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応用化学会 三浦千太郎会長祝辞
まずは皆さん、ご卒業まことにおめでとうございます。
ご家族の皆様も本日の我が子の晴れ姿をご覧になり、感無量のことと存じます。誠におめでとうございます。
また教職員の皆さまにはこれまで指導され、育て上げられてきたご労苦に対しまして敬意と感謝を申し上げたいと思います。
卒業生諸君は本日を以てそれぞれの道に希望に満ちて旅立っていくことになる訳でありますが、このところの私たちを取り巻く環境の変化はどう考えたら良いのでしょうか?折角のハレの門出ではありますが、決して平坦な道が続いているようには思えません。
卒業してから半世紀近く経つ私たちの世代にとっても、ここ数年のそれまでと隔絶した新しい潮流や変化に直面して、驚きを隠すことが出来ません。
私たち戦争直後に生まれたものは高度成長と共に育ち、そして日本の繁栄を支えてきたと言う自負を持って胸を張って生きて参りました。しかし、冷戦の終了とともに旧世界システムの崩壊、そして相次ぐ途上国の急速な発展、私たちにとってはカオスとしか言いようの無い世界が出来上がりつつあるように思えます。
私たちの子供の時、戦後間もない時には明治、大正はおろか江戸時代の風習が、まだまだ町並みや生活のそこかしこに色濃く残っていたように記憶しています。
そしてその古い日本の風習からの離脱を図り、欧米の生活様式にあこがれ、或いは反発して新しい社会秩序を作ろうとしたのは、他でもない私たち団塊の世代だったと思っています。
その私たちが理解できない大きな変化が起こり始めているのが今の状況だと考えています。まさに諸君はそのまっただ中に乗り出していくことになる訳であります。
わたしは諸君のような若者たちの役割は、旧世代のものたちが対応出来ない混沌とした現在のような状況を、自分たちの時代、自分たちのものとして捉え、そこに自らの手で新しい秩序や社会を作りあげていくことだと信じております。
過去のサクセスを引きずっている私から多くを言うことは出来ませんが、何時の時代でも、環境変化が手に余る難しい状況に見える時、それを負担であるとは考えずに、むしろ大きなチャンスが自分に与えられたのだと積極的に取り組んでいくことが大切である、ということだけは皆さんに伝えたい。
かつての高度成長期、秩序が安定していた時代には社会に出たばかりの若造の意見が採り上げられるチャンスはまずありませんでした。すでに巨大で確固たるヒエラルキーが構築されてしまっているからであります。
しかし、幕末や戦後の荒廃期のような混乱期には驚くほど若い世代が主導的に活躍して、新しい社会システムを作ってきました。今のこの混乱期も同様に多くのチャンスが諸君を待っていると考えて欲しいのです。
早稲田の自主独立の精神は学のみではなく、すべての行動に及ぶものであると考えています。この早稲田精神を身につけた諸君が社会で自らの力を試し、新しい社会の構築に貢献してくれることを私たちは先輩として大いに期待しており、そしてそれを応援していく積もりです。
社会に出るといろいろな壁にぶつかることになると思います。その時に様々なフィールドで活躍している社会人先輩が数多く集っているのが応化会であり、諸君を力強く支援する場であることを思い起こして下さい。ここにくれば必ず有益な相談相手を探すことが出来るでしょう。あるいは直接支援者になってくれる人や戦友になってくれる人を見つけることも出来るでしょう。もちろん、ここにおられる恩師達も控えています。
大学には卒業はあっても、応化会には卒業はありません。むしろ、今日から会員としての活動が始まると言っても過言では無いのです。
この素晴らしい応用化学会というバックグラウンドを持っている幸運を肝に銘じて、荒波に向かって新しい船出をして下さい。諸君の社会での健闘を心から祈念申し上げてお祝いの挨拶とさせていただきます。
平成29年3月24日
応用化学会会長 三浦千太郎
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