第9回国際バイオEXPO&国際バイオフォーラム
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アジア最大のバイオイベントである第8回国際バイオEXPO&国際バイオフォーラムにおける応化会会員の活躍の様子を取材しましたのでお知らせします。昨年は、木野邦器主任教授、桐村光太郎教授および常田 聡教授の発表を報告しましたが、今回は天然物の全合成に関する研究を精力的に推進中の竜田・細川研究室の細川誠二郎准教授の登場です。
本年は、6月30日から7月2日まで東京ビックサイト西展示棟にて開催されました。筆者は、毎年本会合に参加して早稲田大学TLO(Waseda Technology Licensing Organization)からご紹介のあった先生方のうち7月1日(15:30-16:00)の「医薬品素材探索における有機合成化学」と題する講演内容の概要と会場風景を紹介します。
本講演は、大学で発明された新技術を紹介し、企業化に繋げることを最終目標としているので、当該技術についてMTAが締結されて、企業化されるとWTLOに一時金を含む技術料の他に、将来ロイヤリティも期待されます。
演者は、「欲しいものを必要量作る力が新しい科学を産み出す。」との考え方に基づき「思い通りに分子を作る」ことを目指して、有機合成化学による生理活性物質の合成研究を行っています。医薬品探索研究においては多種多様な化合物を速やかに合成することが極めて重要なカギとなるので骨格構築法 を工夫し、
かつ、合成経路を工夫することで効率的に目的とした化合物を短い工程で合成することをポイントとして研究を推進しているとのことです。天然物を全合成する場合、必要な量の化合物を必要な時期に安定に供給できることが必要条件となります。
そのために取り扱い易く(下図化合物3は85%以上の高収率で、結晶として単離できる)、安定に保管できる化合物を予め合成し、かつ、目的とする天然生理活性物質を短い工程で合成することで創薬のスピードアップを図っている。その目的物の構造活性相関研究を行う手段として様々な置換基の導入や種々の立体化学導入のため新しい合成法を開発することが重要であるとのこと。
演者らが開発した上図に示す「ケテンN,O-アセタールの遠隔不斉誘導反応(上図の化合物3から4の反応)」により高い立体選択性をもって不斉炭素の構築とある程度大きな炭素鎖の導入を一挙に行うことができるとのこと。この方式を採用することにより多くの天然生理活性物質の全合成を完成している。(
強力な抗ピロリ菌活性をもつActinopyrone A (不安定)を全合成するために上図の反応システムを用いて安定な前駆体をたった7工程で大量に合成し、その前駆体から2工程で目的のActinopyrone Aの全合成することに成功した。この方法により目的天然生理活性物質の物性、生理活性、構造活性相関などの研究がスムーズに進捗しているとのことです。
学研的な研究としては5-リポキシゲナーゼ阻害作用および抗菌活性をもつLagunamycin の立体配位が未解明であったが、上図に示した反応を駆使することにより9工程で全合成するとともに、その回転異性体の比率を解明した。その他にBenzopyrenomycinの世界初の全合成が紹介されましたが詳細は省略します。
今回の講演から恩師である竜田邦明教授の「応用化学とはひとに応用してもらう化学である」との考え方が浸透していると感じられた。
今後の先生の御研究の進展が期待されます。
本品は、グリストラップの油脂分の分解を目的とした製剤で、微生物及び微生物が産出する酵素の生化学反応により油脂を分解させる地球環境に適したバイオ製剤です。