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褒賞受賞者の挨拶

褒賞受賞者挨拶 金子 健太郎君

このたびは応用化学科褒章を頂き、誠に有難うございます。このような名誉ある賞を受賞し、光栄に思います。選出してくださった関係者の皆様方、熱心に指導してくださいました先生方に厚く御礼申し上げます。
創立100周年を迎えた応用化学科で学び、そして今日卒業するにあたり、自分たちも一世紀にわたり続いてきたこの歴史の一ページを刻んだことに、感慨深い気持ちになりました。
応用化学科で学んだことは数ありますが、それを語る上で実験とレポートを避けることはできません。私は慣れていないうちは手際が悪く実験に時間がかかってしまい、ある実験では夕方五時を過ぎると減点されることに怯えながらの日々を送っていました。しかし能動的にプレレポートに取り組み実験目的を十分に理解することでスムーズに行えるようになり、事前調査の大切さを実感しました。実験と同様にレポートも決められた時間内で行う必要があり、結局全てのレポートを期限内に提出することができましたが、時間内に課題を達成することの厳しさと重要さを学びました。
レポートでは考察課題が課されますが、その中でも自由考察には力を入れていました。その内容がすぐ閃くか否かは実験テーマにより異なりますが、悩んだ時は学生読書室にこもって今までの授業プリントを眺めるようにしていました。授業と実験がつながった時は非常に楽しく、双方のモチベーションが向上したことを覚えています。当時は試験やレポート課題をこなすだけで精一杯でしたが、改めて振り返ると講義→演習→実験の積み重ねでステップアップしてきたことが実感でき、当時の努力は現在の研究活動の礎になっていると言えます。
この四年間で特に成長した点は、未熟ではありますが、自分で考える能力を身につけたことだと思います。今回の受賞をさらなる原動力にこれからもこの力を磨いて参ります。そしてこの四年間で得た「使える化学」を”材料”とし、これからの活動・研究で”化学反応”させ、社会に貢献できる”製品・プロセス”を作り出せるよう、また社会に貢献できる人材を目指し、今後一層の精進を重ねていきたいと思っております
最後に、繰り返しにはなりますが、本賞の設立・継続にご支援くださった先生方をはじめとする皆様に心から感謝申し上げます。合わせて勉学と生活双方で支えとなった同期と先輩の方々、そして家族にも感謝しております。
 誠にありがとうございました。

平成30年3月24日早稲田大学先進理工学部    
応用化学科 金子健太郎  

 

卒業生答辞

学部卒業生 答辞 久田 智也 君

麗らか春の日差しの中桜の花も爛漫と咲く季節になりました。本日卒業の日を迎えられたことを、卒業生一同心より嬉しく思っております。本日はご来賓の皆様、先生方、父兄の皆様のご臨席を賜り盛大な式典をご用意いただいたことに卒業生を代表して厚く御礼申し上げます。

今を去ること四年前、私たちはこの応用化学科に不安と期待を胸に入学しました。入学式の日に授かった「求めよさらば与えられん」という言葉は大学生活における指針となりました。先生方から賜った、理論と実践を交えた高度な授業は、知を求める私たちにとって最高の学習機会となりました。次々と押し寄せては複雑な思考を求めるレポートは、私たちを大いに苦悩させながらも、確実に思考力を鍛え上げてくれました。この”疾風怒濤”の四年間の中で、志高き友を得て互いに議論し、助け、競い合うことができたことは、人生において何にも代え難い経験であったと思います。四年生になり研究室に配属されてからは、まだ知られていないことを見出すという学問の真髄に初めて触れ、今まで研究者が築いてきた”巨人の肩の上”に立つべく、昼夜を分かたず研究に勤しむ日々を送りました。勉学も研究も難航することの方が多く、艱難辛苦の四年間でもありましたが、その中で授かったものは、私たちが求めていた以上の価値を持っていると確信しております。

四月から私たちは、早稲田大学の大学院に進学するもの、他大学の大学院に進学するもの、就職するものとそれぞれ異なる道へ歩み出します。その道中で大きな壁に直面することも、先の見えない暗い道を歩くこともあるでしょう。ですが、私たちは四年間、同じ甍の下、同じ理想の光を仰いで学を志した仲間です。創立100周年を迎え、伝統と革新を兼ね備えたこの誇らしき応用化学科で得たもの全てを糧とし、窮まり知れない未来へと邁進していきます。

特に昨年は、国際的な情勢が大きく一変し、化学界でも超大型企業が合併するなど、激動の一年でした。このような荒波の中にあっても、揺るぎない決心のもと、己の能力を遺憾なく発揮して科学の力で世界に貢献し、母校へ臙脂の錦を飾る人が出てくることを切に願います。

最後になりますが丁寧なご指導ご助言を賜りました先生方、多くの面でお世話になりました事務所並びに応用科学会の方々、いつも支えてくださった先輩方、同輩達、そしていつも私達の成長を温かく見守ってくれた家族に心より感謝申し上げます。後輩の皆様のご活躍と応用化学科の一層のご発展を願いまして答辞とさせていただきます。

平成30年3月24日

早稲田大学先進理工学部応用化学科   
卒業生代表 久田智也 

修了生 答辞

修了生答辞 応用化学専攻 増井友美さん

本日は私たち卒業生修了生のためにこのような盛大な卒業式を開催していただき誠にありがとうございます。ご多忙のところご臨席を賜りました先生方ご来賓の皆様がたに修了生一同心より御礼申し上げます。

早稲田大学で過ごしたこの六年間振り返ると様々な記憶が蘇ります。学部生の頃は日々の講義や実験を通じて基礎から応用に至るまで数多くの知識や手法を身につけてまいりました。レポート作成やテスト勉強に追われる中で科学の奥深さ面白さに気づき、より追求したいと思う研究分野に出会うことができました。
研究室配属後は生活が一変し、一日中研究室で過ごし、自身の研究に没頭するようになりました。最初は未熟だった私たちですが、先生方や先輩方の手厚いご指導のおかげで少しずつ 専門分野への理解を深め 、多種多様な実験技術や研究に対する姿勢を身につけて行くことができました。一向に良い実験結果が得られず思い悩むことも多くありましたが、それ以上に自身の研究に対して愛着 がわくようになっていきました。そして自分で実験計画を練り、研究を進めていく楽しさ、実験結果から新たな知見を得ることの面白さ、失敗した原因を考察し再検討して成功した時の達成感を知りました。研究発表会や学会でのディスカッションを通じて、自分の研究が認められることの喜びを感じるとともに、視野を広くして研究を進められるようになりました。三年間の研究室生活は非常に密度の濃いものとなり、研究者としてだけでなく人間としても大きく成長することができました。今日この場に立つことができるのは、自身の研究テーマを追求できる素晴らしい環境と、先生方や先輩方の熱心なご指導のおかげであります。
学生生活を通じて、私たちはかけがえのない仲間に出会いました。レポートや研究の日々で辛いこともありましたが、これを乗り越えることができたのは、 共に学び、悩み、笑い、励まし合える仲間がいたからです。個性的な仲間と多くの苦楽を共にし成長できたことを嬉しく思います。

私たちは、この春から各々が新しい道へと旅立ちます。進む道が違ったとしても応用化学科で学んできた私たちなら、何事も乗り越えて行くことができると信じています。研究者としてあるべき心を忘れず、志を高くして科学と向き合い、未来の幸せへと貢献できるよう精進してまいります。

最後に、私たちをいつも適切に導いてくださった先生方、学生生活を支えてくださった事務所の方々、並びに応用化学会の方々、一から教えてくださった先輩方、ともに助け合ってきた同期の皆様、私たちを慕ってくださった後輩の皆様、そして卒業を迎える今日まで私たちの成長を温かく見守ってくださった家族に深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。応用化学科の益々のご発展と、ご列席いただきました皆様方のご多幸を心より祈念し答辞の言葉とさせていただきます。

 2018年3月24日

早稲田大学大学院先進理工学研究科
応用化学専攻 
増井友美 

 

在校生送辞

在校生送辞 上宇宿 雄哉

送辞

肌を刺すようを冷たい外気がいつの間にか和らぎ、吹く風にも春の訪れを感じるようになりました。このようを良き日に、早稲田大学を卒業された皆様、並びに大学院を修了された皆様、本日は誠におめでとうございます。

今、先輩方の脳裏にはどのようをことがうかんているのでしようか。入学したての期待と不安が入り混じったときのこと、友達と遊んだり旅行にいったときのこと、レポートに追われて徹夜をしたときのことでしょうか。それとも二日酔いの朝の後悔しかないときのことでしょうか。それは人それぞれ異なっていると思いますが、いまでは笑って話せるようになっていると思います。

私は早稲田大学が多様な価値観を認めてくれる大学だと感じています。様々な価値観を特った人と交わることができ、刺激的を日々を過ごせています。その一方で、その多様性故に考え方や意見が合わず、人間関係で悩むことがよくありました。そんな時、先輩方はいつも、悩みを聞いてくださり、自分の経験を元にアドバイスしてくださいました。時には朝まで語り合うこともありました。
それが私たち後輩にとってどれほど有り難かったことか。今後は先輩たちにしていただいたことを
胸に、後輩たちを手助けしていけるよう努力してまいります。

 今年度、応用化学科は創立百周年を迎えました。応用化学科が出来た百年前は第一次世界大戦で物資等が不足したり欧米に追い付くために産業を育てなければならず、化学が必要とされている時代でした。そんな中、大隈候は「国が必要をらば費用のことは今考えるには及ばない」と仰り、応用化学科を創られたそうです。応用化学科創立期の、国民のためという思いは百年間変わることかく受け継がれ、今の「役立つ化学 役立てる化学」へとつながっているのだと思います。この言葉を胸に刻み、歴史と伝統のある応用化学科を卒業、修了される先輩方が将来、世の中を明るいニュースでいっぱいにしてくださることを楽しみにしております。

 最後になりましたが、皆様の今後の更なるご活躍をお祈りし、感謝とお祝いの言葉とさせていただきます。本日は誠におめでとうございます。

平成三十年三月二十四日       
在校生代表     
    上宇宿 雄哉

2017年度学位記・褒章授与式Gallery

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三浦応用化学会会長祝辞

三浦応用化学会会長祝辞

まずは皆さん、ご卒業まことにおめでとう御座います。
ご家族の皆様も本日の我が子の晴れ姿をご覧になり、感無量のことと存じます。誠におめでとうございました。また教職員の皆さまにはこれまで指導され、育て上げられてきたご労苦に対しまして敬意と感謝を申し上げたいと思います。

卒業生諸君は本日を以てそれぞれの道に希望に満ちて旅立っていくことになります。しかしながら昨年も言いましたように、折角のハレの門出ではありますが、諸君の前には決して平坦な道が続いているようには思えません。

私ごとになりますが、以前いた東京ガスで様々なエネルギーソリューションの仕事に半世紀近く携わって、まあ、エネルギーのプロの端くれと自負してきました。しかしながら昨今のエネルギー情勢の流れや変化はどうでしょう。
発電や産業においてエネルギーソースの変遷はハンドリングも含めた高密度化が常識でした。薪ー石炭ー石油ー天然ガスと進んできたように。だからこそ私たちの現役時代は、環境対応とはいいながら低密度の自然エネルギー、再生可能エネルギーの台頭など夢絵空事と信じてきた訳です。まず火力、原子力、分散電源でも原動機、燃料電池を使ったコージェネレーションがデマンドサイドの最終エネルギーである電気を作るコアであると固く信じて来ました。

しかしながら今、この高密度エネルギーシステムが全て風力、太陽光に置き換えられているのです。すでに欧米ではFIT(固定価格買取制度)なしにKWHあたり2セント、全くのカーボンフリーエネルギーでこの価格では火力でも原子力でも敵いません。この半世紀、私が信じてきた常識が社会の変化、技術の進歩によりひっくり返ったのです。
残念なことに多くの分野で起こっているこのような世界の変革に我が国はついて行けているとは思えないのであります。
いまのバブルとも言えるアベノミクス景気はともかく、我が国のファンダメンタルの経済力は世界の二流国になりつつあり、かつ一番重要なエネルギー問題でも取り残され、さらに我が国を支えてきた科学技術力も途上国にさえ劣後し始めています。
このように日の沈むような兆候の日本でこれから諸君は社会に旅立つのです。
きれい事のお祝いの言葉はとても言えない心境です。

とは言え、真っ暗な将来ばかりを懸念している訳ではなく、この日本の厳しい状況を変革して救うのは間違いなく諸君ら若い世代であると言う強い確信もあります。
恵まれた教育環境で力を付けるとともに、独立不羈の早稲田精神のまっただ中で青春を過ごした諸君は、他校では得られない、組織に埋没することなく、強固に構築されたヒエラルキーに対しても反骨出来る、決して上司に迎合しない、最近は忖度しないと言うらしいですが、素晴らしい力を身につけたはずです。
企業の中で小賢しく適応していくことなく、自らの理想を実現するために強い意志を持って社会を、企業を改革していく気概を持っていただきたい。
これが私からの諸君の門出への激励の言葉です。

最後に、早稲田応化会には優れた先輩諸氏が数千、数百人といます。何かで悩む時、より多くの知見が欲しい時に、是非後輩達を支援する応化会に戻ってきてみて下さい。そして、余裕が出来たら今度は恩返しです。応化会活動に参加して後輩達を支援する側になって下さい。このお願いを申し上げて、私の激励の挨拶とさせて頂きます。

これからの新しいチャレンジに是非頑張って下さい。

 

川上浩良先生講演趣意

 

Big Ideas In Chemistry

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本日は、このような機会を与えていただき、応用化学科の先生ありがとうございます。私は、1991年3月に早稲田大学応用化学科高分子研究室で西出研先生のご指導をいただきで博士号を取得させていただきました。その後、直ちに米国に留学、2年後都立大学(後の首都大学東京)に戻り研究を続けております。水野賞(第4回)も受賞させていただきました。その折非常に助かりました。ここに改めて感謝申し上げます。2006年から教授をつとめています。今日受賞の皆様奨学金受給者の皆様誠におめでとうございます。

川上浩良先生

今日少し大きめのタイトルをつけさせていただきましたが、必ずしも私がこのようなことをしているというわけではなくて、是非皆様方にこういう大きな仕事をしていただきたい、社会に出てアカデミックな分野あるいはビジネスの分野であっても社会を変えるような大きな研究をまたはイノベーションを起こす研究を行っていただきたいという意味を込めて付けたタイトルです。

今日3っつほどのことをしゃべらせていただきたい。先ほど三浦応化会会長からのお話にも出ましたように、日本の産業界あるいはサイエンスの分野は厳しい状況にあります。(皆様ご存知のこと思いますが)いくつかの例示させていただいた上で私共の研究を紹介させていただきますが、これは皆様方がこれから独立されるあるいは社会にで出て研究されるときの一つの考え方のツールになればと思い紹介させていただきます。最後に皆様の思いををもって締めくくりといたしたいと思います。

これは2000年の世界時価総額になります。20から30年まえにバブルがはじけた状況といわれておりますがそれでも2000年では世界のTop10のなかに2社の日本企業が入っていましたし、13位にトヨタとかホンダが入っています。2018年1月の時価総額になりますと残念ながら日本の企業はTop10にはなく、代わりに中国が入ってくる。日本が誇るトヨタでも43位と非常に厳しい情勢になっています。世界で見る日本の影がどんどん薄くなっているのが現状です。

GDPでは世界3位なので大丈夫ではとおもいますが、これは総和であるので単純に個人当たりにすると世界の順位は25位、シンガポールに2万ドルの差をつけられています。平均給与に至っては20から30年は世界の結果はどのどんあがっていくのに反して日本はほぼ一定の456万円で18位で産業界は厳しい状況にあります。

研究の分野では高いよといわれますが、化学、物理、電子工学ではNatureへの論文数ではTop10の中に入っています。ただ、新しい学問分野、例えばAIを見た時には日本はTop10(7位)に入っていますが、どんどん地位が下がって日本は追い出されて状況です。機関別論文数を見ると日本Top10に入っていません。日本の機関では東大が64位、二位が東工大で262位でもうほとんど影すらない状況です。つまり、従来型学問では世界の好位置をキープしていますが、新しい学問ではもう影すらない状況です。これは大学の状況も同じことで早稲田も本学もアジアの人々を取り入れており、従来の学問領域ではアジアの学生さんも日本を目指してくるが、新しい学問分野になると日本の学生ですらアジアにいって学ぶことになる そんな時代が来ているということです。

2004年から携わっている仕事ですが、私が卒業した1991年の頃ですと5ないし10年先を見透うせる社会でしたが、現在の世の中の成長は指数関数的ですので、例えば5年後もなかなか見透せない時代に来ている。ネット接続機器(2015年80億台、2020年500億台)、ヒトゲノム解析については2000年には日米英の3か国で3000億円をかけて人一人を解析していましたが、2015年では一人1万円で解析できるようになっています。3Dプリンター(2007年 4万ドル、2014年 100ドル)になり、このような早いイノベーションが起きている中で皆さんは社会に出て活躍しなければならないわけです。また、人生100年時代になり、昨年生まれた子供の平均余命は107歳まで生きると予測されているのでこのような社会に出た後で、恐らく80歳位まで働かなければ日本の経済が破たんしてしまいます。そういうことを考えるとこのように世の中の変化が早く、長がく働かなければならない社会で皆様は活躍しなければならないということになります。

このような社会の中で自分たちが研究するうえで、学生に何を伝えるかということになります。私の研究室では学生にはPlatform技術を作るとよいといっている。新しい現象を発見してそれを基礎から実用化にもっていくということを意味している訳ですが、学生に訴えるときには解りやすい言葉でインパクトのある言葉で伝えることが重要ですので「Platform技術を作りましょう」といって学生と研究に励んでおります。一番の考え方としては現象を見つけた時はそれを技術まで昇華する。ですからここに当然時間を割くということも重要でしょうが、実用化のところを常に見据えながら研究をすすめたいなと思って研究を進めてきております。
それからスピード感は大事です。ノーベル賞を取られた先生は、一つのことを長くやることが重要だとおっしゃられております。確かにそうだと思いますが、但し、これからは研究のスパンはどんどん短くなってくると思います。iPSは6年でノーベル賞をもらっています。そういう意味からするとこれからいろんなビックアイデアといわれるものは短いスパンでどんどん出てきて、そこの中で勝負をしていかねばならないのです。そう言う意味で学生にはいつもいつもスピードスピードといっていますが、スピード感を持って研究を進めていくことが大事です。

そして研究のレベルがあらゆる分野で高くなってきていて1研究室で研究を終わらせるということはほぼ不可能になってきます。ですからいろいろな研究者の協力、あるいは企業の協力を得ながら研究を進めていかなければいけないので 特許を取得した後は世界にオープンにして多くの研究者と研究を進めてきております。

川上浩良先生のご講演

我々のところはスタッフも多く、恵まれた研究室になっています。そこでは8つのテーマを研究しています。田中先生も早稲田大学応用化学科の出身者で、助教で頑張っておられます。学生は30名位で研究を進めております。今日はこの中の電解質とナノファイバーに関する内容についてご紹介させていただきます。

ご存知のように水槽や蓄電池これはエネルギー分野で必修の技術になってきます。昨年度内閣は安部首相の下で水素戦略基本方式を立てましたけれども、首都大学東京の支持母体であります都庁は、2020年にオリンピックのときに「水素社会をlegacyで残す」ということになりまして、大学の中に水素エネルギー社会構築推進センターを作ってサポートしている状況です。必ずしもそれのためというわけではありませんが、「固体電解質膜の重要性」にかんがみ、燃料電池用の個体電解質膜の研究を進めてきております。ここで出てきた技術を全個体型のリチウム電解質膜のほうに応用するという研究を進めています。これが一つのPlatform技術になって一つの研究からその横の展開としてさまざまな分野に応用できるとしてこういう研究をしております。

「燃料電池用電解質膜の課題」に関しましては、すでにトヨタとかホンダで燃料電池車が走っているので多くの皆様は、終わった技術と思われるかもしれませんが、価格が非常に高くてトヨタでは売れば売るほど赤字になる。実際に我々が安価に使うためには多くのブレイクスルーが必要になってくるわけです。電池ですので抵抗が低いとか燃料がガスですのでガスが抜けてしまってはまずいのでリークが起きないこと、当然長い間使えることが必要になってきます。抵抗を下げるためには伝導性を上げることも重要ですが、一方で膜厚を薄くすることも重要になってまいります。 いま世界中の研究者たちの最大のフォーカスは膜厚をいかに薄くするか薄くするということはそれだけでコスト低減につながりますのでこれが最も手っ取り早いということで世界中でいかに膜厚を薄くするという競争が進んでいる。

ところが薄くするとガスが多く抜けていってしまい、安定性も損なわれることになりますのでこういったところのTrade-Offをいかにクリアしていくかが重要になってきます。プロトンは水を介して移動するので今の燃料電池は加湿器を付けて80℃くらいで膜が濡れる状態でプロトンを移動させています。これが車のコストを上げる原因になっていますのでこのような状況を改善する必要性がでてきます。今申しあげてきたところを整理しますと現状の膜はこのようなところにありますがターゲットとしましてはこういうところに電解質膜ができないといけない。ところが湿度を下げてまいりますと水を介している、あるいは酸をたくさん入れている状態ですので、加湿が低い状態ではプロトンがうまく輸送しないということになって伝導性が著しく下がってしまう、ということが挙げられています。

酸をいっぱい入れた状態にしなければいけないので安定性は膜が柔らかくなるので下がって、また、燃料である水素とか酸素がプロトンで高いところでは膜が柔らかい状態になりますのでどんどん抜けていくことになります。ですからエネルギー効率も悪くなる。こういったTrade-Offの関係を如何に打破するかということが燃料電池のコストを下げながら安定的に使える材料になる。

私達は高分子のナノファイバーを持ち込んで先ほどのTade-Offの関係をを打破できないかという研究を進めてきております。 ナノファイバーは表面積が広く、ナノレベルになると今まで知られていないような現象がでてくる、例えば、ナノファイバー表面ではほとんど摩擦が発生しない、ファイバーの中では高分子がかなり高度に背向してくる。ですから通常のポリマーでフィルムを作るのとは違う現象がでてくるのでそれをうまく使いながら電池にしようと進めております。ナノファイバーの内側の表面に近いところにスルフォン酸基が形成されるパスあり、プロトンはスルフォン酸基を介して迅速に移動することができるようになる。グラフト化されたブロックポリマー中のプロトン移動をみるとフィルム状とファイバー状では二ケタの違いが出てきた。いろいろな効果が重なると早い伝導性がでてくることが判明した。

その他、超比表面積効果、ナノサイズ効果、超分子配列効果、ナノファイバーの化学的・熱的安定性等の結果が示されたが、企業との研究があるのでデータは割愛します。

 終わりに、Big Ideas In Chemistry について言及します。色々なアイデア、特にバイオ分野で新しいアイデアが出てきております。私は、現在東京都のバイオベンチャー支援事業又はライフサイエンス事業の支援委員長をしている。例えばユーグレナ(ミドリムシ)のサポートをしています。
当初は研究者たちも自分達の研究のところを主張する方が多かったのですが、当然自分の研究はするが、最近は、それに合わせて実用化のphaseまで一緒に考えるようになってきました。例えば、iPS細胞を作ります。といった時にiPS細胞を作るところまでは自分たちの技術でしようと主張しますが、それを作るうえでの自動化ロボット等を含めてアイデアとして提案する。最近ほとんどの分野でそのような形になってきている。彼らもスピードを重視してオープンイノベーションでいろいろな分野の人達を巻き込んで研究を進めている。今それを実施している研究者は、若いです。ほとんどが25歳位でたまに35歳まで、このような研究者がどんどん提案してきている。従って、この分野では日本の未来は明るいのではと思っている。

一方で心配しているのは量子コンピュータで量子化が進展して来た時に、果たして合成しているChemistryの分野の研究者が残るのか否かが心配です。米国では「マテリアルゲノム」という大きなプロジェクトがスタートして瞬時にこのような化合物を作らせるために量子コンピュータを使って計算して目的物を合成してしまう。今後10年後ぐらいには従来の合成分野でもデジタルに負けるということになると合成化学として更に厳しい状態に陥ることになる。私の研究室ではバイオの研究も行っているのでバイオ研究をしている学生で、博士後期課程に進む予定の人には半年間インフォーマティクス、DNA、最近ではRNX、など徹底的に勉強させて情報とマテリアルの融合をしていかないと生き残れないのではと推測しています。試験的に現地に送り込んで勉強させております。

 働き方改革が国会で議論されていますが、欧米のまねではないかとの違和感がありますが、若い時代に厳しいトレーニングを積んでいると社会に出たときに役立つことがわかっています。若い時には体力、気力が充実しているのでここで鍛えておかないとその先では無理。従って、体力、気力が一番充実しているこの時期に先生方に鍛えていただき、卒業してください。その鍛えた方ですが、米国の教育学などで言われていることですが、高めの要望、チャレンジングな仕事を与えることが必要です。

 最後に、フォーブスが2017年にベンチャーで起業化して成功したほとんどが米国人(日本人はたった一人)の30歳以下の人々に起業化の際に重要なことはないかをアンケートした結果です。第3位はビジョン(20%)、2位が情熱(50%)、最も多かったのは根性であったとのことです。即ち、やる気があれば人生成功するとのことです。

以上で本日の講演を終了です。

Floorからも活発な質疑討論がありました。

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