2023年度学位授与式 濱会長 祝辞

濱  逸夫

 

現在、応用化学会の会長を仰せつかっております濱と申します。

 先ずは皆さん、本日は本当におめでとうございます。この何年かはコロナに翻弄された生活であったと思いますが、その中でも皆さんにとって、様々な先生方や先輩、そして友人たちとの新たな出会いがあり、充実した時間であったと思います。多くの新たな経験の中で、紋々とした時間もあったかと思いますが、全てが皆さんの財産として蓄積されています。

 そして、今日を起点に更に皆さんの新たなキャリアが始まります。これからの人生を本当に有意義な、楽しいものに出来る大きなポテンシャルが、皆さん全員にあります。

とは言っても、未だ自分のやりたいことや自分の人生をかけてチャレンジしたいことが見えていない人いるかもしれません。ただ焦ることは全くありません。若い皆さんには、新たなキャリアにチャレンジする多くの時間があります。

 私も応用化学科を卒業後、企業の研究部門に所属し、様々な技術開発に関わりました。その後、事業部門に移り、後年は、社長、会長という企業経営に携わった経験の中で、「何かに成功する人は、異なるキャリアにシフトしても必ず成果を出す」ことに遭遇し、何度も驚かされました。研究でも1つ大変優れた研究や発見をした人は、異なる研究や技術開発でも、必ず成果に繋げます。

 何故なんだろう?何度となく、考える機会がありました。

人生は運と努力、そして運が七割だという人もいますが、先ほどお話ししたような何度も成功体験を勝ち取れる人に共通しているものは、単なる運ではなく、

『自分の頭で考え、自ら行動に移せる能力が高いかどうか』

その能力の大小が人生の結果を大きく左右するのではないかと思います。

世の中で当たり前と思われていることを、敢えて異なる視座から捉えて、今までとは全く異なる結論を導き出す。これはイノベーションの原点かもしれません。そして、一度上手く行くと益々面白くなって、自分で考え、自分で動くことを繰り返すのが当たり前になるのではないかと思います。

 これまでの学生生活は、進むべき道がある程度描かれていて、その道を進むことに努力をしてきたと思います。ただこれからの人生に重要なのは、自分で道を見つけ、あるいは自分で道を作っていくことです。

 常にその道が皆さんの人生を充実した、面白いものにするのか、あるいは人の為になっているのかを、自分でデザインし、チャレンジを繰り返して行かねばなりません。

常にポジティブに物事を捉えて、前に進む。そして壁にぶつかった時は、一人で悩まず、心を開いて話をする。気軽にそんな話をできる仲間を如何に多く作るかも、これからの人生にとって大変重要です。

皆さんには、多様な視座をもって物事を見る、そして自ら考え、仕掛ける能力を身につけて、研究の世界でも、ビジネスの世界でも、是非グローバルで活躍できる人材になってほしいと思います。

SNSの時代、そして生成AIの時代、益々国境がなくなり、また変化のスピードが凄まじいものになります。そんな時代では、様々な情報が全て真実のような形で、あっという間に共有でき、手に入ります。ただそれは自分自身の意見や考えではなく、不特定多数の人達の情報や意見であることを忘れないでほしいと思います。得られた情報や考え方が真実であるかどうかも分かりません。

人生の主役はあくまでも自分。どんなに簡単に様々な情報が共有できる時代になっても、常に自分の頭で考え、自ら行動することを忘れずに、挑戦を続けてほしいと思います。

“何事にもおもしろいと思ってチャレンジすること”、そして

“心を震わせ多くの感動を感じること”そしてどんなに成功しても

“常に人への感謝を忘れないこと”

これを忘れずに、皆さんの持っている無限のポテンシャルを大きく花開かせてください。

 ここにいる皆さんから、世界で憧れられるような素晴らしい人材が数多く誕生することを期待して、私からのお祝いのメッセージにしたいと思います。

本日は本当におめでとうございました。

 

                             以上

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