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2023/11/4・11/5 2023年度理工展出展報告

11月4日および5日の土日に渡って理工展が開催され、応化会学生委員会は展示や演示実験、屋台の出店を行う 応化展 として出展しました。
その記事が学生委員会HPに記事がアップされましたのでご報告いたします。 続きはこちら

卒業生へのインタビュー(第5回)

日時:2023年5月28日(日本時間)/5月27日(アメリカ西海岸時間):オンラインにて実施。

春日 孝夫さん(新39)

1985年 早稲田大学高等学院卒

1989年 早稲田大学理工学部応用化学科 森田・菊地・研究室

1991年 早稲田大学理工学研究科(触媒化学)修了

1995年 Ph.D. in Genetics from Aberdeen University (UK)

2008年 Research Molecular Geneticist,
United States Department of Agriculture,
Agricultural Research Service (USDA-ARS),
and Department of Plan Pathology,
University of California, Davis

学生時代に応用化学科から短期留学でカリフォルニア大学デイヴィス校(以下,UCD)に夏季休暇などを利用して留学した卒業生が比較的多く、また応用化学科の卒業生でもある春日孝夫さんが現在同校にて大学スタッフとして教鞭を取り研究を進めていることから、それぞれの立場から留学で得た経験とUCDのプログラムの紹介など相互理解を深める場をオンラインで設けることにしました。今回卒業生からはUCD留学経験のある3名に参加頂きました。カリフォルニア大学にはキャンパスが10あり、UCDはそのうちの一つで州都サクラメントの近郊に位置します。

 

短期留学先にUCDを選択した理由は?

- 語学留学の側面も持ちつつ、理科系の留学者向けカリキュラムがあるのがUCDだった

- 大学での教育プログラムに加えてシリコンバレーの見学など魅力的な実地研修があったから、などの意見がありました。

UCDの短期留学プログラムは特色ある内容のようですね。もう少し詳しく教えていただけますか?

- 早稲田大学以外にも東京理科大や明治大学などから毎年留学生が来ています。理科系学生向けのプログラムを提供している背景には、UCDがUCの中でも理科系の割合が多いキャンパスだということもあると思います。3万5千人ほどいる学生の6~7割は理科系の学生ではないでしょうか。プログラムの特色の一つに、留学生が複数の研究室を回り研究内容を体験できることがあります。大学院生の必修科目に専攻内の研究室を5週間単位で回って経験を積むというものがありますが、それと近い内容を体験できることになります。

UCDのカリキュラムや制度についても特徴・魅力を教えてください。

- カリキュラムの方向性は教授会で決まりますが、その教授の採用に関して学生側が採用側として検討に関われる面白い制度があります。つまり、学生は教授候補が他大学からどのような技術や知識を持ってくるかいう観点で教授を選ぶことが出来るので、代謝が繰り返されていることになります。勿論、研究は長いスパンで考えることも重要なので、一人の教授が退官された後同じようなテーマを研究する別の方が来られることもあります。

- セミナーに関しても、学生が主体となって他大学の教授を招聘することがあります。学生はその教授の研究論文を事前に確認し、セミナー時には質問事項を用意していたり、ランチブレイクの際にコミュニケーションを取ったりしています。準備に掛ける時間は学生にとっても負荷がかかりますが、他大学の先生を呼ぶと費用も掛かっていますし学生はしっかり準備してセミナーに臨んでいます。

学生の負荷という点では、大学院の学生はどれくらいの授業を受けているのでしょうか?

- 平均して1コマ50分の授業を1日2コマほど受けていると思います。その内容は濃密で、予習復習に多くの時間を取られるため最初の2年間は勉強時間が主体となっているはずです。大学院での経験を続けるためにQualifying Examがあり、学生(博士課程の大学院生)はこれをパスする必要があります。全てのコースを修了したあとには、授業が持てるほどの実力が大学院生には付きます。

大学院に進む基準のようなものはありますか?
日本では内部からは同じ研究室に進学するケースが多く、外部からの進学者も基本的には内部からの受験者と同じ試験を受けたのちに大学院に進学していると思いますが。

- UCDでは大学院に入学するための試験はありません。また内部進学はごく少数で大学と大学院では別の大学に行くのが一般です。大学院における学費(tuition)は基本的に教授が支払いすることになりますので、教授は質の高い学生を集めるようにしています。そのため学生の選抜方法はよく研究されていてエビデンスに基づきます。基本的には書類選考と面接です。大学院に進学するための共通テストGRE(Graduate Record Examination)と言われる試験もありますが、GREのスコアと大学院の学生の能力には相関がないことが示されているのでUCDにおいて数年前からGREを受けなくてもよいことになりました。大学院では学術論文を書けるか(つまり研究を行う力があるか)どうかを指標として見ているケースが多く、大学院で論文を書く力と学部での専門教科の成績には相関があるということ。学部の指導教授からの推薦状は非常に大切です。

- 同様に大学生の選抜もエビデンスに基づきます。学部がまず欲しいのは大学でいい成績を取って卒業できる学生。高校時代の成績から大学の成績が予測できるのでアメリカの大学には入学試験がありません。各高校のトップ10%に入っていればUCへの入学が保障されますが、そうすると生徒全体のレベルが高い受験校の生徒が不利になるのでレベルの高い高校で10%に入れなかった学生もカリフォルニア全州の共通テストで上位10%に入っていればUCへの入学が認められます。高校生の受ける共通テストですが学生選抜にはあまりメリットがないことが指摘されて近年は受けなくてもいいことになりました。

学費の話が出ましたが、留学に際しては学費も考慮すべき一つのファクターになりますか?

- 確かに、学費は高いと思います。学生数の増加とともに州の予算では賄いきれなくなっている現状もあります。カリフォルニア州の学生は年間100万円ほどの授業料になりますが、オレゴン州からの学生は400万円ほどになる例もあります。ただ、入学後にカリフォルニア州に1年居住するとカリフォルニア州の登録居住者となるので授業料が減額します。外国籍の学生はカリフォルニア州登録居住者にはなれませんが大学院が差額を出してくれることもあります。学生はTAをやることで授業料を免除されるシステムもあり、これは日本人を含む外国人に対しても適用されています。また、学部別ではありますが外国人にスカラーシップを用意しているところもあります。

早稲田大学も奨学金制度の充実を目指しています。

- 学生へのサポートが充実するのは喜ばしいことだと思います。もちろん米国においても卒業生の寄付により授業料が賄われている例もあります。UCDではありませんがスタンフォード大学では両親の収入が1000万円以下の場合に学生の授業料が免除されるといったシステムもあります。スカラーシップ制度は充実しています。大学院では学生自身がスカラーシップを取ることもあれば教授が研究費から学費と生活費を払うこともあります。

応用化学科への思いを。

- 応用化学科の最大の課題は女性研究者の育成に対して積極的な意識付けがこれまでなされて来なかったことでしょう。応用化学科が学科の競争力を強化しまた豊かな社会の実現に貢献するために早急に解決しなければならない問題と考えます。これは時間が解決するような問題ではありません。学生の男女比が半々になってもなかなか教授の女性比が増えないこと、女性教授を採用しても様々な障害にぶつかり転職をしてしまうなどの事例は現在でも散見され、で欧米の大学でも問題解決策が模索されています。これは制度的性差別(Institutional sexism)つまり女性が不利になる仕組みが社会や組織の構造に組み込まれていて目に見えない不平等があるためでしょう。社会やアカデミアだけの構造的な問題ではなく私たち一人ひとりが問題の一部となっているため、アカデミアだけを批判するのは建設的ではありません。定期的な勉強会のようなことを企画し(1)女性研究者はなぜ必要なのか、(2)育成には何が障害になっているのかを議論をすることが必要だと思います。

今回、短期留学ではあまり耳にしない大学の側面も伺うことが出来、今後もUCD経験者の繋がりを維持していくことを確認しました。


参加者:春日孝夫さん(新39)、井川華子さん(新66)、仲谷孝道さん(新67)、春原晴香さん(新67)、ファシリテータ:加来恭彦(新39、広報)

応用化学会100周年記念企画&2022年度 第四回若手会員定期交流会報告

2023年2月18日(土)に「早稲田応用化学会100周年記念企画&2022年度 第四回若手会員定期交流会:『競争・協奏・共創』~次世代応化会の共創に向けて~」が開催されました。

本交流会はNACs会議、本企画、懇親会の3部制にて実施されました。

入試期間中で校舎に立ち入れなかったこともあり、都内の会議スペースを利用しましたが、いつもと違った環境でこれまで以上にざっくばらんな会話を行えたと感じます。

1部のNACs会議では22年度のNACs活動の振り返りを行い、発足1年が経過した節目として、今後のNACsの方向性を話し合いました。現役学生も交えてディスカッションを行うことで、社会人と学生の求める内容の共通点・異なる点を認識し、今後持続的な活動を続けていくための道標を考えることができました。

2部では応化会役員のOBの方々を交え、グループディスカッションが行われました。議題は「次世代応化会の共創に向けて、自身がどのように応化会と関わりたいか?どんな応化会に参加したいか?」であり、参加者の自由な意見をくみ取ることができたと思います。

特に印象的だったのは、今以上に“日常的な”交流を求めているということです。企画の時に顔を合わせるだけでなく、もっとプライベートな空間でも応化の人に会える場所が欲しいという意見が目立ちました。応化が家庭・会社に次ぐ第三の居場所として、心地よくそして成長できる場所になれるよう努めていきたいと思います。

また今回出た様々な意見に対して、ただの願望ではなく、主体性をもって実現していこうと思います。

3部では、場所を変えて立食形式で懇親会を行いました。スライドショーの上映や個人の近況報告を行い、思い出話から将来のことまで様々な話で場は盛り上がりました。

未だ収束はしておりませんが、コロナ禍で懇親会の実施が難しかったこともあり、久しぶりの懇親会は懐かしく、そして人と人とのつながりの大切さを改めて感じることができました。

今後もこのような機会を設け、持続可能な組織となるよう努めていきます。

(文責 NACs~次世代共創委員会~ 増田)

卒業生へのインタビュー(第4回)

元第一三共株式会社代表取締役、元早稲田大学創造理工学部客員教授 荻田健さん


2022年1月15日:オンラインにて開催。

ご略歴

1973年 早稲田大学理工学部応用化学科卒
1980年 東大農学系研究科博士課程修了(応用微生物研究所)

三共株式会社入社
研究所で医薬の研究(約20年)
開発部門で医薬の開発(約10年) 

第一三共株式会社(2007年、第一製薬と合併)
取締役 専務執行役員(2009年~2016年)

早稲田大学創造理工学研究科客員教授 (2017年-2021年)

今回は研究からグローバルプロジェクトマネジメント、経営に至るまで幅広い経験に基づくお話を伺った後Q&Aに答えて頂く流れでのインタビュー記事になります。荻田さんから学生・若手へ以下の内容での話がありました。

  • 製薬会社の主力製品について(ドラッグストアで購入できる一般医薬品と、医療用医薬品について
  • 新規医療用医薬品を世に出す:探索ターゲットから臨床試験以外の研究分野まで
  • 新薬ビジネスの特徴:研究開発費と研究の成功確率について
  • 荻田さん自身のキャリアパスについて(研究~プロジェクトマネジメント~グローバル変革への対応~経営戦略(取締役専務執行役員としてのタスク)
  • 製薬企業のおかれた状況
     新薬創生の難しさ、複雑化
     多様な経営戦略
  • これからの時代と経営戦略、社会との持続的成長とご自身の経験としてのこれまでの社会変化への重ね合わせからの振り返り
  • これから社会に踏み出す若き才能に向けてのエール

荻田さんからのメッセージを受けてのディスカッションでは以下のようなやりとりがありました。

-Be Professionalについてどうすればその領域に近づけるとことが出来るのか教えてください

(荻田さん):皆さんは学部生あるいは大学院生として既にProfessionalな仕事に触れていると思いますが、自分の好きなことを一生懸命に取り組んでいるうちにその意識づけが出来てくる様に思います。会社での研究におけるプロ意識もその延長線上にあると思います。
一朝一夕には行きませんが、繰り返し仕事に取り組んでいくうちに、この領域なら自分が強みを発揮でき、他の人にはそう簡単に負けないという意識が自然に持てるようになりました。そうなるとしめたものだと思います。

 

-自分がこれなら(社会人として)やっていけると自信を持たれたきっかけなどありますでしょうか。

(荻田さん):私の専門は狭い研究領域でしたが、その仕事はほかの誰にも負けないという意識は自分自身の考え方にプラスに働きましたし、学会での受賞経験は外的な評価という点からも自分に勇気を与えました。ポジティブな経験を積み重ねていくことが重要です。仕事のの目標設定を必要以上に高く設定する必要はないと思います。ハードルをクリアーするたびに自分自身の仕事に自信が持てるようになりました。

 

-大学生生活もまだ十分にいろいろなことが経験できていると自覚できる立ち位置にいません。様々な経験をこれまでされてきている中で経営者の視点からアドバイスを頂けますでしょうか。

(荻田さん):私の学生時代はキャリア形成に関する考え方もはっきりしていませんでしたが、現在では環境も大きく変わり、積極的に自分のキャリアを積上げていくことは重要だと思います。たとえば会社での所属部署が変わるようなとき、それはその後の自分の進むべき方向に役立つかどうかはその時にはわからないかも知れませんが、広く経験されることにより将来に生かされる事案は多いと思います。

 

-医薬品の研究開発で成功確率が低いことに驚きました。日々の研究において自分自身もうまくいかないことが多いですがその中でもモチベーションを維持できる意識づけについて教えてください

(荻田さん):私自身は研究していること自体が非常に面白いと感じていました。研究成果も重要ですが、その研究に興味をもって没頭することで探求心は研ぎ澄まされて行ったように思います。また、同僚との議論の中で目的意識を共有、確認することも大切でした。。「うまくいかない」のではなく、その結果も含めて研究は興味を持って考えていくことが一つのヒントになるのではないでしょうか。

 

-マテリアル・インフォマティックスのようにビッグデータを扱うことで研究環境も変わるのでしょうか(例えば研究室で一人がAIを駆使して研究を進めていくような環境になるのでしょうか)

(荻田さん):この質問は私にはちょっと難しい質問です。なぜなら、私の時代にはビックデータを扱う研究環境はなかったからです。従って一般論としてしかお答えできませんが、IT革命が進む中での化学との付き合い方も当然変わってくると思います。例えば今から5年前に現在の姿が想像できたかといえばそれはまた違った成果として現在があるわけです。少なくともこれまで以上に新しいことにポジティブに取り組んでいくという姿勢が必要だと思います。何が正解かは私にもわかりませんが前向きに考える姿勢が重要だと思います。

 

-研究を離れてマネジメントに転身された際に、研究者としての道を続けたいと考えましたか

(荻田さん):研究もある程度キャリアが長くなってくると研究自体もスペシャリストというよりは全体を見渡すような役割に段々と変わってきます。その時点ではジェネラリストとしての意識づけも自分自身の中でありましたのでマネジメントへの移行はしやすかったと思います。部下が多くなってくると人間関係などにも気を配ることが多く、それがグローバルになるとさらに考え方の違いなどにも考慮しながらマネジメントするエネルギーが要求され、自分自身から積極的に飛び込んで行くようにしました。
(写真:社内理科系社員による稲門会)

 

インタビュー参加者:
学生委員会:高田こはる(B4)、吉田七海(B4)、横尾拓哉(B3)、原田拳汰(B2)、吉村尚(B2)、
春原晴香(67期)、加来恭彦(39期、広報委員会)