世界のパラダイム・シフト

まず、これら3大項目への導入部として次のテーマで解説がなされた。

「変化を恐れるな!」

“生物の進化の歴史を見ても、 最も強い者や最も賢い者が生き残った訳ではない。 最も変化に懸命だった者、最も環境変化に適応した者が生き残った。”

講演者;長谷川 閑史氏

この言葉はダーウィンの進化論の中で記述はされてはいないかも知れないが、筋が通っていると思われる。 グローバル化/技術革新の進展により加速度的に変化する環境下にあって、「何もしないこと」は、結果として日本および日本企業にとって「最大のリスクテーキング」になるというのが、私が11年間社長をし、3年間会長をした経験から得られた実感である。
今の時代のリーダーは、その人がリードする組織、それが国の場合は政府、立法府、行政府のいづれであれ、あるいは企業、自治体、教育機関といった組織でも、それら全ては環境の変化に応じて、出来れば先取りをして自らが変わっていくということをしないと、環境の変化に先を越されてしまったり競争相手に先を越されてしまったりする。
例えば大学1つを見ても、大学は国内の大学同士で競争しているだけではなく、海外の大学とも競争している。学生は国内の学生、あるいは他大学の学生と競争しているだけではなく、留学生とも、あるいは海外の学生とも競争している。 どの位の割合か知らないが、多分今の学生は大学に残るのは1割か、それ未満位であろう。殆どの方が最終的には就職という形になると思われる。
一方、採用する企業の側からすると、そういう観点から採用するので国内の競争だけで見ている学生は、少し視野が狭いということに成りかねない。その辺の所を良く考えた上で目標を定めるのが良いと思われる。これは経営者にも良く話すことであるが、“経営トップに求められる資質・経験・知識・スキルは基本的に共通するものが多い。しかし、個別の会社の置かれている状況/環境によって特殊な資質・才能が求められる場合がある。”というのが私の実感である。

 

次に、3項目に大別された各項目についての解説がなされた。

1.世界のパラダイム・シフト

1)パラダイム・シフト

下記の3つのパラダイム・シフトを取り上げる。

①人口動態;先進国における急速な高齢化⇒新興国における人口増大

②世界経済のDriving Force;先進国⇒新興国

③ITによる情報化社会;更なるGlobalization、Digitalization⇒フラットな世界、The Second Machine Age

2)世界の地域別人口予測

今の人口は72~73億人程度と思われるが、過去100年弱を見てみると1950年には世界の人口は25億人であった。それが、ほぼ100年後の2056年には100億人になる。これは国連の人口推計の中位推計値で取っているが、わずか一世紀の間に人口が4倍になる。それも25億人から100億人という巨大な数になるという人類が経験したことがない急激な人口増であるから、それによって色々な環境への軋み、競争への軋み、資源への軋み等様々な問題が出て来ている。それをどうやってこれから調和させて生きて行くかということが、これからを生きる我々にとっては特に大きな課題になる。
中でも特徴的なのは、アフリカの人口であり、今は10億人ちょっとであるが、それが40~50億人に増えて行く。これから約40年位で72~73億人から100億人に増えて行くが、そのうちの殆どはアフリカで増えて行く。勿論アジアでも増えて行くが、アジアはアフリカよりも早くピークに達して、やがて2060年頃から減少に転じる。アフリカの場合はその後も増え続けて行って、アジアとアフリカで世界の人口の8割を占める位の状況になる。
人口推計は統計の推定値の中でも最も当たる確率が高い、と言われているから、この予測はほぼ間違いないだろう。恐らく今学生の皆さんが私の年になる40年後とか50年後には、こういう時代がほぼ現実のものとなっていると考えるのが宜しいと思われる。

3)経済成長の5割以上は新興国からもたらされる

経済については、世界のGDPは2000年から2010年にかけて倍、2022年を2000年と比較すると3倍位に増える。しかし、これを先進国と新興国に分けてみると先進国は約2倍に対して新興国は約6.3倍と、圧倒的に新興国の伸びが世界全体の経済の成長を引っ張っていくという様子が見えている。
その中身を少しbreakdownして見てみると、米国やドイツでは約2倍でほぼ先進国の平均位に伸びている。日本は、失われた20年と言われているが1990年代の終わりから殆どゼロ成長、金額で言うと500兆円位のGDPでずっと横這い、ドル換算なのでレートにより若干異なるがほぼ横這いで増えていない。一方で中国は14.6倍に増えている。勿論ベースが小さいから倍率は高くなるが、一方で絶対値を見ても、中国が日本を抜いたのは2010年で、わずか6~7年後の現在は1.7倍から2倍近くになっていて、アメリカの三分の二位にまで成長している。中国の数字がどこまで信用出来るかという話しはあるが、それにしても目覚ましい成長である。今や米中が覇権を競う国のスター、経済の規模においても覇権を競う国になっている。
日本経済のGDPのピークは1994年に世界の18%を、人口が2%にも満たないような島国日本が創出していた。今ではそれは見る影もなく、全体の5%で、当時の世界に占める割合からすると既に三分の一になっている。これからも日本の人口は1億2800万人をピークに減っていき、50年後には9000万人を割るのではないかと言われている。そういう中で経済を成長させていく、それもグローバルな平均として成長させていくというのは至難の技である。そういった中で日本はどうやって豊かさを維持し、社会を維持していくかということがこれからの最大の課題の1つである。

4)第4次産業革命の時代、Second Machine Ageへ

次に科学技術、ICT Technologyであるが、その中で特にComputer Technologyについて採り上げたい。今第4次産業革命の時代と言われたり、あるいは3年位前に出版された本ではSecond Machine Ageという定義がなされている。1775年にJames Wattが蒸気機関を発明して以来産業革命が始まったと言われているが、その時代をFirst Machine Ageというふうにこの本の著者達は名付けている。この段階では蒸気機関の発明が人間の労働力を機械に置き換えることによって、人間の生産性、社会の生産性を飛躍的に伸ばしたわけである。それから約250年経って、今やSecond Machine Ageという時代になりDigitalizationとAIの発展が人間の頭脳労働を機械に置き換えるという時代が到来しつつあるということである。
一方、経済産業省の「新産業構造ビジョン」の中では第4次産業革命という呼び方をしており、現在は第4次産業革命の真っただ中にいると言えるわけである。

5)ITが世界を変えるイノベーションを生み出す―ITが働き方、モノづくり、サービスを根本から変える

それではICT Technologyがこれからの経済にどのようなImpactを与えて行くか、経済的に見てImpactが大きいのはどこということを考えてみよう。
McKinsey Global Instituteが作った予想値によれば、経済的にImpactが一番大きいのはMobile Internetで、先進国においてはオペレーションの効率化と労働生産性の向上を、新興国においては遠隔サービスの浸透等を通じて圧倒的に大きな経済Impactを与えるであろうと言われている。
その次に大きいと言われているのが知識労働の自動化という、所謂人工頭脳(AI)の領域である。下限予測と上限予測で、見方にこの位の幅があるが、相対的に見ればMobile Internetに次いで知識労働の自動化、AI ROBOTの活用が大きな経済Impactを与え、その後にInternet of Things(IoT)、つまりモノのインターネット、あるいはクラウド技術と言われるものが大きな経済的Impactを与えると言われている。

6)社会の様々な分野にAIが進出

AIについては申し上げるまでもないが、最も皆さんに分かりやすくImpactを伝える出来事の1つが、例えばチェスや将棋や囲碁でAIが人間のトッププレーヤーに勝利したことである。
最初は1997年にディープ・ブルーというコンピューターがチェスの王者に勝利して、それが始まりであったが、その後将棋ソフト「PONANZA」がプロ棋士に勝利し、いよいよ昨年は世界のトップ3に入るだろうと言われている韓国のプロ棋士イ・セドルにGoogleのアルファ碁が4勝1敗と圧倒的に勝利した。なおかつアルファ碁が今年になって世界一の棋士[柯潔(か・けつ)九段]にも勝利した。アルファ碁はこれ以上[人間との対戦を]しないということで、アルファ碁同士の棋譜50局が公表されており、それを見た棋士達は自分たちが考えもしなかった手が打たれている、ということに驚いているようである。

もう一つはAmazonのEchoという音声アシスタント端末が、AlexaというAIを搭載しており、そのAlexaに音声で指示をすれば[例えば]「Alexa、今一番流行っている音楽をかけてくれ」とか、「私は今こういう気分だから元気付けてくれるような音楽を聞かせてくれ」とか、口で言えば何でも「分かりました」と聞いてくれる。実際に私はそれを見て何となく複雑な気分になったが、そういうものが既にアメリカでは約1,000万台売れている。勿論AmazonだけではなくてGoogleやApple、Microsoftなども追随している。
ここで恐ろしいのは今のGoogleの検索とかAmazonのPrime Customerとかで注文するものは全部GoogleやAmazonのData Baseの中に取り込まれているわけである。だから自分が欲しいとは思いもしないようなものも、この品物を買った人はこのようなものも見ているとか、頼んでもいないものを色々言ってくれるわけである。そういうことはまだまだ始まりで、様々な皆様の思ってもみないことがみんなBig Dataの中に入って分析をされて、Customizeされた情報がそれぞれ皆さんのところへ届くということが起こってくる。
本来Privacyの保護について敏感な今の世代の人たちも、このことについては何故か何の疑問も持たずに為すがままにされている、ということ自体が恐らくこれからは問題になってくるように思われる。どこまで何を分析されるか、心理的なものだから何か分析に使われるとちょっと空恐ろしい。

その他、AIが皮膚がんを判定するというソフトがあって、これはまだ正式な医療行為としてFDAとか日本の厚労省とかで認められてはいないが、実際には皮膚がんの診断については、特に微妙な診断についてはAIの方が専門医よりも正しく判定する確率が高い。だから人間とAIを組み合わせてやれば、遥かに今よりも精度が上がる。
それは皮膚がんだけではなくて大腸がんだとか食道がんだとか、Endoscopy、Chronoscopy、内視鏡で検査するがそういう時にその画像を見せて診断させるとAIがそれを全部判断してくれる。そして専門医が肉眼で確認して最終の診断をするということが現実に起きている。
一方で、例えば低開発国のバングラデシュで実際に起きているが、地方に専門医がなかなか居ついてもらえないなか、慢性病、例えば心臓病の方達は遠隔診断で処方することによって8割方の問題は解決されることが分かっている。どういうことを行うかというと、尿とか血液の検査薬のキットを慢性疾患の患者さんの家庭に配って、患者さんが1週間に1回尿とか血液の検査を診断キットで行い、血糖値が幾つであるとか肝機能がどうであるとか、それらを全部電話回線で町の専門医に送れば専門医がそれを経時的に診て、何か変わった情報が出てくれば生活の指導をしたり処方を変えたりしてその治療を継続する。それを行うことによって8割方の問題は実際にface-to-faceでなくても解決出来る、ということが起きている。

それからこれも有名な話であるが、日経新聞の人などに話を聞くと、同じ日に何百社も企業決算発表を行う。AIにそれまでの過去のデータを全部覚え込ませて、新しく発表されたデータを送り込むと決算発表のSummaryの記事を僅か1~2分で全部書いてくれる。そういうことが現実に起こっているわけで、AIは与えられたものに対して分析をして比較して、その結果を記事として出す。では記者は何をするかというと、AIが考えられないような、すなわち初めから目的が分かっているものではなくて、色々な現象を自分が取材をして、あるいは会社の状況をきちっとmonitoringしてそれを取材して、記事を纏めて行く。AIは目的が与えられなければ、それに対する答えは出さない。人間はそうではなくて自分が目的を作って目的に合うような材料を集めInformationを分析して記事に纏めることが出来る。そういう、AIが出来ないことをやっていかないとAIとの差別化が出来ないし、AIとの差別化が出来なければAIに置き換わられる可能性が無きにしも非ず、ということである。

AIには、特定の決まった作業を遂行する「特化型」と、人間と同様あるいは人間以上の汎用能力を持ち合わせているとされる「汎用型」の2種類がある。現存するAIは全て「特化型」と言われている。「汎用型」AIが実用化すると、人間の生き方やあり方を根本から変える可能性もある。これを含めて多分Singularityというふうに定義付けられる。

7)AIは失業をもたらす悪魔か、人口減少時代の救世主か?

Singularityは、これを言い出したカーツワイルは2045年頃にSingularityが来ると言っていたが、今ではもうちょっと早く来るのではないか、ということを言っているようである。それが何を意味するか、ということについては、ここでは悲観論と中立論と楽観論と3つpick upしておいた。最後に紹介する推薦図書の中にMEGATECH(「エコノミスト」誌が2050年のTechnologyを予想して書いた本)からpick upしたものである。
一方で楽観論について面白いのは、引用した人が限られてはいるが日本人が多いことである。欧米人は結構心配していて、Microsoftのビル・ゲイツに至ってはもう少しAIの進展を遅らせるべきであるとまで言っている。それから、AIが本当に仕事の半分も置き換えるようなことになった場合には、人間はどうやって食べて行くのか、ロボットに税金を課すのか、あるいはBasic Income、すなわち国民全部に例えば30万円を毎月渡すとか、そういった様々な意見が出ている。要は何も分かっていないということである。どうなるか分からないが、何となくヤバイぞという感覚が今多くのところで芽生えているということである。

8)AI時代に向けて取り組むべき課題

ここでは特に教育の問題を取り上げた。これからは多分ComputerのProgrammingの基礎的な知識はMustであろう。色々な国で既に行われているが、例えば欧州、英国、イスラエル、バルト3国のようなICT先進国では既に行われている。日本は中々そういうところに手が届いていない。それ以前の問題として英語の教育すら週1回小学校の授業で取り入れられる程度である。GlobalなBusiness Languageである英語について、これから国内で仕事をする人においても英語の知識はMustであろうと思われる。しかし残念ながらTOEICを見てもTOEFLを見ても日本はアジアの中で最低の部類に位置付けられている状況である。若い皆さん、あなた方は英語から逃れることは絶対に出来ない。You’d better be speaking English fluently. 頭の中に入れておいて頂きたい。
ただ、日本の場合はそういうことに対する危機感が非常に弱い。アメリカの場合であればそういう問題が出て来ると、政府がやらなければ私がやるという人が出てくる、IBM ジニ・ロメッティCEOは、アメリカの高校4年だけではとても仕事のRequirementを習得出来ないので、4年+2年の6年間の高校を設立し準学士号まで取得可能なカリキュラムを創設しようと、今は300社の提携企業と30位の州に亘って具体的な活動をしている。
あるいはEngineerが全国の全ての学校でのProgrammingを教えるための組織、Non-Profit Organizationを立ち上げて、更にはProgrammingの世界的な普及に使えるようなProgramを作ったりしている。
しかし日本及びヨーロッパでは中々そこまで個人やボランティアが行動を起こさない。そういう所では政府がInitiativeを取ってやるべき、と考える。その場合の問題は、日本の公的教育支出はGDP比でOECD加盟国中で最低レベルにあることである。それからもう一つは、一旦職を失った人が再就職をするために政府が提供する教育Program、これは「Re-training」とか「Re-skilling」と言われているが、そういう投資にもGDP比でOECD加盟国中で最低レベルにある。
では日本はどこで何に使っているか、ということになるが圧倒的に社会保障費に使っている。今の社会保障費のMechanismは高度成長期に作られたもので、低成長になって高齢化が進む時代には全く持続可能性が無い。例えば社会保障で、1950年にもらった人と、今これから社会に出て行こうとしている人を比べると、社会保障に自分の給料から天引きされて社会保障費として積み立てに拠出した部分と、実際に自分がretireしてもらうお金を比較すると、50年位にもらった人は3000万円位プラスになるが、今から社会に出る人達は3000万円位のマイナスになるという試算もある。こんなシステムが通用する訳もないし持続性がある訳でもないのであるが、やっぱりSilver Democracyというか、年配の人達、一票の格差、年配の人たちはより多く投票に行く、そういった様々な問題があって、中々若者達の、あるいは次世代の人達への不公平感が是正をされない、という問題がある。
このこと1つを取っても日本にとっては大きな課題であり、早急に解決策を見出さなければならない。Basic Incomeとか、Robotへの課税とか、それはそういった話の種となっている。

9)格差の連鎖・固定化をどう断ち切るか

最大の問題は、こういったことから何が導き出されているかというと、世界で今貧富の格差が日本でも広がっているし、アメリカでももっと極端に広がっている。今アメリカの貧富の格差に関し、皆さんは覚えておられると思うが、アメリカの大統領選のキャンペーンでトランプとクリントンが戦う前に、民主党の中でクリントンのライバルであったサンダース上院議員が言っていたが、アメリカの富の殆どを上位1%の富裕層が独占し、その額は下位90%の人達の合計額と同じであるとのことで、極端な貧富の差がついている。アメリカではお金持ちのためのPopulismが、トランプが実行している政策だと言われている。トランプの閣僚は皆大金持ちの億万長者ばかりである。そういう状況が皮肉なことに貧富の格差の再生産を生み出している。格差のMechanismは多分こういうことであろう。

一旦生じた格差の解消が困難な理由の一つは、それが子宮の中、乳母車の中、そして幼稚園の中といった極めて早い段階から始まるためである。中産階級の母親は、子供が子宮の中にいるうちから健康的な環境を与えるように努力する。また、中産階級の子供が生後最初の2年間で語りかけられる言葉の数は、労働階級の子供と比べて数百万語多いのが一般的だ。また、中産階級の親は子供を幼稚園に通わせる傾向が強い。ハーバード大の学生の保護者の平均年収は45万ドル以上(エイドリアン・ウールドリッジ/「エコノミスト」マネジメント担当エディター)、東大生保護者の平均年収は1千万円以上。要は金持ちでないと良い大学は受けさせられないし、良い大学に行かせられない。
ただアメリカの場合はそれでもまだ救いがあるのは、奨学金制度が非常に充実していて、それも返さなくてもよい奨学金が結構ある。日本の場合は、返さなくてもよい奨学金もようやく政府が重い腰を上げて少しずつやろうとはしているが、大部分の制度の奨学金は返さなければならない。
イギリスでは奨学金制度を作って、なおかつその返還については、卒業し就職した時の収入に応じて全部返さなければいけないか、3割で良いか、そういう決め方を工夫したりしている。その辺のFlexibilityが日本には無い。日本の社会の問題の1つは、皆平等であれば文句を言われた時にあなただけではない、ということで答え易いためそのように処理してしまう。しかし、様々な状況の中で人は皆違う環境にいて、それに対する対応も違うはずなのに、それが非常に出来難いということをこれから変えていかないと、どうにも動きが取れない状況になって来る。これが益々高じるだろうと思われる。
それともう1つは文系・理系に関わらず今後はSTEM(Science、Technology、Engineering、and Mathematics)の基礎知識教育は必須であると思われる。

10)日本の人口推移

移民、難民の受け入れが困難な日本では、demographicなchangeがある中で何をしたら良いだろうか? 人材しか資源がない国なので個々の生産性upしかない。因みに1年で生まれる子供の数は、1949年、第一次Baby Boomerのピーク時に270万人である。ところが昨年は100万人を切った。だから今はピーク時の半分以下である。それだけしか子供が生まれていないので、日本の人口はどんどん減っていってしまう。
そういう状況の中で真っ先にやることは、本当は、普通の国であれば世界中から優秀な人が集まるような環境を作って、移民を受け入れる、あるいは難民を受け入れる。ドイツに至っては2015年から約100万人の難民を1年ちょっとの間で引き受けている。そういう国がある一方で、日本に至っては多分数十人とか、その程度しか受け入れていない。また世界から優秀な人材が集まることもない。
様々な問題があるが、例えば大学の中で理科系と文科系の比率も、日本は多分理科系は24~25%で、75%位は文科系であると思われる。中国やインドは日本の10倍以上の人口があるが、45~47%が理科系、シンガポールに至っては半分以上が理科系という状況である。ComputerのTechnologyが社会のベースになって来る時には、もう少し理科系、文科系を超えた前述のSTEMの教育が必要と思われる。
アメリカも多分理科系の比率は日本と余り変わらず、30%未満と思われる。ただ、アメリカの場合は社会に出た時世界中から人を集める。Silicon Valleyに世界中から人が集まる、あるいは私が身を置く医薬品であればCambridge、それからBostonのあるMassachusettsが、西のSilicon Valley、東のHealth Care Valleyみたいな形で、世界のHealth CareのInnovation、あるいは世界のICTのInnovationは圧倒的にその地域で集中的に起こっている。そうした環境を作ることによって、世界中から優秀な人を集めるという、所謂Eco Systemを作っている。そういうものを作っていくか、力が無ければそれを呼び寄せるための仕組み作りから始めて行かなければならないので、日本としては大変であるということになる。

11)起業大競争と内向き日本

皆さん、特にこれから出て行く若い人達は、まずStart upを考えるべきである。大企業に行っても余り良いことは無いと思う。自分達が勉強したことを生かして起業する。Second Chance、Third Chanceのあるような社会を作っていくことによって、何回でも起業して成功するまでやるということをSilicon ValleyやHealth Care Valleyでは当たり前のように行われている。日本でもそういう環境を作らないととても追い付いて行けないと思われる。

1つの例であるが、ユニコーンと言われている価値10億ドル以上の未上場企業が世界に188社あるが、日本にはわずか1社しかない。メルカリというフリマアプリを運営している会社である。因みに188社の半分以上の99社がアメリカで、中国にも45社あり、圧倒的にこういう所でも差を付けられてしまっている。
もう1つ、準備中の起業家数は日本は3%で350万人、中国は9%で母数が多いから1億2000万人と、桁違いの差がある。それからこの資料にあるグローバルスタートアップ・エコシステムランキングにおいて、アメリカはこの15のうち6都市が上位の中に入っている。日本が入っていないのは調査対象外だからであるが、調査したとしても多分1つ入るか入らないか位であると思われる。
こういう様々なHandicapを背負っていることを考えると、特に若者は、日本でだめだったら世界で活躍する位のことを今から思って、就職もアメリカで就く位のことを考えて、あるいはヨーロッパで就く位のことを考えて、新しい物を起こしていくことによって何れは日本に貢献することを考えて欲しい。
日本の生活レベルは豊かであるし、国は安全であるし、おいしい物が食べられるが、こういう環境が何時までも続くという保証は全く無いことはお分かりの通りである。

12)イノベーション促進に向けた世界の取り組み

この部分は参考までの資料として皆様に提起しておくので、興味のある方は見て頂きたい。

《続き》

2.医薬品産業の現状と今後

3.タケダのグローバル化への挑戦

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