第24回 先生への突撃インタビュー(花田 信子 講師)

「先生への突撃インタビュー」に花田信子講師にご登場願うことにしました。

今回はコロナの影響と花田先生が産休に入られる直前でもあり、Zoomによるリモートインタビューを学生2名、現役OB1名、シニアOB1名の組み合わせで行いました。

花田先生には、新しい試みのリモートインタビューに快諾を頂き、また、丁寧に原稿の作成に協力を頂きましたことをこの場をお借りしてお礼を申し上げます。

花田 信子 講師

花田講師略歴: 略歴

  • 2001 年 広島大学総合科学部総合科学科卒業
  • 2005 年 広島大学大学院先端物質科学研究科量子物質科学専攻博士課程修了 博士(学術) 2005 年 広島大学自然科学研究支援開発センター 産学連携研究員
  • 2006 年 ドイツ・カールスルーエ研究所ナノテクノロジー研究所 客員研究員
  • 2008 年 上智大学理工学部機能創造理工学科 研究プロジェクトポストドクター
  • 2010 年 筑波大学大学院システム情報工学研究科構造エネルギー工学専攻 助教
  • 2017 年 早稲田大学先進理工学部応用化学科 講師

・先生が研究に本格的に取り組み始めたキッカケはなんですか? 
   ―理数系から、物理・化学に興味が移り、世の中に役立つ可能性を感じてエネルギーを選び、次第に深く追及したいと思うようになりましたー

小学校から高校までバスケットボールを部活で続ける、ごく一般的な過ごし方をしてきましたが、勉強に関しては、中学・高校では、数学や理科(特に物理)の方が好きで得意でした。特に数学は母親が中高の数学の先生をしていた影響もあり、試験前などに応用などの難しい問題は質問をして、全ての問題を最後まで解いてから試験に臨むなど、じっくり考えることが好きになりました。高校では、理系に進みましたが、大学に行くときに数学の方に行くか理科の方に行くかに迷っていました。数学は、答えが一義的に決まることに魅力を感じていましたし、理科の方は、自然現象を数式でシンプルに表すことができることや、普段見えない自然の成り立ちを理解できるということに魅力を感じていました。 大学を選ぶときには選びきれずに、入学してから専門を選べる学部を選びました。大学の1年生の授業で初めて、燃料電池や水素エネルギーなどのことを知り、それまでは物理・化学は自然の原理を説明する道具だと思っていたのですが、新しい材料やエネルギーシステムを作ることで 世の中に役に立つようなことができるかも知れないと思いました。それがきっかけで、物理や化学を学ぶコースに進み、特に物理を主専攻としました。4 年生になって、その興味のまま物理・物質科学を専門として水素貯蔵材料を研究している研究室に入りました。研究室に入ってからは、水素貯蔵材料の中でMg 合金の研究かもしくはグラファイトの研究かを選ぶことになりました。その時は、Mg合金の方がいろいろな元素を組み合わせて機能を引き出すのが面白そうと思いそちらを選びました。初めは先生の提案をそのまま実験して、結果が出てくると自分でも少しずつ次にどうすれば良いかを考えられるようになり、また議論を重ねて次の実験をするとまた結果がどんどん出てくるというのが面白かったです。博士号まで取得して、その後海外や国内の大学や研究所を転々としました。特に、海外(ドイツ)に行ったときにはこれまでは物理をバックグラウンドとした分野にいたのですが、化学をバックグラウンドに持つ人がグループに多く、同じ水素貯蔵材料の研究でもアプローチの仕方が違うことに気づきました。逆に、海外であっても物理・化学の同じ学問をお互いベースに持っており、対等に議論ができることに嬉しく思いました。その後の所属が変わっていく中でも同じテーマで研究を続けていますが、機械、電気、化学工学などの視点を変えると違う要素を組み合わせて新たな展開ができることが面白いと感じています。

 ・技術的内容で先生がポイントと考えておられる点はなんですか? 
    ―基礎と応用の両面での深堀でしょうかー

 エネルギー関連特に水素エネルギー関連の研究をしています。研究自体は、常に基礎と応用を見 据えるものです。特に、この分野は2つが常に交錯しています。基礎的な面では、物理や化学の法則に従って、きちんと材料設計をしていくことがとても大事です。また物理的、化学的、数学的に反応のメカニズムを説明することで、そのメカニズムから物質や反応の機能を引き出すことができます。さらに、設計した材料の特性などを実験的にきちんと確かめることも大事です。一方で、それを社会に実装するには、物質機能のチャンピオンデータを狙うだけでは実現できず、本当に必要な機能はどのようなものかを考える必要があると思っています。それをシステムや プロセスに組み込んで応用する際に、どのような課題があるのか、もしくは既にある材料を用いても良いのでどれくらいの性能が必要かを考えて、アプローチした研究も同時に行っていくことがポイントだと思っています。

 ・先生の研究理念を教えてください。  
  ―物理と化学を幅広く組み合わせながら研究を進めること―

 物理・化学の法則を基本にしてこれまでに、いろいろな材料や技術が開発されてきています。 このような人類が積み上げてきた知見や研究に対して、現代の新しい視点や違う分野から新しい要素を組み合わせて、面白い機能や材料、システムを作ることです。自然現象は、物理・化学 の法則で支配されているので、その枠組みの中で、どれくらい新しい組み合わせができるかが研 究だと思っています。また、これまでにある材料やプロセスを組み合わせて新しいシステムなど を作る際にはできるだけシンプルなものを構築したいと考えています。これは、システムの反応 器や操作が少ない方が最終的にはエネルギー消費が少ないということにも繋がっていきます。

・関連質問ですが、物理が苦手で化学を選んだという学生も多くいたように思いますが?花田先生の感触は如何でしょうか?

 物理は止まっている物質の本質の解明で、化学は反応という動いているものの解明と考えられます。物理を意識しすぎることなく、物理化学を活用できるようにすれば良いのではないでしょうか。

・これからの研究の展望を聞かせてください。  
   ―研究の成果を社会システムに実装していきたい― 

これまでの基礎的な材料研究に加えて、早稲田大学に来て化学工学部門に所属していることも あり、化学工学を取り入れた研究を始めました。先ほども述べましたが、水素エネルギー分野(エ ネルギー分野全般があてはまると思いますが)では、材料に対しては原子レベルのナノサイズで の設計に加えて、粒子レベルのマクロサイズでの設計、さらに材料(デバイス)同士を組み合わせたシステムなどの設計が要求されます。システムを使う場合に、その中で使う材料はどのような 機能が必要かをきちんと理解して、課題に取り組んでいきたいです。さらに、こういう面白い(も しくは機能的な材料)があるけど、これをどのようなシステムに組み込めば有益なものができるかなどを発信して、展開していきたいと思います。また、幅広く知見を深めるためには学会への 積極的な参画が有用だと思います。 ・応用化学会の活動への期待を聞かせてください。 ―会の構成の素晴らしさを活かし続けて欲しい― これまでにいくつかの大学の組織に所属してきましたが、応用化学会のような教員、学生、OB の方が一体となって、アクティブに活動している組織というのは他で見たことがありません。こ のように、卒業生の皆さんがここまで結束して大きな組織を作り、学生や教員と活動していることは学科の大きな財産だと思います。社会で活躍されている OB の方々の講演会などが多くあり、学生がこれから出ていく主に化学メーカなどを中心とした世の中でどのようなことが話題 となっているかを肌で感じられることはとても素晴らしいと思いますので、これからも継続して頂きたいです。

・100 周年を迎えた応用化学科についてコメントを聞かせてください。 
   ―伝統を重んじつつ新規の創出の流れを大切に―

 100 年という月日の長さに重みを感じます。その間に、それぞれの研究室で分野の伝統を守り、 その時代に必要な人材を輩出していったことが素晴らしいと思います。これからも、その良き伝 統を守り、皆様からの激励に答えること、また時代は変化していっていますので、この新しい時 代に必要なことを取り入れて、社会に求められるような人材を育てていきたいと思います。

・21 世紀を担う皆さんへのメッセージをお願いします。 
   ―柔軟な対応力で 21 世紀を生き抜いてください―

 応用化学科には、世界で活躍している教員が大勢在籍し、その姿を目の当たりにできます。また、 学生のレベルも高く、お互いに切磋琢磨できる環境が整っています。また、東京にある大学とい うことで、自分で情報をとりに行かなくても自然に耳に入ってくる情報などもたくさんありま す。自分のやりたい分野や興味の方向を見極めて、大学の研究ではそこに集中して欲しいと思い ます。また、21 世紀の社会の情勢は目まぐるしく変化して行っているので、その情報を常に取 り込みながら、柔軟な対応力を身に付けていって欲しいと思います。また、機会があるなら早い 時期に半年以上、研究なり社会での活動なりで海外を経験して欲しいですね。

インタビュアーたちの感想:

花田先生の産休直前でしたが、初めてのリモートインタビューに快く対応頂き、感謝をしています。花田先生には、女性研究者として、また家庭人、母として、応用化学に多くいる女子学生の参考になって欲しいと強く思いました。

インタビュアー:真野陽子(新 47)、疋野拓也(修 1)、小野文雄(学 3)、井上健(新 19)