチューブの応用研究も行うことができ充実した学生生活を送ることができ、帰国後母校で博士を取得しました。

  • 伺った経歴の中で、カーネギーメロン大学での経験に関するお話を聞かせて頂けますか?
    ― 歴然とした日米の違いを早稲田に還元したい ―

    大学院での競争やモチベーションの違いに驚きましたし、勉強量も半端ではなくサバイバル競争を勝ち抜く流れですし、定量的に数式に表せるように、とことん追求するという姿勢も重要なポイントだとも思いました。良し悪しは別にして、その経験を母校に活かせたらとは思いました。

  • 技術的内容で先生がポイントと考えておられる点はなんですか?
    ― 実験科学の基本に忠実に ―
     
     エネルギーに関連する材料研究を中心に行っています。その中でも材料の構造と発現する機能の関係を明らかにすることを行っています。材料構造の解析には、物理的な要素が大きいですが、発現する機能においては、物理化学や電気化学の反応解析が必要になります。最近特にエネルギーを電気に変換して取り出すことが求められており、色々な領域の研究者が横断的に研究を行うことも必要になると考えています。
    また、まず実験を始める前に必ず作業仮説を立てて行うことを指導しています。その結果、作業仮説通りでなくても、何故最初考えたことと異なる結果が出たのか考えることが重要と思います。ある面では、実験科学の基本ですがこれを疎かにしないことが大切ですね。また、実験の結果で想定とは違ったものが出来た場合にこそ、宝が眠っていると思うようにすることが大事だと教えていきたいと思います。

  • 先生の研究理念を教えてください。
    ― シンプルの追求 ―

     「自然界の現象は全て数式で書かれている」と言われていることでしょうか?全ての数式を明らかにすることはできませんが、一見複雑に見える現象も、解析を進めると全てシンプルに表すことができるのではと常に期待しています。天文や天体が好きである自分の趣味にも通じるかもしれませんが、究極は数式で表せ、その中に変化係数がいくつあるかで表現できることを追求したいと思っています。

  • これからの研究の展望を聞かせてください。
    ― カーボンリサイクルへの貢献 ―

     地球温暖化対策が叫ばれて久しくなります。これまで燃料電池や水素関連の研究が長かったですが、現在は、CO2を積極的に利用するカーボンリサイクルの研究に取り組んでいます。またエネルギーキャリアーとして有望な、水素やアンモニアの研究についても行おうと計画しています。個人的には炭素繊維や複合材料の研究にも興味があります。

  • 具体的なテーマはいかがでしょうか?

    CO2の電解とか、アンモニアの常温合成などを進めようと思っています。また、企業研究の長さから「来るものは拒まず」の体質があり、やれそうなことはトライしたいと思います。

  • 応用化学会の活動への期待を聞かせてください。

    応化会は卒業生であるOBOGのためだけでない、在校生との繋がりも重視して活動しているので大変すばらしいと思います。今後もこのような活動を是非続けて頂きたいと思います。会社に就社した際に、先輩がいると大変心強いと思います。応化会のメンバーが社会で大活躍している所以の一つと思います。

  • 100周年を迎えた応用化学科についてコメントを聞かせてください。

    100年時代の流れの中で、応用化学科が光輝き続けてきたのは、卒業生の頑張りと母校への貢献、そしてこれまで在職された先生方の努力の賜物と思います。今後も両者が力を合わせて繁栄を築かんことを祈念しております。

  • 21世紀を担う皆さんへのメッセージをお願いします。
    ― 自分の手で新しい未来を ―

    未来は、無限の可能性を秘めています。基礎を十分学んだ後は、自分のアイディアで自由に応用してみてください。きっと新しい未来が開けることを思います。さらに、海外へどんな機会でも良いから是非、挑戦をして欲しいとも思います。

インタビュアー:学部2年 佐藤 将希 、修士1年 疋野 拓也、佐藤 史郎(新37)、
加来 恭彦(新39)、井上 健 (新19)=文責

                                 以上

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