岡野光夫氏が第2回江崎玲於奈賞を受賞

東京女子医科大学先端生命医科学研究所 所長・教授
早稲田大学理工学部先端科学・ 健康医療融合研究機構客員教授
株式会社セルシード取締役

平成17年9月30日、早稲田大学応化会会員(S.49卒、同大学院博士課程S.54修了)の岡野光夫氏(東京女子医科大学先端生命医科学研究所 所長・教授、早稲田大学理工学部先端科学・ 健康医療融合研究機構客員教授)の第2回江崎玲於奈賞受賞式がつくば国際会議場で開催されました。 今回の選考は、4つの専門部会(物理、化学、医学・生命、計測・加工)から推薦された九つの課題を予備審査で二つに絞り、最終的にノーベル賞受賞者4名をふくむ選考委員会で高く評価され、満場一致で受賞が決定した。

→ 授賞式関連の資料(PDFファイル)

「ナノバイオインターフェース設計による細胞シート工学の創生」とは

温度を信号として構造変化するポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)をナノレベルの厚さ(20nm以下)でそのナノ構造を制御し、表面で細胞を単層化に培養した後に、作製した細胞シートを温度低下(37℃→25℃)させるのみで、培養細胞を傷つけることなくシート状で剥離・回収できる新しいインテリジェント表面の開発に成功した。これによって細胞シートの片面にフィブロネクチンを主成分とする接着たんぱく質をもつ細胞シートを自由に操作できる細胞シート工学を世界に先駆けて実現させた。

この技術を使って増殖させた角膜の移植症例(大阪大学眼科 田野教授、西田助教授)もあり、更に、免疫能が亢進している患者には、口腔粘膜上皮細胞シート移植により角膜上皮細胞に分化させることにも成功し画期的な自家移植の臨床応用を開始している。また心筋組織については心筋細胞シートを重層化させ、細胞シート間を構造と同時に機能結合を誘導させて細胞シート間の拍動の同期化に成功している。拡張型心筋症への臨床応用(大阪大学第一外科 松田教授、澤助教授)や歯周組織の再生への応用(東京医科歯科大学歯周病科)も進められており、再生医療分野への貢献が期待されている。更に、肝実質細胞シート上に血管内皮細胞シートを重層化させることで肝細胞の機能を3ヶ月程度維持させることができ、異なる細胞シートを機能的に重層化できる新しい概念を提案し、再生医療研究の新しい局面を開拓している。
(詳細は、授賞式に先立ち行われた受賞記念講演ビデオをご覧ください。)

このように岡野氏の研究は、ティシューエンジニアリング(組織工学)、物理、化学、医学・薬学など多くの領域にわたっており、更なる細胞シート移植研究の進展により人間の寿命延長を可能にすると期待されている。今後の岡野光夫氏の更なる発展とノーベル賞受賞をを祈念してやまない。