先輩博士からのメッセージ」カテゴリーアーカイブ

早稲田応用化学会主催 「2024年度第2回先輩博士からのメッセージ」のご案内

2024年12月14日(土)14:00~18:00 @西早稲田キャンパス

これまでに応化会では、キャリア形成に関心のある学生を対象に「先輩からのメッセージ」や「応化卒の多様なキャリア形成」などのイベントを開催してきました。それらに参加されて、企業での働き方や博士後期課程を身近に感じ、今後のキャリア形成に興味を持たれた方もいらっしゃるかと思います。そこで、皆様が研究や博士課程を身近に感じ、博士後期課程学生(以下、博士学生)やOB/OG博士と交流する会として、今年度2回目の「先輩博士からのメッセージ」を開催いたします。

今回は、現役の博士学生から社会の一線でご活躍されているOB/OG博士まで幅広い年代層のパネリストをお招きし、博士後期課程での経験や、企業での研究生活、博士号が活かされた場面などをパネルディスカッションしていただきます。普段はなかなか接する機会のない方々の経験を聞くことができるだけでなく、座談会及び懇親会ではOB/OG博士や博士学生と直接話すことができる機会ですので、奮ってご参加くださいますよう、お願い申し上げます。

【スケジュール】

開催期日;2024年12月14日(土)

会場;西早稲田キャンパス63号館202教室+63号館ロームスクエア

講演形式;対面

14:00~14:05;開会挨拶

14:05~15:05;パネルディスカッション

15:15~15:55;座談会(20分×2セット)

16:00~16:10;応化及び応化会関連の奨学金説明

16:30~17:55;懇親会(飲食あり)

17:55~18:00;閉会挨拶

※ 日本語で実施いたします。

【講演情報】

講演者①;田中 学さん(東京都立大学 都市環境学部 環境応用化学科, 西出研究室(高分子化学部門))

講演者②;柘植(宮坂) 悦子さん(三菱ケミカル株式会社, 平沢研究室(化学工学部門))

講演者③;佐藤 陽日さん(三井化学株式会社, 細川研究室(有機合成化学部門))

講演者④;吉岡 育哲さん(千葉大学 真菌医学研究センター,桐村研究室(応用生物化学部門))

講演者⑤;久保 真之さん(博士後期課程2年, 山口研究室(有機合成化学部門))

講演者⑥;渡辺 光亮さん(博士後期課程2年, 関根研究室(触媒化学部門))

【申込について】

参加費:無料

参加方法:下記URLより要事前申し込み

締切:12月1日(日)

※申し込みの際は、Wasedaメールのアドレスをご入力ください。

※集計の関係上、締切を設定していますが、当日の参加も可能です。(フォーム入力は前日まで可能)

※今回のイベントは早稲田大学応用化学科に所属する学部1~4年生および応用化学科の教員の指導を受ける大学院生が参加申し込みの対象となります。

https://forms.gle/VyZ9dYF74N8SVqTo9

※ 早稲田アドレスにて作成されたGoogleアカウントですとアクセスできません。

個人のGoogleアカウントにて上記URLを開いてください。

皆様、是非奮ってご参加下さい。宜しくお願い致します。

――― 以上 ―――
(文責;早稲田応用化学会給付奨学金 奨学生推薦委員会)

「2024年度第1回先輩博士からのメッセージ」開催報告

【イベント名】

2024年度第1回先輩博士からのメッセージ

【イベント詳細】

開催日時:2024年7月27日(土)

開催場所:西早稲田キャンパス54号館101~104室+63号館ロームスクエア

開催形式:対面開催

14:00~14:05;開会挨拶

14:05~15:05;博士OB及び博士後期課程学生による講演(2件)

15:15~15:55;座談会(20分×2セット)

16:00~16:10;応化及び応化会関連の奨学金説明

16:30~17:55;懇親会

17:55~18:00;閉会挨拶

昨年12月に実施した「第2回 応化卒の多様なキャリア形成」に引き続き、対面開催となった。今回は学位取得後、企業にて活躍されているOBおよび博士後期課程学生による博士課程での研究や博士取得後の企業研究に関する講演を実施した。また、座談会では、学部1年~修士2年生と博士学生〜博士OBOGを少人数のグループに分かれ、研究生活など様々な疑問に答えた。これらを通じて、博士課程進学というキャリアパスに対する理解度を上げてもらった。加えて、懇親会では様々な立場の学生・OBOGが交流する場を得ることができた。参加者は、学部~博士学生、OB/OG、応化会関係者合わせて50名程度の参加となり、盛会に終わった。

開会挨拶: 下村副会長:

下村副委員長

2024年はパリオリンピックの開催年であり、その開会式を見ても世界には多種多様な人がいると感じられる。また、日本においては高齢化が進み、人生100年時代が到来すると言われている。そのため、働く期間は今後伸びていくのではないか。したがって、若いうちに博士過程に進学することで、勉強する期間を長く取ることも、これから来る時代を乗り切るのに重要なことかもしれない。特に博士人材は、緊急時などに臨機応変に考えて行動できる力を得ていることが多く、今後の日本に求められる人材となり得るのではないかと思われる。また、高齢になっても長く仕事を続けることができる。これはこれからの時代に優位であろうと考えている。「先輩博士からのメッセージ」という本イベントで、皆さんの未来に繋がるきっかけになることを願っている。

OB・博士学生による講演:
今回、企業で働く博士OBと現役の博士学生の2名に、これまでの自身の博士研究での経験・博士進学の動機などについてご講演いただいた。尚、司会進行は、応用化学科 林宏樹講師が行った。

講演者①;会田 和広さん(博士後期課程3年,山口研究室(有機合成化学部門))

題目:「研究人生のはじまり」

会田 和広さん

会田和広さんは、有機化学研究室の博士学生として研究に従事されている。学会参加やアメリカへの研究留学など、幅広い経験をされている。

学生実験と研究の違い・博士進学での動機について
学生実験は実験項目が皆同じで、答えが決まっているものを再現することがほとんどであり、実験操作や考え方の基礎を学ぶものである。一方で、研究室での研究は、答えがわからないものから答えを見つけ出すための実験を繰り返すものである。答えがないからこそ、思った通りの結果が出ないことが長く続くことがあるが、答えを見つけたいという思いが強くなることもある。会田さんは、学部1年生の時に卒業後の進路を考えた際に、薬を作って多くの人を救いたいと思い、有機化学の研究者になろうと決めた。製薬会社の研究所では、博士人材の需要が高まっていることから、博士進学も視野に学部生活を送ってきた。そして、博士進学を決めた動機は、研究室に入って有機合成方法の研究を初めた当初、200通りの実験を行ったが、その収率はほぼ0%であった。その後もなかなか収率が増えずに15%程度までにしかならなかった。就職活動をするかどうかを決断する時期が近づき、このまま卒業してしまったら、自分のテーマを後輩に託すことになるが、それならば自分でやり遂げたいと思い、博士後期課程進学を決めた。

研究室での研究について
有機研究室では、分子を作る新たな有機合成方法論の開発を行っている。実験には時間がかかることから、朝から晩まで実験室にいることが多いが、その中でも実験室のメンバーと食事休憩を取って、メリハリを付けた生活を送っている。その他にも、研究室のイベントや運動などもしてリフレッシュもしている。
また、実験以外の研究室の活動としては、学会発表や研究留学がある。研究室を進めていくに連れて成果が出てきたので、学会にも参加するようになった。学会では、自身の研究を国内外の研究を発表するだけでなく、他大学の同期や有名な先生、企業の人など多くの人と交流している。また、博士後期課程では、アメリカのUCバークレー大学へ留学する機会を得ることができた。現在の研究テーマは分子を作る新たな方法論を開発しているが、天然物合成をする技術を学ぶことが企業での研究に活きてくると考えて、全合成を行う研究所を選択した。アメリカで感じたことは、トップレベルの大学であっても、研究レベルに大きな差はないことだった。英語はあまり得意ではなかったが、有機化学は構造式や反応機構を手書きで表せば議論できた。また、漫画や音楽など日本のカルチャーを好きな海外の人も多いので、日々色々なことに興味を持っておくと会話が弾むことを実感した。

学生へのメッセージ
学部、修士、博士さまざまな選択肢がある中で自分に何が必要か、将来何をしたいのかよく考えて選択し、自分が後悔しない道へ進んで欲しい。

講演者②;女部田 勇介さん(AGC株式会社,本間・福永研究室(応用物理化学部門), 2022年修了)

題目:「博士までの経験と企業での研究生活」

女部田勇介さん

女部田勇介さんは、応用物理化学研究室に所属され、日本学術振興会特別研究員(DC1)として博士研究をされていた。現在は、AGC株式会社 材料融合研究所 無機材料部にて研究に従事されている。

博士進学を決めたきっかけ
初めに、博士学位取得者の基礎情報を紹介いただいた。全人口のうち、50%が大学進学、6%が修士、0.6%が博士ということで、ごく少数である博士はそれだけ価値が高い肩書きかもしれない。収入面では、統計データから学位取得者は30代後半くらいからの収入の伸びが大きく、60代以降も比較的高い水準で働けることを紹介された。また、博士後期過程への進学の利点として、国際学会への参加や留学など貴重な経験ができることや、自分のやりたい研究が思い切りできるようになること、学位を取得すれば、研究者として一目置かれるようになることが挙げられる。これらの基礎情報を踏まえて、博士進学を決めたきっかけは、第一に将来長く働きたいこと、そして第二に学会で海外に行くことを挙げていた。さらに、修士課程時代に、理系に限らない企業インターンシップに参加してみて、自分が研究を好きなことを再認識したことも進学理由になった。加えて、指導教員や研究室の先輩を尊敬できたことも、博士課程を過ごす上での環境面として重要な点であると卒業後に感じた。

企業での研究について
博士進学を決める前からビジネスの場に近い研究をしたいと思い、学位取得後は企業に就職した。大学での研究は自分の実験は自分でやり、基本的に1人でテーマを進めていく。コアタイムだけでなく自分の裁量で実験ができ、自由度も高く細かなコストなどを気にせずに10年先の課題などに向き合える。一方、企業での研究は、市場規模などをもとにビジネスに繋がる研究を、作業員に実験内容を指示して協力して進めていくことになる。そして、定時にやりきる必要があるため、実験計画をしっかりと立てることが重要である。また、企業で働いてみて特に驚いたのは安全やセキュリティの高さだった。たくさんのチェックすべき項目があり、安全性に配慮して作業を行っている。また、博士号を取得したことで、就職後も専門性に合った研究に従事できているように感じる。

学生へのメッセージ
博士進学を少しでも考えたら、まずは親に相談すること、そして指導教員にも相談することが大事である。博士課程に進学すると同年代の多くが働いている中、学生を続けることになり、不安もあるかもしれないが、勇気を持って研究の世界に飛び込んで欲しい。

座談会
学部1年生~修士2年生と博士学生と博士OBOGがそれぞれ2〜3名程度の小グループに分かれて座談会を実施した。講演会を踏まえて気になったことや、研究生活や博士進学のきっかけなど、各自が疑問に思ったことを博士人材に直接聞く良い機会となった。

応用化学科及び応化会関連の奨学金説明:須賀先生

須賀 先生

早稲田応用化学会は1923年5月に設立された会員数11000人超えの組織であり、卒業生との太いパイプがある。博士後期課程の進学に対して経済面がひとつの問題になり得ることから、応用化学科及び応用化学会の充実した奨学金制度について紹介があった。また、最近の博士後期課程への進学率とその後の進路先の割合について紹介があった。博士後期課程修了者は、2010年以降2022年までの間で約90名である。博士号取得者のおよそ6割は企業で活躍している。次いで国内大学、海外大学、省庁・研究機関となっている。
博士後期課程の支援体制として、学内外の奨学金制度は、貸与型と給付型がある。学外では日本学生支援機構(JASSO)、学内では早稲田オープンイノベーションエコシステム挑戦的研究プログラム(W-SPRING)がある。応用化学科および応化会独自の奨学制度は早稲田大学の中でも郡を抜いて充実しており、全て給付型となっている。また、最近では「応用化学科卒業生による優秀な人材の発掘と育成の支援」のために、応用化学会給付奨学金は対象を学部生まで拡充している。早期から優秀な人材を発掘・支援したいという目的から、すそ野を広げる形となった。このような支援の存在を早い段階から知ってもらい、各自の必要に応じて応募して欲しい。

乾杯の挨拶(懇親会):原副会長

原 副会長

今回のイベントは今後のキャリア選択の参考になったと思う。特に低学年の学生の方々は、まだまだ先の将来を考える時間はあると思うが、博士進学がとても魅力的に感じたと思う。ぜひ先輩たちと懇親会で交流をして、今後のキャリアを考える良い機会にしてもらえればと思う。

閉会挨拶:橋本監事

橋本 監事

海外では、日本とは異なってドクターを持っているかどうかでの待遇が大きく違うことを自分の経験上でも大きく感じたことがある。博士は面白いチャンスを得られると思うし、自分の興味のある研究に関わることができる。少しでも興味を持ったら博士進学を検討して欲しい。

懇親会の様子

 

(早稲田応用化学会 基盤委員会、交流委員会、広報委員会)
以上

早稲田応用化学会主催 「2024年度第1回先輩博士からのメッセージ」のご案内

2024年7月27日(土)14:00~18:00 @西早稲田キャンパス

これまでに応化会では、キャリア形成に関心のある学生を対象に「先輩からのメッセージ」や「応化卒の多様なキャリア形成」などのイベントを開催してきました。それらに参加されて、企業での働き方や博士後期課程を身近に感じ、今後のキャリア形成に興味を持たれた方もいらっしゃるかと思います。

そこで、学部生及び修士課程学生の皆様が研究や博士課程を身近に感じ、博士後期課程学生(以下、博士学生)やOB/OG博士と交流する会として、今年度も「先輩博士からのメッセージ」を開催いたします。

現役の博士学生及び社会でご活躍されているOB/OG博士をお招きし、学部生時代から博士後期課程進学までを振り返りつつ、博士後期課程での経験や、企業での研究生活などをお話いただきます。普段はなかなか接する機会のない方々の経験を聞くことができるだけでなく、座談会及び懇親会ではOB/OG博士や博士学生と直接話すことができる機会ですので、奮ってご参加くださいますよう、お願い申し上げます。

【スケジュール】

開催期日;2024年7月27日(土)

会場;西早稲田キャンパス54号館101室+63号館ロームスクエア

講演形式;対面

14:00~14:05;開会挨拶

14:05~15:05;OB/OG博士・博士学生による講演(30分×2件)

15:15~15:55;座談会(20分×2セット)

16:00~16:10;応化及び応化会関連の奨学金説明

16:30~17:55;懇親会(飲食あり)

17:55~18:00;閉会挨拶

※ 日本語で実施いたします。

【講演情報】

講演者①;会田 和広さん(博士後期課程3年,山口研究室(有機合成化学部門))

題目:「研究人生のはじまり」

講演者②;女部田 勇介さん(AGC株式会社,本間・福永研究室(応用物理化学部門), 2022年修了)

題目:「博士までの経験と企業での研究生活」

【申込について】

参加費:無料

参加方法:下記URLより要事前申し込み

締切:7月13日(土)

※申し込みの際は、Wasedaメールのアドレスをご入力ください。

※集計の関係上、締切を設定していますが、当日の参加も可能です。(フォーム入力は前日まで可能)

※今回のイベントは早稲田大学応用化学科に所属する学部1~4年生および応用化学科の教員の指導を受ける大学院生が参加申し込みの対象となります。

https://forms.gle/N2khZmd6GCAZboMt6

※ 早稲田アドレスにて作成されたGoogleアカウントですとアクセスできません。

個人のGoogleアカウントにて上記URLを開いてください。

皆様、是非奮ってご参加下さい。宜しくお願い致します。

――― 以上 ―――
(文責;早稲田応用化学会給付奨学金 奨学生推薦委員会)

第2回 応化卒の多様なキャリア形成 報告

【イベント詳細】
開催日時:2023年12月16日(土)
開催場所:63号館202室および63号館ロームスクエア
開催形式:対面開催
15:00- OBOG・博士学生による講演
16:30- 座談会 兼 懇親会

コロナ禍以降、オンラインにて開催してきた本イベントは、今回の「第2回 応化卒の多様なキャリア形成」にて、久しぶりの対面開催となった。今回は学位取得後、企業にて活躍されているOBおよび現役の博士後期課程学生からの博士課程での研究や博士取得後の企業研究に関する講演を実施し、博士課程進学というキャリアパスに対する解像度を上げてもらった。また、座談会兼懇親会では、久しぶりの対面開催ということで、学部生と博士人材間のみならず、博士人材同士も交流する場を得ることができた。

開会挨拶: 下村副会長:

下村 副会長

今年は応用化学会創立100周年として様々な取り組みをしている。先日発行された応化会会報にも執筆したように、“早稲田応用化学会は次の100年に向けてどのようなことに取り組んでいったらいいのか“ということが、現在の我々が考えるべきテーマである。特に次の100年に向けて、「多くの人が集まる場を作ること」と「応化会会員のキャリアの育成」が重要と考えている。本イベントもこのような趣旨に沿ったものである。「応化卒の多様なキャリア形成」ということで、博士関係の参加者が多いが、博士進学の有無に関わらず、博士の世界がどのようなものなのかをぜひ知っていただきたい。

OBOG・博士学生による講演:
今回、企業で働く博士OBと現役の博士学生の2名に、これまでの自身の博士研究での経験・博士進学の動機などについてご講演いただいた。尚、司会進行は、応化会 基盤委員会 斎藤ひとみ委員に行っていただいた。

講演者①;小池 正和さん(三菱ケミカル,黒田・下嶋・和田研究室(無機化学部門), 2021年博士修了)

題目:「博士進学と企業研究の魅力」

小池正和さん

小池正和さんは、無機化学研究室に所属され、日本学術振興会特別研究員(DC1)として博士研究を行われていた。現在は、三菱ケミカル株式会社 Science & Innovation Center 分析物性研究所 先端解析グループにて、無機材料の各種分析と新規分析技術の導入に従事されている。

講演において伝えたいメッセージ
学部・修士学生への一番のメッセージとして「自分自身のキャリアを主体的に形成してほしい」、そのうえで博士進学を一つのプランと考え、研究が好きなら是非博士へ。と最初にメッセージをいただいた。

学生実験と研究の違い・博士進学での経験について
学生実験は実験項目が皆同じで、ノルマも目標も必要な器具や試薬も最初から用意されている。一方で、研究室での活動では、一人一人に異なるテーマが与えられ、ノルマや目標は最初からあるのではなく実際に実験を進める過程で得られた結果から見えてくるものである。そして、そのための準備は先輩から教わりつつ自分でしていく必要がある。
小池さん自身が学部4年時に与えられた層状ケイ酸塩の作製というテーマは挑戦的であり、なかなか成果が得られずに苦しんだ。卒論執筆の頃にようやく成果が出始める。その中で、自分の研究の立ち位置(意義や周辺の研究と差別化される点)を知り、研究に、ひいては博士課程に興味が生じた。博士進学を決断した理由としては、自身の研究テーマを突き詰めたいという想いが強くなったことが最大の理由であったとのこと。また、研究室内での活発なディスカッションに楽しさを感じていたこと、分析装置を使いこなしたいというモチベーションがあったこと、さらにはM1での学会発表の経験や、博士進学(LD)を早期に決めていた同期からの影響もあったそうだ。一方、博士進学に対する経済的な不安もあったが、応用化学科関連の奨学金やDC1からの支援が充実していた。
博士課程での経験としては、研究の中で得られた結果からフィードバックして次の展開や課題を見出すなかで、研究の方針を自分で設定できること。その中で実験スキルの向上や、新規技術の取り込みなどを行い成長していく。また、自身で見つけた課題から他の学生の研究テーマを提案し、後輩の面倒を見る経験をできた。これらの経験は、課題探索能力やマネジメント力を得ることに繋がったとのこと。

企業での研究について
現在、企業では無機材料の各種分析と新規分析技術の導入を中心に業務を行っている。他部署から依頼を受けて分析を行うことが大半だが、材料合成のR&Dの部署との連携も行っている。そのなかでは分析側から材料合成側に方針の提案をすることもあるという。企業での研究の特徴として、研究資源が充実していることや、周囲にいる様々なバックグラウンドを持った人を巻き込んで仕事をできる、ということが挙げられる。ノルマや目標(例えば材料の性能の目標値)は明確になっている点も企業研究の特徴である。
ChatGPTに「企業研究の魅力とは」と質問した結果、社会貢献・自己実現・キャリアアップ・チームワーク・実践的の五つが回答された。この中で、社会貢献・自己実現・キャリアアップについては博士課程に限らない大学全般での経験が活きる。一方でチームワーク、つまり様々な人を巻き込むというのは博士の経験が活きる点だと思う。実践的な研究、つまり事業化に耐え得る製品や技術の開発という点に関しては、原理原則に基づく考え方が必須であり、これも博士課程での経験が活きる。最近の企業研究では「性能の向上や新材料の合成」だけでは売れない。世の中の(潜在的・顕在的)なニーズにあった製品を作ることが大事。だから、潜在的なニーズを見つけ出す力は必須であり、それは博士課程でこそ培われるものである。

講演者②;重本 彩香さん(博士後期課程2年,関根研究室(触媒化学部門))

題目:「博士課程に進学して得た経験」

重本彩香さん

重本彩香さんは、触媒化学研究室の博士学生として研究に従事される中、早稲田大学の助手として、大学授業や応用化学科の業務を兼任されている。また、今年度はオランダとスイスに海外研究留学をされ、博士課程中に幅広い経験をされている。

博士進学を決めたきっかけ
修士課程ではしっかりと就活に力を入れており早期から準備をして、企業に就職するつもりでいた。そこから一転して博士進学を決めたきっかけは、論文を出版したことと、さらにカバーピクチャーに選定されたことである。海外から自身の研究を認められたことがとても嬉しく、このような経験をさらに重ねたいという想いが芽生えたそうだ。進学の決め手となった理由は3つあるとのこと。1つ目は、仮説を立てて実験し、分からないことを解明していく、という毎日の研究がとても楽しく感じられたこと。2つ目は、博士号の取得や研究活動により自身の価値を高め、自分が何者であるかを明確にしたいということ。3つ目は、将来の選択肢や可能性を広げたいということ。であったとのこと。

研究室での研究について
学生実験と研究は明確に異なり、学生実験は新しい発見のためでなく、実験手法や原理を学ぶためのものだが、研究では未知の知見の創出のために誰もやったことのないことに挑戦する。自分で実験計画を組み、必要な装置も自分で用意する。上手くいかないことも当たり前であるが、そこに楽しさがあるのが研究である。

博士課程での研究や助手について
博士課程での1日のスケジュールとしては、助手業務がない日(週4-5日)は、朝から夕方まで自身の実験を行った後、研究室の学生や先生とディスカッションを行い、データ整理をして帰宅するとのこと。一方、助手業務がある日は、朝実験を行った後、基礎実験などの助手業務を行っているそうだ。助手のメリットとして、金銭的な不安がなくなること、科研費に応募できること、教育の現場に立って学生との交流が可能なことが挙げられる。学生との交流による発見もあり、忘れていた内容の復習にもなるとのこと。
また、自身の研究を世の中に発信する方法のひとつとして、学会発表がある。修士課程までの学会は国内がメインだったが、博士になってからは海外の学会に頻繁に参加する機会が増えた。また、海外に研究留学に行けることも博士課程の良いところであるとのこと。今年、オランダのデルフト工科大学とスイスのスイス連邦工科大学(ETH)付属のポール・シェラー研究所に留学したそうだ。日本の研究室の違いとして、博士学生・ポスドク・テクニシャンの多さに驚いたことや様々な分野の様々な国籍の研究者が所属していたことを紹介いただいた。また、ドッジボールやBBQなど、研究以外の思い出もできたそうだ。また、国内学会においても若手会のコミュニティに属しており、国内の様々な博士学生や先生と交流をしているそうだ。

博士課程での研究において大切なこと
まずは、一人で抱え込まないこと。周囲との相談によって精神的にも安定するし、自分では思いつかなかったことや見落としていたこと、意外なアドバイスから研究の突破口を見つけられることが多々ある。次に、研究や博士課程、ひいては人生の目標を持つこと。博士号を取得したのちのキャリアプランを持つことで博士課程でのモチベーションを維持できる。最後に、息抜きと健康管理がとても大事であるとのこと。重本さん自身、ランニング、料理教室、スキーなどの趣味を持っている。以上を踏まえて、博士課程に進みたい!研究を続けたい!と思ったら、自分のその気持ちを一番大切にしてください。というメッセージをいただいた。

応用化学科及び応化会関連の奨学金説明:須賀先生

須賀 先生

早稲田応用化学会は1923年5月に設立された会員数11000人超えの組織であり、卒業生との太いパイプがある。「先輩からのメッセージ」「企業が求める人物像」などのイベントがある。今回もそのイベントの一つ。博士後期課程に進学する学生にとって、関心事の一つが経済的なサポートである。応用化学科及び応用化学会の充実した奨学金制度について、また、博士後期課程への進学率とその後の進路先の割合について紹介した。博士後期課程修了者は、2010年以降2022年までの間で約90名である。博士号取得者のおよそ6割は企業で活躍している。次いで国内大学、海外大学、省庁・研究機関となっている。

博士後期課程の支援体制として、学内外の奨学金制度は、貸与型と給付型がある。まずは学外として、JASSO、早稲田学内全体として早稲田オープンイノベーションエコシステム挑戦的研究プログラム(W-SPRING)がある。一方、応用化学科および応化会独自の奨学制度はとても充実しており、学科内の奨学金制度は全て給付型となっている。また、最近では「応用化学科卒業生による優秀な人材の発掘と育成の支援」の実現のために、学部生を対象にした奨学金も拡充している。早期から優秀な人材を発掘・支援したいという目的から、すそ野を広げる形となった。そのため、各人の状況に応じて充実した奨学金制度を有効活用し、研究に集中できる環境を是非整えて頂きたい。博士で専門性を深めるのもキャリアアップの一つとして関心のある学生はふるって応募してほしい。一方、まだ研究について全くわからなくても、このような支援の存在を早い段階から知っておいてほしい。そして、研究が面白いが第一。自分のこととしてとらえ将来の活躍に役立ててほしい。

閉会挨拶:橋本副会長

橋本 副会長

今日の講演におけるおふたりの話は説得力がありとてもわかりやすかった。私の経験からも、博士号はこれからの時代においてとても重要であると感じる。特に海外では、日本とは異なってドクターを持っているかどうかでチャンスの違いが大きく、私自身ドクターをとっておけば良かったと思ったことがたびたびあった。
学生時代に私は「博士になると狭い領域の研究だけを深く行うことになり、世の中に出るとつぶしが効かなくなるのではないか」と考えていたがそれは大きな間違いであり、博士になるためには周辺の研究がどのようになっているのかを把握できる総説(Review Article)的な高い視点と広い視野を持たなければならない。そうした視点や視野を持つことは、大学から社会に出たとしても、例えば企業において企業戦略や、研究戦略を建てたり議論する場合においても必要かつ重要である。
本日の発表者の体験に基づいた説得力のあるメッセージによって、博士のイメージや理解が高まってきたと思うので、博士進学のチャンスがあるのであれば是非真剣に考えて挑戦して欲しい。将来的にはきっとドクターをとっておいて良かった、チャンスが広がったと思い返すことがあるのではないかと思う。

座談会 兼 懇親会:

博士学生と学部修士の学生が交互に座り、博士での生活の様子や、学生の悩みや不安について相談に乗っていた。また、修士課程以下の学生からの相談だけではなく、博士学生も博士号取得者や社会人ドクターの方に様々な相談を投げかけていた。初めて交流する人同士が多い中で最後まで話が尽きず、様々な人との交流が行われ、盛会に終わった。


座談会 兼 懇親会の様子

早稲田応用化学会主催 第2回 応化卒の多様なキャリア形成のご案内

2023年12月16日(土)15:00~18:00 @西早稲田キャンパス

これまでに応化会では、将来のキャリア形成に興味をお持ちの学生を対象に「先輩からのメッセージ」や「先輩博士からのメッセージ」などのイベントを開催してきました。それらに参加されて、企業での働き方や博士後期課程を身近に感じ、今後のキャリア形成に興味を持たれた方もいらっしゃるかと思います。そこで、博士課程を修了し社会でご活躍されているOBOGと現役の博士後期課程学生に、大学と企業での研究、博士課程への進学理由、博士課程での経験など様々な話を聞く機会を設けることで、学部生及び修士課程学生の皆様には、研究や博士課程を身近に感じてもらおうと考えています。そのため、OBOGや博士課程学生と交流する会として、「応化卒の多様なキャリア形成」を開催いたします。

普段はなかなか接することのない方々の経験を聞き、懇親会では直接話すことができる機会ですので、奮ってご参加くださいますよう、お願い申し上げます。

【スケジュール】

開催期日;2023年12月16日(土)

講演形式;西早稲田キャンパス63号館202室+63号館ロームスクエア

15:00~15:05;開会挨拶

15:05~16:05;OBOG・博士学生による講演×2件

16:05~16:15;応化及び応化会関連の奨学金説明

16:30~17:55;座談会 兼 懇親会(飲食あり)

17:55~18:00;閉会挨拶

※ 日本語で実施いたします。

【講演情報】 

講演者①;小池 正和さん(三菱ケミカル,黒田・下嶋・和田研究室(無機化学部門), 2021年博士修了)

題目:「博士進学と企業研究の魅力」

講演者②;重本 彩香さん(博士後期課程2年,関根研究室(触媒化学部門))

題目:「博士課程に進学して得た経験」

【申込について】

参加費:無料

参加方法:下記URLより要事前申し込み

締切:12月4日(月)

※申し込みの際は、Wasedaメールのアドレスをご入力ください。

※今回のイベントは早稲田大学応用化学科に所属する学部1~4年生および応用化学科の教員の指導を受ける大学院生が参加申し込みの対象となります。

https://forms.gle/beLcFiqaJwgok1ti9

参加申し込みをされた方には、ご入力いただいたWasedaメールアドレス宛に、当日の情報を12月13日頃に改めて配信いたしますので、確認をお願いします。

皆様、是非奮ってご参加下さい。宜しくお願い致します。

――― 以上 ―――
(文責;早稲田応用化学会給付奨学金 奨学生推薦委員会)

応化卒の多様なキャリア形成(先輩博士からのメッセージ):

【開催日時】
2023年8月19日(土):オンラインにて開催
13:00- パネルディスカッション
14:15- 座談会

昨年度まで「先輩博士からのメッセージ」として開催してきた本イベントは、今年度より「応化卒の多様なキャリア形成」と名前を変更して開催した。今回は学位取得後数年〜10年前後経過した社会人をメインとしたパネルディスカッションを実施し、国内外の様々な職場で博士号をどのように活かしているか語ってもらった。

開会挨拶: 下村副会長:

今年は応用化学会創立100周年として様々な取り組みをしており、博士人材の育成・支援は特に重要と考えている。本会もその一部である。
思い起こせば自分が応用化学科の学生であった頃は、学部卒が卒業生全体の半数ほど占め、修士課程に進学した学生のうち、一部がそのまま博士後期課程に進学し、企業に就職後学位取得のために戻ってくるケースもあったが少数だった。最近の博士人材のキャリアは多様化しており、本会も様々な知識を得る良い機会になるのではないかと思う。是非この貴重な場を活用してほしい。


パネルディスカッション:
今回パネルディスカッションに参加していただいた6名のパネリストの方々に自己紹介をしていただいた後、事前アンケートで希望が多かったテーマを中心にファシリテーター(梅澤宏明 基盤委員長)から質問する形式でパネルディスカッションを行った。

パネリスト(6名):


博士取得後のキャリアについて(この道に進んだ理由):
黒田さん: 大学教員を選んだのは、B4の卒業時に修士号を取得した先輩方が毎年10人社会貢献しているのを見て、自分は社会に出る人材を育てることに注力したいと思った。
助川さん: 昔から環境問題で社会貢献したいと考えていて、製品として世の中に貢献できることをしたいと考えた。修士での就職も考えていたが研究を優先させたく、博士を選んだ。
ジギーさん: 博士後期課程修了後も継続して研究したく、海外経験がなかったので他国(欧州)で研究したいと思った。学生と一緒に研究することの興味もあり、現在のキャリアを選択した。
稲垣さん: 基礎研究を継続したのは、合金研究に他の金属を混ぜたときに物性変化を見るのが面白く、論文を調べても明確でなかったことから、基礎研究の面白さを追求したいと考えた。

社会において博士人材も増えているのではないですか?:
黒田さん: アカデミアに進むうえでは、博士後期課程は通過する道であり、化学と工業の求人欄でポスドクの口を見つけた。アカデミアではテーマ替えもあるが、広く視野を広げてチャレンジ出来るのも一つのポイント。
助川さん: 旭化成の研究開発における博士人材の比率は10%程度。ただ、入社後にも学位を取得しにアカデミアに出向される人も多い。マネジメント職に進む人の資格要件ではないものの、マネジメントにプロモートされている方で学位取得者は多い。
ジギーさん: ベルギーの研究機関でも研究職は全員博士号を持っている。人材の募集要件として学位が求められ、かつ研究に関するバックグラウンドも併せて求められる。
稲垣さん: 国立研究機関で研究者として入る人材は学位取得が必須。(特に研究スタッフとしての学位は必須)。
黒澤さん: 就職活動の時期に海外留学が重なったが、最初に受けた製薬企業に就職が決まり、学位取得の強みを感じた。創薬部門は基本的に学位取得者で占められている。
吉田さん: これから就職活動に入るため、学位取得後の進路についてはイメージを持っている程度ではあるが、社会貢献についての興味に基づいてキャリア形成をしたいと考えている。

博士課程での研究生活について:
黒澤さん:月曜日から土曜日まで8時30分スタートで夜10時過ぎくらいまで研究することが多く、有機合成については1反応あたり12時間くらいを有するものもあるので前処理から後処理まで含めるとこのくらいの時間設定になることが多い。空き時間に文献チェックや論文作成など。
吉田さん:10時からから5時までが基本だが、昼間は後輩の指導に時間を充てることも多く、自分の時間を夜に入れたりすることが多い。化学工学では反応時間が長時間になることはあまりないため、解析などの処理などに時間を費やしたりしている。
黒田さん:学生時代に最も研究に時間を費やしたのは修士の時代で、博士課程に進むと研究室運営にも携わる時間が増えた。現在のキャリアを考えるとその時代の知識や経験も役立っているし、次の職場を選択する際にも一つのアピールポイントになった。
助川さん:博士課程時代にはテーマの割り振りなどもあったので、チームで研究を進める際に全体的なマネジメントの楽しさやチームとしての一体感など博士課程で経験した。
ジギーさん:博士課程在学中に助手もさせていただいた。学生実験など教授のサポートもあったので教育関係への時間も割くことになったが、チームでの研究がサポートになりバランスが取れた学生生活だったと思う。
現在は勤務時間がベルギーでは9時-17時で週1回のテクニカルミーティングになっている。ワークライフバランスは法律としても厳しく管理されている。
稲垣さん:博士課程から理研に進んだときに掛け持ちで大学に来る際の体力が、理研には高価な測定機器もあって時間的に使用制限が掛かるときの集中力は求められた。時間的にもメリハリがあった。

論文作成での苦労など:
稲垣さん:論文は一本作成するとその後の研究の見通しなど立てやすくなった。学位論文作成時のIntroductionをもとにしたReview論文作成そのものは大変だった。初期段階での教授のサポートは頂いたが、構成作業などは自力で対応したので力になった。

海外での研究や仕事に関して:
稲垣さん:シカゴで測定系での技術が現地で重要だった。3か月間の留学期間だったが、英語力とともに自炊など生活力も必要であることを実感した。
黒澤さん:ボストンでは同じような研究内容について3か月留学した。週に1回、教官との面談があり、英語でのコミュニケーションが求められた。リスニング力は向上したように思う。
助川さん:共同研究としての出向や、また海外からの研究者の受け入れなどの共同作業はあった。学会発表など含めての海外を経験する機会は多い。海外学会での受賞経験はモチベーションを上げるのに重要で、著名な先生と対面でディスカッション出来るのも大きいと思う。
黒田さん:学生を送り出すと現地で語学力の増進について実感がある。海外学会の場合は短い期間でも人脈形成のチャンスも多くある。

後輩たちへのメッセージ:
黒田さん:博士課程で何が出来るかを考えたときに、一つの資格であり、仕事が選べるメリットもある。企業に進んでも自分がアグレッシブに仕事する上で重要だと思う。
助川さん:専門性も上がるし、チームビルディングも一つのキャリア形成に役立つ。企業でも学位取得者が多いので一つの選択肢として学位取得を考えてもよいと思う。
ジギーさん:「学生」ではあるものの学会などに出席する機会も多いため、国際交流や人脈形成の可能性が大きく広がる。
稲垣さん:勉強が好きと研究が好きは別次元だと思うが、実際に研究室に入って研究が面白いと感じたらその思いは大切にしてチャレンジしてよいと思う。
黒澤さん:研究を始めてその楽しさに魅せられて進んだので、研究を継続しようという希望があれば積極的に考えて欲しい。
吉田さん:アカデミックな経験が多くできるのが一番のモチベーションになっているので、研究に興味があれば積極的に博士課程進学を考えてよいと思う。

パネルディスカッションの様子(参加者集合写真)

 

座談会:
パネルディスカッションに引き続き、パネリスト6名に博士号取得後の卒業生、現役博士学生を加えて、学部生との座談会を実施した(20分×2回)。ブレイクアウトルーム6室に参加者を分け(1グループ5~7人程度)、より率直に質疑応答や意見交換が出来る環境を提供することで、様々な博士課程での経験を共有した。
話題としては、就活の時期:会社や分野によって開始時期が違うか、博士課程進学を決めた時期、また博士課程進学を決定したトリガーなど、学部生の興味に沿った内容が多かった。

座談会の各ブレイクアウトルームの様子

 

座談会参加者は以下の通り(敬称略)

・黒田 義之 黒田研究室出身
・助川 敬 西出・小柳津研究室出身
・ヴォダルツ ジギー 本間研究室出身
・稲垣(鳥本) 万貴 関根研究室出身
・黒澤 美樹 山口研究室
・吉田 啓佑 野田・花田研究室
・佐藤 陽日 細川研究室出身
・金子 健太郎 野田・花田研究室出身
・吉岡 育哲 桐村研究室出身
・加藤 弘基 山口研究室
・重本 彩香 関根研究室
・渡辺 清瑚 小柳津・須賀研究室
・三瓶 大志 関根研究室
・ウ チクン 山口研究室
・中原 輝 山口研究室
・久保 真之 山口研究室
・宮﨑 龍也 山口研究室
・宮本 佳明 下嶋研究室

博士後期課程学生への支援体制:須賀先生

博士後期課程に進学する学生にとって、関心事の一つが経済的なサポートである。応用化学科及び応用化学会の充実した奨学金制度について、また、博士後期課程への進学率とその後の進路先の割合について紹介した。博士後期課程修了者は、2010年以降2022年までの間で約90名である。進学者の内訳は、内部進学が85%、他大学からの編入が6%、社会人が9%で、ほとんどが修士課程からそのまま博士後期課程へ進学している。また、学位取得後の進路は、約半数が企業、次いで国内大学、海外大学、省庁・研究機関となっている。
博士後期課程の支援体制として、学内外の奨学金制度は、貸与型と給付型があり、学科内の奨学金制度は全て給付型となっている。また、学内には早稲田オープンイノベーションエコシステム挑戦的研究プログラム(W-SPRING)もあり、各支援制度の選考時期・選考フローについても説明があった。そのため、各人の状況に応じて充実した奨学金制度を有効活用し、研究に集中できる環境を是非整えて頂きたい。世界的にも博士人材の需要は高くなっており、日本でも博士人材への需要は増加傾向にある。また、応用化学会給付奨学金は一昨年より給付対象を学部学生にも広げ、早期から優秀な人材を発掘し、博士後期課程に進学する学生を支援している。興味がある学生は積極的に応募してほしい。

閉会挨拶:橋本副会長

非常に実のあるディスカッションが出来たと思う。
私たちが学生であった当時は、早く社会に出てその現場を知り、そこで改善を積み重ねて継続的に効率性・経済性・生産性を強化していくのが一般的なエンジニアのキャリア形成であり、また企業競争力の基盤だった。しかし競争が、同じ段階内での改善に依存するよりも、その段階から一つ上の段階にステップアップする発想や技術に依存するようになると、そのための能力として必要な博士学位を背景に研究開発やディスカッションへ参加できる人材が重要視されるようになった。こうした状況で特に世界における企業間競争力を追求していくためには、視点を高く持つ博士学位取得者への期待が当然大きくなっている。能力と意欲のある応用化学科の学生には奨学金による経済的なサポートも充実してきているので積極的に活用し、自分の将来の夢を実現させてほしい。

博士人材交流会:
 パネルディスカッションと座談会にご参加いただいた博士人材の皆様にご参加いただき、博士後期課程学生と博士号取得後のOB/OGの方々とのコミュニケーションの場として交流会を開催した。バーチャルコミュニケーションツール(ovice)を用いて自由に懇談していただくことで、学位取得までの疑問や卒後キャリア、業種ごとの勤務体制の違いなど、リアルの交流会に近い環境で交流を深めることができた。

oviceでの博士人材交流会の様子

早稲田応用化学会主催 応化卒の多様なキャリア形成のご案内

2023年8月19日(土)13:00~15:15 (Zoomによるリモート開催)

これまでに応化会では、将来のキャリア形成に興味をお持ちの学生を対象に「先輩からのメッセージ」や「先輩博士からのメッセージ」などのイベントを開催してきました。それらに参加されて、企業での働き方や博士後期課程を身近に感じ、今後のキャリア形成に興味を持たれた方もいらっしゃるかと思います。そこで、社会でご活躍されているOBOGと現役の博士後期課程学生に、在学中の様子から卒業後のキャリアパス、海外での仕事や研究の経験まで、パネルディスカッション形式で幅広くお話ししていただき、学部生及び修士課程学生の皆様と交流する会として、「応化卒の多様なキャリア形成」を開催することといたしました。

普段はなかなか接する機会のない方々と直接話すことができる機会ですので、奮ってご参加くださいますよう、お願い申し上げます。

【パネルディスカッション】

OB/OGと現役の博士後期課程学生を中心とした大学院生によるパネルディスカッション

パネリスト①;黒田 義之さん(横浜国立大学 大学院工学研究院 機能の創生部門, 准教授, 黒田研究室(無機化学部門), 2011年博士修了)

パネリスト②;助川 敬さん(日本エラストマー株式会社 (出向元 旭化成), 担当課長, 西出・小柳津研究室(高分子化学部門), 2014年博士修了)

パネリスト③;ヴォダルツ ジギーさん(ベルギーimec, 研究員, 本間研究室(応用物理化学部門), 2017年博士修了)

パネリスト④;稲垣(旧姓 鳥本) 万貴さん(理化学研究所 開拓研究本部 Kim表面界面科学研究室, 基礎科学特別研究員, 関根研究室(触媒化学部門), 2022年博士修了)

パネリスト⑤;黒澤 美樹さん(博士後期課程3年, 山口研究室(有機合成化学部門))

パネリスト⑥;吉田 啓佑さん(博士後期課程2年, 野田・花田研究室(化学工学部門))

【座談会】
パネリスト、応化卒OB/OG、博士後期課程学生を中心とした大学院生、多数参加予定

講演の日時、形式等

開催期日;2023年8月19日(土)
講演形式;遠隔会議用ソフト Zoomを使用したリモート講演
13:00~13:05;開会挨拶
13:05~14:05;パネルディスカッション
14:10~14:40;座談会
14:40~15:00;応化及び応化会関連の奨学金説明
15:00~15:15;閉会挨拶

その他 ;参加費無料.要事前申し込み(8月4日(金)締め切り)
パネルディスカッションならびに座談会は日本語で実施いたします。

申し込み方法について

出席申し込みは、下記URLから8月4日(金)までにお願いします。

※申し込みの際は、Wasedaメールのアドレスをご入力ください。

※今回のイベントは早稲田大学応用化学科に所属する学部1~4年生および応用化学科の教員の指導を受ける大学院生が参加申し込みの対象となります。

https://forms.gle/VCYvsneswZqnpKnn6

参加申し込みをされた方には、ご入力いただいたWasedaメールアドレス宛に、参加のためのZoom情報 (URL、ミーティングID、パスコード) などを8月17日頃に配信いたしますので、そちらからご参加をお願いします。

皆様、是非奮ってご参加下さい。
宜しくお願い致します。

――― 以上 ―――
(文責;早稲田応用化学会給付奨学金 奨学生推薦委員会)

「第3回 先輩博士からのメッセージ」開催報告

【開催日時】 
2022年8月20日(土) 13:00~16:00
(Zoomによるリモート開催)

第3回では講演会の代わりに博士後期課程学生と学位取得後の社会人(合計6名)を交えたパネルディスカッションを実施し、より多くの博士人材の話を一度に聞けるように工夫した。また、従来の座談会に加え、初の試みとなる個別相談会も開催した。

開会の挨拶
下村 啓 副会長

    下村 副会長

皆様、こんにちは。
早稲田応用化学会で100周年事業担当をしております新制34回の下村でございます。
本日は多くの方々にお集まりいただき、誠にありがとうございます。
学生の皆様は様々なキャリアを考えていると思います。選択肢は多岐にわたりますが、その中でも博士課程の道筋を示し当該進学者を支援したいという想いで本企画を開催いたしました。来年2023年の応用化学会100周年に向けて様々な取り組みをしておりますが、博士人材の育成・支援も活動の一環となります。博士課程に進学するということ、ぜひこの機会に知っていただければと思います。
本企画の開催にあたり、交流委員会の皆様、先生方、学生の皆様、そして多くのOB/OGの方々にご協力いたただきましたこと、この場をお借りしてお礼申し上げます。私も本日はとても楽しみにしております。それでは皆様、よろしくお願いいたします。

パネルディスカッション
 今回パネルディスカッションに参加していただいた6名のパネリストの方々に自己紹介をしていただいた後、事前アンケートで希望が多かったテーマを中心にファシリテーター(梅澤 宏明 基盤委員長)から質問する形式でパネルディスカッションを行った。


   梅澤 基盤委員長

<<博士進学の魅力・進学した理由>>
渡辺さん:修士課程の際に自由に研究ができた。自分で仮説を立て実験して論文としてまとめて世の中に発信していく。そのサイクルにやりがいを感じて修士課程だけでは足りないと思い博士進学を決意した。
齊藤さん:実験が面白かったということに加え、まだまだ自分に知識・技術が足りないことを修士時代に痛感した。能力を高めるために進学を決めた。
千島さん:五年一貫性博士課程が魅力的だった。自分の専門性を高めながら、他分野の勉強ができる。経済的な支援が充実しているという点も一貫性博士課程を決めた理由。
山本さん:研究面白いということが一番の決め手だった。失敗の連続だが、自分の仮説を立証した際にカタルシスを感じられる。これを仕事にしたいと思った。また研究室で博士課程に進学した先輩が多かったから、心強かった。
林さん:研究が面白いということがベースにはあるが、自分の中の軸を作りたかった。誇れるものを1つもちたいと思い進学を決意した。
梅澤さん:修士課程の際に進学するか迷った。一度企業に行ってからでも戻ってくるチャンスがあると思った。社会人ドクターのプログラムを採用している企業を選んだ。
<<研究テーマについて:どのようにテーマを決めたか>>
齊藤さん:修士時代のテーマの派生ではあるが、メカニズムも含めて未解明な部分を明らかにしたく現在の研究を自ら考えた。
渡辺さん:修士時代にポリマーと無機材料を混合する研究をしていた。面白いポリマーを見つけて様々な骨格にも拡張できないかと考えてテーマを創出した。
山本さん:自分でデザインしながら研究テーマを決められた。早稲田ならではの魅力だと思う。
<<研究スケジュール>>
千島さん:基本的に日中は研究室で研究しているが、スケジュールは自分で決められて自由度が高い。現在はコロナ禍でフレックス制になっている。
林さん:5~6時間で実施可能な実験を考え、ルーチン化していた。データ整理や論文で忙しい時期もあったが規則正しく生活できていたと思う。
<<社会人ドクターについて>>
梅澤さん:派遣という形だったため会社の業務はなく研究に集中できた。また、お給料をもらいながら研究させてもらった。
<<海外での活動について>>
山本さん:フランスに短期留学させてもらった。博士課程では海外に行きやすいと思う。
林さん:コロナ禍前はアメリカや韓国等に学会で行く機会があった。学会では、様々な国の交流ができ良い経験となった。
千島さん:一貫性博士課程では海外に半年~1年ほど滞在できる。
<<キャリアについて>>
山本さん:企業と比較してアカデミアの方が自分のやりたいことをできると考えた。ポジションにも恵まれた。
林さん:バイオセンサはビジネスとしては黎明期。自分のやりたい研究はアカデミアの方が適していると考えた。
齊藤さん:モノづくりにつながる研究をしたく企業を選んだ。それをモチベーションに頑張れると思った。
<<先輩からのメッセージ>>
山本さん:研究をしてみて、楽しいなと持ったら、ぜひ博士課程に進学してみてください。
梅澤さん:社会人になってからも博士課程進学のチャンスはある。まずは研究を楽しんでください、きっと自分の財産になる。
林さん:悩んだとしても自分が選んだ道が正解だと思うので、しっかり悩んで、研究楽しんで。博士課程に進学したいと思ったらぜひ。
齊藤さん:博士課程の進学を1つの選択肢として考えてもらえたらと思う。
渡辺さん:何か1つ熱中できることをみつけて、それが研究だったらぜひ進学を考えてみてください。
千島さん;色々な人との交流を通して自分の中の引き出しを増やしてください。色々と考えた上で、選択をしてみてください。

座談会
パネルディスカッション後パネリスト6名に加えて、博士号取得後の卒業生と博士後期課程在学生を交えて、ブレークアウトルーム7室に参加者を分け、30分間の座談会を実施した。各部屋を少人数にすることで、参加学生が博士人材になるべく質問がしやすいように配慮した。

座談会参加者は以下の通り(敬称略)

千島 健伸 関根研究室
渡辺 清瑚 小柳津・須賀研究室
齊藤 杏実 山口研究室
山本 瑛祐 黒田・下嶋・和田研究室出身
梅澤 覚 木野研究室出身
林 宏樹 門間研究室出身
大島 一真 関根研究室出身
村越 爽人 細川研究室出身
吉岡 育哲 桐村研究室出身
村上 洸太 関根研究室出身
加藤 弘基 山口研究室
飯泉 慶一朗 山口研究室
ウ チクン 山口研究室

博士後期課程学生への支援体制
基盤委員会 斉藤 ひとみ委員
 
    斉藤 基盤委員
 応用化学会のサポートは、学生への経済的支援に加えて、博士後期課程進学後のネットワーク強化も目的としている。2010年以降2021年まで博士後期課程修了者は約100名に達し、進学者の内訳は内部進学が85%、他大学からの編入が6%、社会人が9%であり、ほとんどが修士課程からそのまま博士後期課程へ進学している。学位取得後の進路としては過半数が企業に就職している。早稲田応用化学会では、早期から博士人材との交流機会を増やし、博士後期課程に関する真の情報を共有することで、様々なキャリアパスを示す体制を構築している。
 博士後期課程の支援体制として、奨学金制度について須賀先生よりご紹介いただいた。学内外の奨学金制度は貸与型、給付型があり、学科内の奨学金制度は全て給付型で、応用化学会の奨学金制度は大変充実している。また学内には早稲田オープンイノベーションエコシステム挑戦的研究プログラム(W-SPRING)もあり、各支援制度の選考時期・選考フローについても説明があった。各人の状況に応じてこれらの奨学金制度を有効活用し、研究に集中できる環境を是非整えて頂きたい。世界的にも博士人材の需要は高くなっており、日本でも博士人材への需要は増加傾向にある。また、応用化学会給付奨学金は昨年より給付対象を学部学生にも広げ、早期から優秀な人材を発掘し、博士後期課程に進学する学生を支援している。興味がある学生は積極的に応募してほしい。

閉会挨拶
橋本 正明 副会長


     橋本 副会長

 まずこの企画を整えて実行まで、ご尽力ご協力いただいた方々に御礼申し上げます。
この企画は、今後の日本の国際競争力を維持強化するためにも大変意義ある取り組みと思います。
私の学生時代はまだ高度成長のもとで、品質を維持しながらいかに大量に効率的にものを生産するかが競争力の基盤でした。企業の生産現場をまずよく知り、その中で日々の改善を積み重ねて競争力強化を進めました。そのためには早く社会に出て現場をよく知ることが大事とされていました。皆さんのご両親の世代もまだそういう現場重視の考え方が強かったかもしれません。
 しかし、国際社会ではそうした競争力を継続的に強化維持する管理システムの構築と普及が進むようになりました。品質、効率、安全などの管理システムはISO等においても標準化され、多くの企業が採用するようになりました。
 その結果、国際競争力の基盤は、だんだんと変わっていきました。一定の技術レベルで中での効率性・経済性・安全性の優劣を競うのではなく、いかに次の上の技術レベルにジャンプアップ出来るかの勝負になりました。そのためには既存の技術を俯瞰的に眺め、さらに上のステージに向かう視野が必要になります。技術研究においても自分の限定された領域だけではなく、その領域を含む大きな分野の総説(Review Article)をイメージできる視野も必要です。博士課程に進むということは、自分の研究を進めるとともに、そうした視野を獲得するということでもあります。
 早稲田大学の応用化学会では、来年の100周年を契機に応化会給付奨学金の充実が進められており、意欲のある学部生にまで門戸を広げた支援体制を構築しています。今日の先輩たちの話を充分参考にされて、博士課程の進学を重要な選択肢の一つとして考えてほしいと思います。

個別相談会
 今回新たな試みとして個別相談会を実施した。バーチャルコミュニケーションツール(Spatial Chat)の小部屋機能を利用して、質問したい博士人材と1対1で話す機会を設けることで、他の人がいる場面では相談しにくい質問も気軽に行えるように配慮した。

博士人材交流会
 パネルディスカッションと座談会にご参加いただいた博士人材の皆様にご参加いただき、博士後期課程学生と博士号取得後のOB/OGの方々とのコミュニケーションの場として交流会を開催した。バーチャルコミュニケーションツール(Spatial Chat)を用いて自由に懇談していただくことで、学位取得までの疑問や卒後キャリア、業種ごとの勤務体制の違いなど、リアルの交流会に近い環境で交流を深めることができた。

第3回「先輩博士からのメッセージ」のご案内

内容に一部変更が生じました。青字部分が追加、変更点です。

早稲田応用化学会主催 第3回 先輩博士からのメッセージのご案内
2022年8月20日(土)13:00~16:00 (Zoom、Spatial Chatによるリモート開催)

昨年8月、並びに12月に開催した「先輩博士からのメッセージ」で博士後期課程を身近に感じ、進学にご興味を持たれた方もいらっしゃるかと思います。今回は現役の博士後期課程学生と、社会でご活躍されている先輩博士に、在学中の様子から学位取得後のキャリアパスまで、パネルディスカッション形式でお話ししていただき、学部生及び修士課程学生の皆様と交流する会を開催することといたしました。

普段はなかなか接する機会のない先輩博士と直接話すことができる機会ですので、奮ってご参加くださいますよう、お願い申し上げます。

【パネルディスカッション】
パネリスト①;千島 健伸さん(LD1 関根研究室(触媒化学部門))

千島 健伸さん

パネリスト②;渡辺 清瑚さん(D2小柳津・須賀研究室(高分子化学部門))

渡辺 清瑚さん

パネリスト③;齊藤 杏実さん(D3 山口研究室(有機合成化学部門))

齊藤 杏実さん

パネリスト④;山本 瑛祐さん(名古屋大学助教 黒田・下嶋・和田研究室(無機化学部門)2018年博士修了)

山本 瑛祐さん

パネリスト⑤;梅澤 覚さん(長谷川香料株式会社、木野研究室(応用生物化学部門)2020年博士修了)

梅澤 覚さん

パネリスト⑥;林 宏樹さん(早稲田大学助教、門間研究室(応用物理化学部門)2021年博士修了)

林 宏樹さん

【座談会】

パネリスト6名に加え、OB/OG博士、博士後期課程学生、多数参加予定

講演の日時、形式等
 開催期日;     2022年8月20日(土)
講演形式;     遠隔会議用ソフト Zoom、Spatial Chatを使用したリモート講演
開会挨拶;     13:00~13:05
パネルディスカッション; 13:05~14:05 (Zoom利用)
座談会;           14:10~14:40 (Zoom Breakout Room利用)
応化及び応化会関連の奨学金説明; 14:40~15:00 (Zoom利用)
閉会挨拶;         15:00~15:15(Zoom 利用)
個別相談会;     15:15~16:00(Spatial Chat 利用)
その他 ;参加費無料.要事前申し込み(8月6日締め切り)
     本講演ならびに座談会は日本語で実施いたします。

申し込み方法について
出席申し込みは、下記URLから8月6日までにお願いします。
※申し込みの際は、wasedaメールのアドレスをご入力ください。
※今回のイベントは早稲田大学応用化学科に所属する学部1~4年生および応用化学科の教員の指導を受ける大学院生が参加申し込みの対象となります。

⇒    https://forms.gle/d4P7Hx1DsETtScpN8 

 

 

参加申し込みをされた方には、ご入力いただいたwasedaメールアドレス宛に、参加のためのZoom情報 (URL、ミーティングID、パスコード) 及びSpatial Chat情報(URL)を8月17日頃に配信いたしますので、そちらからご参加をお願いします。

皆様、是非奮ってご参加下さい。
宜しくお願い致します。
――― 以上 ―――

(文責;早稲田応用化学会給付奨学金 奨学生推薦委員会)

 

 

第2回「先輩博士からのメッセージ」

【開催日時】 2021年12月18日(土) 13:00-16:00

【参加者】:39名(B2:1名、B3:6名、B4:9名、M1:19名、M2:4名)

Zoomにて開催

第1回の「先輩博士からのメッセージ」が現役の博士課程に在籍している先輩博士から修士課程や学部学生に対するメッセージとして企画されたのに対し、第2回に当たる今回の「先輩博士からのメッセージ」は社会人ドクターからの講演を中心にグループディスカッションを交えて実施された。 

開会の挨拶:下村 啓 副会長

下村 啓 副会長

皆さん、こんにちは。
早稲田応用化学会で100周年事業担当をしております新制34回の下村でございます。早稲田応用化学会では博士人材を育成・支援していくことをこの100周年を機に進めることとしております。
博士人材を増していくことによって、より良い世界をつくることにつながると思っているからです。まず、そのためには多くの人達に博士課程をより身近なものとしてとらえて頂くことが必要だと考え、このような企画を行うことに致しました。この開催にあたっては交流委員会の皆さん、教室の先生方、学生の皆さん、そして多くのOB/OGのご努力とご協力とがありました。本当にありがとうございます。この企画はまだ始まったばかりです、これからより良い企画にしていきたいと思いますので、是非ご協力をお願いします。
さて、博士人材支援の面では応化会給付奨学金の取り組みもございます。奨学金については後ほど説明がありますが、その応化会給付奨学金の資金拡充のための募金を始めています。OB/OGの皆さんはよろしくお願いいたします。
本日の会は皆さまにとって意義ある会となることを願っております。それでは今日は皆さま、よろしくお願いいたします。

講演会

講演者①;加藤 遼さん(中央大学助教、2017 西出・小柳津・須賀研究室 博士修了)
演題;『博士号を“取るまで”と“取ってから”』

加藤 遼さん

加藤遼さんは高分子化学研究室に所属され、修士課程修了後に新設された先進理工専攻一環博士課程(リーディングプログラム)に編入学され一貫性博士課程を修了されたのちにシカゴ大学博士研究員を経て中央大学の助教として活躍されている。

博士課程への進学を決めた理由としては自身の生活環境において周囲に教育者がいたことから大学入学当初より研究者かつ教育者でもある大学教員へのあこがれがあり、学部学生の時点で博士課程への進学を既に決断し、また進学にあたっては同期2名が博士課程への進学を決めたことによる安心感もあったとのこと。
一貫性博士課程へ進学した後には必修単位の多さに研究活動も加わり多忙ではあったものの専門分野と異なる座学や異分野の学生との対話によるナレッジ構築が自身の研究のヒントになることもあったとのことで、さらには海外インターンシップと海外研究機関実習の経験もその後の進路に与えた影響は大きかったそうです。インターンシップで訪れたアメリカ・オハイオ州のアクロンにある日本企業の米国中央研究所では全従業員のおよそ9割が学位取得者で海外での生活が大きな自信につながったとのこと。
一方、博士課程の研究では修士課程から研究テーマを大きく変更し、当初は手探り状態で成果がなかなか上がらない時期もあったが、試行錯誤を重ねてメディアにも取り上げられてもらえるような水素貯蔵プラスチックの作製に成功した。このことから、博士課程においては自由に挑戦と失敗が出来る貴重な時間であったと思っており、自分の行動次第でいくらでも能力を磨き、自分自身のやりたい研究が出来ることを学ぶ貴重な機会になったとのこと。
学位取得後のキャリアとしては、入学当初からの目標でもあった研究者かつ教育者の道を進むことを決断し、またインターンシップなどでの経験から海外で長期の研究に携わりたいとの思いから博士研究員の道に進むことを決断した。在籍したシカゴ大学の研究室では学位取得者は一人で研究が進められる人材とみられることとも合わせ、最も研究に集中できる時間を得ることが出来たとのこと。
以上を踏まえて、修士課程及び学部学生には何となく周囲と同じような進路選択をする漠然とした意識ではなく、自分自身での進路選択を考えて頂ければとのメッセージを頂いた。

<質疑応答>

海外生活におけるメンタルについて:一般学生でも対等に議論する雰囲気があった。ディスカッションについては真っ向から否定されるような場面もあったが基本的には真面目な議論の中でのやり取りであり普段はとても仲のいい仲間たちでメンタルについて気になるポイントはなかった。
国内では研究班を構成して同じ目的に何人かが携わることも多いが、海外における個人ベースでの研究と違いについて:アメリカでも2,3人でチームを組んで1人当たりでは2~3テーマを持つ。テーマ切り替えの判断は早かった印象がある。全体としての研究のスピード感を認識したのはこのシステムにも理由があったように思う。

講演者②;堀 圭佑さん(住友化学、2020 野田・花田研究室 博士修了)
演題;『企業研究者という選択』

堀 圭佑さん

堀 圭佑さんは、早稲田大学では化学工学を専攻され、軽量、高導電性を達成し、自立膜の形成が可能なカーボンナノチューブの構造制御によるリチウム二次電池電極のエネルギー密度を向上させる研究に従事されたのちに学位取得後、国内化学企業へ進まれている。

博士課程への進学に関しては研究室配属当初はグローバルな企業研究者として早く活躍したいという希望が強かったものの、研究を進めていくうちに、研究そのものの面白さに加えて国際学会に参加することで学位を有する研究者からのインプットや自身の研究内容を世界に発信できる喜びを体験し、研究の継続を強く望み博士課程への進学を決意したとのこと。
一方で、博士課程進学に関して、金銭面、就職活動、国内企業における博士号の有用性について不安もあった。これら不安材料については実際に博士課程進学後および就職後で考え方が大きく変わった。

不安点

不安内容

実際の状況

進学後の印象

金銭面

学費や生活費の工面への不安

早稲田の奨学金制度の充実、また大学からのサポート

奨学金制度などで学費の免除と助手にも採用されたことで収入も安定した。

就職活動

博士卒の就職内定率や採用企業数

化学系企業の多くは博士人材を採用

研究を通じた縁もある。

研究発表会で自身の研究内容に興味を持って頂いた。ひたむきに研究に没頭出来たためかもしれない。

博士号の有用性

修士卒との差別化、学位取得者のプレゼンス

自身の研究能力を高める、研究そのものの楽しさはモチベーションに影響しない

企業に進んでも周囲に学位取得者が多く(3人に1名程度)、具体的な実験計画や実験指示、結果分析及び次のステップでの実験方針決定など自分の裁量で研究内容を決定できる範囲が広く、主体的に考えて挑戦できる環境を頂けた。

また、博士課程に進学した利点として、
在学生数が多い応用化学科において個人個人に研究テーマがありディスカッションを通じて様々な分野の知識が身に付くことで、社内外のスタッフとの交流においても内容が理解できずに話についていけないということがないこと、
1つの研究テーマについて熟考することで論理的思考力を身につけることが出来、企業においてスピード感ある研究が求められる場面でも地力をつけていることで効率よく研究していくことが可能になった
のポイントをあげておられた。
以上を踏まえて、どの様な人生を歩みたいのかを考えて、博士課程進学は一つの選択肢としてじっくり考えて自分自身の進む道を選択してほしいとのメッセージを頂いた。

<質疑応答>

自分で実験を組んでいくことで大変だったと思ったことは:思った時にすぐにやりたいという気持ちが強くワクワク感があった。思った時に直ぐに動き始めた時に結果が伴わないことも多々あると思うが結果には必ず理由があることを突き詰める面白さをまた感じた。

講演者③;中村 夏希さん(東芝、門間研究室D3)
演題;『社会人博士に至るまで』

中村夏希さんは早稲田大学では物理化学(電気化学)専攻で修士課程で国際論文誌に第一著者としての研究論文を2報公開、小野梓賞受賞後企業に進まれ、研究所移転に伴い東京近郊に職場が配置転換されたのを機に博士後期課程に入学され、現在学位論文を取りまとめられている。現在の研究はイオン選択制の高い高分子フィルムを用いた効率性の高いリチウム-硫黄電池の開発である。

中村夏希さんは、修士課程の学生時代に論文投稿を既に行っていたことにより、博士課程にそのまま進んで研究を継続するより企業での新しいキャリア形成を求めて企業に就職という選択をされたが、一方で博士課程での研究推進についても強い興味を持っており論文投稿について学生に分かりやすく説明をされた。
学生時代に論文投稿する意義として、論文化出来るほどの成果ではないと考えたり論文にまとめるのが大変ではないかと躊躇したりする点について、学生時代に授業料を納付して学べる機会が与えられていないのにチャレンジし経験を積まないのはもったいないとのポジティブ思考で、論文誌も種類が多く、研究成果の内容に応じた投稿先を選ぶことや、現時点では評価されないと思われがちな成果であっても将来の糧になる可能性があること、また論文投稿の取りまとめのプロセスにおいて自身の研究成果の発表や公開を通じた成果の開示能力が身に付くといった利点を説明された。
そのためには研究の流れをしっかり見極めて十分な調査に基づき仮説を立て検証実験を実施することが重要で、結果分析とその発表により次の課題の見極めを行いまた十分な調査を実施することで研究を発展させていくことが出来ることを示された。
一方で、日本でのジェンダーギャップレベルは2021年次の調査においても先進国中で下位にある現実もあり、ライフイベントで研究活動の中断が発生する場合で企業内評価で有利に働かないなどの課題は存在することも指摘された。ただ、社会変動の大きな時代でもあり、将来を見越して有力な資格取得を考えるのも必要で博士課程でのスキルアップも考慮する選択肢であることを特に女子学生に向けてエールも送られた。

 <質疑応答>

社会人としてのキャリアを継続しながら学位取得を目指す選択肢について質問があり、社会人ドクターに関しても会社から学位取得のために派遣されてくるケースや中村さんの様に自分で希望して博士課程に進学される方もいることを説明された。中村さん自身は入社当初から博士課程を視野に入れていたことから、入社時にキャリアパスを設定する時に会社にも希望を出し、希望が通り社会人ドクターとして進学出来たので早めに動くことも一つの方法だと思うと回答された。
また、女子学生へのメッセージとして研究者を続ける過程でジェンダーギャップを感じたことはないとのこと。研究分野にもよると思うが全体数としてまだまだ研究機関においては女性数が少ない現実はあるがその点はポジティブに捉えているとのこと。

 

座談会

講演会のあと、講演者3名に加えて博士号を取得している卒業生と現在博士課程に在籍している在校生を交えてブレークアウトルーム6室に参加者を分けて、博士課程や関連する質問事項を取り上げ自由闊達な議論を実施した(20分間のブレークルームセッションを3回実施、参加者がなるべく多くの博士課程経験者から話を聞ける様に配慮した)。

座談会参加者は以下の通り(敬称略)

加藤      遼        西出・小柳津・須賀研究室出身
堀        圭佑      野田・花田研究室出身
大島      一真      関根研究室出身
伊知地   真澄      平沢・小堀研究室出身
徳江      洋        西出・小柳津研究室出身
山本      瑛祐      黒田・下嶋・和田研究室出身
村越      爽人      細川研究室出身
佐藤      陽日      細川研究室出身
梅澤      覚        木野研究室出身
吉岡      育哲      桐村研究室出身
村上      洸太      関根研究室出身
林        宏樹      門間研究室出身
中村      夏希      門間研究室
金子      健太郎   野田・花田研究室
齋藤      杏実      山口研究室
女部田   勇介      本間・福永研究室
林        泰毅      下嶋研究室
渡辺      清瑚      小柳津・須賀研究室
渡邊      太郎      木野・梅野研究室
曹        偉        桐村研究室
中軽米   純        細川研究室
加藤      弘基      山口研究室
松田      卓        関根研究室
疋野      拓也      下嶋研究室
クラーク   ヒュー     細川研究室

博士後期課程学生への支援体制:基盤委員会 斎藤ひとみ委員

斎藤ひとみ委員

応用化学会のサポートの目的は、経済的支援に加えて博士課程に進学したネットワークの強化にもある。2010年以降の博士後期課程修了者は約90名に達し、進学者の内訳は内部進学が85%、他大学からの編入が6%、社会人が9%であり、ほとんどが修士課程からそのまま博士後期課程に進学している。学位取得後の進路としては過半数が企業に就職している。早稲田応用化学会では、早期から博士人材との交流機会を増やし、博士後期課程に関する真の情報を共有することで、様々なキャリアパスを示す体制を構築している。
博士課程学生の支援体制としての奨学金制度は学外のプログラムとして貸与型、給付型などあり、学科内の奨学金制度は全て給付型で応用化学会の奨学金制度は充実している。学内では早稲田オープンイノベーションエコシステム挑戦的研究プログラムも新設された。奨学金制度を有意に活用して研究室生活の充実を達成頂きたいと考えている。世界的にも博士人材の需要は高くなっており、日本でも博士人材への需要は増加傾向にあることの説明があった。また、応化会奨学金制度は充実してきているので、対象を学部学生にも広げて博士課程に進学する学生を主に審査、奨学金供与を実施していく。

閉会挨拶:橋本 正明 副会長

橋本正明副会長

本日は大変内容の充実した、また意味のある催しを開催できたと思います。この企画を推進し、ご協力いただいた方々、お話をしてくださった博士の皆様に心からお礼を申し上げます。
いくつかの座談会に加わって、印象に残った質問に、いつのタイミングで博士進学を決めたか、また親にその進学をどのように説得したかというものがありました。
確かに私の世代もそうですが、皆さんのご両親の世代には、世の中に早く出て現場を知ることが第一という考え方がありました。戦後のかなり長い期間、日本を支えてきたエンジニアに対しては、自分の働く現場の知識をはやく身に着けて、その知識をベースとして、その生産性(効率)や品質、安全を日々改善し、国際的な競争力を築くことが使命でした。トヨタはまず顧客のニーズをよく知ること、自分の工場の現場の状況をよく見ることから継続的な日々のカイゼンに取り組み、競争優位を築きました。
しかし今日では状況が全く変わってきています。生産現場の機械化や自動化も進み、またISOをはじめとする管理システムが普及定着してきた結果、一定のフェーズ内における新たな改善は限定的になってきました。改善だけで大きな競争優位を得ることは難しくなっています。
今日の競争優位は、従来の制約であったものを飛び越えていく、言い換えれば従来より更に上位のフェーズにステップアップする新しい発想や技術が必要になっています。そこに博士人材の活躍が期待されています。国際間において学術論文数や被引用論文数が競争力の一つの指標になっているのはこうした背景からです。
博士になるというのは、一つの領域で先端の研究に携わるということです。先端の経験、即ち一つの山の頂上から周囲を見渡す視点を持つという経験は非常に大切で、社会に出て何か仕事上のミッションを与えられた時に、目先の作業課題ではなく、高所から全体を俯瞰するという視点をもって、大きなブレークスルーやジャンプアップの可能性を追求できるからです。
現在はこうした能力が、国や企業の競争力の基盤になっています。
皆さんの将来の活躍の可能性を広げるためにも、博士進学を選択肢の一つとして是非お考えいただきたいと思います。

博士人材交流会

講演や座談会にご参加いただいた博士人材の皆様にお集まりいただき、今後の開催に向けたご意見を収集する目的と、博士課程の皆様や博士号取得後社会で活躍されているOB/OGの皆さまとのコミュニケーションの場として交流会を開催した。今回はSpatial Chatをコミュニケーションツールとして設定し、自由に懇談していただいた。

Spatial Chat

(早稲田応用化学会 基盤委員会、交流委員会、広報委員会)

以上