2005年度卒業式は、2006年3/25日(土)15時30分より、従来通り戸 山キャンパス記念会堂で行われ、その後理工学部大久保キャンパスにて応用化学科学位 記・褒賞授与式が17時より55号館大会議室で行われた。156名の卒業生の内大 学院進学者117名、他大学院進学者7名である。また、2005年度修士卒業生は 92名であった。
学位授与式には、応化会 里見多一会長が祝辞を述べられた。
(文責 応化会事務局 小泉)
里見会長祝辞 | 答辞 | 校歌斉唱 |
早稲田大学理工学部応用化学科の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとう御座います。 私は昭和47年加藤研究室卒業の里見と申します。 ここにいらっしゃる卒業生諸君の多くは大学院に進学されるそうです。 3年程前から、こうした学位授与式へご招待に預かり、高い席からではありますが祝辞を述べさせて頂いております。 丁度三年前、その時学部を卒業され、本日、めでたく修士号を授与された方には二度目の話になる訳です。 同じ話にはしたくはありませんが、何年か前に流行りました「No1にならなくていい、もともと特別なOnly One・・・・」の歌詞では在りませんが、当に皆さん一人ひとりには是非共に「我こそはOnly Oneを目指すのだ・・・」と言った気概を持ち続けて頂きたいと願います。
今月の22日、応化会フォーラム講演会にて東京女子医大岡野先生(49年篠原研)に、「細胞シート工学」に関する御講演をして頂きました。 多くの応化会会員にお集まり頂き、大変好評な講演会になりました。 ここにいらっしゃる方の中にもご聴講された方も多いと存じます。 その内容は割愛させて頂きますが、先生は日本の先端医療の行く末に大きな不安をもたれ、その不安を払拭するには医学と工学の融合化、そして先端医療産業領域の育成を図らなくてはならない事を強調されていらっしゃいました。
先生はまた「細胞シート工学」なる新学問分野を自ら創生されました。 現在、多くの工科系学生の皆さんが、臨床や病理の研究をされている若手医師と協働され、熱心に細胞シート工学の研究されているそうです。 勿論、この中にもそうした研究に進まれている方も多いのかもしれません。
何故、岡野先生はその様な産業が必要なのか、そしてそれを支える技術者の育成が大切なのか、お考えになったのでしょうか。 例えば、心脈をコントロールするペースメーカーは100%made in USAだそうです。 技術の最先端を走っている日本でペースメーカーが一台も作れない事実を皆さんはご存知だったでしょうか。 先生はこの様に言われていました。 勿論、ペースメーカー自体は日本でも作れなくは無い。 しかし、それを人間の中に埋め込み、安全に長く機能させる信頼性が無い為に、残念ながら国内では生産されていないのだそうです。
ペースメーカーを埋め込む事は医師にしか許されません。 しかし、医師は電子部品や化学材料の専門家ではありません。 アメリカのメディカルスクールには医師をバックアップするサイエンス、エンジニアリング領域で活躍している数多くの技術者集団が組織化されています。 勿論、大学の研究所に所属するPhDであったり、医療産業に席を置く技術者であったりするそうです。 そうした技術スタッフが、医師を支援する組織を作っているのです。 日本にはそうした横断的領域での事業創生に挑戦する風土が之まで育たなかった事がペースメーカーへの参入の機会を奪ったのです。
何を言いたいかと言うと、岡野先生の言葉をお借りすれば限りなくの「創造への挑戦」をこれからも実践し続けて頂きたいと、若い皆さん方に願うものです。 岡野先生の前の講演会では山形大学城戸先生から、有機ELの御講演を頂きました。 城戸先生も物理系の出身者が主流を占める薄型ディスプレーの一つである有機ELの世界に化学者として飛び込みました。 物理と化学の考え方に違いがある事が返って新たな創造に繋がったとのお話をされていた様な記憶があります。 今後益々、学問領域間のクロスリンクやフュージョン化が進んでくるものと思われます。
若い皆さんには無限の可能性あります。 限りない創造への探究心を持ち続け、失敗や過ちを怖れて貰いたくないのです。 しかし、同じ失敗や過ちを繰返して貰いたくもありません。 丁度一年前の今頃、「時代の寵児」と注目を浴び始めていた堀江貴文容疑者、現在、こう呼ばねばならないのは非常に残念であります。 多くの国民が若干32歳の彼の斬新かつ過去に囚われない前向きの姿に好感を寄せていました。 残念ながら今は塀の中に隔離されています。 個人的には早く罪を認め、また新たな挑戦に立ち向かって貰いたい気持ちです。
論語に「過ちて、則ち改むるに憚る事無かれ」、或いは「過ちを改めざる、これを過ちという」と言う教えが在ります。 多分に説教染みたお祝いの挨拶となりましたが、これからのわが国の担い手であるべき若き皆さんに対する、熱い思いからの話として聞いて頂ければ幸いです。
最後に卒業後も、応化会会員として母校学科の行く末に、大いなる興味を持って頂き、8千有余の会員との交流を深め、其れを生涯の財産として活用して頂ければと存じます。 月に一度位は是非HPへのアクセスをお願いします。 応化会ボランティアの方々が二週間に一度の頻度で更新して頂いております。
本日はご卒業、そして学位授与おめでとう御座います。