竜田邦明教授らの投稿論文(The first total synthesis of lactonamycin, a hexacyclic antitumor antibiotic)が学術速報誌 Tetrahedron Lettersの表紙(Vol. 51, No.42,October 20,2010)を飾りましたのでお知らせします。
先生によればこのような経験は、過去に3回あったが、今回(4回目)がBestとのこと。
この全合成の特長は、難しいとされていた3級の水酸基に先ず糖(2,3-deoxy-sugar)を導入した後、ラセミ分割して天然物と同じ立体配位を持つ化合物(25a)を分離し、Michael-Dieckmann型縮合反応により保護基がついた化合物(27)を加水素分解により保護基を除去して抗腫瘍抗生物質lactonamycin(1)の全合成に初めて成功した(下図反応式参照)。
今回の教訓:天然生理活性物質の構造からいかに全合成に結び付けていくかの戦略を練り、立体選択的な合成反応を熟知したうえで、その知識から新しい考え方を見出して全合成に結び付ける努力、いわゆる『知識を知恵に!』が大切である。
(詳細は、Tetrahedron Letters, Vol. 51, 5546-5549,2010を参照)