松方応用化学科主任の祝辞

応用化学科主任 松方正彦教授の祝辞

応用化学科、応用化学専攻は、「役に立つ化学、役立てる化学」を標榜しております。そして、化学は、物質を司る学問でありますからその応用範囲はとても広く、皆さんの旅立って行く先も様々な分野に広く展開されています。皆さんは、産業界が夢と希望に満ちた世界を提供してくれることと期待していると思いますが、それほど甘いものでもないとことも申し上げておきたいと思います。今から15年後、皆さんは40歳、世の中のことも解り、会社のことも理解し、最前線で責任のある立場で働いていらっしゃる時代かと思います。この2030年頃に化学を取り巻く日本の社会はどうなっているのかというと、例えば2030年には石油精製から製造されるガソリンと軽油との燃料は、凡そ半分になる。また、基礎化学品と呼ばれるエチレンとかプロピレンというような製品群は2030年には日本では生産量がやはりこれも凡そ半分位になるだろうと予測されています。このように日本にとっては大変厳しい方向に向かっている、そういう時期に皆さんは社会人としての、企業人としての最前線、責任のある立場に立つということになります。これからの社会で貢献していくためには何が必要か、”ビジョン”とか”情熱”とかも勿論大事です。しかし欧米では”根性”をあげる人が多いようです。”根性”をもって自分の目標達成に向けて取り組んでください。

早稲田大学の教旨には、学の独立、学問の活用、等々が書かれています。我々教員は、ことあるごとに皆さんの自立的な成長を促し、自己実現をするということを講義の合間など様々な機会に申し上げてきました。学問の活用というのは新しい社会を創り、新しいシステムを創り、健康で幸福な社会の実現に向かって皆さんが寄与すること、即ち、他者のために学問を活用するということだろうと思います。自ら研鑚して能力を磨き、役に立つ化学、役立てる化学を皆さん自らの力で創り出していく。そしてそれを他者のために活用する、他者が幸せになるために活用する。このことが皆さん自身の未来を、我国の未来を、化学に携わる者として切り拓くことになるのだと信じております。
昨年は、応用化学科が創設されて100周年の年でした。100年の歴史と実績を持つ応用化学科を卒業された皆さんは、是非これからの100年を支えていけるように頑張って頂きたいと思います。そして、この早稲田の杜に輝かしい姿になって戻ってきていただくことを期待してお祝いの言葉にさせていただきたいと思います。