学生委員会」カテゴリーアーカイブ

応用化学会100周年記念企画&2022年度 第四回若手会員定期交流会報告

2023年2月18日(土)に「早稲田応用化学会100周年記念企画&2022年度 第四回若手会員定期交流会:『競争・協奏・共創』~次世代応化会の共創に向けて~」が開催されました。

本交流会はNACs会議、本企画、懇親会の3部制にて実施されました。

入試期間中で校舎に立ち入れなかったこともあり、都内の会議スペースを利用しましたが、いつもと違った環境でこれまで以上にざっくばらんな会話を行えたと感じます。

1部のNACs会議では22年度のNACs活動の振り返りを行い、発足1年が経過した節目として、今後のNACsの方向性を話し合いました。現役学生も交えてディスカッションを行うことで、社会人と学生の求める内容の共通点・異なる点を認識し、今後持続的な活動を続けていくための道標を考えることができました。

2部では応化会役員のOBの方々を交え、グループディスカッションが行われました。議題は「次世代応化会の共創に向けて、自身がどのように応化会と関わりたいか?どんな応化会に参加したいか?」であり、参加者の自由な意見をくみ取ることができたと思います。

特に印象的だったのは、今以上に“日常的な”交流を求めているということです。企画の時に顔を合わせるだけでなく、もっとプライベートな空間でも応化の人に会える場所が欲しいという意見が目立ちました。応化が家庭・会社に次ぐ第三の居場所として、心地よくそして成長できる場所になれるよう努めていきたいと思います。

また今回出た様々な意見に対して、ただの願望ではなく、主体性をもって実現していこうと思います。

3部では、場所を変えて立食形式で懇親会を行いました。スライドショーの上映や個人の近況報告を行い、思い出話から将来のことまで様々な話で場は盛り上がりました。

未だ収束はしておりませんが、コロナ禍で懇親会の実施が難しかったこともあり、久しぶりの懇親会は懐かしく、そして人と人とのつながりの大切さを改めて感じることができました。

今後もこのような機会を設け、持続可能な組織となるよう努めていきます。

(文責 NACs~次世代共創委員会~ 増田)

卒業生へのインタビュー(第4回)

元第一三共株式会社代表取締役、元早稲田大学創造理工学部客員教授 荻田健さん


2022年1月15日:オンラインにて開催。

ご略歴

1973年 早稲田大学理工学部応用化学科卒
1980年 東大農学系研究科博士課程修了(応用微生物研究所)

三共株式会社入社
研究所で医薬の研究(約20年)
開発部門で医薬の開発(約10年) 

第一三共株式会社(2007年、第一製薬と合併)
取締役 専務執行役員(2009年~2016年)

早稲田大学創造理工学研究科客員教授 (2017年-2021年)

今回は研究からグローバルプロジェクトマネジメント、経営に至るまで幅広い経験に基づくお話を伺った後Q&Aに答えて頂く流れでのインタビュー記事になります。荻田さんから学生・若手へ以下の内容での話がありました。

  • 製薬会社の主力製品について(ドラッグストアで購入できる一般医薬品と、医療用医薬品について
  • 新規医療用医薬品を世に出す:探索ターゲットから臨床試験以外の研究分野まで
  • 新薬ビジネスの特徴:研究開発費と研究の成功確率について
  • 荻田さん自身のキャリアパスについて(研究~プロジェクトマネジメント~グローバル変革への対応~経営戦略(取締役専務執行役員としてのタスク)
  • 製薬企業のおかれた状況
     新薬創生の難しさ、複雑化
     多様な経営戦略
  • これからの時代と経営戦略、社会との持続的成長とご自身の経験としてのこれまでの社会変化への重ね合わせからの振り返り
  • これから社会に踏み出す若き才能に向けてのエール

荻田さんからのメッセージを受けてのディスカッションでは以下のようなやりとりがありました。

-Be Professionalについてどうすればその領域に近づけるとことが出来るのか教えてください

(荻田さん):皆さんは学部生あるいは大学院生として既にProfessionalな仕事に触れていると思いますが、自分の好きなことを一生懸命に取り組んでいるうちにその意識づけが出来てくる様に思います。会社での研究におけるプロ意識もその延長線上にあると思います。
一朝一夕には行きませんが、繰り返し仕事に取り組んでいくうちに、この領域なら自分が強みを発揮でき、他の人にはそう簡単に負けないという意識が自然に持てるようになりました。そうなるとしめたものだと思います。

 

-自分がこれなら(社会人として)やっていけると自信を持たれたきっかけなどありますでしょうか。

(荻田さん):私の専門は狭い研究領域でしたが、その仕事はほかの誰にも負けないという意識は自分自身の考え方にプラスに働きましたし、学会での受賞経験は外的な評価という点からも自分に勇気を与えました。ポジティブな経験を積み重ねていくことが重要です。仕事のの目標設定を必要以上に高く設定する必要はないと思います。ハードルをクリアーするたびに自分自身の仕事に自信が持てるようになりました。

 

-大学生生活もまだ十分にいろいろなことが経験できていると自覚できる立ち位置にいません。様々な経験をこれまでされてきている中で経営者の視点からアドバイスを頂けますでしょうか。

(荻田さん):私の学生時代はキャリア形成に関する考え方もはっきりしていませんでしたが、現在では環境も大きく変わり、積極的に自分のキャリアを積上げていくことは重要だと思います。たとえば会社での所属部署が変わるようなとき、それはその後の自分の進むべき方向に役立つかどうかはその時にはわからないかも知れませんが、広く経験されることにより将来に生かされる事案は多いと思います。

 

-医薬品の研究開発で成功確率が低いことに驚きました。日々の研究において自分自身もうまくいかないことが多いですがその中でもモチベーションを維持できる意識づけについて教えてください

(荻田さん):私自身は研究していること自体が非常に面白いと感じていました。研究成果も重要ですが、その研究に興味をもって没頭することで探求心は研ぎ澄まされて行ったように思います。また、同僚との議論の中で目的意識を共有、確認することも大切でした。。「うまくいかない」のではなく、その結果も含めて研究は興味を持って考えていくことが一つのヒントになるのではないでしょうか。

 

-マテリアル・インフォマティックスのようにビッグデータを扱うことで研究環境も変わるのでしょうか(例えば研究室で一人がAIを駆使して研究を進めていくような環境になるのでしょうか)

(荻田さん):この質問は私にはちょっと難しい質問です。なぜなら、私の時代にはビックデータを扱う研究環境はなかったからです。従って一般論としてしかお答えできませんが、IT革命が進む中での化学との付き合い方も当然変わってくると思います。例えば今から5年前に現在の姿が想像できたかといえばそれはまた違った成果として現在があるわけです。少なくともこれまで以上に新しいことにポジティブに取り組んでいくという姿勢が必要だと思います。何が正解かは私にもわかりませんが前向きに考える姿勢が重要だと思います。

 

-研究を離れてマネジメントに転身された際に、研究者としての道を続けたいと考えましたか

(荻田さん):研究もある程度キャリアが長くなってくると研究自体もスペシャリストというよりは全体を見渡すような役割に段々と変わってきます。その時点ではジェネラリストとしての意識づけも自分自身の中でありましたのでマネジメントへの移行はしやすかったと思います。部下が多くなってくると人間関係などにも気を配ることが多く、それがグローバルになるとさらに考え方の違いなどにも考慮しながらマネジメントするエネルギーが要求され、自分自身から積極的に飛び込んで行くようにしました。
(写真:社内理科系社員による稲門会)

 

インタビュー参加者:
学生委員会:高田こはる(B4)、吉田七海(B4)、横尾拓哉(B3)、原田拳汰(B2)、吉村尚(B2)、
春原晴香(67期)、加来恭彦(39期、広報委員会)

「第3回 先輩博士からのメッセージ」開催報告

【開催日時】 
2022年8月20日(土) 13:00~16:00
(Zoomによるリモート開催)

第3回では講演会の代わりに博士後期課程学生と学位取得後の社会人(合計6名)を交えたパネルディスカッションを実施し、より多くの博士人材の話を一度に聞けるように工夫した。また、従来の座談会に加え、初の試みとなる個別相談会も開催した。

開会の挨拶
下村 啓 副会長

    下村 副会長

皆様、こんにちは。
早稲田応用化学会で100周年事業担当をしております新制34回の下村でございます。
本日は多くの方々にお集まりいただき、誠にありがとうございます。
学生の皆様は様々なキャリアを考えていると思います。選択肢は多岐にわたりますが、その中でも博士課程の道筋を示し当該進学者を支援したいという想いで本企画を開催いたしました。来年2023年の応用化学会100周年に向けて様々な取り組みをしておりますが、博士人材の育成・支援も活動の一環となります。博士課程に進学するということ、ぜひこの機会に知っていただければと思います。
本企画の開催にあたり、交流委員会の皆様、先生方、学生の皆様、そして多くのOB/OGの方々にご協力いたただきましたこと、この場をお借りしてお礼申し上げます。私も本日はとても楽しみにしております。それでは皆様、よろしくお願いいたします。

パネルディスカッション
 今回パネルディスカッションに参加していただいた6名のパネリストの方々に自己紹介をしていただいた後、事前アンケートで希望が多かったテーマを中心にファシリテーター(梅澤 宏明 基盤委員長)から質問する形式でパネルディスカッションを行った。


   梅澤 基盤委員長

<<博士進学の魅力・進学した理由>>
渡辺さん:修士課程の際に自由に研究ができた。自分で仮説を立て実験して論文としてまとめて世の中に発信していく。そのサイクルにやりがいを感じて修士課程だけでは足りないと思い博士進学を決意した。
齊藤さん:実験が面白かったということに加え、まだまだ自分に知識・技術が足りないことを修士時代に痛感した。能力を高めるために進学を決めた。
千島さん:五年一貫性博士課程が魅力的だった。自分の専門性を高めながら、他分野の勉強ができる。経済的な支援が充実しているという点も一貫性博士課程を決めた理由。
山本さん:研究面白いということが一番の決め手だった。失敗の連続だが、自分の仮説を立証した際にカタルシスを感じられる。これを仕事にしたいと思った。また研究室で博士課程に進学した先輩が多かったから、心強かった。
林さん:研究が面白いということがベースにはあるが、自分の中の軸を作りたかった。誇れるものを1つもちたいと思い進学を決意した。
梅澤さん:修士課程の際に進学するか迷った。一度企業に行ってからでも戻ってくるチャンスがあると思った。社会人ドクターのプログラムを採用している企業を選んだ。
<<研究テーマについて:どのようにテーマを決めたか>>
齊藤さん:修士時代のテーマの派生ではあるが、メカニズムも含めて未解明な部分を明らかにしたく現在の研究を自ら考えた。
渡辺さん:修士時代にポリマーと無機材料を混合する研究をしていた。面白いポリマーを見つけて様々な骨格にも拡張できないかと考えてテーマを創出した。
山本さん:自分でデザインしながら研究テーマを決められた。早稲田ならではの魅力だと思う。
<<研究スケジュール>>
千島さん:基本的に日中は研究室で研究しているが、スケジュールは自分で決められて自由度が高い。現在はコロナ禍でフレックス制になっている。
林さん:5~6時間で実施可能な実験を考え、ルーチン化していた。データ整理や論文で忙しい時期もあったが規則正しく生活できていたと思う。
<<社会人ドクターについて>>
梅澤さん:派遣という形だったため会社の業務はなく研究に集中できた。また、お給料をもらいながら研究させてもらった。
<<海外での活動について>>
山本さん:フランスに短期留学させてもらった。博士課程では海外に行きやすいと思う。
林さん:コロナ禍前はアメリカや韓国等に学会で行く機会があった。学会では、様々な国の交流ができ良い経験となった。
千島さん:一貫性博士課程では海外に半年~1年ほど滞在できる。
<<キャリアについて>>
山本さん:企業と比較してアカデミアの方が自分のやりたいことをできると考えた。ポジションにも恵まれた。
林さん:バイオセンサはビジネスとしては黎明期。自分のやりたい研究はアカデミアの方が適していると考えた。
齊藤さん:モノづくりにつながる研究をしたく企業を選んだ。それをモチベーションに頑張れると思った。
<<先輩からのメッセージ>>
山本さん:研究をしてみて、楽しいなと持ったら、ぜひ博士課程に進学してみてください。
梅澤さん:社会人になってからも博士課程進学のチャンスはある。まずは研究を楽しんでください、きっと自分の財産になる。
林さん:悩んだとしても自分が選んだ道が正解だと思うので、しっかり悩んで、研究楽しんで。博士課程に進学したいと思ったらぜひ。
齊藤さん:博士課程の進学を1つの選択肢として考えてもらえたらと思う。
渡辺さん:何か1つ熱中できることをみつけて、それが研究だったらぜひ進学を考えてみてください。
千島さん;色々な人との交流を通して自分の中の引き出しを増やしてください。色々と考えた上で、選択をしてみてください。

座談会
パネルディスカッション後パネリスト6名に加えて、博士号取得後の卒業生と博士後期課程在学生を交えて、ブレークアウトルーム7室に参加者を分け、30分間の座談会を実施した。各部屋を少人数にすることで、参加学生が博士人材になるべく質問がしやすいように配慮した。

座談会参加者は以下の通り(敬称略)

千島 健伸 関根研究室
渡辺 清瑚 小柳津・須賀研究室
齊藤 杏実 山口研究室
山本 瑛祐 黒田・下嶋・和田研究室出身
梅澤 覚 木野研究室出身
林 宏樹 門間研究室出身
大島 一真 関根研究室出身
村越 爽人 細川研究室出身
吉岡 育哲 桐村研究室出身
村上 洸太 関根研究室出身
加藤 弘基 山口研究室
飯泉 慶一朗 山口研究室
ウ チクン 山口研究室

博士後期課程学生への支援体制
基盤委員会 斉藤 ひとみ委員
 
    斉藤 基盤委員
 応用化学会のサポートは、学生への経済的支援に加えて、博士後期課程進学後のネットワーク強化も目的としている。2010年以降2021年まで博士後期課程修了者は約100名に達し、進学者の内訳は内部進学が85%、他大学からの編入が6%、社会人が9%であり、ほとんどが修士課程からそのまま博士後期課程へ進学している。学位取得後の進路としては過半数が企業に就職している。早稲田応用化学会では、早期から博士人材との交流機会を増やし、博士後期課程に関する真の情報を共有することで、様々なキャリアパスを示す体制を構築している。
 博士後期課程の支援体制として、奨学金制度について須賀先生よりご紹介いただいた。学内外の奨学金制度は貸与型、給付型があり、学科内の奨学金制度は全て給付型で、応用化学会の奨学金制度は大変充実している。また学内には早稲田オープンイノベーションエコシステム挑戦的研究プログラム(W-SPRING)もあり、各支援制度の選考時期・選考フローについても説明があった。各人の状況に応じてこれらの奨学金制度を有効活用し、研究に集中できる環境を是非整えて頂きたい。世界的にも博士人材の需要は高くなっており、日本でも博士人材への需要は増加傾向にある。また、応用化学会給付奨学金は昨年より給付対象を学部学生にも広げ、早期から優秀な人材を発掘し、博士後期課程に進学する学生を支援している。興味がある学生は積極的に応募してほしい。

閉会挨拶
橋本 正明 副会長


     橋本 副会長

 まずこの企画を整えて実行まで、ご尽力ご協力いただいた方々に御礼申し上げます。
この企画は、今後の日本の国際競争力を維持強化するためにも大変意義ある取り組みと思います。
私の学生時代はまだ高度成長のもとで、品質を維持しながらいかに大量に効率的にものを生産するかが競争力の基盤でした。企業の生産現場をまずよく知り、その中で日々の改善を積み重ねて競争力強化を進めました。そのためには早く社会に出て現場をよく知ることが大事とされていました。皆さんのご両親の世代もまだそういう現場重視の考え方が強かったかもしれません。
 しかし、国際社会ではそうした競争力を継続的に強化維持する管理システムの構築と普及が進むようになりました。品質、効率、安全などの管理システムはISO等においても標準化され、多くの企業が採用するようになりました。
 その結果、国際競争力の基盤は、だんだんと変わっていきました。一定の技術レベルで中での効率性・経済性・安全性の優劣を競うのではなく、いかに次の上の技術レベルにジャンプアップ出来るかの勝負になりました。そのためには既存の技術を俯瞰的に眺め、さらに上のステージに向かう視野が必要になります。技術研究においても自分の限定された領域だけではなく、その領域を含む大きな分野の総説(Review Article)をイメージできる視野も必要です。博士課程に進むということは、自分の研究を進めるとともに、そうした視野を獲得するということでもあります。
 早稲田大学の応用化学会では、来年の100周年を契機に応化会給付奨学金の充実が進められており、意欲のある学部生にまで門戸を広げた支援体制を構築しています。今日の先輩たちの話を充分参考にされて、博士課程の進学を重要な選択肢の一つとして考えてほしいと思います。

個別相談会
 今回新たな試みとして個別相談会を実施した。バーチャルコミュニケーションツール(Spatial Chat)の小部屋機能を利用して、質問したい博士人材と1対1で話す機会を設けることで、他の人がいる場面では相談しにくい質問も気軽に行えるように配慮した。

博士人材交流会
 パネルディスカッションと座談会にご参加いただいた博士人材の皆様にご参加いただき、博士後期課程学生と博士号取得後のOB/OGの方々とのコミュニケーションの場として交流会を開催した。バーチャルコミュニケーションツール(Spatial Chat)を用いて自由に懇談していただくことで、学位取得までの疑問や卒後キャリア、業種ごとの勤務体制の違いなど、リアルの交流会に近い環境で交流を深めることができた。

2022/11/5・11/6 2022年度学生委員会理工展出展報告

11月5, 6日の土日に渡って理工展が開催され、応化会学生委員会は展示や演示実験、屋台の出店を行う 応化展 として出展しました。
その記事が学生委員会HPに記事がアップされましたのでご報告いたします。 続きはこちら

早稲田大学応化会 学生部会向けキャリアセミナー

2022年8月27日:15:00-17:00
西早稲田キャンパス、61号館102B教室
講師:市場有子さん、福所しのぶさん

【目的】自分らしいキャリアを踏み出すきっかけを作ること
【ゴール】今必要とされるキャリアの考え方を知ること、自分の持つ価値観や強みを知ること

【概要】
人生100年時代、VUCAと言われる不確定な現代、長らく続いた年功序列や終身雇用といった日本型雇用は終焉を迎えようとしています。いつ何が起きてもおかしくない世の中では、所属する組織は成長の舞台であると考え、自分自身のキャリアを蓄積ことが何よりも重要とされています。一方で、理系の専門知識を持つ若手研究員は、その専門性の高さが強みとなりますが、社会人となって数年たつと、長期的キャリア形成やプライベートと仕事のバランスに戸惑う場面も見られます。今回のセミナーでは、理系×キャリアコンサルタントの我々から、社会に出る前に知っておいた方が良いキャリアの知識をお伝えし、ワークを通して自分らしいキャリアを踏み出すきっかけをご提供できればと思います。

1.ミニセミナー「人生100年時代のキャリア形成について」
日本人の8割がキャリアの迷子になっているという現状があり、迷うことは普通だが、どういうキャリアが求められているのか、どう考えるのかを知っていくことは重要。

現状の説明
VUCA(= Volatility(変動性),Uncertainty(不確実性),Complexity(複雑性),Ambiguity(曖昧性))の時代、人生100年時代、長期のキャリア形成:
経団連に所属する企業トップからも終身雇用の終焉を示唆する時代に来ている。これまではキャリアは一つの組織で昇進するための過程だったが、現在は能力を蓄積していく過程で組織は経験を与えてくれる場になっている。組織、昇進権力、地位給料(伝統的キャリア)から個人、自由・成長、心理的成功(自律的キャリア)に代わってきているが、自律した従業員の増加を80%以上の企業が望んでいる(優秀な人材の定着や生産性向上を上回っている)。

続いて、キャリア自律度診断(15項目)を用いた説明(自律的人材の診断)を用いて、キャリアアップについてのアクションについて説明があった。
心理的成功:何を伸ばせばいいのか=アイデンティテイ(自分らしさ)×アダプタビリティ(社会への適用)
これを伸ばすために3つの社会関係資本が重要(①ビジネス資本=スキル、資格・語学、経験,②社会関係資本=コミュニティ、プロボノ・副業、スクール・セミナー,③経済資本)
実際に自立度を伸ばすために、今の自分を知り、目標設定をしたときの現状からのGAPを認識し行動計画を立てて(1-3年)、実行(3-5年)実施しキャリア蓄積していく:大事なポイントとして、今の状態と目標の両方が明確であること、そのために自己分析が重要になってくる。

2.様々なキャリアパスを知る
研究職のキャリアパス:
目標設定のために、ロールモデル(ああいう風になりたい)を。そのために人付き合いが重要。
経験上、周りの支援を活用すること:育児と仕事の両立
ライフラインチャートで一定してプラスに振れている人は少ない=悩みはあるのが当たり前=長期的視点で見る
理系の活躍場面:
研究所内では、基礎研究、開発研究、生産研究といったカテゴリーがあるので、自分の興味に応じて選ぶと良い。
研究所外にも理系が活躍できる場面は沢山ある。例えば、
法務、事業部・経営企画
品質保証、知的財産
お客様センター、広報など。
活躍場面は多岐にわたるので選択肢を広く考えておくのがよい。
目標を決める上でロールモデルを定めることがオススメだが、1人に決めることは難しい。家族との過ごし方、余暇の過ごし方、コミュニティとの付き合い方、など多様な人との会話の中からロールパーツを集め、自分なりのロールモデルを形成することが良い。

研究職以外のキャリアパス
出産・育児における負荷は研究職、非研究職ともに同じで研究職以外の例として弁理士の事例について説明があった。博士課程に在学していた2000年頃は、博士号取得者のほとんどがアカデミック研究者を目指すという状況であった。しかし、博士課程なかばで、クリエイティブさへの疑念、ポスドク1万人計画、将来的な家庭との両立など、進路についての悩みが生じた。そんな時期に米国大学内のベンチャー企業でのインターンに参加し、知的財産の重要性を認識したことが転機となった。弁理士や知的財産関係の仕事は、自ら研究を行うことはないものの、身に着けた科学知識を生かしつつ、最先端技術へのサポートができるという点が魅力であると感じている。

転機の乗り越え方についてのヒントについて:
転機は大なり小なり誰にでも必ずくる。大切なのは転機を避けることではなく、乗り越え方を学んでおくこと。
個人のキャリアの8割は予想しない偶発的な出来事によるとのキャリア理論もある。この偶然の出来事をチャンスに変える5つの行動指針として、好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、冒険心の重要性について提唱されている。
上記の中でも特に好奇心に関しては日頃からの取り組みが大切と感じており、好奇心から取り組んだことはそれだけで人生を豊かにしてくれるし、一見仕事に関係ないように見えていたことも長期スパンで形になってくることもある。

グループディスカッション
1.個人ワーク
テーマは、「社会人基礎力から考えるあなたのキャリアビジョン」
社会人基礎力は、経済産業省が定義する「職場や実社会で多様な人々と仕事していくために必要な基礎力で、
前に踏み出す力(action) 主体性、働きかけ力、実行力
考え抜く力(Thinking):課題発見力、計画力、想像力
チームで働く力(Teamwork):発信力、傾聴力、柔軟性、状況把握力、規律性、ストレスコントロール力
の3分野12要素で構成されている。ワークではこれらの3分野12要素を題材に、働くうえで最も重要と考えるもの、現時点で最も得意と感じているもの、今後伸ばしていきたいものをピックアップしその理由についても書き出したうえでグループディスカッションを実施した。

2.グループディスカッション
グループディスカッションを通じて、メンバーの能力要素に気がついたものを共有し気づきにつなげる。

3.全体シェア
主体性が得意な人たちだけでも社会は回るのだろうかを考慮しバランスも含めてチームワークへの反映が重要と感じた、アクションとチームワークを得意とするメンバーで構成されていたが、アクションを起こした後共同性を持たないと話が進まない、アクションを重要視しているメンバーが多かったなどの意見が出された。

技術力や知識の深さだけでなくコミュニケーション力・人間力も重要(特にチームワークについては6要素もあるので)
重要と思うもの=価値観
特異なもの=強み・アピールポイント
伸ばしていきたい=伸びしろ・意欲
これを知ることがキャリアビジョンの明確化につながり、自律的キャリアの第一歩になる。

グループワークは、自分の考え方を明らかにして考えを深め、他人の見方も知り、フィードバックによる気づきを客観的に理解できるメリットがある。自己理解や他社との対話の中でキャリアビジョンが深化する。

Q&A:
転機の探し方について:偶然の要素が多いが、「このままでいいのか、自分はどうありたいのか?」という問いやビジョンを持っているかどうかが、偶然をチャンスとしてキャッチできる気づきに繋がっているように思います。意識したものを探しに行くという意識があると気づきもしやすい。

終身雇用についての考え方について:転職についてはネガティブな考え方が多かったがこの数年社会変化が大きい。これに気付いている人と気づいていない人の差が大きい。気づきと状況変化をチャンスと捉えることは重要。そこから自分をどう成長させるかを考えること。

成長の考え方について:これが自分の成長につながったポイント、会社が求めることに近づけたかは一つの指標、目標設定に対する意識を明確に理解してそこに近づけているかを考える:生産だと効率性、イノベーションだと経営学やマーケティング、オープンイノベーションなどが指標になったりする。業務のバリエーションがない場合に効率性を意識するなど。目に見えやすい指標にすることも重要

報告:学生委員会 (岡 順也)、 広報委員会 (加来 恭彦)

第3回「先輩博士からのメッセージ」のご案内

内容に一部変更が生じました。青字部分が追加、変更点です。

早稲田応用化学会主催 第3回 先輩博士からのメッセージのご案内
2022年8月20日(土)13:00~16:00 (Zoom、Spatial Chatによるリモート開催)

昨年8月、並びに12月に開催した「先輩博士からのメッセージ」で博士後期課程を身近に感じ、進学にご興味を持たれた方もいらっしゃるかと思います。今回は現役の博士後期課程学生と、社会でご活躍されている先輩博士に、在学中の様子から学位取得後のキャリアパスまで、パネルディスカッション形式でお話ししていただき、学部生及び修士課程学生の皆様と交流する会を開催することといたしました。

普段はなかなか接する機会のない先輩博士と直接話すことができる機会ですので、奮ってご参加くださいますよう、お願い申し上げます。

【パネルディスカッション】
パネリスト①;千島 健伸さん(LD1 関根研究室(触媒化学部門))

千島 健伸さん

パネリスト②;渡辺 清瑚さん(D2小柳津・須賀研究室(高分子化学部門))

渡辺 清瑚さん

パネリスト③;齊藤 杏実さん(D3 山口研究室(有機合成化学部門))

齊藤 杏実さん

パネリスト④;山本 瑛祐さん(名古屋大学助教 黒田・下嶋・和田研究室(無機化学部門)2018年博士修了)

山本 瑛祐さん

パネリスト⑤;梅澤 覚さん(長谷川香料株式会社、木野研究室(応用生物化学部門)2020年博士修了)

梅澤 覚さん

パネリスト⑥;林 宏樹さん(早稲田大学助教、門間研究室(応用物理化学部門)2021年博士修了)

林 宏樹さん

【座談会】

パネリスト6名に加え、OB/OG博士、博士後期課程学生、多数参加予定

講演の日時、形式等
 開催期日;     2022年8月20日(土)
講演形式;     遠隔会議用ソフト Zoom、Spatial Chatを使用したリモート講演
開会挨拶;     13:00~13:05
パネルディスカッション; 13:05~14:05 (Zoom利用)
座談会;           14:10~14:40 (Zoom Breakout Room利用)
応化及び応化会関連の奨学金説明; 14:40~15:00 (Zoom利用)
閉会挨拶;         15:00~15:15(Zoom 利用)
個別相談会;     15:15~16:00(Spatial Chat 利用)
その他 ;参加費無料.要事前申し込み(8月6日締め切り)
     本講演ならびに座談会は日本語で実施いたします。

申し込み方法について
出席申し込みは、下記URLから8月6日までにお願いします。
※申し込みの際は、wasedaメールのアドレスをご入力ください。
※今回のイベントは早稲田大学応用化学科に所属する学部1~4年生および応用化学科の教員の指導を受ける大学院生が参加申し込みの対象となります。

⇒    https://forms.gle/d4P7Hx1DsETtScpN8 

 

 

参加申し込みをされた方には、ご入力いただいたwasedaメールアドレス宛に、参加のためのZoom情報 (URL、ミーティングID、パスコード) 及びSpatial Chat情報(URL)を8月17日頃に配信いたしますので、そちらからご参加をお願いします。

皆様、是非奮ってご参加下さい。
宜しくお願い致します。
――― 以上 ―――

(文責;早稲田応用化学会給付奨学金 奨学生推薦委員会)