第36回早桜会懇話会報告

第36回早桜会懇話会を2021年2月6日(土)にWEB形式(ZOOM)にて開催いたしました。今回の講師には野田優先生(早稲田大学大学院先進理工学研究科 応用化学専攻 教授)をお迎えし、持続可能なモノづくりとヒトづくりというテーマでご講演頂きました。

 昨今のコロナ禍の影響でのオンライン講義、オンデマンド講義の取り組みのお話をして頂き、良い面もあったことなどをご説明して頂きました。2021年度は対面を増やしていく予定である中、このコロナ禍での教育の取り組みを今後どう活かしていくかについては質疑応答の時間でも活発に議論が行われました。

 また野田先生の現在の研究テーマであるカーボンナノチューブについてご説明して頂きました。豊富な資源から高機能なナノ材料を実用的に創り社会を支えたいという先生の研究理念は持続可能な社会の実現に向けて重要なまさにタイムリーな内容でした。自分で考えて道具・装置から作るものづくりの研究を推進されており、普段我々が仕事を進めていくうえでも参考になる内容でした。また、具体的な応用事例として高エネルギー密度と高耐熱性を両立した電池の話をして頂きました。

 持続可能な社会の実現にむけては低環境負荷合成が重要であり、LCAによる定量的な評価が必要となります。現在、開発に成功しても社会実装されない技術もある中で萌芽技術の開発と評価の両輪が必要であるというお話は、SDGsという国際社会が共有すべきビジョンに研究開発で貢献するための根幹となる部分だと改めて実感致しました。

 化学工学は実学であり、社会実装されてこそ役割を果たしているといえる中、現在は研究開発と実用化にギャップが生じているというお話がありました。オリジナリティーが強調されすぎているために社会の要請とずれてしまっていることや論文の引用回数で研究業績が評価されるために論文を書くことに終始して社会実装が疎かになっている現状について、質疑応答の時間でも活発な議論が交わされました。

 そのような背景もあり、先端化学知の社会実装研究所(所長:松方先生、副所長:野田先生)のご紹介もありました。多様な考えを持つ人との真剣な議論と協働を行い、大事だが誰にも行われていないことに取り組むことが大切ではないかというお話は流行に流されがちな現代社会に私達全員が心に留め置くべきことだと強く感じました。あらゆる分野で米中が先行し、人口や市場規模では日本に勝機は無いであろう昨今、日本が国際社会で生き残るにはそれが1番ではないかと思います。持続可能な社会の実現にむけて微力ながら私も精進していきたいと改めて感じました。(文責:三品)

【出席者(18名)】

津田實(新7),井上征四郎(新12),前田泰昭(新14),市橋宏(新17),田中航次(新17),岡野泰則(新33),斎藤幸一(新33),和田昭英(新34),原敬(新36),脇田克也(新36),高田隆裕氏(新37),中野哲也(新37),數田昭典(新51),澤村健一(新53),陳鴻(新59),三品建吾(新59),古田武史(新61),桜井沙織(新64)


【講演スライドの一部】