未分類」カテゴリーアーカイブ

早稲田応用化学会主催 第39回交流会講演会講演内容

講演の概要

講演者ご自身の経験や見解に基づいて、興味深く、また示唆に富んだお話が展開されました。
講演の概要を下記しましたが、詳細については講演者が講演時に使用されましたプレゼンテーションファイルを、応化会HP内の“資料庫”に格納しておりますので、是非そちらもご覧下さい。なお、“資料庫”に入室するためにはID(ユーザー名)とパスワードが必要です。

“資料庫”==⇒ こちら【新しいタブで開きます】

導入部

問題解決について世界各国の特徴を記述した資料が公開されていますが、その中で残念ながら、「問題を直ぐに解決するドイツ」に対して、
 「大人数で会議やって何も解決しない日本」
と紹介されています。

本講演では、

  • 日本より労働時間が短いにも関わらず、GDPや労働生産性において日本を凌駕しているドイツ
  • 2019年に工業競争力世界一位を獲得したシンガポール(台湾も同様)
  • 急激に発展しているシリコンバレー

での経験を元に、日本が置かれている状況、世界が日本をどう見ているかについてお話しします。また、日本的な失敗例についてもお話しします。

1.初めに

2018年4月から1年間、ドイツのアーヘンに滞在し、アーヘン大学のフリードリッヒ教授の研究室でサバティカルを経験してきました。そこで感じた下記のような点について報告します。

  • カルチャーショック
  • ドイツと日本の違い
  • 日本は、どうしなければいけないか?

2.ドイツの現状

ドイツに来て感じたこと
パン屋の態度が悪い。不動産屋の、約束を守らない態度に憤慨。寝具屋やスーパーで大量購入しても包装無し。ビールは安くて美味しかった。
住民登録や銀行口座開設が首尾良く出来ない。
 Keypoint1 相手の立場に立って仕事をする、という考えが殆んど無い。
ドイツでの生活を始めるときに驚いたこと
最初に、フリードリッヒ教授に言われたこと⇒遅くまで働かないでくれ!ドイツでは問題になることがある。日本人は長時間労働だ!
短い時間でも生産性が高いので、景気が良くなっているのでしょう。
ドイツの生産性
ドイツが生産性を高めていることを考察する上でのポイントとして、

  • 日本でやっているが、ドイツではやっていないこと!
  • ドイツではやっているが、日本ではやっていないこと!

を考えてみましょう。
ドイツでのコミュニケーション
ドイツで生活や仕事をして驚くのが、「メールが少ない」、「電話が少ない」、「会議が少ないし、短い」、「説明のための資料作りが殆ど無い」ことです。
 Keypoint2 コミュニケーションに使う時間が少ない。
ドイツで、日本より厳密に多く作成するのは契約書です。生活のあらゆる場面で必要です。
 Keypoint3 ドイツは契約社会である。
ドイツでの会議
フリードリッヒ教授が招集した会議では、会議がうまく進行するように日本での会議でよく行われる下記のようなことはしません。

  • 根回しをする。
  • 説明のためのパワーポイントファイルと配布資料を用意する。
  • 研究の内容について多くの参加者を集めて説明する。
  • 議事録を作成して会議の最後に確認する。

ドイツでは会議のために費やす時間が圧倒的に短い。仕事の評価はあくまで結果であって、会議でのコンセンサスを得ることが重要ではない。そのため自分の仕事に注力していて、自分のすべき仕事のみを行います。
前述のようにドイツは契約社会ですが、契約社会の最も根幹にあるのが「労働契約書」です。
ドイツで、答えに窮した質問
私の研究所にいた一人から「東日本大震災があったが、日本は原子力発電についてどう考えているの?ドイツは原子力を止めると決めたし、フランスは止めない。日本は、あれだけの被害があったのに・・」との質問に「日本には原発賛成派と反対派があって、まだどちらとも決めていない」と答えましたが、その人は不思議そうな顔をしていました。
東日本大震災に対応してメルケル首相は、原発推進派であったにも関わらず福島原発事故からわずか4ヶ月で脱原発を法制化しました。
日本は東日本大震災で甚大な被害を受けたにも関わらず、事故後の総括も十分でなく、是正処置ができていません。原発をどうするのかも決めていません。
日本は政治も産業界も細部まで決まらないと判断できない社会になっています。ドイツは決断をすべき人が決断をし、実行する人が実行するので効率が高いのです。

3.日本との違い(カルチャーショック)

脱原発を決めたドイツは、再生可能エネルギーの拡大へと舵を切りました。 ドイツの電力料金の4割は税金だそうです。さらに、ドイツでは再生可能エネルギーの割合を100%にしようとする動きもあります。
日本人の、言わば「木を見て森を見ない」態度に対して、メルケル首相の「森を見て木を見ない」態度で判断し突き進む姿勢はカルチャーショックでした。
ドレスデンのフラウンフォーファーについて
クリーンルームも狭いし、古いし、最先端ではないですが、装置は8インチと12インチの両方を設置しているとのこと。フラウンフォーファーはマックスプランクのような研究所ではなく、技術を産業に結び付けるために設立されたとのことです。その目的を明確にして、全員で同じ方向に進むので早く、しかもトップを取れると納得しました。
IMEC(Interuniversity Microelectronics Centre)について
次世代の露光機であるASML製のEUV(Extreme ultraviolet lithography)があります。
嘗て世界中の露光装置は、NIKONやCANNONによる日本の独占市場でした。今はASMLが2019年予測で80%以上のシェアとなっています。このような状況に至った理由は作り方にありました。NIKONやCANNONのR&Dは自前主義モデルであるのに対して、ASMLは分散統合主義モデルとなっています。すなわちASMLのR&Dには多くの企業や大学、研究機関が関わっており、夫々の強みが合わさる仕組みとなっています。

4.米国、シンガポール、台湾との比較

シリコンバレーについて
シリコンバレーの特徴として次の3つが挙げられます。

  • ダイバーシティ(多様性)
  • 急激な拡大(シリコンそのものよりもITとしてGoogle、Amazon、Facebookなど)
  • スピードの重視(特許を取るより、公開して協力者を得る方が良い)

シリコンバレーでは、10年に2,3の大きなビジネスができて、大きな企業ができています。
谷上さん(シリコンバレーで成功した日本人の一人)の言葉;

  • Be creative! (人と同じことをするな!人と違ったアプローチをしなくてはならない)

日本の横並びの護送船団方式は、もはや過去のモデルです。
日本の企業も大学も変わらなければなりません。

  • 企業は、新しい分野を独立性の高い小集団のスピンアウトに任せなければなりません。
  • 大学は、学生の個性を高めるような教育をすべきです。

シンガポールについて
リー・クワンユー元首相の政策が「外国資本誘致による輸出志向型工業化戦略」でした。
そのため下記のことを行いました。

  • 外国の公的機関、企業をシンガポールに呼び込む
  • そのためのインフラ整備(直接、間接)
  • 自前でニッチ分野
  • シンガポール独自の整備体制

シンガポールのセールスポイントは安全、公用語が英語、異民族社会、清潔で透明な政治と社会、清潔で美しい都市、です。
2006年に科学技術機構ができました。バイオメディカル フェーズⅡ、環境と水処理技術、インタラクティブ&デジタルメディアに力を入れることを決めています。
台湾について
台湾政府の強力な後ろ盾を得て創設されたTSMC(台湾積体電路製造)が目覚ましい発展を遂げています。
シンガポールやマレーシアは、半導体分野において韓国を見倣おうとしましたが、サムスンほどの成功は挙げられずにいました。
そして、もともと台湾は半導体サプライ・チェーンの最下段という立ち位置を維持するだけでも、絶えず技術を磨いていく必要がありました。
一方中国は今や経済的な脅威へと変わり、台湾の貧困脱出の手段となった基本的な製造や組立の仕事を誘致し、台湾から仕事を奪い取ろうとしていました。価格で中国と張り合うのは不可能だ、となれば、台湾はみずから先進技術を生み出すしかなかったのです。

5.日本で成功した例

富士フイルムの躍進(コダックは無くなったが、富士フイルムは躍進)
世界最大のフイルムメーカーで、使い捨てカメラなどのイノベーションを起こしてきたコダックは、フイルムとともに消え去りました。
富士フイルムは化粧品や薬などで、益々発展しています。
自社の組織内には、まったく異なる分野で成功する機能がない場合が多いので、新しい組織を自社内に作るようにしないと成功しません(または、M&Aで社外から導入します)。
マツダのスカイアクティブ
「Be a Driver」のためには、エンジンを最高のものにするためにクリーンディーゼルを開発しました。自動運転などには手を出さず、自分たちの目標を達成しました。
ワールドカップでの南アフリカ戦の勝利(史上最大の番狂わせ)
どうして、日本がスプリングボクス(南アフリカ)に勝てたのでしょうか?
エディー・ジョーンズがJAPAN WAYを考え、実践したから、と考えます。JAPAN WAYを下記します。

  • キックを、できるだけしない!!
    「地域」より「攻撃権」維持の方が重要と考え、そのためキックをできるだけしない。
  • ディフェンスは複数で!!
  • 後半になっても、運動量が落ちない!!

戦略とは、本質的に、しないことを決めることです。エディー・ジョーンズは、トレードオフ対策をした上で「キックをしない」と決めました。  日本人は、目的と手段を取り違えてしまいます。目標を明確にして、その目標を現実にするために、何をするのかを考えて、実行することが大事です。このことは人生においても、仕事の仕方においても同じです。
iPS細胞について
iPS細胞の生みの親である山中伸弥教授は、一生懸命研究をしていたつもりでしたが、目の前の研究費獲得や論文発表などに囚われ、目標を見失っていたことに気付いたそうです。
基礎医学で研究者として治療法を見つける方が、役に立てると考えました。このように、目標を明確にすることで「iPS細胞」は生まれたのです。

6.日本で失敗した例

半導体のあすかプロジェクト
日本半導体産業の復権のための仕組みが作られています。問題は、復権のための鍵が何か、そしてフォーカスすることです。権威者8人の意見は一致しているのか?これだけ広がっていてフォーカス可能なのか?具体的に、いつ、何を、どのようにするのか?
部品内蔵の標準化 ⇒ 省略
技術標準WGの現状 ⇒ 省略

7.まとめ

問題点の克服のために
日本の欠点と対策

  • 着手が遅い。(全員の合意が前提条件になっている)
    ⇒ この指とまれ方式で、テーマに早く着手する。
  • 不確定なことに、資金を出す人がいない。
    ⇒ 資金は、政府と民間のファンドをつくる。
  • 作った組織の独自性が無い。(上部組織の意思が決まらないので行動できない)
    ⇒ 独立性の高い組織に運営させる。

――― 以上 ―――

早稲田応用化学会主催 第39回交流会講演会質疑応答

松方先生との質疑応答(概要)
松方先生
先程フランクフルトから帰りました。
やることは速いですがドイツも迷って困っていることを目の当たりにしました。特にカーボンニュートラルについてそう言えます。今までやって積み上げてきたものが一気にひっくり返された状況です。天然ガスは国のエネルギー消費の9%位まで下がっていて、どうしましょうという状況です。
一方でカーボンニュートラルに関し、ナフサクラッカーを電炉方式で行う方法があります。現地で見ていてびっくりしたのですが、日本の研究所では多分ベンチ装置を作ってデータを取ってぼちぼち始めると思うのですが、現地ではBSFの本体のクラッカーの横に実装設備が既に出来ていて、動いています。日本ではアンモニアで加熱することが国の方針としてあります。但しそのような設備を誰かが作ろうという話は聞いたことがありません。速いとか遅いとかの次元を超えて、全然ダメと思って帰ってきました。ドイツで行動が速いのは、多分国のお金ではなく自分のお金を使っているからだと思います。ナフサクラッカーに何かを実装することは日本でもドイツでも同じですが、それを出来る国と出来ない国は決定的に違うなと思い、帰ってきました。
変わる方法ですが、ドイツのように個人主義になる必要もないと思います。我々が携わる応用化学や化学工学の分野は重厚長大で古い産業ですが、これを変えるきっかけがあるのかどうか、暗澹たる気持ちで帰ってきました。どうでしょうか。
小岩先生
ドイツの大学はスケールアップした研究をしなければならない、と決められているようです。私がいましたアーヘン大学でアルミをリサイクルする時、アルミを溶かす小さい炉が1立方メートルあるそうです。1立方メートルのアルミを溶かす、というのは無茶苦茶ですよね。日本では多分どこも出来ないと思います。そこまでスケールアップしなければならない、ということが明確に決まっているからやっているのだと思います。
例えばエアランゲン大学では、実装の組み立てライン、すなわち実際に製品を作れる組み立てラインが4本あります。日本の大学では実装の組み立てラインを1ラインも持っていません。ドイツでは持たなければならないという制約があるのだと思います。生産もしていないのに実装の組み立てラインを4本も持っていて何になるのか、という疑問は持ちます。でもそれがあれば、ドイツの研究者で実際に組み立てをしたいという人がエアランゲン大学に行けば、それが出来るわけです。1立方メートルのアルミを試作したければ、アーヘン大学が炉を貸し出しするそうなのでそれが利用可能です。そういう機関を分野毎に無理やり作っているのだと思います。これは良い面と悪い面があると思いますが、結果的に良いことだと思います。
松方先生
小岩先生がおられたアーヘン工科大学は私の分野である分離膜において極めて強力なセンターです。大きな体育館のところに膜の評価装置がずらっと並んでいます。日本は、産総研も含めてそういう所はどこにもありません。従って日本のメーカーさんが膜を作るとアーヘンに送って評価してもらいます。何が起きるかと言うと、世界中から膜が集まって来て、世界中の膜の実力が全部アーヘンに集まります。全部データが取られます。それはダメと20年位前から言っていても何も起きません。
小岩先生
それがIMECモデルなんですよ。EUVに興味のある世界中の人たちがIMECに集まってきます。IMECは、どこがEUVにどれだけ興味があってどれだけの実力があって何をやるか、全部分かるわけです。日本が半導体に強かった80年代に何でそれをやらなかったのか、非常におかしいと思います。出来れば日本国内でやりたいですね。
松方先生
そうです。日本に情報を集めたいのに、日本からドイツに全部情報が出ていく仕組みになっています。
もう一点ですが、日本の過剰な規制と既得権についてです。
ドイツの大学を見に行ったら高圧の水素ボンベを自転車に積んで走らせていました。こんなことは日本では絶対に出来ないですよね。規制の在り方が全然違うと思いました。
小岩先生
その通りだと思います。
ドイツから帰ってきたときに、「ドイツ流仕事術」というテーマで講演したら、経産省の方からお呼びが掛かりました。そこで護送船団方式はダメです、ということを説明しました。この指止まれ方式を採用し、本当に興味があってお金を出すという人を集めてやらないと、いくらお金を使っても無駄です、ということを訴えたのですが、税金は平等に配らなければならない、ということで聞き入れてもらえませんでした。

B4 北村さんとの質疑応答(概要)
北村さん
ご講演、有難うございました。
後半部分で目的の明確化とWork Hardについてお話しがありました。努力ということについては果たしていると思っているのですが、目的意識を鍛えるには日頃どのようなことを意識すれば良いのか教えて下さい。
小岩先生
常に自分が将来何になりたいか、という意識を持ち、それに近付けるような努力を怠らないようにすることだと思います。目標は変わっても良いですが、基本となる軸を持つことが必要だと思います。
北村さん
目的と言うよりVisionを明確化して視野を広げ、研究していきたいと思います。
有難うございました。

2023年度学位授与式 濱会長 祝辞

濱  逸夫

 

現在、応用化学会の会長を仰せつかっております濱と申します。

 先ずは皆さん、本日は本当におめでとうございます。この何年かはコロナに翻弄された生活であったと思いますが、その中でも皆さんにとって、様々な先生方や先輩、そして友人たちとの新たな出会いがあり、充実した時間であったと思います。多くの新たな経験の中で、紋々とした時間もあったかと思いますが、全てが皆さんの財産として蓄積されています。

 そして、今日を起点に更に皆さんの新たなキャリアが始まります。これからの人生を本当に有意義な、楽しいものに出来る大きなポテンシャルが、皆さん全員にあります。

とは言っても、未だ自分のやりたいことや自分の人生をかけてチャレンジしたいことが見えていない人いるかもしれません。ただ焦ることは全くありません。若い皆さんには、新たなキャリアにチャレンジする多くの時間があります。

 私も応用化学科を卒業後、企業の研究部門に所属し、様々な技術開発に関わりました。その後、事業部門に移り、後年は、社長、会長という企業経営に携わった経験の中で、「何かに成功する人は、異なるキャリアにシフトしても必ず成果を出す」ことに遭遇し、何度も驚かされました。研究でも1つ大変優れた研究や発見をした人は、異なる研究や技術開発でも、必ず成果に繋げます。

 何故なんだろう?何度となく、考える機会がありました。

人生は運と努力、そして運が七割だという人もいますが、先ほどお話ししたような何度も成功体験を勝ち取れる人に共通しているものは、単なる運ではなく、

『自分の頭で考え、自ら行動に移せる能力が高いかどうか』

その能力の大小が人生の結果を大きく左右するのではないかと思います。

世の中で当たり前と思われていることを、敢えて異なる視座から捉えて、今までとは全く異なる結論を導き出す。これはイノベーションの原点かもしれません。そして、一度上手く行くと益々面白くなって、自分で考え、自分で動くことを繰り返すのが当たり前になるのではないかと思います。

 これまでの学生生活は、進むべき道がある程度描かれていて、その道を進むことに努力をしてきたと思います。ただこれからの人生に重要なのは、自分で道を見つけ、あるいは自分で道を作っていくことです。

 常にその道が皆さんの人生を充実した、面白いものにするのか、あるいは人の為になっているのかを、自分でデザインし、チャレンジを繰り返して行かねばなりません。

常にポジティブに物事を捉えて、前に進む。そして壁にぶつかった時は、一人で悩まず、心を開いて話をする。気軽にそんな話をできる仲間を如何に多く作るかも、これからの人生にとって大変重要です。

皆さんには、多様な視座をもって物事を見る、そして自ら考え、仕掛ける能力を身につけて、研究の世界でも、ビジネスの世界でも、是非グローバルで活躍できる人材になってほしいと思います。

SNSの時代、そして生成AIの時代、益々国境がなくなり、また変化のスピードが凄まじいものになります。そんな時代では、様々な情報が全て真実のような形で、あっという間に共有でき、手に入ります。ただそれは自分自身の意見や考えではなく、不特定多数の人達の情報や意見であることを忘れないでほしいと思います。得られた情報や考え方が真実であるかどうかも分かりません。

人生の主役はあくまでも自分。どんなに簡単に様々な情報が共有できる時代になっても、常に自分の頭で考え、自ら行動することを忘れずに、挑戦を続けてほしいと思います。

“何事にもおもしろいと思ってチャレンジすること”、そして

“心を震わせ多くの感動を感じること”そしてどんなに成功しても

“常に人への感謝を忘れないこと”

これを忘れずに、皆さんの持っている無限のポテンシャルを大きく花開かせてください。

 ここにいる皆さんから、世界で憧れられるような素晴らしい人材が数多く誕生することを期待して、私からのお祝いのメッセージにしたいと思います。

本日は本当におめでとうございました。

 

                             以上

本文へ戻る 

2023年度学科・専攻主任 下嶋教授 祝辞

ご卒業、修了される皆さん、おめでとうございます。この素晴らしい日を迎えることができたのは、皆さんが勉学や研究に励んだ結果ではありますが、それも保護者の方々をはじめ周囲の方々の支えがあってのことと思います。本日ご列席されているご関係の皆さま方にも、心よりお祝い申し上げます。
学部を卒業される皆さんは入学早々、また修士過程を修了される皆さんは演習配属前の大事な時期にコロナ禍に直面し大変苦労されましたが、長いトンネルを抜けて最後の1年間はほとんど制限なく大学生活を過ごすことができたのは大変良かったと思います。
卒業論文を終えて、これから修士課程に進学される皆さんは、これまでよりも高いレベルの研究が求められます。学会発表や論文発表も積極的に行っていただき、専門的知識を深めるだけでなく、プレゼンテーション能力や論理的に考える力なども高めて、大きく成長してください。これまではあまり研究を楽しむ余裕がなかったかもしれませんが、今後は自由な発想で主体的に研究を行い、失敗してもそれを糧に飛躍されることを願っています。
これから社会に出る皆さんは、大学で学んだ知識や経験を活かして大いに活躍していただきたいと思います。これまでの研究と直接関連する業務に携わることは少ないかもしれませんが、必要なのは課題に向き合う姿勢やそれを解決するための考え方ですので、自信をもって取り組んでください。特に現在、私達人類が直面している環境、エネルギー問題などの解決には応用化学が大いに貢献できるところで、皆さんに対する社会からの期待は高いです。そのことを意識して、使命感を持って進んでください。
皆さんも認識されているように、いま社会・世界は急速に変化しており、将来がなかなか見通せない状況です。皆さんには、このような時代でもたくましく生き抜き、世界を舞台に活躍していただきたいと思います。そのためには現状維持で満足することなく、変化を積極的に受け入れ、また先入観を取り払い常に新しいことに挑戦する姿勢が大事です。多くの困難や挫折が待ち受けているかもしれませんが、皆さんには乗り越える力が備わっていますので、恐れず突き進んでください。また、皆さんがどんなに優秀で努力しても、一人の力で成し遂げられることは限られていますので、さまざまな分野の人たちと積極的にコミュニケーションをとって巻き込み、その中でリーダーシップを発揮することも重要です。応化の同期の人たちをはじめ先輩後輩とのつながりもきっと力になるときが来ます。大学時代の数年間をともに過ごし、ともに切磋琢磨し、なによりコロナ禍という大きな困難を乗り越えたその絆は特別なものですので、一生大切にしていただきたいと思います。
本日卒業・修了される皆さんに、あらためてお祝いを申し上げます。応化で学んだことや経験を活かしてそれぞれの進路で活躍されることを祈念して、祝辞とさせていただきます。

本文へ戻る 

応用化学会橋本副会長の祝辞

橋本副会長の祝辞

本日応用化学専攻褒賞・奨学金を授与された皆様、誠におめでとうございます。このように授与される褒賞・奨学金は、個々の先輩諸氏や高い志による財団からの寄付によって成り立っています。どうか受賞された皆様は、こうした先輩や財団の思いをしっかりと受け止め、その期待実現に向けて大きく飛躍前進されることを心より期待いたします。

皆様もやがて社会に出て活躍されることとなると思います。大学や研究機関で研究を続ける場合には博士であることは当然大事です。ただ企業に勤める場合、私の時代には博士になると狭い領域の専門家になって企業では使いにくいと言われることがありました。その時代は現状の企業の操業を広くよく理解して継続的な効率の改善を追求することが競争力の源泉だったからです。しかし、ISOをはじめ各種のManagement Systemが適用されるようになってより、継続的改善が組織的に広く行われるようになりました。その結果、日本型のボトムアップの効率改善だけでは競争力の維持は難しくなっております。むしろ近年の企業の競争力は、次元の違うステップにジャンプアップする技術の力に移っていると思えます。

一方、従来は博士というと狭い領域だけの専門家というイメージがありましたが、それは正しくありません。博士になるには自分自身の専門領域だけではなく、関連する研究領域全体の展望が必要になります。その領域の展望を自分なりの総説(Review Article)として更新し続け、経営資源を投入すべき領域を的確に議論できる博士レベルの人材は企業にとっても極めて重要になっています。

私は海外の企業で2年と1年の計3年仕事をした経験がありますが、海外においては博士に対する期待や要求、そして待遇は当時においても日本に比べて格段に大きく高いものがありました。例えば競合他社が新技術を発表した場合、関連する博士を中心として検討対策会議が開かれます。博士たちは自分の専門性に加えて、その技術領域の総説的な展望にも基づいて、現実的で有効な競争力維持の対抗策が議論できるからです。

特に日本ではこれから少子化の問題が顕在化してくると思われます。今すぐ少子化対策に取り組んだとしても一定期間少子化により日本が創出できる価値の総量は相対的に低いレベルになる懸念が有ります。そうした中で日本において個々の人が単なる効率化を超えてより高く大きい価値を創出することへの要請は非常に大きく、現実的な課題でもあります。皆さんのこれからの活躍に大いに期待しております。本日は誠におめでとうございました。

戻る