2022年9月10日(土)15:00~17:10 (Zoomによるリモート開催)
・講演中は講師お二人ともかなり緊張したとのことですが、講演が無事終了し、安心してホッとしているところだそうです。
以下、講師お二人との質疑応答を交えた懇談の概要です。
質疑応答
Q1. (参加者) 望月さんにお聞きしますが、今ドイツで走行している車両の種類、すなわちガソリン車とかディーゼル車とかHybrid車とかEVの事ですが、何か傾向がありますか?
A1. (望月氏) ご質問に対する関連情報になりますが、ドイツ国内のスーパーマーケットに充電ステーションがあります。その中には無料で充電可能なステーションがかなりあります。従ってEVに乗っている人はそこを利用すれば無料で走れることになります。チェーン店ですからドイツ国内全域で利用出来るわけです。これには驚きました。ご参考までに私はHondaのHybrid車に乗っています。最近ドイツ国内で増えているのは現代とかキアといった韓国車です。低価格車が選ばれているようです。
Q2. (参加者) カーボンニュートラルの実現のため、ジャンル毎の削減目標はどういう方法で決められたのでしょうか。
A2. (望月氏) ドイツの場合は気候保全法という法律で、省別に削減量を分担させ、全体として何%という削減量が実現するように決めています。
Q3. (参加者) ということはドイツ政府というか国が決めていると思うのですが、その際国は民間レベルとしての産業団体のようなところとの合意の基に決めているのか、それとも国からの上意下達のような状況で進めて行くのか、そのプロセスについて教えて頂けませんか。
A3. (望月氏) ドイツの場合そのプロセスは単純でして、現在産業分野別にどれだけCO2を出しているかというデータがあります。2050年までにそれをここまで削減するためには、それをどういうふうに振り分けたら良いか、現状のデータと目標値との違いをインプットし割り振っています。
Q4. (参加者) エンジンのスパークプラグ先端の材料を研究しています。従って車両がEVになると仕事が無くなるという状況です。会社自体は貴金属全般を扱っているので克服可能と思っているのですが、カーボンニュートラルの重要性も分かるので複雑な思いでいます。先程の質問にもありましたが、ドイツでのEV化の流れはどうなんでしょうか。
A4. (望月氏) この件に関する統計データが発表されていると思うのですが、未だ見ていません。街中での印象ですが、殆ど見かけない状況です。日本と同じような状況と思われます。
A4. (宍戸氏) これにはMilestoneがあって、世界の潮流からするとIEA(International Energy Association)というところが、EVとかPHEVの出現に関し悲観的なシナリオと楽観的なシナリオの2つで予測しています。極端に脱炭素の方向に行くと8~9割がEVで、そうでなくても2~3割はEVになるという資料があります。実際には日本も欧州もそこまでは動いていないのが現状です。中国は2035年までにとか言われていますが、結局のところ、本日の望月さんのお話しの中にも出て来ましたが、何らかの経済的なインセンティブが強く掛かった瞬間に急にドライブが掛かると考えられます。それが今の時点でドイツでもcriticalに働いていないと思われます。日本にはEVの助成金がありますが、これから本気で税制改革が行われたり、EVを買ったときにLife Cycle的なコストが安くなる、といったことが見えてこない限りは、急激には伸びて来ないというのが現状だと思われます。車業界のお客さんと色々やり取りをしていますが、AT車は残ってくれますよね、というようなことを言われていまして、何時がTrigger Pointなんだということで議論になっているところです。その中でウクライナ危機があって、脱炭素は少し待ってもいいよね、という雰囲気に、欧州も含めてなっているのが事実です。何時から撤退するかが読めないみたいです。
Q5. (参加者) 私は水素ステーションを運営する会社をサポートする会社に派遣社員として2年半位在籍したのですが、水素自動車というのは日本を含めて世界的には普及しないなと結論付けました。その理由として、欧州はずるいと思うのですが、ISOがその例でして世界標準を先に取るじゃないですか。ドイツもすごくうまいと思うのですが、日本は下手だと思います。日本は今一生懸命やっていますが、普通乗用車で5,000台を割るのではないでしょうか。建設とか設計とかメインテナンスに携わってきましたが、これはダメだと思いました。欧州ではどうなんでしょうか。
A5. (望月氏) ドイツでは水素自動車というのは全く話題になっていないです。EVが先行している状況です。
Q5.続き (参加者) そうですか。水素は820気圧に圧縮して貯蔵容量を減らしていますが、配管は溶接出来ず漏れが絶えないです。その結果、事故扱いというか休業扱いになると官庁への報告が必要です。パーツの劣化も激しく、トラブルが多かったです。今の状況は不明ですが、変わっていないようです。東京オリ・パラが1年延期されて普及が遅れたと思うんですが、日本政府はどうして補助金を出し続けるのでしょうか。
A5.続き (宍戸氏) 水素は厳しいですね。圧力が高く第一種圧力容器が必要ですし、運搬コストも掛かるので厳しいです。二酸化炭素と水素からメタンを合成するMethanation技術を用いて、水素をメタンに変えて運ぶことが考えられていますが、正直言ってなぜ水素を使い続けているかというと、再エネを十分に導入出来ないので、最終的に水素に頼らざるを得ないのが日本の状況だと思います。省エネして再エネして森林とかでOffsetする、というのが一番綺麗な形ですが、日本では再エネを導入するPotentialが少ないのが現状です。そうした中で、代替燃料としてCO2 FreeのH2を、例えばオーストラリアから輸入してそれを燃料として使う、というのが国の説明です。但し、ご指摘のようにCostとMaintenanceを含めて沢山の障害があるので、難しいところです。因みに製鉄関連では水素還元技術で水素を使うということで、水素自動車というよりは、何とか製造側で使おうということで今は頑張っているのが日本の現状だと思います。
Q5.続き (参加者) 去年の今頃日本政府が脱炭素に向けての方針を示しました。時を経ずしてカーボンニュートラルの技術戦略Road Mapも示されました。技術に関してはそのRoad Mapに書かれていますが、では実際の製油所とかコンビナートがどうなっていくかについては書かれていません。既存の産業がどうなっていくか、1年前は見えなかったですし、今も変わっていません。今日の講演でドイツは再エネが進んでいると思いました。日本では既存の化学工場がどの方向に進んでいくのか分からないですし、最近の日本政府が原発を無理して稼働させようとして、それが却って再エネ化を抑えているような気がします。最近アクセルを踏みだしたように見えるのですが、既存の設備がどう変わっていくのか見えないので、ヒントがあったら教えて頂けないですか。
A5.続き (参加者) 今日の望月さんのお話しによれば、ドイツでは全体の方向性というのが明確に示され、政府によってきちんと仕切られているようですし、宍戸さんのお話しからもそう思いました。一方、日本政府の場合は全ての顔を立てようとして、あらゆる利益集団を満足出来る方向にどんどん持っていくようにしていると思います。
A5.続き (宍戸氏) ご指摘の通りだと思います。数値を出せないところが日本政府の弱いところでして、経済産業省が今Green成長戦略を立てており、私もお手伝いをしていますが、そのRoad Mapに書かれたものは各業界が作ったRoad Mapを単に足し合わせただけのものです。すなわち政府がリーダーシップを取って目標削減量を示し、それに基づいて各業界の削減量を割り当てるわけではありません。規制と経済成長の妥協点を考えなければなりませんが、その延長線上には多分カーボンニュートラルという絵はないと思います。そこをどうするかを考えなければならないですが、その辺はドイツを見習う、ということをコンサルタントとしては言えますが、国の立場からすると難しいということを良く聞きます。
Q6. (参加者) カーボンニュートラルはこの先重要なキーワードと考えますが、地産地消も考える必要があると思います。ドイツでは今回のロシアによるウクライナ侵攻により、ノルドストリームを通して供給されていた天然ガスが途絶えて深刻な事態になりました。日本でも、東日本大震災、あるいはアメリカの同時多発テロのような事態に対して、地産地消で対応出来る体制を取る必要があると思います。今までのグローバリゼーション、すなわち世界の市場の中から、より安いものを輸入すれば良いという発想だけでは、この先対応出来ない事態が訪れると思います。そのことと、カーボンニュートラルとの並立を達成するための解をどのように出したら良いか、考える必要があると思います。
A6. (宍戸氏) ご指摘の通りだと思います。各市町村とかPublic Sectorの方々が良く地産地消のことを言われますが、それが根底にあった上でカーボンニュートラルに向けて他の技術とかそういった飛び道具をいかに使っていくか、だと思います。
*以降、主に地産地消に関連する議論が終了時刻まで続きました。
最後に椎名交流委員長の閉会のご挨拶が有り、終了となりました。