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「先輩からのメッセージ2023」の開催日程

早稲田応用化学会 交流委員会

 「先輩からのメッセージ」は、学生諸君の企業への理解を深める時期が余裕をもって確保できるよう、開催日を2023年1月21日(土)とし、準備を進めています。
 学生諸君には参加へ向けてのスケジュール調整をお願いいたします。
当日は、日本を代表する各社に在籍されているOB・OGの皆様から直接に、学生諸君の疑問や不安について適切なアドバイスがいただけますので、将来の進路決定にも必ず役立つものと確信しております。
 本年度の実施形態は、対面、リモートの両面で準備し、新型コロナウィルスの状況により11月末に決定いたします。
 詳細な内容ならびに参加の申し込みは、改めて12月中旬にホームページおよびメールマガジンにてご案内いたします。

1.日 時 2023年1月21日(土) 時間(開催形態により別途連絡)

2.実施方法

実施方法詳細は12月中旬にご案内いたします。 
「先輩からのメッセージ」は、一般の企業説明会と異なり、企業概要、仕事の紹介にとどまらず、応化OB/OGより直接に、会社生活や日常、普段考えていることや雰囲気などを親しく聞けることを特色としています。

3.対象学生 学部生、大学院生(修士、博士、一貫制博士)

(進路決定を間近に控えた学部3年、修士1年、博士、一貫制博士課程修了予定者を主体としていますが、将来へ備えての学部1・2・4年生、修士2年生の参加も大歓迎です。)

4.お問合せ 

本件に関する問い合わせ・要望等は下記の専用アドレスまでお願いいたします。

       guidance_2022@waseda-oukakai.gr.jp

 

 

 

2022年度早桜会講演会(報告)

 2022年度早桜会講演会を2022年10月8日(土)に中央電気倶楽部で実施いたしました。今回の講師には大宮理先生(河合塾講師)をお迎えし、「大学入試から見る化学」という演題でご講演して頂きました。

 18歳人口が年々減少する中、予備校業界は厳しい立場におかれており、暗記主義的な教育が化学嫌いを量産しているという現状を冒頭話されておりました。現代社会の高校生は昔と比べて物に触れる機会がどうしても減少し、物質観が希薄になる中、複雑な化学式や計算が先行し知識の順番が逆になっているということもお話しされていました。大学進学を果たすうえではまず大学入試を突破する必要があり、学生は当然その対策をするので結局の所、大学入試の問題が高校生の勉強の方向性を決めます。したがって、大学入試の問題は教訓的、教育的な観点が大事です。大宮先生は入試問題は、あいまいな問題や暗記主義的な問題ではなく、役に立つ化学の視点を問うような問題が良いとお話しされていました。

 実際に近年の大学入試の問題も紹介して頂きましたが、非常に難しい問題、処理量の多い問題がたくさん出題されていると感じました。教科書の内容が改定され、エンタルピーやエントロピーを高校で教えるというのは驚きでしたが、現状も問題文の中でヒントを与えながら大学レベルの内容を問うような問題が出題されており、受験生も大変だと感じました。また、せっかく良い問題を出題しても問題が複雑すぎて時間内に処理出来ないことから飛ばされてしまい、あまり用をなさないという話もされており、分量が多すぎるというのもむしろ弊害になっている現状があります。

 昨今の時代の流れで予備校でもオンライン化が進んでいます。しかし対面で授業を行い、実際に物に触れ、互いに議論する中で初めて理解が深まっていくこともたくさんあります。そういったことがだんだんと希薄になっているようにも思います。大学入試の問題を皮切りに、日本の教育問題にまで踏み込んだ深い議論がなされ、質疑応答も活発に行われて有意義な時間となりました。久しぶりの対面開催であり、web開催時より幾分か議論が活発だったように思います。講師を務めてくださった大宮先生に改めて感謝の意を表し、今回の報告とさせて頂きます。

 (文責:三品)

 

【出席者(12名)】

井上征四郎(新12) ,津田實(新7),市橋宏(新17),田中航次(新17),岡野泰則(新33),斎藤幸一(新33), 和田昭英(新34), 脇田克也(新36),  數田昭典(新51), 澤村健一(新53), 原敬(新36),三品建吾(新59)(議事録)

 

 

「リモート学生工場・企業施設見学」レポート
(花王エコラボミュージアム)

 

  1. 見学趣旨

大学側の教育行事として、応化学生に対し学部1、2年生を対象に、工場・研究所・企業施設見学を催行し、企業の製造、生産管理、研究開発等の実態を学ばせ、今後の勉学への動機付けを行うことを目的とします。
本企画の主管は教室で、交流委員会が支援をしています。
従来、開催時期は夏休み中の後半の平日とし、先生が引率、交流委員は同伴として西早稲田キャンパスからバスを利用し、日帰りで往復可能な地区の工場・研究所および企業施設を見学してきました。
新型コロナウィルス感染拡大により対面方式での工場・研究所および企業施設見学が実施できない状況が続いており、昨年同様リモートツールを利用した企業訪問を行いました。

  1. 概要

【日程】 2022年9月20日(火) 13時30分~16時00分
【リモートツール】 Zoom
【訪問先】 花王(株)和歌山工場内・花王エコラボミュージアム 

  1. 参加者

【参加学生】対象:応用化学科学部1年生、学部2年生の希望者

学部1年生:11名、学部2年生:10名、合計21名

【引率】 梅野 太輔 教授、須賀 健雄 准教授、下嶋 敦 教授、合計3名
【同伴交流委員(Zoom操作、進行担当)】椎名 聡 交流委員長(新36、日本航空)、合計1名

【花王】 研究開発部門 人財開発部 田村 辰仙 様、曽我 聡子 様

花王エコラボミュージアム 細川 泰徳 花王エコラボミュージアム館長

麻田 貴広マネジャー(花王エコラボミュージアム担当)

松田 幸子 様、高橋 雄一 様、梶 敦彦 様

サニタリー研究所(栃木事業所)

安藤 英悟 様(新66:西出、小柳津、須賀研、2018年入社)

辻村 織恵 様(新65:西出、小柳津、須賀研、2017年入社)

スキンケア研究所(栃木事業所)陶山 優 様(新65:細川研、2017年入社)

 

  1. 花王エコラボミュージアム

住所 〒640-8580 和歌山県和歌山市湊1334 花王株式会社 和歌山工場内 TEL: 073-426-1285
【花王エコラボミュージアム・ホームページより引用】 

https://www.kao.com/jp/corporate/about/tour/museum-tour/eco-museum/

“いっしょにeco”を知る、体験する――
地球環境と花王のエコ技術の情報発信ミュージアム
花王の製品は、ほとんどが毎日のくらしの中で使うものです。だから、花王は、環境に配慮したモノづくりをめざして、原材料選びから、ごみに出すまでのすべてをエコロジー視点で考える、“いっしょにeco”に取り組んでいます。
その一環として、先端のエコ技術を体験していただくために開設したのが、「花王エコラボミュージアム」です。
アタマ・カラダ・ココロを刺激する展示や映像、体験プログラムによって、地球環境のいまや、花王のエコ技術に触れてみませんか?
「花王エコラボミュージアム」での経験や知識をご家庭に持ち帰り、身近なくらしの中で生かしていただけることを願っています。

花王エコラボミュージアム建物全体写真およびエントランス写真

  1. スケジュール

13:30~13:40 オープニング
13:40~15:00 花王エコラボミュージアム見学・Q&A 
15:00~15:05 休憩
15:05~15:55 OB/OG懇談会(ブレークアウトセッション 3回)
15:55~16:00 クロージング

  1. 詳細

【第1部】 花王エコラボミュージアム見学・Q&A

1942年に設立したグループ最大の研究・生産拠点で、シャンプー、リンス、衣料用洗剤と言った家庭用製品から多種多様な工業用製品まで生産する和歌山工場内のエコテクノロジーリサーチセンター1階にある『花王エコラボミュージアム』からZoomによるライブ配信を行い、参加学生と双方向のコミュニケーションをとりながら見学が行われました。
花王の歴史、研究開発部門の説明に続き、1887年の創業以来、「よきモノづくり」を愚直なまでに追求し、暮らしに変化を提供し続ける企業として、花王ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」 に沿った地球環境や社会に配慮した取り組みについて、「地球環境問題」「原材料」「製造工程」「輸送、販売」「製品の使用」「再利用、廃棄」の展示ブースや映像を通じてわかりやすく説明がなされました。
界面活性剤製造における先端のエコ技術など応用化学科の学生にとって興味深い内容も含まれ、原材料選びから、ごみに出すまでの製品のライフサイクルにおけるさまざまな取り組みを理解することが出来ました。

花王エコラボミュージアム

◎ 全体的な見学会の感想、環境問題など印象に残った事について 

・ 製品のライフサイクルにおいて消費者が使用する時に最もCO2が排出されるため、それを減らす商品開発に取り組んでいるという話が印象に残った。一方で詰め替え用の購入や水をこまめに止めるといった自分たちの意識で排出量を減らすことも可能である。そういう所で私たちも意識的に排出量を減らす取り組みに協力していくのも大切だと感じた。

・ 花王は家庭用製品事業のイメージが強く、その他にも多様な工業用製品の製造や研究が行われている事を知ることが出来た。

・ 自社の歴史や商品を伝えるためだけでなく、環境問題を可視化できる展示方法が良かった。

・ 花王製品と環境にも配慮したものづくりについて全体像をバランス良く説明してもらえた。原材料から廃棄までトータルに考えているのが理解できた。

【第2部】 OB/OG懇談会(ブレークアウトセッション 3回)

花王の研究開発部門で活躍している応用化学科OB/OGに自己紹介・業務内容をご説明いただいた後、Zoomブレークアウトルームで3グループに分けて懇談会を行った。 参加学生からの下記の質問を中心に、OB/OG懇談会を実施しました。

・ 学校で勉強した知識の活かし方

・ 学生時代にしておいた方が良いこと

・ 学生時代に取り組んだこと

・ 就職の考え方や準備について

・ 博士の活躍の場について

◎ OB/OG懇談会での感想や今後の学業・研究生活へ受けた影響について

・ 大学での研究がさまざまなところで活かされると聞いて、一つ一つの実験を大切にしようと思った。

・ 今後はデータサイエンスも必須だと知り、勉強の意欲が湧いた。

・ 学生時代に幅広く学習・経験することが大事で、会社に入ってから新たに学ぶことも多い事を知った。

・ 実際に現場で働く人の声を聞く、貴重な機会だった。

・ 学部卒での就職を考えていたが、研究職で活躍している先輩方をみて大学院進学を検討しようと思った。

 

  1. 見学後記

「花王エコラボミュージアム」の施設は素晴らしく、またリモート見学でありながら現地で見学しているかの様にカメラワークを駆使しながら映像も取り入れたプレゼンテーションがなされ、各ブース担当の社員の皆さまも応用化学科の学生に合わせたご説明で大変理解しやすい内容でした。ご準備頂いた花王の皆様の “よきモノづくり” の精神がとても感じられました。
また、花王で活躍される応用化学科OB/OGの皆さまも、参加した学生にとって今後の勉学へのヒントとなるように自己紹介や業務内容について簡潔にお話しされ、懇談会では短い時間でしたが学生の質問に丁寧にご対応いただきました。
この様な貴重な機会に参加学生が21名と少なかったことは残念でしたが、参加した学生にとって興味深い場になったと思われます。
今回ご協力くださいました 花王株式会社様 には、この場を借りて深く御礼申し上げます。

花王エコラボミュージアム見学後の集合写真

以上

(報告:広報学生委員 原田 拳太、小川祐輝、交流委員会 椎名 聡)

早稲田応用化学会中部支部第18回交流講演会のご連絡

 早稲田応用化学会中部支部の2022年度の活動としまして、木野邦器 教授を名古屋にお迎えして下記内容にて講演会を計画しました。 現役会員をはじめ、会員皆様にとって大変参考になるお話を聞くことができる貴重な機会ですので、ぜひご参加頂きますようご案内致します。
なお、今回は対面方式のみでの開催といたします。またコロナ感染防止の関係で親睦会は予定しておりませんが、会員の皆様の元気なお顔が見ることができればと期待しておりますので、ご参加いただければ幸いです。

早稲田応用化学会中部支部
支部長  友野 博美

1.日時: 2022年11月12日(土) 14:30-17:00  (受付開始14:00)

2.場所: ウインクあいち(愛知県産業労働センター) 1307室 

          https://www.winc-aichi.jp/access/

3.講師: 木野邦器 教授

4.演題: 脱炭素社会の実現に貢献するバイオテクノロジー

5.参加費: 今回は懇親会実施しませんので、参加費は0円です

6.参加申し込みはこちらから ➡ https://forms.gle/LfqnXm4dg1ZHDLVg8

・準備の都合上 11月4日(金)までに申し込み願います。
・今回は対面方式のみでの開催となります。
・当日はマスクの着用をお願い致します。
・お問い合わせ先: 応用化学会中部支部 担当  植村 裕司 
                   E-mail; yujiuemura.7112@outlook.jp

7.講演内容

 気候変動に見られる温暖化や新型コロナウイルス感染症拡大など地球規模でさまざまな問題が起きています。これらは人間社会の高度化がもたらした弊害とも言えます。一方、SDGsに掲げられた地球規模の多くの課題に対し、我が国ではSociety 5.0を「目指すべき未来社会の姿」としてイノベーションの創出や基盤の強化を図るべく具体的な施策や科学技術開発が進められていますが、その実現には人類の食糧、生活、産業、環境などあらゆる側面においてインパクトを与えうるバイオテクノロジーが大きく貢献するであろうと期待されています。
 地球の先住民である微生物は、その生存戦略に基づいて進化し多様化を進めてきました。私たち人類は、これまでその多様な機能や生命システムの一部を生活や産業に取り込んできましたが、バイオテクノロジーはDNA解析技術による生命の設計図とも言えるゲノム情報の蓄積と分析、iPS細胞系の樹立や再生医療における技術革新、高度化した計算科学や人工知能を駆使したビックデータ利用技術との融合、ゲノム編集や合成生物学的手法による高度のモノづくり技術など、近年のバイオテクノロジーの革新は著しい状況です。今まさに、従来の化石資源依存の産業形態から脱炭素化を実現できる社会への転換期にあると考えます。微生物の機能解析からモノづくり研究を展開している演者らの具体的な研究事例を紹介しながら、科学技術開発研究の方向性を議論したいと思います。

8.木野先生の御略歴:

・1979年 早稲田大学理工学部応用化学科卒
・1981年 早稲田大学大学院理工学研究科博士前期課程応用化学専攻修了
・1987年 工学博士(早稲田大学)
・1981-1999 協和発酵工業株式会社 勤務
・1999年 早稲田大学理工学部(現:理工学術院)教授就任
・2010年 早稲田大学理工学術院総合研究所所長就任

その他

・早稲田大学産学官研究推進センター長、同大学研究院副委員長、同大学理工学研究所長

国立研究開発法人科学技術振興機構開発戦略センターシニアフェロー、同機構プログラムオフィサー、かずさDNA研究所特別客員研究員などを歴任。

・国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構評価部研究評価委員長、

公益社団法人日本生物工学会会長、バイオインダストリー協会理事、日本微生物学連盟理事などを歴任。

・国立研究開発法人産総研生命工学領域の審査評価委委員長、公的研究機関などの

技術推進委員長や審査評価委員長などを歴任。

・東京大学・大阪大学・名古屋大学・九州大学等の非常勤講師を歴任。

受賞歴等:

・1999年 協和発酵工業株式会社 社長賞、
・2015年 文部科学大臣表彰科学技術賞(研究)受賞、
・2016年 早稲田大学ティーチングアワード(秋学期)総長賞受賞
・2020年 日本生物工学会第39回生物工学賞受賞 
 その他専門誌論文賞4件など

早稲田応用化学会 第38回交流会講演会―懇談会の概要

2022年9月10日(土)15:00~17:10 (Zoomによるリモート開催)

懇談会(17:15~18:00)
   <参加者>

 ・講演中は講師お二人ともかなり緊張したとのことですが、講演が無事終了し、安心してホッとしているところだそうです。
  以下、講師お二人との質疑応答を交えた懇談の概要です。
質疑応答
Q1. (参加者) 望月さんにお聞きしますが、今ドイツで走行している車両の種類、すなわちガソリン車とかディーゼル車とかHybrid車とかEVの事ですが、何か傾向がありますか?
A1. (望月氏) ご質問に対する関連情報になりますが、ドイツ国内のスーパーマーケットに充電ステーションがあります。その中には無料で充電可能なステーションがかなりあります。従ってEVに乗っている人はそこを利用すれば無料で走れることになります。チェーン店ですからドイツ国内全域で利用出来るわけです。これには驚きました。ご参考までに私はHondaのHybrid車に乗っています。最近ドイツ国内で増えているのは現代とかキアといった韓国車です。低価格車が選ばれているようです。
Q2. (参加者) カーボンニュートラルの実現のため、ジャンル毎の削減目標はどういう方法で決められたのでしょうか。
A2. (望月氏) ドイツの場合は気候保全法という法律で、省別に削減量を分担させ、全体として何%という削減量が実現するように決めています。
Q3. (参加者) ということはドイツ政府というか国が決めていると思うのですが、その際国は民間レベルとしての産業団体のようなところとの合意の基に決めているのか、それとも国からの上意下達のような状況で進めて行くのか、そのプロセスについて教えて頂けませんか。
A3. (望月氏) ドイツの場合そのプロセスは単純でして、現在産業分野別にどれだけCO2を出しているかというデータがあります。2050年までにそれをここまで削減するためには、それをどういうふうに振り分けたら良いか、現状のデータと目標値との違いをインプットし割り振っています。
Q4. (参加者) エンジンのスパークプラグ先端の材料を研究しています。従って車両がEVになると仕事が無くなるという状況です。会社自体は貴金属全般を扱っているので克服可能と思っているのですが、カーボンニュートラルの重要性も分かるので複雑な思いでいます。先程の質問にもありましたが、ドイツでのEV化の流れはどうなんでしょうか。
A4. (望月氏) この件に関する統計データが発表されていると思うのですが、未だ見ていません。街中での印象ですが、殆ど見かけない状況です。日本と同じような状況と思われます。
A4. (宍戸氏) これにはMilestoneがあって、世界の潮流からするとIEA(International Energy Association)というところが、EVとかPHEVの出現に関し悲観的なシナリオと楽観的なシナリオの2つで予測しています。極端に脱炭素の方向に行くと8~9割がEVで、そうでなくても2~3割はEVになるという資料があります。実際には日本も欧州もそこまでは動いていないのが現状です。中国は2035年までにとか言われていますが、結局のところ、本日の望月さんのお話しの中にも出て来ましたが、何らかの経済的なインセンティブが強く掛かった瞬間に急にドライブが掛かると考えられます。それが今の時点でドイツでもcriticalに働いていないと思われます。日本にはEVの助成金がありますが、これから本気で税制改革が行われたり、EVを買ったときにLife Cycle的なコストが安くなる、といったことが見えてこない限りは、急激には伸びて来ないというのが現状だと思われます。車業界のお客さんと色々やり取りをしていますが、AT車は残ってくれますよね、というようなことを言われていまして、何時がTrigger Pointなんだということで議論になっているところです。その中でウクライナ危機があって、脱炭素は少し待ってもいいよね、という雰囲気に、欧州も含めてなっているのが事実です。何時から撤退するかが読めないみたいです。
Q5. (参加者) 私は水素ステーションを運営する会社をサポートする会社に派遣社員として2年半位在籍したのですが、水素自動車というのは日本を含めて世界的には普及しないなと結論付けました。その理由として、欧州はずるいと思うのですが、ISOがその例でして世界標準を先に取るじゃないですか。ドイツもすごくうまいと思うのですが、日本は下手だと思います。日本は今一生懸命やっていますが、普通乗用車で5,000台を割るのではないでしょうか。建設とか設計とかメインテナンスに携わってきましたが、これはダメだと思いました。欧州ではどうなんでしょうか。
A5. (望月氏) ドイツでは水素自動車というのは全く話題になっていないです。EVが先行している状況です。
Q5.続き (参加者) そうですか。水素は820気圧に圧縮して貯蔵容量を減らしていますが、配管は溶接出来ず漏れが絶えないです。その結果、事故扱いというか休業扱いになると官庁への報告が必要です。パーツの劣化も激しく、トラブルが多かったです。今の状況は不明ですが、変わっていないようです。東京オリ・パラが1年延期されて普及が遅れたと思うんですが、日本政府はどうして補助金を出し続けるのでしょうか。
A5.続き (宍戸氏) 水素は厳しいですね。圧力が高く第一種圧力容器が必要ですし、運搬コストも掛かるので厳しいです。二酸化炭素と水素からメタンを合成するMethanation技術を用いて、水素をメタンに変えて運ぶことが考えられていますが、正直言ってなぜ水素を使い続けているかというと、再エネを十分に導入出来ないので、最終的に水素に頼らざるを得ないのが日本の状況だと思います。省エネして再エネして森林とかでOffsetする、というのが一番綺麗な形ですが、日本では再エネを導入するPotentialが少ないのが現状です。そうした中で、代替燃料としてCO2 FreeのH2を、例えばオーストラリアから輸入してそれを燃料として使う、というのが国の説明です。但し、ご指摘のようにCostとMaintenanceを含めて沢山の障害があるので、難しいところです。因みに製鉄関連では水素還元技術で水素を使うということで、水素自動車というよりは、何とか製造側で使おうということで今は頑張っているのが日本の現状だと思います。
Q5.続き (参加者) 去年の今頃日本政府が脱炭素に向けての方針を示しました。時を経ずしてカーボンニュートラルの技術戦略Road Mapも示されました。技術に関してはそのRoad Mapに書かれていますが、では実際の製油所とかコンビナートがどうなっていくかについては書かれていません。既存の産業がどうなっていくか、1年前は見えなかったですし、今も変わっていません。今日の講演でドイツは再エネが進んでいると思いました。日本では既存の化学工場がどの方向に進んでいくのか分からないですし、最近の日本政府が原発を無理して稼働させようとして、それが却って再エネ化を抑えているような気がします。最近アクセルを踏みだしたように見えるのですが、既存の設備がどう変わっていくのか見えないので、ヒントがあったら教えて頂けないですか。
A5.続き (参加者) 今日の望月さんのお話しによれば、ドイツでは全体の方向性というのが明確に示され、政府によってきちんと仕切られているようですし、宍戸さんのお話しからもそう思いました。一方、日本政府の場合は全ての顔を立てようとして、あらゆる利益集団を満足出来る方向にどんどん持っていくようにしていると思います。
A5.続き (宍戸氏) ご指摘の通りだと思います。数値を出せないところが日本政府の弱いところでして、経済産業省が今Green成長戦略を立てており、私もお手伝いをしていますが、そのRoad Mapに書かれたものは各業界が作ったRoad Mapを単に足し合わせただけのものです。すなわち政府がリーダーシップを取って目標削減量を示し、それに基づいて各業界の削減量を割り当てるわけではありません。規制と経済成長の妥協点を考えなければなりませんが、その延長線上には多分カーボンニュートラルという絵はないと思います。そこをどうするかを考えなければならないですが、その辺はドイツを見習う、ということをコンサルタントとしては言えますが、国の立場からすると難しいということを良く聞きます。
Q6. (参加者) カーボンニュートラルはこの先重要なキーワードと考えますが、地産地消も考える必要があると思います。ドイツでは今回のロシアによるウクライナ侵攻により、ノルドストリームを通して供給されていた天然ガスが途絶えて深刻な事態になりました。日本でも、東日本大震災、あるいはアメリカの同時多発テロのような事態に対して、地産地消で対応出来る体制を取る必要があると思います。今までのグローバリゼーション、すなわち世界の市場の中から、より安いものを輸入すれば良いという発想だけでは、この先対応出来ない事態が訪れると思います。そのことと、カーボンニュートラルとの並立を達成するための解をどのように出したら良いか、考える必要があると思います。
A6. (宍戸氏) ご指摘の通りだと思います。各市町村とかPublic Sectorの方々が良く地産地消のことを言われますが、それが根底にあった上でカーボンニュートラルに向けて他の技術とかそういった飛び道具をいかに使っていくか、だと思います。
*以降、主に地産地消に関連する議論が終了時刻まで続きました。

最後に椎名交流委員長の閉会のご挨拶が有り、終了となりました。

早稲田応用化学会 第38回交流会講演会―望月浩二氏講演の概要

2022年9月10日(土)15:00~17:10 (Zoomによるリモート開催)

 

【講演第二部】
望月浩二氏 『サステーナブルな世界に向けて』 ~ 「ドイツのカーボンニュートラル」

講演は次のテーマに従って順に行われました。
①ドイツ国民の環境意識
②サステナビリティの重要な要素としてのカーボンニュートラル
③カーボンニュートラルの2050年実現を目指すドイツの取り組み
④カーボンニュートラルとリサイクル

以下、各テーマについての説明の中で、主要と思われるものをピックアップしてみました。
①ドイツ国民の環境意識
 ・ドイツ国民の環境意識調査が遇数年12月に連邦環境庁(UBA)から発表されます。ここではその結果を報告します。(特に2020年のデータについてのコメントです。)
 ・「我が国の直面するもっとも重要な問題は何だと考えますか」に対する回答において、「環境と気候の保全」が第四位(65%)を占めています。
 ・「環境/気候保全はどの政治領域で考慮されるべきですか」に対する回答において、「エネルギー政策」が第一位(70%)を占めています。
 ・「製品またはサービスの購買または利用におけるあなたの個人的な振る舞いについて」に対する回答において、「家電製品の購入時に、私は、とくにエネルギー効率クラスのよい器具を選びます。」が第一位(74%)を占めています。
 ・「気候変動と気候保全に関する質問」に対する回答において、あなたの関心の強さの程度は、「非常に強い」と「強い」の合計が74%、またあなたの情報入手の程度は、「非常によい」と「よい」の合計が60%となっています。
 ・同じく「気候変動と気候保全に関する質問」に対する回答において、気候変動の原因は「人間の行動のみ」と「主に人間の行動」の合計が77%、またコロナ禍によって、あなたにとっての気候保全の意味に変化があったかどうかについては、「より重要になった」との回答が16%となっており、注目されます。
 ・「気候政策とドイツの役割に関する質問」に対する回答において、ドイツのような工業国は、気候保全を推進する義務があるとの考え方に「全面的に賛成」と「どちらかというと賛成」の合計が83%に達しています。
 ・「気候保全を推進する政策に関する質問」に対する回答において、「気候に有害な補助金を廃止する」、「気候にやさしい製品と技術の開発の助成を強化する」、「気候保全のための教育と職業教育を強化する」などの回答が支配的です。
 ・「気候に有害なCO2の放出を減らすために、ドイツでは2021年から国家が燃料と化石の暖房燃料(例:暖房油、ガス)にCO2税を課します。その税収の用途に関する質問」に対する回答において、「この税収は将来のCO2排出の減少を可能にする助成プログラムのために使用されるべきです」との回答が55%で第一位です。

②サステナビリティの重要な要素としてのカーボンニュートラル 
 ・サステナビリティとは「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たす」ことであり、これを担保する諸要素として資源の持続可能性、気候の持続可能性(カーボンニュートラル)、廃棄物処理の持続可能性、開発の持続可能性、等が挙げられます。

③カーボンニュートラルの2050年実現を目指すドイツの取り組み
 ・ドイツでは2050年までに気候ニュートラルを実現することを気候保全法で定めています(2019年12月17日に官報告示)。
 ・この講演では、「2050年までにカーボンニュートラルを実現するためのドイツの取り組み」というテーマについて、ベルリンのシンクタンク「アゴラ」がドイツの次の三つの研究所に委託した研究の報告書の内容を紹介します。(発表:2020年10月)
  Prognos AG(プログノス研究所)
  Öko-Institut(エコ研究所)
  Wuppertal-Institut für Klima, Umwelt und Energie
     (気候、環境、エネルギーに関するブッペルタール研究所)
 ・気候ニュートラル2050(CN2050)のシナリオにおける政治的な対策として、下記の項目があります。
  Buildings(建物);Green retrofit (retrofit = 旧型装置の改装)
  Agriculture(農業);Reduce manure =(有機)肥料、こやしを減らす
           Reduce livestock = 家畜を減らす
  Industry(産業);DRI = Direct Reduced Iron(直接還元製鉄法)
  Industry(産業);CCS = Carbon dioxide Capture and Storage
  負のエミッション;BECCS = Bioenergy with Carbon Capture and Storage
                … by biomass combustion
             DACCS = Direct Air Carbon Capture and Storage
 ・ドイツはGHG(Greenhouse Gas) Emissionを、1990年の1,251から858(2018年)まで削減しました。(単位;MtCO2eq、以下同様)
 ・気候保全法の第一次改定が行われ(官報告示2021年8月18日)、気候ニュートラルの達成を2050年から2045年に前倒ししました。(GHGエミッション;858(2018年)⇒438(-65%,2030年)
 ・気候ニュートラルへの移行のため、下記の三つの柱があります。
  柱1:エネルギー効率の向上とエネルギー需要の削減
  柱2:再エネ発電と電化
   その1:総電力消費
   その2:正味発電量および正味輸入量
       2020年のドイツの発電電力の44%は再生エネルギーによるものです。
       ドイツは2022年に脱原発を達成します。(予備電源としての原発2基を、
       来年4月まで稼働可能な状態で残します。)
       ドイツはフランスから電力を輸入していますが、その輸入量の約2倍の
       電力をフランスへ輸出しています。
   その3:再エネ発電
  柱3:エネルギー源および原料としての水素
 ・セクター・カップリング;電力、熱、交通の分野間で再エネ由来の電力を融通しあうことです。

④カーボンニュートラルとリサイクル
 ・リサイクルは常にカーボンニュートラルに貢献します。以下は包装材料のリサイクルなどについての最新情報です。
 ・飲料ボトル・缶のデポジット(保証金);ポイ捨てを防ぎ、資源または再使用容器として活用するためです。
 ・包装廃棄物を出さない工夫;
  普通のスーパーが「量り売りコーナー」を設置しています。(欧州全域)
  飲料業界の大手が予告はしたがまだ実現していない「100%リサイクルPETの飲料ボトル」をベルリンのスタートアップ企業“Share”が実現しました。(ドイツ)
 ・廃棄物ゼロを目指すNPO:ゼロ・ウェイスト・ジャーマニー(ZWG);ZWGは、市民、企業、行政の協力によって、循環経済の考えを広く実現することを目指すNPOです。
 ・地下式ごみ回収容器;場所の節約、美しい外観、投入口が自動的に閉まるので、臭気が発散しない、投入口が低いので、老人や子どもや身障者でも楽に投入できる、等の特徴があります。
 ・食品用プラ容器包装に関するEUプロジェクトが始動しました。単一素材設計とリサイクルシステム確立を目指します。

 ご清聴、有難う御座いました。

早稲田応用化学会 第38回交流会講演会―橋本副会長のご挨拶

2022年9月10日(土)15:00~17:10 (Zoomによるリモート開催)

橋本副会長のご挨拶
宍戸さん、望月さん、本日はお忙しいところ貴重なお話を伺わせて頂き、有難うございました。とても興味深く拝聴致しました。お話し全体で感じたのは、皆さん一人ひとりがカーボンニュートラルって本当に必要だなと認識することが大事で、それが色々な活動のコンセンサスを生むと思います。カーボンニュートラルとか温暖化というと、80年で一度位上がる危機ですので、自分の生きている間には関係無いと思う人が結構いるので、それは実は大きな問題であることを我々が理解する必要があります。そのためにどうしたら良いか、ということを考えながらお聞きました。
カーボンニュートラルの活動のためには、その活動をした方が企業にとっても個人にとっても有利であるという仕組みを作ることが大事です。それを日本でどのように出来るのか、ということを考えるのも一つの課題と感じました。望月さんの発表の最後の方に、色々な小さな取り組みが多く示されました。これは実は個々の活動の効果というよりも、一人ひとりがきちんと意識付けして活動する出発点になる、という意味で非常に重要なインプットだったと思いました。また、全体的な意識付けを上げるのと同時に、企業にしても個人にしてもそういう活動をした方が自分にとって有利になるという認識をどうやって作るか、ということを考えるのも大事だと思います。
以上のようなことを考えながらお二人のお話を聞かせて頂きました。非常に貴重な時間となりました。有難うございました。

早稲田応用化学会 第38回交流会講演会―質疑応答の概要

2022年9月10日(土)15:00~17:10 (Zoomによるリモート開催)

質疑応答の概要
Q1. (参加者) 私は、今住んでいる市の環境政策の提言をする会に参加しています。市町村がイニシアティブを持って政策を進めていけるような切り口とかを教えて頂けないでしょうか。
A1.(宍戸氏)地域の枠組みとか仕組み作りがメインになると思われます。リサイクルとか再エネといった、住民の方々が気軽に参加出来るような仕組み作りをどのように行うか、ということが1つの考え方になると思います。ゴミ問題も対象になるでしょう。環境意識調査に関しての望月さんのお話しの中で、エコ電力を買う人の割合が半数を超えていましたが、環境に優しいことをすることが良いことであるという市民意識が芽生えていると思われます。このような観点もあるといいのではないでしょうか。
A1.(望月氏)ドイツでは原発を保有する電力会社の電力料金よりも、再エネオンリーの会社の料金の方が安いです。ドイツ国民は安い方を選びます。発電電力の44%は再エネによるもので、豊富な電力となっています。
Q2. (参加者) ドイツの原子力の見直しに関し、政権とか市民の方々の捉え方はどうなんでしょうか。もう一つは風力に関してですが、環境破壊の観点から反対の動きはないのでしょうか。
A2.(望月氏)ウクライナ侵攻によるエネルギー不足に対応して、2つの原発は来年の4月まで稼働可能な状態に保ちますが、CDU(キリスト教民主同盟、保守系)は4月に停止どころか、脱原発を止めることを国会で頻繁に述べています。しかし、ドイツ国民にはこの考えは受け入れられていないと思います。脱原発の方針は不変と見ています。風力に関してですが、風車を設置する場合に住居との最小距離を設ける規則があります。これを満たせば住民は設置に反対出来ず、田舎に行くと風車が林立している光景が多く見られます。
A2.(宍戸氏)日本では山岳地帯が多く、風力が利用されていますが、バードストライクとか風切り音とか種々問題があるので、洋上風力に対して補助金が出される状況にあります。北欧では、少し離れた所に陸地を置いて風車を回すということが行われており、商社とプロジェクトを組んで実施しているのが日本の状況です。

早稲田応用化学会 第38回交流会講演会―宍戸圭介氏講演の概要

2022年9月10日(土)15:00~17:10 (Zoomによるリモート開催)

【講演第一部】
宍戸圭介氏 『サステナビリティとは何か』 ~ 「日本のカーボンニュートラル」

講演に先立ち、演題及び副題に示された用語に対する理解度チェックのため、Zoom上でのアンケート調査が行われました。「聞いたことはある」人、及び「説明できる」人に大別されました。

本講演の要約
1.サステナビリティに関するトピックは、グローバルアジェンダとして重要性が増している。
2.日本においてもサステナビリティ、特に気候変動分野でのコミットメントが高まっており、産官学が協働してカーボンニュートラルを目指すことが求められる。
3.カーボンニュートラル達成のためには種々のアプローチが必要であり、応用化学会の皆様の知見や経験が大いに生かされることが期待できる。

講演は次のテーマに従って順に行われました。
①サステナビリティ入門
 ・サステナビリティとは?(SDGs, ESG, CSR/CSV等の用語解説)
 ・サステナビリティの潮流
②気候変動問題、カーボンニュートラルについて
 ・気候変動がなぜ問題になっているのか?
 ・カーボンニュートラルが求められる背景
③日本におけるカーボンニュートラルに向けた取り組みの現状
 ・国の動き
 ・産業界/企業の取り組み
④私がコンサルタントとして関与しているプロジェクト例
 ・【企業様支援】ネットゼロのロードマップ作成支援、情報開示支援
 ・【産官学連携】カーボンニュートラル技術の社会実装に向けた取り組み

以下、各テーマについての説明の中で、主要と思われるものをピックアップしてみました。
①サステナビリティ入門
・サステナビリティとは持続可能な社会、すなわち「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させる」(国連)ことであり、これを達成するためのアプローチがSDGs, ESG, CSR/CSV等と関連付けられます。
・SDGs(Sustainable Development Goals)とは国連が地球規模で取り組むべき課題を17個の目標として定義したものです。
・ESGは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の観点で、被投資企業の長期的な評価を行う基準です。
・企業の社会貢献活動が中心となっていたCSR(Corporate Social Responsibility)から、経営モデル自体の変化を目指したCSV(Creating Shared Value)が着目されつつあります。
②気候変動問題、カーボンニュートラルについて
・サステナビリティ関連リスクとして、「気候変動の緩和・適応の失敗」が「発生の可能性」トップ10の内のNo.2、「影響の大きさ」トップ10の内のNo.1に挙げられています。(世界経済フォーラム “Global Risks Report 2020”)
・世界平均気温が産業化以前から約1.0℃上昇しており、このままのペースだと2040年前後には1.5℃に達し、気候変動による影響が顕在化するリスクが高まります。このリスクを回避するため、日本を含む各主要国は経済成長を目指しながら、カーボンニュートラルを達成する目標を掲げています。
③日本におけるカーボンニュートラルに向けた取り組みの現状
・2050年カーボンニュートラル実現のための施策として「グリーン成長戦略」を策定し、その戦略として14分野のロードマップを検討中です。
・グリーン成長戦略を達成するために、開発・導入フェーズの工程表を作成し、企業に対して5つの手段(税、予算、規格・標準化、規制改革、民間の資金誘導)から政策支援を行っています。
・企業の脱炭素目標も1.5~2℃に沿ったレベル、もしくはそれ以上が求められつつあります。
④コンサルタントとして関与しているプロジェクト例
 【企業様】脱炭素に向けたロードマップ作成、仕組・開示内容の確立支援
 ・各企業様の脱炭素化に向け、①目標設定②ロードマップ策定③仕組・開示内容の確立といった観点で助言を実施しています。
 ・ロードマップ策定に関しては、2050年ネットゼロまでのパスについてシミュレーションを実施します。2050年までのカーボンニュートラル達成に向けた具体的な施策の積上をサポートします。
 ・仕組・開示内容の確立支援に関し、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、気候関連財務情報開示タスクフォース)は企業のガバナンスとリスクマネジメントの高度化、開示を求めるイニシアティブです。
 ・気候変動関連のガバナンス整備、リスク・機会の特定、シナリオ分析等が求められています。このシナリオ分析とは、将来の曖昧さ・不確実性を排除した経営戦略の策定メソッドのことです。
 【産官学連携】DTSTによるカーボンニュートラル技術の社会実装に向けた取り組み
 ・DTST(Deloitte Tohmatsu Science and Technology)にはデロイトトーマツグループ1万5千人から集まった、研究者・技術者など理系出身のハイブリッドなビジネスプロフェッショナルが約250人所属し、研究の優位性を理解した上でビジネスに落とし込む、科学技術とビジネスの橋渡しを実施しています。
 ・技術リストの作成により、今後の成長がわかりにくいカーボンニュートラルビジネスの道筋を明確にしたいと考えています。
 ・2022年6月10日に技術リストの第三弾を公開しました。有望技術を、CO2削減ポテンシャル、投資対効果の観点で比較しています。
 ・技術リストを一つのハブとして関連プレーヤーを巻き込み、カーボンニュートラル技術の社会実装を企画段階から実装まで一気通貫で取り組んでいきたいと考えています。

 ご清聴、有難う御座いました。

早稲田応用化学会 第38回交流会講演会―西出名誉教授のご挨拶

2022年9月10日(土)15:00~17:10 (Zoomによるリモート開催)

 西出名誉教授のご挨拶
先程放映されましたように、早稲田大学はカーボンニュートラルを宣言致しまして、プログラムコーディネーターとして応用化学科 本間敬之先生が中心的な役割を果たしておられます。先端研究では、先程ビデオに出ておられました関根先生は経産省やJST(科学技術振興機構)の政策委員としてもご活躍ですし、松方先生はGreen Sustainable Chemistry Networkの代表を、また化学工学の野田先生は社会実装の旗振りを務めておられます。東日本屈指の所謂電池ビルは、逢坂先生、門間先生が展開されておりますし、有機電池の国際会議を先達て小柳津先生が主催されました。太陽電池では須賀先生がペロブスカイトのNEDOのプロジェクトを展開されている、等であります。人材育成が大学にとっては大事なわけで、文科省の卓越大学院では、電気・情報生命工学科の林先生がリーダーで、PEPと称していますが(Power Energy Professional)全国13大学の拠点に早稲田大学がなっておりまして、Powerは東京電力と、Energyはエネオスと産学連携しております。例えばキャンパスの中にヨーロッパ仕様とアメリカ仕様と日本の住宅のプレハブがありまして、電圧とか家電だとか、あるいは窓の構造の違いによってどう電力消費が異なってくるのかを学生が実験するようなことも提供されております。総合大学として文理融合が早稲田の強みですので、先程ご説明がありましたカーボンプライスの有村先生は世界標準の日本代表でありますし、例えば社会科学部の赤尾先生は経済学から見た環境問題という演習科目を、理工の学生のために展開されております。キャンパスでは建築学科の田辺先生が省エネビルや住宅の専門でありますし、多くの学生のサークルがボランティアで活動し、まさにカーボンニュートラルでは早稲田が国内の大学では屈指の位置付けになっていると理解しております。謳われておりますSDGs等、社会全体を括るアセスメントを睨みながら、しかも安全安心が保証されている考え方でなければ、立ち位置のない時代になっております。今回のご講演の企画が参照になればと期待しているわけであります。企画されました椎名さんはじめ応用化学会の企画の委員の皆様、また準備して頂いている事務局スタッフの皆様、感謝申し上げます。新制20回西出から挨拶させて頂きました。