麗らかな春の気配に花時を迎え、その様は新たな世界へと旅立つ皆様を象徴しているように感じられます。本日この佳き日に、晴れて早稲田大学を卒業された皆様、並びに大学院を修了された皆様に、在校生を代表し、心よりお祝い申し上げます。
今、先輩方の胸の内では、この早稲田の杜で積み重ねた幾多の思い出が去来していることと思います。友人と協力し合い試験に臨んだこと、時を忘れて高田馬場でひたすら飲んだこと、そしてレポートに追われ徹夜で仕上げたこと。何気ない日常生活、当たり前のように過ごしていた日々の思い出・経験は、先輩方にとって歳月の流れとともに、かけがえのないものとして胸に刻み込まれていることでしょう。
思い返せば、私の大学生活にはいつも先輩方の姿がありました。実験の際にはTAとして、右も左もわからぬ我々に親身になってご指導くださりました。サークル・委員会活動では苦楽を共にし、時には大学での人間関係に関して一夜語り明かすこともありました。まるで陽だまりのような存在である先輩方が本日ご卒業を迎えられることに祝福の気持ちを表すると共に、ふと一抹の寂しさを感じます。
“集まり散じて人は変われど、仰ぐは同じき理想の光”。これまで同じ一時を過ごしましたが、今日という日を境に異なる旅路に歩みを進めることとなります。私の大学生活の根幹には先輩方の支えがあり、今日まで歩んで来ることができました。今度は我々在校生が後輩たちを支えられるよう、良き道しるべとなるよう、しっかりと先輩方から早稲田の精神を引き継いで参ります。
大隈候は、早稲田大学創立三十周年祝典において教旨を宣言し、その中の一つに”学問の活用”を以下のように述べられています。“学問の活用を主とし、独創の研鑽に力めその結果を実際に応用する”。めまぐるしく変化するこの世界情勢、平坦な道のりではなく多くの壁に立ち向かうことになると思います。しかし、知識としての化学だけにとどまらず、ここ応用化学の学び舎で培った「役立つ化学、役立てる化学」の理念のもと、熱い情熱を創造の糧にし、荒波にも負けず、幅広い分野でご活躍されることと信じております。
最後に、皆様方のご健康とご多幸を在校生一同心からお祈り申し上げて、送辞とさせていただきます。
平成31年3月26日
在校生代表 田中亮祐