早桜会第8回講演会を9月17日(土)、中央電気倶楽部で開催しました。
今回の講師は、静岡大学名誉教授の須藤雅夫先生で、ご専門の分野を「固体高分子形燃料電池の話題」と題してご講演いただきました。
須藤先生は、1972年学部卒(新22回)城塚研出身で1978年工学博士号取得、静岡大学助手、助教授、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員などを歴任し、1993年静岡大学教授、2016年同大学名誉教授となられています。
講演は、現在の勤務先である天野工業技術研究所の紹介から始まり、浜松の名所・行事の興味深い紹介もありました。 本題では、持続発展可能な社会の構築には、水素社会を目指すことが必要であることをまず述べられました。水素社会へのロードマップ、水素の製造法とコスト、固体高分子形燃料電池の開発の歴史、CO2フリー水素、Power to gas, 水素か合成メタンか、水素サプライチェーン、水素ステーションについて解説されました。 次いで、固体高分子形燃料電池(PEFC)では、速度過程と材料設計に注目し、燃料と酸素の供給での課題、セパレータの均一分配と水蒸気の凝縮の影響、ガス拡散電極の移動過程、水蒸気の凝縮・プロトン輸送界面構成、伝導膜でのプロトン輸送・水(水蒸気)逆拡散が検討対象としてあげられました。
研究事例紹介として、伝導膜内の水輸送の湿度センサーによる実時間測定により、電気浸透水と逆拡散水の向流移動から、正味の水輸送係数が負(カソードからアノードへの輸送)の条件を示されました。膜内輸送方程式によるシミュレーション結果ともよく一致したと報告され、次いで、過酸化水素が生成するレベルと条件を検討された結果の報告がありました。過酸化水素は、アノードで触媒反応により生成します。一方カソードで電流値が大きくなると還元生成物として生成します。過酸化水素レベルは、電流値に対しバスタブ曲線を示しました。そこで伝導膜を分割しマイクロセンサーを挿入し、膜内での過酸化水素レベルを計測されました。アノードからカソードに移動していることが推定されたことが報告されました。
講演終了後は、活発に質問が出され、一つ一つに丁寧にお答えいただきました。先生独特のやわらかい口調のご講演で、お人柄も聴く人の心によく届いたようです。
講演終了後は、全員での記念写真を懇親会場の入り口前の階段で撮り、特別食堂での懇親会に移りました。乾杯後は会場のあちこちで話の輪ができ、話が弾んでいたため、スピーチは少なめにとの司会者の配慮で、初参加の方に自己紹介いただいたほかは、ほとんど飲み・食べ・話すというにぎやかな懇親会になりました。
(文責 田中)