雨が多かった今回の冬でしたが、次第に寒さが緩み、柔らかな春の訪れが感じられる季節となりました。本日は私たち卒業生のために先生方やご来賓の皆様のご臨席を賜り、このような盛大な式典を開催していただきましたことに卒業生一同心より御礼申し上げます。
私たちは4年前に早稲田大学先進理工学部応用化学科に入学し大学生活をスタートしました。その時はまだ周りの誰一人として知らず、早稲田大学の校歌も恥ずかしげに歌った記憶があります。入学したばかりの私たちは後悔のない一生に一度の大学生活を送りたいと期待と共に不安を抱いていました。
1年次は個性豊かな先生方からの数多くの講義を受け、クオリティの高い授業で忙しい毎日を過ごしました。最初はこのような忙しい一年次の生活を乗り切っていけるかどうか不安を抱きました。
1年次を乗り越えたことで、2年次になった私は大学生活のコツを掴んだと思いましたが、応用化学科のカリキュラムは甘くありませんでした。講義の数が減る一方専門分野の実験が増え、特に実験やレポートに慣れていない私は、時にくじけそうになることもありました。折り返し地点の3年次では将来を大きく左右する人生の岐路に立ちました。化学のどの専門分野について掘り下げて学んでいくかを問われる研究室選びがありました。そして進路の決定もありました。正解が定かではない選択肢であり悩みに悩んで 覚悟を決めて選ぶことは、想像以上に難しかったと言えます。いよいよ研究室での生活が始まる4年次、研究者に一歩近づいた気がしました。それまでの修学のための実験とは異なり、一つのテーマについての解を求めて長い期間を費やす初めての経験であったと思います。一つの事実を導き出すために多くの失敗の繰り返しが必要であることを改めて思い知らされました。この四年間を振り返ってみると実験を踏まえたしっかりとしたカリキュラムで育てられ、今となって考えれば研究者になるためには、その全てが必要でした。息苦しさを感じる日々もあり、一人では決して成し遂げられなかったと思います。時には助言を、時には温かい励ましをくださった先生、先輩、仲間がいたからこそこうして乗り越えることができました。
4年間が経ったこの卒業式で周りを眺めますと、知らない人ばかりであった大入学式とは異なり、ここにいる卒業生全員は仲間です。この4年間を一緒に過ごした大切な仲間です。これからはそれぞれが異なる道を歩むことになりますが、これからもお互いに支え合い、苦しい時に際しても励ましてくれることでしょう。私たちは歴史ある応用化学科の卒業生としての自覚と誇りを持ち、「役に立つ化学、役立てる化学」という応用化学科の精神を胸に刻み、様々な角度から社会に 冒険していきたいと思います。
そしてインドネシア出身の外国人としてこの4年間分け隔てなく温かく接してくださった優しい最高の同期に恵まれて、同期の皆様に感謝の意を申し添えます。今後はさらに精進を重ね、母国と日本の架け橋となることをお約束します。最後になりますが今日までご指導ご支援をいただきました先生方、職員の皆様、互いに励まし合ってきた友人達、そして何よりどのような時にも一番 近くで支えてくれた家族に心より御礼申し上げます。
茲に改めて、早稲田大学および応用化学科の益々の発展と、皆様のご健勝、ご活躍を願い、答辞とさせていただきます。
平成31年3月26日
早稲田大学先進理工学部応用化学科
卒業生代表 ハルジョウィノト・ダニー