三浦千太郎応化会会長の祝辞

三浦会長の祝辞

本日は各賞受賞の皆様、誠におめでとうございます。
早稲田応用化学科は、先輩諸氏の寄付により大変充実した奨学制度を持っており、途切れることなく現在も運用され続けており、応用化学で学ぶ学生諸君にとって大変恵まれた環境が用意されております。
今日、いただいた水野敏行奨学金、応用化学会給付奨学金、(中曽根奨学金)、里見奨学金の四つの賞がありますが、これらはそれぞれ個人の先輩諸氏の寄付金によって成り立っております。その中で個人名の冠を付したものには原資に限りがありますのでいずれ終焉する宿命があります。ただ、過去に平田賞や古賀賞のように個人の冠を付したものはいくつかありましたが、終わると直ちに里見奨学金あるいは中曽根賞のように新しい先輩の熱い思いが後輩の諸君にそして母校に対して寄付されるという恐らく他の学校では類を見ない早稲田大学応用化学科固有の大変素晴らしい伝統があると自負しております。一昨年新しく賞を創られました中曽根先輩はその対象が応化全体ではなく高分子に限定されておりますが、中曽根先輩の後輩に対するそして母校に対する熱い思いが、そして、最大規模を持つ水野敏行奨学金、河村さんはこの水野家の代表で水野家の思い、応用化学会には応化会550名の先輩及び先生方の思いがあります。また、里見さんも自分が社長になったらすぐに早稲田の応化に寄付制度を作るという風に言っておられましたし、それぞれの賞には先輩諸氏の後輩に対する熱い思いがあります。
今日受賞された皆様は、肝に銘じて発奮して勉学に勤しんでいただきたいと期待しております。
明治以来、我が国は高度な科学技術をもって国力を高めてきました。敗戦後も民間の力を使ってこの高度な科学技術力は益々向上し、現在の繁栄に繋がっています。
しかしながら、国際情勢は大きく変わり始めています。特に途上国の驚異的な発展により化学界も従来主流であったエネルギー素材系、いわゆる基盤インフラから生命、医療、ナノテクなどの新しい技術を加えた新しい科学に転換しようとしています。
第2ステージを迎えようとしているこの時代、しかしながら大変憂慮すべきことでありますが我が国を支えてきた科学技術が世界の序列の中で大きく著しく後れを取り始めているという意見が多く出てきております。ノーベル賞は、ここ数年、化学、生命医療、を初めとして多くは二度も受賞して喜びをもって受け止めていますが、ノーベル賞受賞者である大隅教授は、「これも思うに、20年から30年前の研究成果に対する評価であります。研究者が非常に減っていく中でこの状況が継続できる、あるいは将来にわたって持続できるのかどうか自分は憂慮している」と発言している。ご多分に漏れず早稲田大学応用化学科も博士後期課程進学者をなかなか集めにくいという嘆きを先生方から漏れ聞いております。
皆様は、化学界の最高学部の代表選手になったわけですから先輩方、先生方の熱い思いを是非ご自分の今後の研究生活に反映させて我々の期待に応えていただくよう精進をお願いします。
最後に諸君が卒業して社会で活躍し、少し手元に奨学金以外のお金が入ってくるようになった時にこの日のことを思い起こしていただきたい。
今度は諸君が後輩たちのために寄付をする、応用化学会に寄付を預けていただくことを切にお願いいたしましてお祝いの挨拶といたします。

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