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応化100周年祝賀会 会場

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パネルディスカッション

パネラー:長谷川 閑史氏
参加学生:田中 徳裕(Facilitator)、石原 真由、福井 宏佳(以上 M!1)
      政本 浩幸、柳川 洋晟(以上 B4)

田中 徳裕

田中「こんにちは。今回司会をさせていただく田中徳裕です。本日は、よろしくお願い致します。早速、質問をさせていただきたいと思います。まず、私たちを取り巻くパラダイムシフトですが、このパラダイムシフトに対して私たちはどのように向き合っていけばいいでしょうか?」

長谷川さん「それは、まず自分たちで考えることが大切。それから、一番いい方法は、日本の中だけに目を限定しないこと。パラダイムシフトが起きている最先端の現場に自分で飛び込んで肌身感覚で感じとるというのが大切です。」

田中「ありがとうございます。次に政本さんどうでしょうか?」

政本「AI(人工知能)に関して、悲観論、楽観論、中立論というそれぞれの考えがありますが、長谷川さんはどのようにお考えですか?」

長谷川 閑史さん

長谷川さん「これはまだ起こっていないことだからわからない。新しいテクノロジーが、新しい仕事の創生に繋がると言われている。だから、そういった点においてはあまり心配する必要はないと思います。新たに現れた仕事に対して、新たに社会に出ていく人がチャレンジするのは何とかなるかもしれない。実際に仕事について10年や20年たった人たちの仕事が置き換えられてしまったらどのように仕事を維持するかが難しい。そこはまだ答えはない。だから、悲観論と楽観論のどちらかに決めつけるのは早計かなと思う。」

田中「ありがとうございます。次に石原さんどうでしょうか?」

石原 真由

石原「パラダイムシフトの中で必要とされる素養というのは変わっていくと思いますが、具体的に世界で活躍するためにはどのような能力が必要なのかと、将来的に日本人が活躍できるために行っている人材育成の方法などがありましたら教えていただきたいなと思います。」

長谷川さん「日本の教育システムの弱点として、与えられた問題を解く、あるいは設問に対する答えを最速で見つけ出す、そういった能力には結構長けているかもしれないが、問題を与えられるのではなく、状況を観察してそこから問題点を見つけ出し、解決に導く方法を見つけ出して実行に移す、こういうことが出来る能力が、ベーシックな部分で言えば、世界に通用するためには必要。例えば、人口増加によって生ずる問題など、今見えている問題に対してどういう答えを自分なりに考えだし、どう貢献できるか考えることは無駄ではないし、一つのやり方であると思う。」

田中「ありがとうございます。今度は学生時代のことや人生観についてお聞きしていきたいと思います。柳川さんどうでしょうか?」

柳川 洋晟

柳川「これからどうなるのかという不安があります。長谷川さんが学生時代に思い描いていた将来像と現状でどのような差異があるのかお教えください。」

長谷川さん「前にスタンフォードで講演をした時に、どのようにしたらCEOになれるのかと質問されたことがある。その時に、そんなフォーマットがあるならば誰でもするだろう、そしたらみんな同じスタートから行うので全く意味のない質問であるよと答えた。柳川さんの質問に戻るが、私が大学を卒業したのは1970年です。半世紀も前と今とで皆さんの参考になれるようなそういう答えは出せません。時間の流れ方も違っていたし、ちょうど日本は、高度成長の真っ盛りだった。そういう時代に育つと、明日は今日よりも豊かであると、企業というものは成長するものだと、物価も毎年上がるものだと、そういうのが当たり前であった時代に育った人間が、そんなに将来を深刻に考えない。しかも、私は1966年に入学しましたから、試験を受けたときは機動隊に守られて、正門はロックアウトされており、細い道から入って試験を受けた。4月に大学の入学式もなければ、学校が始まっている時期になっても授業は始まらなくて、5月の半ばころから授業が始まった。姉と一緒に下宿していたため、姉に勧められたバイトが本業となり、あいつは留年するとか言われていた。このように時代の背景も違うし、みんなが明日は今日よりも豊かになると、そう思っていた時代に描いていたことを、いくら言ってもあなたたちの参考にはならないと思う。ただ、一つだけ言えるのは、授業がないときに本をしっかり読んだ。乱読と言われるくらい、いろんなあらゆる本を読みました。そういうことが少しは役に立った。だから、自分たちが何を目標にしたらいいかというのは自分たちが置かれている環境と現実を見て、考えるしかない。」

田中「ありがとうございます。次に人生観についてお聞きしたいと思います。福井さんどうですか?」

福井 宏佳

福井「長谷川さんが、今振り返った時にこれをやっておけばよかったということが何かあればお伺いしたいです。」

長谷川さん「いくつかありますが、もう少し勉強しておいたらよかったなというのと、それから本当は運動部に入りたかったが、入れなかったので、もう一度やり直せるのであったら、大学でも運動部に入って仲間を作るということをやりたいなと思います。ちなみにもう一つ言い忘れましたが、入学は第一次早稲田紛争時で、卒業は第二次早稲田紛争時でしたので、入学式もなければ卒業式もない。そういう特殊な時代に学校に来ましたから、前総長の白井さんからは、あんたたちの世代が一番勉強していない世代だと言われている。それでも通用した私はいい見本で、いい社会であると思っています。」

田中「ありがとうございます。柳川さんどうですか?」

柳川「自分には行動の軸になるようなものがなくて、長谷川さんご自身に座右の銘などがあればお伺いしたいと思います。」

長谷川さん「推薦図書のセブンマスターズを是非お読みになることをお勧めします。できれば瞑想をおやりになることをお勧めします。瞑想をやるということは、自分との対話です。だいたい瞑想をやっていると自然に考え付くのは、自分はやっぱりどんな人生を送りたいであるとか、自分の生きる目的って何だろうかとか、紆余曲折あってもたどり着くものであると思います。そのうえで、私の経験から言うと、多くの人が、自分の職業や行動を通じて人の役に立ちたい、あるいは社会をいいものにしたいと思うようにできているのではないかと思う。そこは自分で確立をすれば、どんなことが与えられてもチャレンジしても、軸はぶれないと思う。例えば会社の経営者として、部下を昇進させるときに見るのは、業績、実績を上げた人が大事ではあるが、もっと大事なのは価値観が確立をしていて、ぶれない人。ぶれる人は状況によって臨機応変に変わるという見方もあるが、肝心のところで、経営者としてはまずい判断をする可能性がある。一つの例として、私が経営企画部長をしていた時に、医薬非関連事業を売却するという交渉をやっていた。某化学品会社と交渉が大詰めに来た時に、その製品を生産している工場から問題が生じた。どうするかとなった時に、周りは混乱していた。私はその時に問題を隠さず、先方にそれを伝えて、そのうえでまだ処理方法は確立していませんが、処理方法が確立した段階で私どもが責任をもって対処させて頂きますから、それでご了解いただけませんかと話をした経験がある。そういうことの一つ一つです。だから、単純に言えば正直に生きるということだと思いますよ」

田中「ありがとうございます。次に政本さん何かありますか?」

政本 浩幸

政本「今まで多くの方のご講演を聞く機会を頂きましたが、中々失敗談を聞く機会というのはありませんでしたので、もし宜しければお聞かせください。」

長谷川さん「失敗談はいっぱいありますよ。いっぱいあるが、結論から先に言うと失敗を認めて、ダメージを最小限にするように一生懸命にやる。これしかない。入社して2年目くらいに私は工場の勤労課というところにいた。500人くらいの従業員がいる工場で、ボーナスの査定結果に基づいて個人の計算をしていく。それに対して本社から予算が来る。予算の連絡が電話で来るのですが書き間違えて、かなりの金額を多めに配布してしまった。本社の方に連絡して、正直に話し何とかしてもらいました。また、一番の冷や汗をかいた失敗は、私がアメリカの現地法人のジョイントベンチャー、アメリカのパートナーと50:50のジョイントベンチャーだったんですけど、そこの副社長をしていて、社長はポーランド人の2 mくらいあるハイパーアクティブな男だった。しかし、残念なことにアル中でした。ナショナルセールスミーティングなんかでも酔っていたりして、問題が何回もあったため、私は手に負えなくなって、パートナーの親会社の人事部長に相談をした。そのあと、その本人の車に乗せてもらって、親会社の方に向かっている途中に人事部長から電話がかかってきて、こないだの話と言ってきた。当時は今の携帯ではなくカーフォンで、そのパートナーの本人が取って、人事部長から電話だけど、お前はいったい俺の会社の人事部長に何の用があるのだと。とりあえず、後で電話すると切った時にしつこく聞かれたから、全部言いました。お前が、あまりにも手に負えないので相談しに行ったのだと。そう言ったら、本人もムッとはしたけど、それで終わってしまいましたけどね。だけど予想もしない二つの例は、数多くあることの例ですが、そういうことは起きますよ。やはり常に真正面から向き合って、ごまかしたり隠したりしないで、ベストの選択をしていったほうが良い。そうじゃないと後悔する。後悔しない方がいいと思いますよ。皆さんにはそれぞれやり方があると思いますからこういうのも参考にしながら、適宜対応してください。」

田中「ありがとうございます。最後に早稲田の学生に向けて何かメッセージがありましたらよろしくお願い致します。」

長谷川さん「自分が4年間身を置いて感じたのは、結構自立していていろんなことにチャレンジする人が多いように感じます。どこに行っても稲門会というのはある。あと三田会も。どこ行っても三田会とゴルフやソフトボールをしたりする。早稲田は大体負ける。というのは数はいるのに来ない。あまり協力もしない。では学校を嫌っているかというと、そうではなくてそれなりの誇りは持っている。私は、それは決して悪いことではないと思っています。見方を変えれば、別にそういうところでみんな集まってやることを否定はしないけれど、他に予定があれば自分がやりたいことをやって、ただ誰かが本当に困っているときは、ずいぶん私も助けられましたが、助けてくれる。そういうやり方の方がいいのかなというのが一つ。もう一つは、私が学生時代、社会人生活を始めた時よりもはるかに世界は狭くなりグローバル化は進み、日本は自国だけではリソースは人材だけしかない国だから、海外とビジネスをやらないと生きていけないと、あるいは豊かさを維持していけないというのは間違いはないので、そういった意味で皆さんは全員が飛び出せと言っているわけではないですが、ある程度チャレンジ精神と冒険心がある人は、世界で是非飛躍して頂きたいなというのが一先輩からのメッセージです。」

田中「本日は長谷川さんありがとうございました。」

(文責:交流委員会)

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タケダのグローバル化への挑戦

3.タケダのグローバル化への挑戦

1)武田薬品236年の歴史

長谷川閑史氏の講演

企業の場合は、というかあらゆる組織に共通であるが、皆の合意Consensusを得て意思決定をすることが、すぐには難しい場合がある。冒頭に進化論に関する言葉をあげながら、変革をリードするのがリーダーの仕事であると申し上げた。変革は、多くの場合リーダーが言い出さないと動かない、実際に起きない、というケースが多い。但し、リーダーが言い出してもその組織のメンバーにきちっと説明をして、納得をして、皆が一緒にやっていく形、これをbuy inというが、buy in processを取って皆が納得した上で、引っ張っていく、engageさせるということが大切で、これもリーダーの役割である。このようにリーダーが主導しなければならないtransformation、変革というのが沢山ある。
私は企業の場合しか分からないが、学校でもいかなる組織にでも色々あると思う。自治体でも中央政府でもあると思われる。
武田の場合、竜田先生が私を冒頭紹介して頂いた時に、後任にフランス人のクリストフ・ウェバーという人を外から引っ張って来て就けたと仰った。何故そのようなことをしたかということを次に述べます。薬というのは世界どこでも良い薬は良い薬である。ということは逆に言えば、地域の特性で熱帯病を治療する薬等は別にして、慢性疾患であるとか癌であるとかアルツハイマーであるとか、そういう病気を治療する良い薬はロシアでも良い薬であり、キューバでも良い薬です。
そういう意味で国境はない。だから良い薬を兎に角自分の所の研究開発で見出すか、あるいは自分の所で出来なければどこかBio Ventureのような所でやっていて、有望な物を持っている所を素早く取り込んで、早く開発をして患者さんの所へ届けることの両方をやらなければならない。
私共武田薬品の場合には、日本でNo.1、アジアでNo.1の製薬企業としてずっとやってきたが、その後Global化もそんなに急速に進めなくても維持出来た時代が長く続いた。今やICTと同じように良い物さえ出せばGlobalに世界同時上市も出来て、結局如何にそういう物を生み出すか、あとはそのGlobalなFootprintを持っていて、良い物を一斉に全世界で売り出すだけのPlatformがあるかどうか、そういう所で差が付く訳である。
そうすると我々の場合には急速にGlobal化を進めたけれど、まず人材が追い付かない。それと同時に、人材が追い付いてFootprintを作ってもそれを本当に自分でmanageして成功させた経験のある人が殆どいない。そういう人達が足りなければ外から持って来るしかないということになる。
育てていたら10年、15年掛かるわけで、それでは全然間に合わない。そういう状況の中で究極の選択が、私の後任をグラクソ・スミスクラインという世界Top5に入る会社のCEO Succession Candidateになっているような人であったクリストフ・ウェバーを、Head Hunterも使わずに個別にcontactして納得させて引っ張ってきた、ということである。
それは私が決断し実行しない限り、誰に頼む訳にもいかない。所謂Executive Decisionの1つである。勿論そういう決断をして選考する場合に、Selection Committeeを作ってSelection Committeeのmemberがそれぞれ一人ずつinterviewしてその結果を持ち寄り、加えてCEO Successionをsupportする専門のConsulting会社がアメリカにあるので、そこを雇って、更に1人について5時間位のinterviewをしてScore Cardという評価結果を出してもらい、それらを全部総合的に判断して、最終的に2人のCandidateに絞った。2人のCandidateを、指名委員会の委員長、それから委員、2人とも社外の取締役なのでbiasは掛かっていないわけで、この2人にどちらが良いか、と選んでもらって最終的にクリストフ・ウェバーを選んだ。どこから聞かれてもtransparent、透明化しても問題ないような形で選んだ。そういうことはTopが考えて実行して行かないと出来ない。そういうものが企業には沢山有るし、他の組織でも沢山有ると思う。

2)社長就任前(2003年)に考えたこと

ここで1つだけ覚えておいて頂きたいのはBenchmarkingである。所謂BenchmarkingというのはIndustryの中でBest Performing Companyは一体どういうBusinessのやり方をしているのか、Sales、Marketing、研究開発、色々なやり方があるし、この資料に書いてあるような色々な項目について、Best Practicing IndustryでのBest Practiceを実行していると思われる会社と比べて、自分達はどこが劣っているかという事を出して分析し、導き出してその差を縮めていき、埋めていくことを考えるのがBenchmarkingのやり方である。それを徹底的に色々なBusinessのUnitに関して行って来たということである。

3)売上と利益率の推移

何故Benchmarkingをやらなければならなかったかを次に述べる。この資料は2003年から2016年までの業績の推移であるが、Barは売上の絶対額で、赤の折れ線は営業利益率(%)であり、2008年までは[売上は]順調に伸びた。しかし、我々は先程述べたように特許が切れると、アメリカでは数カ月の内にGenericに置き換わり、売上が殆どなくなる。日本ではその置き換わりのスピードが随分遅かったが、ここ2~3年、政府が欧米型のMarketに組み替えてGenericへの置き換わりを急速に、また強制的に行うよう法律を変えた。従って今や特許切れが来ることが分かっている製品については、それをcoverする製品を如何に早く自社で開発するか、あるいは他社を買収するかを考えないと、たちまち売上/利益は大きく落ち込んでしまう。

要は、我々は2010年問題と言っていたが、2010年には従来の主力製品の特許が相前後して全部切れてしまう。そうすると売上が殆ど0となってしまう。僅か4~5年の間に、1兆5000億円位の売上の会社の6000億円の売り上げが吹っ飛んだ。そういう状況が来ると分かっているから、それを如何に埋めて安定成長に持っていくか、というのが経営者の仕事であるが、言うは易く、行うは難しである。それと同時に、Product Liability Insuranceという、アメリカにおける製造物責任が大きく取り上げられて、訴訟を起こされた。アメリカで訴訟を起こされたら、それを最後まで裁判で戦って勝つよりは、膨大な訴訟のcostを考えると和解をした方が良いというのが殆どのcaseである。従って、とんでもない話しであるが3000億円も払って訴訟を和解した。そのために営業利益がマイナスとなっている。こういうことが起こることを分かっていて、経営者である私が指をくわえて待っていたかというと、それは出来ないので何をしたかというと、買収をした。

4)TakedaのGap Fillingを主目的にしたCross borderのM&A <2003-2013>

武田という会社は236年の歴史があるが、私が社長になるまで買収はしたことがなかった。同族企業の合併はあったが、買収はしていない。2005年に初めて、サンディエゴにある、X線を使ったタンパク質の高速結晶構造解析技術という特殊なTechnologyを持つ、シリックスという会社を買収した。買収額は270百万ドルであった。また、イギリスのCambridgeにある会社を買収した。これはResearchのTechnologyの足りない部分を補うための買収であった。買収の規模も小さかったし、実際のリストラも必要なかったし、むしろ彼らが限られた原資の中でallocation出来なくて、やりたくても出来なかったことを武田が買収したことによって出来るようにしてwin-winのSynergyを作った。その後ミレニアム社という、癌に特化したBio Ventureの成功企業を9000億円で買収した。その後今度は、新興国に進出しなければならないが1つ1つ自分で旗を立てていたらとても時間が掛かって効率も悪いということで、スイスのチューリッヒにあるナイコメッドという会社を1兆1000億円で買収した。これらを武田の中にintegrateしていった。特にこの会社を買った時には、規模も買収の金額も大きかったが従業員の規模も1万2000人もいて、その中には要らないBusinessもあったので売却をしたり、Post Merger Integrationという、買収後に如何に会社の中に組み込んでいくか、融合させていくかというProcessの中で相当なリストラも行った。それらを踏まえて今はまた、パイプラインという研究開発の製品を外から取り込むことによって強化をしていくことを中心に行っている状況にある。こういう、行ったこともない買収を、それもcross borderで日本から海外の企業を買収してintegrationしてきた。

5)タケダが目指すグローバル経営とは

上記も含めて、やはり我々日本人だけではそこの部分について十分な対応が出来なかったので、出来るだけ短期間に事業のあらゆる面でグローバルに競争力のある会社に変革するために、Topも含めてKey PositionにはGlobal Standardで成功体験を有するTalentが必要である。先程はCEOの後継者としてフランス人のクリストフ・ウェバーを申し上げたが、ここでは例えばCFO、Chief Financial Officerとか、Chief Medical and Scientific Officer、研究開発本部長とか、Chief Human Resource Officer、Global人事部長とか、Chief Information Officer、つまりGlobal Information TechnologyのTopとか、Global Procurementという、Globalに調達をするTopとか、そういった人達を欧米の企業からHead Huntして持ってきて、それらでTeamを作って効率化を図ると同時に、先程の買収した企業を融合していくというProcessを出来るだけsmoothに進めるようにした。

6)グローバルで多様性に富み、かつ豊富な経験を備えたタケダ・エグゼクティブ・チーム(TET)

その結果が、タケダ・エグゼクティブ・チームという、日本の会社でいくと執行役も含めた経営陣ということになる。8ケ国の国籍、14名の陣容である。14名のうちの3名が日本人で、残りはNon-Japaneseである。女性は残念ながら一人しかいないが、今後女性を増やしていくのが我々のChallengeの一つである。

これもExecutive Decisionで行った訳である。これは私の後任のクリストフ・ウェバーが来て、仕上げを行った。Conceptとしてこういうことを私も考えていたが、実際の仕上げを行ったのはクリストフ・ウェバーである。

7)タケダの意思決定体制図

タケダの取締役会はいま13名で構成されるが、そのうちの社内取締役は僅かこの4名である。日本人が一人でアメリカ人が一人、あとはアイルランド人とフランス人である。4人の国籍が全部違うということである。あとは社外取締役が9人で、その中にもNon-Japaneseが2人いる。東恵美子さんも日本人ではあるがアメリカでずっと仕事をしているので、半分アメリカ人のような方である。藤森さんもGEに長い期間いて、それからLIXILのTopをしているということで、半分アメリカ人みたいな方である。従って非常にVarietyに富んだ役員構成となっており、そうすることによってGovernanceを透明にしている。

8)研究開発の変革―疾患領域の絞り込み・日本と米国への拠点の集約

それと同時にもう一つは、先程から何回か言った研究開発の難しさ、それから日本が創薬力において段々沈下していることを述べたが、その状況をこのままにしておくと、とてもではないが世界に伍して戦っていけないということで、私自身がこれをやり残したR&Dの生産性向上のための変革を、後任のクリストフ・ウェバーと、R&DのTopのAndrew Plumpというアメリカ人で行った。何を行ったかと言うと、我々が完全にfocusしている治療領域を中枢神経と癌と消化器に絞り、再生医療とワクチンについては+αで行うことにした。このTransformationをやる以前は、研究拠点は神奈川県の藤沢市と鎌倉市の境界線上にある、元工場があった湘南Research Centerで約1200人のResearcherを抱えて研究をしていたが、それでやってみても10年~15年の間物が全く出なかった。このまま行っても生産性は上がらないということで、日本には中枢神経と再生医療とワクチンを残した。ワクチンは、製造拠点は日本に残して研究開発の拠点はアメリカとした。こういう体制にすることにより研究開発の生産性を高めた。同時にOpen Innovationという形で、社外のBio Ventureのような研究開発をしている所を常に注目し、必要に応じて買収をしたりResearchのCollaborationの契約をしている。このような形で大きくやり方を変えた。その結果設立した会社の例を資料に示した。詳細説明は省略する。研究をfocusして、focus領域以外は外にspin outしてPartnerを見付けて、それぞれに特化した会社を作って研究開発を行うというやり方をしている。

一方で、これは後任社長のクリストフの考えでもあるが、これだけの大変革を行ったが、湘南Research Centerにいた約1200人のResearcherに関し、その中でアメリカでこれから自分の能力を磨きChallengeをしたいという人達については会社がendorseし、3年間で1クール[cours、課程、仏語]であるが6年間はアメリカで成長してもらえるChanceを提供したところ、100人位が手を上げてくれて、そういう人達もこれからBostonに行って世界の最先端のResearch Hubの中で切磋琢磨をしながら自分達の力を磨いてもらうということも行っている。

9)経営の基本精神

下図の資料はこれまで説明してきたことのBaseとなっている考え方である。ここに書いてある通りなので、説明は省略する。

<推薦図書>

次の6つの図書について、推薦される理由と概略内容等の説明があった。

長谷川閑史氏の講演

  1. マッキンゼーが予測する未来―近未来のビジネスは、4つの力に支配されている by リチャード・ドッブス他
  2. 2050年の技術 英『エコノミスト』誌は予測する by 英「エコノミスト」編集部
  3. サピエンス全史(上・下) by ユヴァル・ノア・ハラリ
  4. アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか? by ダン・セノール他
  5. 7つの習慣 by スティーブン・R・コヴィー
  6. セブン・マスターズ ―「瞑想」へのいざない by ジョン・セルビー

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医薬品産業の現状と今後

2.医薬品産業の現状と今後

1)世界の医薬品市場の見通し(2015-2025)

私が身を置く医薬品産業についての状況であるが、医薬品のマーケットの伸びはこの10年間で世界市場において1.7倍になっている。
またこの10年間の伸びを地域別に見ると、その半分以上がアメリカによって創出されるという、非常に偏った状況になっている。その後に続くのは欧州、中国である。特に中国は、まだ世界に通用するような差別化された医薬品を0から作り出す能力は無いが、それでも中国はアメリカからどんどんPh.D.の人が帰っており、そういう人達は実際にアメリカでの就業体験を持った上で帰っている。今や中国は政策的に、深圳を中国のSilicon Valleyのようにしようとしている。中国本当に恐るべしと思われる。何れ日本はアジアでNo.1の地位を中国に奪われることは間違い無いと言わざるを得ない。
因みに、例えばGlobal Top 100 Best Selling Pharmaceutical Productの内、日本Originが幾つあったかと言うと、1990年代には15品目あったが、今や2015、2016年になると僅か5品目しかない。その数は恐らく今後も比率として減り続けるという恐れがある。一方アジアのどこがcatch upして来るかというと、韓国は電機とか電子とかその分野の製品では日本を陵駕しているが、残念ながら創薬ということについては中々難しいようである。恐らく中国が早晩日本を追い抜くと思われる。

長谷川閑史氏の講演

例えばアメリカの大学に100万人毎年全世界から留学をする。100万人の内の3分の1、33万人が中国人である。17%、17万人がインド人である。韓国でも毎年5~6万人がアメリカに学びに行く。韓国は人口が5000万人で日本の半分以下である。日本は1億2500万人の人口でありながら、3万人足らず位である。一時、ピークの時は7~8万人が行った。これは別にアメリカに行けと言っている訳でもないし、アメリカが全てと言っている訳でもないが、やはり外国で世界のトップレベルが集まって切磋琢磨するような所に、自分から身を乗り出して乗り込んでいく、それ位の気概を持たないと、本当に国際競争、Global競争に負けてしまう。
これが1つと、もう1つは日本で色々なstart upをして成功している人が何人かいる。例えば楽天の三木谷さんとか、グロービスの堀さんとか、あるいはサントリーの新浪さん、新浪さんは自分ではstart upしていないが、43歳でローソンの社長になり今やサントリーの社長になり、そういう人達は皆HarvardだとかStanfordだとか色々な所でMBAを取りに行って学んで、そういう人達が皆仲間がstart upするのに刺激を受けて、自らもstart upをする。
よく言われるArbitrageという言葉を知っているであろうか? “裁定”という意味の言葉である。昨日の日経新聞のコラムにおいて、孫正義さんのことについて書かれた中にその言葉が使われていたので見れば分かるが、三木谷さんがあのBusiness Modelを考えたのではなくて、アメリカでAmazonがやっていることを日本で是非やろう、ということでやったわけである。従って時間差があるから、その時間差を利用してある国における先行者の利益を自分の方に持って帰ることで、先行者として利得を得る。そういうことをArbitrageと言うようである。
そういうことだって可能な訳である。しかし今やそのタイム差はどんどん縮まっているので、昔のように悠長に構えていては出来ない。
何れにしても世界で何が起こっているか、ということを自分の目でしっかり見て来るということをしないで、日本の中だけで周りの仲間だけを見てcomfortableに幸せな生活を送っていて良いわけはない。
私のように70歳を過ぎたような人達にとっては多分今後10年か15年はこの延長線上でいけると思われるが、皆さんのようにまだ20歳そこそこの人達であれば、これから50年、60年、最低生きて、永い人は22世紀まで生きるかも知れない。そうするとそういう時代にあなた達は世界がどういう形で変化しているか、ということを念頭に置いた上で自分達が生き延びて行く道を本当に考えないといけない。
それはいかに多くstart upするか、ということにかかっていると思われる。新規事業を起こすことが日本は先進国の中で一番弱い。そういう国なので、そういうことを皆さんが是非Lead出来るようにして頂きたい。

2)製薬企業の時価総額推移

この資料は製薬企業の売上の推移であるが、説明は割愛する。

3)新たなモダリティ(基盤技術) がビジネス成功の鍵に

パラダイム・シフトは製薬企業でも確実に起きている。2005年のBest Selling Top 10 Productのうち僅か1品目が生物学的製剤、つまりBiologicsと言われているもので、残りの9製品は低分子化合物、あるいはSmall Molecular TechnologyをPlatform Technologyとして作られた薬であったが、僅か10年の間にTop 10 Best Selling Productのうち3品目しかSmall Molecular TechnologyをBaseとした薬はなくなってしまった。Large Molecular Product、つまり生物学的製剤、これは抗体であるとか治療用のワクチンとかであり、iPSもこれに入る訳であるが、こういう形でMarketが目まぐるしく変わっている。Platform Technologyパラダイム・シフトが起きている。

4)バイオテク企業による創薬が増加

更にもう1つ、私共の業界で注目しておかなければいけない変化は、そういった新しい薬を一体誰がどこで創出しているか、ということである。2007年、今から10年も経たない前であるが、その頃はバイオテク、NPOといった所と製薬企業とを比べると、製薬企業は7割位を創出していた。
ところが僅か10年も経たない間にがらっと変わり、バイオテクとかNPO/アカデミアの方から新しい薬の半分以上が出て来るようになった。
こういう状況の中で、例え1兆円の研究開発費を使っても、その会社が新しい薬を作れるかどうか。世界で一番大きい製薬会社はPfizerで6兆円位の売上であるが、そういう会社でも、その売上を継続的に伸ばしていくだけの新製品を10年とか15年のサイクルで出さないと売上を維持出来ない。
薬は10年とか15年市場に出ると特許が切れてGenericに置き換わるからである。Pfizerのような会社がそういうことが出来るかというと、残念ながら出来ない。一体どこがやっているかというと、バイオテク、NPO/アカデミアといった所がやっている。例えば薬であるとBoston、CambridgeのMassachusettsはPharmaceutical Valleyという世界のInnovation Hubとなっている。そこの一番のPower SourceはCambridgeの10km四方位の所にある400~500社のバイオテク会社である。そこに世界中から優秀な人達が集まる。その人達は頻繁に会社を動きながら、新しい薬を作り、1000に3つの確率に賭けて、新しい薬が出ればそこで大儲けをして、そこのFounderとかVenture Capitalistは次の投資に移る。あるいは、会社を売ったFounderはまた新しいVentureを始める。こういうEco Systemが出来ている。勿論Coreになっているのは、MITとかHarvard大学とかBoston大学といった、Core Technologyを持ってspin outをさせている大学である。Venture Capitalistはそれを支えIPO [Initial Public Offering]まで行かせるというMechanismが出来ている。日本には残念ながらそういうものがない。従って私共の会社はその中のCommunityに入り込んでいって、Globalな競争相手と伍して遅れることのないように素早く決断出来るようにし、必要があれば買収もする体制を取っている。

《続き》

3.タケダのグローバル化への挑戦

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