長谷川悦雄氏(新23)、岩佐繁之氏(2005年博了)、
平成20年度大河内技術賞、平成21年度文科大臣表彰・科学技術賞(開発部門)受賞

「第9回交流会講演会講演者長谷川悦雄氏(新23回生、応用化学専攻1978年博士課程修了、博士号取得1978年)は岩佐繁之氏(応用化学専攻2005年後期博士過程終了、博士号取得2004年)、前田勝美氏および中野嘉一郎氏とともに当年3月、平成20年度大河内賞技術賞を受賞されました。
続いて、当年4月には「平成21年度科学技術分野の文部科学大臣表彰・科学技術賞(開発部門)」を受賞されました。
長谷川悦雄氏らの偉業に敬意を表し、このたびの相続く大賞の受賞をこころからお祝い申し上げますとともに、益々のご活躍を祈念申し上げます。

早稲田応用化学会

長谷川悦雄氏 受賞の喜びのメッセージ
「 2006年に関東地方発明表彰 「神奈川県知事賞」を戴いて以来、毎年すばらしい賞を共同研究者と一緒に受賞でき大変光栄に思っております。
私たちがNECで開発した有機材料は世界中で広範に使用されており、先端LSIの超微細回路の加工製造時に活躍しています。NECに入社以来、十年間に渡り行ってきた有機エレクトロニクス材料に関する研究開発の成果が使用された電子製品(先端LSI)が世界中の方々に使用して戴けていることを大変嬉しく思っております。
早稲田大学で身につけた研究基盤力が花開いたと思います。この一連の受賞が応用化学会の若い研究者への励ましになれば幸いと思っています。」

大河内賞の受賞内容:最先端LSI量産を可能にしたArFレジスト材料の開発(大河内賞についてはこちらを参照)

  1. 開発の背景と内容
     情報化社会の発展の基盤となっているLSIの高密度・高集積化は、シリコン基板上に形成される回路の加工寸法を極限まで微細化する技術によって進展してきた。この微細化技術の核となるのがレジストを用いた光リソグラフィーであり、最先端LSIの製造では回路寸法90nm以下を達成するために波長193nmのArFエキシマレーザが用いられる。従ってこの波長の光を吸収する従来の芳香族系レジスト樹脂に代えて、光透過性でドライエッチング耐性、基板密着性等の広範な要求性能を満足する新規なレジスト樹脂の開発が求められていた。  本研究開発では、これに対応する機能統合型のレジスト材料として最適な分子構造を探索した結果、ラクトン基含有脂環型アクリレート構造レジスト樹脂の開発に成功した。  本技術開発によるレジスト材料は、現在、最先端LSI量産のためのデファクトスタンダードとして供給されている。
  2. 特徴と成果
     本業績は、ArFエキシマレーザ(波長193nm)を用いる最先端LSIの量産を実現するレジスト材料として、光透過性とドライエッチング耐性に優れた脂環基と、解像性および基板密着性に優れたラクトン基を同一分子内に含み、さらに経済性・量産性に も優れた機能統合型のアクリレート型レジスト樹脂を、独自の材料分子設計に基づいて開発したものである。
     現在、ArFレジスト材料によって製造される回路寸法90nm以下の最先端LSIの市場規模は、約1兆円に達すると推定されているが、国内外のレジスト製造メーカにライセンスされた本技術に基づくレジスト樹脂の2007年度推定出荷額は、200億円に達し、国内外当該レジスト市場での占有率は80%を超えている。
     本業績は、わが国でこれまで推進されてきた先端機能性高分子材料開発の成功例としても高く評価される。
  3. 将来展望
     本技術は、最先端LSI製造に不可欠なレジスト材料を独自に開発したもので半導体産業の発展に直接貢献している。また回路寸法65nmの次世代LSIの製造にも適用が開始され、さらに45-32nmの数世代先のLSIの製造にまで適用されようとしており、今後も高性能感光性樹脂開発を先導するものと期待される。
受賞者名
長谷川悦雄日本電気、ナノエレクトロニクス研究所、シニアエキスパート工博
前田勝美日本電気、ナノエレクトロニクス研究所、主任研究員博(工)
岩佐繁之日本電気、ナノエレクトロニクス研究所、主任研究員博(工)
中野嘉一郎日本電気、ナノエレクトロニクス研究所、主任研究員博(工)


平成21年度科学技術賞文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)」の受賞内容:最先端LSI製造用ArFレジスト材料の開発
受賞者 長谷川 悦雄 (ナノエレクトロニクス研究所 シニアエキスパート)
前田 勝美 (同研究所 主任研究員)
岩佐 繁之 (同研究所 主任研究員)
中野 嘉一郎 (同研究所 主任研究員)
技術概要最小加工寸法90nm以下の最先端LSI製造の最大の課題であったArFレジストにおいて、独自の機能統合型レジスト樹脂の分子設計を行い、新規材料を開発。最先端LSIの製造に世界中で広く採用され、デファクトスタンダード材料となっている。最先端LSIの量産を可能にしたことにより、電子機器の小型・高性能化に寄与している。


△TOPへ戻る