「応用化学最前線―教員からのメッセージ」
共催 早稲田大学 先進理工学部 応用化学科、早稲田応用化学会
於 早稲田大学 西早稲田キャンパス 57号館201教室
14:45-15:15 有機合成化学部門 細川誠二郎准教授
「演題 真ん中から作る:多段階合成を革新する合成戦略」
目的の化合物を短工程で作ることは合成化学の普遍的な課題である。当研究室では、生物活性天然物を効率的に合成するための反応や合成戦略(合成の考え方)を研究している。従来、複数の不斉炭素を持つ鎖状化合物の合成においては「端から順に構築する」ことが常法となっている。これに対し、我々は「中央部を構築した後に左右を修飾する」方針をとることによって、従来よりも著しく工程数の少ない合成経路を確立してきた。最近では、この考え方を環状化合物に適用している。本講演では、我々の最近の取り組みを紹介した。
15:15-15:45 触媒化学部門 関根泰教授
「演題 表面プロトニクス・イオニクスと低温作動触媒」
関根グループでは、不均一系触媒を用いた化学反応において、表面イオニクス(酸化物イオンならびに 水素イオン)を活かした反応系を世界に先駆けて構築し、従来に比して大幅に低温で高い活性を有する 触媒反応系を確立した。これによって、水素製造やアンモニア合成、天然ガスからの有用化合物合成な どを、150度程度の低温・オンデマンドで実現することが可能になった。その学理解明と、応用展開例に ついて紹介した。
15:45-16:15 高分子化学部門 小柳津研一教授
「演題 エネルギー変換と高分子」
化石燃料や再生可能エネルギーは,自然界に存在する一次エネルギーである。これらは主に電気や水素といったクリーンな二次エネルギーとして供給され,社会や生活を支えている。電気エネルギーは輸送インフラが整備されている一方,電流の形態では貯蔵できない。一方,水素エネルギーの利用拡大に向けては,水素の輸送・貯蔵インフラのさらなる整備が必須である。このようなエネルギーの輸送・貯蔵に関わる問題の解決手段として,電気や水素のエネルギーを化学エネルギーに変換し,再び電気や他のエネルギーとして取り出せる機能を持ったエネルギー変換材料が注目されている。導電性(電子伝導),イオン伝導から始まり,熱電変換,光電変換・発光の次に,高分子機能の新たなターゲットとして位置付けられつつある蓄電・水素貯蔵を担う,斬新な高分子材料について述べた。
16:15-16:45 化学工学部門 平沢泉教授
「演題 晶析工学の知恵を実践する」
晶析工学研究を推進し、40年が経過した。アートと呼ばれた晶析も、20世紀に結晶群の粒径を操作し うる時代に至っている。21世紀においては、結晶品質のさらなる高度な制御が求められ、純度、構造(多 形)、晶癖(外見的形状)、粒径などの品質を設計する(QbD)工学理論を模索、活用している。過飽和溶 液内の核化は、いまだ解明されているとは言えず、晶析現象の速度論的な現象をよく理解して、希望の 結晶品質を創ることがなされている。本講演では、装置内の過飽和度を制御するためのフィーディング( 原料供給)、シーディング(種添加ポリシー)により、結晶品質の制御を実践した成果の一端を説明した。
以上