第23回 先生への突撃インタビュー(須賀 健雄 専任講師)

「先生への突撃インタビュー」に須賀健雄専任講師にご登場願うことにしました。今回は学生3名、シニアOB1名の組み合わせでインタビューをしました。従来を踏襲して、応化会の本来の姿である先生・学生・OBの3者によるインタビュー記事の作成を目指しました。須賀先生にも快諾を頂き、丁寧に原稿の作成に協力を頂きましたことをこの場をお借りしてお礼を申し上げます。

須賀 健雄 先生

須賀先生のプロフィール:

2003年 早稲田大学 理工学部 応用化学科卒業  
2005年 早稲田大学 理工学部 助手
2007年 早稲田大学大学院 理工学研究科 応用化学専攻 博士課程修了・博士(工学)
2007年 バージニア工科大学 化学科 博士研究員 (Timothy E. Long group)
2008年 早稲田大学 先進理工学研究科 次席研究員
2012年 早稲田大学 高等研究所 助教(テニュアトラック)
2016年 早稲田大学 先進理工学部 応用化学科 専任講師
  1. 先生が研究に本格的に取り組み始めたキッカケはなんですか?
    ―小さい頃は熱中タイプ、大学以降は選んだ高分子の研究に夢中で取り組んだ結果でしょうか?―

小さい頃からいわゆる「理科好きな少年」ということはなかったのですが、興味を持つとのめり込むタイプで、文理問わず、例えば歴史、国旗、国名、星座などの本を毎日のように読み、調べて、気づいたら全て覚えてしまうような子でした。今では国際学会や共同研究を通じて、かつて覚えた色々な国を訪ね、世界中に研究仲間が広がり、その過程で各国の文化を知ることもできるのも、今の仕事の魅力の一つだと思います。

また、応用化学科に来る学生さんの多くも環境問題(温暖化など)の解決などに関心を持った経験があるのではないかと思いますが、私も小学5年生の頃に興味を持って色々な本を読んでいたのを覚えています。

中学生になると暗記ばかりの社会に飽きて、理系科目が好きになり、将来は理工学部に行くと勝手に決めていました。中学1年で習う無機塩の溶解度や溶液の色が何で決まるのか不思議に思い、その理由を聞いては先生を困らせていた気がします。高校でも理科部などとは無縁の体育会系の部活に入っていましたが、部活も勉強も好きなものを好きなだけ学べる自由な環境の付属高校でしたので、毎朝図書館でブルーバックスなどをよく借りて読んでいたのを思い出します。物理も化学も好きで進路選択は迷いましたが、実験が好きで、得意科目でもあった化学を選びました。応用化学を選んだのは大学の模擬講義で応用化学科の先生方の講義を聞いたのもきっかけです。

応用化学科に入り1-3年生では毎週の実験とレポートに追われる日々を過ごし、基礎力と忍耐力をつけながら、研究室選びについては元々有機化学が好きだったこと、新しい機能を持つ有機材料を分子設計して合成から物性評価まで一貫して研究できるところに魅力を感じて、高分子化学研究室(当時 西出・武岡研)に配属先を決めました。当時は西出先生が磁性高分子として長年先駆的に研究されてきた「ラジカルポリマー」を違う視点で捉え直し、重金属フリーなプラスチック二次電池の電極として新しく展開を始めた時期でもあり、そのテーマの一期生となった私は新しいテーマにワクワクして実験漬けの毎日でした。当時の研究室は体育会系の部活のような厳しさもあり、隣の実験室に入る時には「失礼します」と断ってから入室するのですが、「声が小さい、やり直し!」と奥から先輩の声が飛んできて、「失礼します!!」と挨拶し直して入るくらいでした。修士の頃には毎週月・水・金は泊まり込み、夜中も2時間ごとに起きては測定して…というような生活で、部屋が明るくても装置の音が鳴っていても寝られるようになりましたね。

大学の研究というと、皆さんは実験室に閉じこもって基礎研究だけしているイメージかもしれませんね。学術的な基礎研究が大切なのはもちろんですが、私の場合は、博士課程の頃に、電機メーカー1社、化学メーカー2社、塗布プロセスを担当するメーカー1社と連携しながら共同研究を進める中で、各企業の視点にも触れることができ、どこか1社のために仕事する、というのではなく知の中継点として多角的な視点で風通し良く技術開発を深められる場としての大学研究の魅力を感じました。

 研究者としての道を考えるようになったのは、博士研究として取り組んだ、正・負極ともラジカルポリマーからなる全有機二次電池が達成できたこと、国際学会や訪問される海外の研究者との交流を通じ国際共同研究の機会を得たこと、また研究室の先輩方が海外でのポスドクを経てアカデミックな世界で活躍していたこと、などが理由です。一方でアメリカでのポスドク時代に出会った仲間と実験漬けの日々を過ごしながら、何度も大学研究者を続けることの意味、意義、大学での教育者としての役割を議論したのを今でも覚えています。

  1. 技術的内容で先生がポイントと考えておられる点はなんですか?
     ―実用性を外さない高分子材料―

高分子材料は、プラスチック、ゴム、繊維など、身の回りの素材として我々の生活には欠かせません。またスマートフォンの中の先端機能材料や生体機能を持ったバイオマテリアルでも高分子材料は活躍しています。早稲田の高分子は伝統的に機能性高分子を研究対象としており、私自身の研究の対象も二次電池の電極、有機太陽電池、メモリ素子、センサーや機能性コーティングなど出口は色々と派生してきていますが、軸としては有機低分子化合物ではなく「高分子だからできること」「高分子らしさ」を追求した分子・材料設計にこだわり、特に高分子の好き嫌いで集まり自己組織化して形成される「ミクロ相分離構造」を制御と機能発現の相関に興味を持っています。無機化合物の結晶ではなく、ぐにゃぐにゃとした、いい加減そうな高分子という鎖の分子が集まっているのに、結晶のように美しい模様が現れます。精密に分子をつなぐことができる高分子合成技術を磨くとともに、電子やイオンの伝導、絶縁性、親水・疎水性、反射特性、熱伝導性など、求められる機能は官能基1つで決まるのではなく、それら分子・官能基がどのくらいの大きさ(数十nmからサブミクロン)でどのように集まり、その配向性はどうなのか、界面はどうなっているのか、など1つ1つ次元を制御した設計で協同的な機能発現につながります。また、その一方で、凝りすぎて使い物にならない研究にならないよう、産業界から見ても素材、プロセス両面で魅力ある高分子材料を提示していけるよう、「その場反応」もキーワードとして研究しています。例えば、従来のUV硬化と同じ装置、プロセスを適用しながら、高分子設計を一工夫するだけでナノ構造がその場で作り込めるコーティングや、海に入れておくと自然にCO2を取り込んで防汚塗料となるようなコーティングです。

  1. 先生の研究理念を教えてください。
     ―俯瞰と深化の積み重ね―

理念、と呼べるものかわかりませんが、研究(活動)は先人たちの弛まぬ努力と知見の蓄積があって現在に至っていると思います。大学の研究は0から1を生む、基礎研究を担うところ、ともよく言われますが、自分の経験の中では、異分野では知られた概念・コンセプトであっても自分の研究領域で、自分の視点で捉え直してブレイクスルーした研究というのが実際は多いと感じます。それを0から1と呼ぶのはおこがましい気がしていて、自分の中では1ないし2から3,4へと繋いでいるに過ぎない、と思って研究に取り組んでいます。もちろん誰よりも早く、人が気づかない視点・切り口で研究展開することが、オリジナリティに繋がるのは言うまでもありません。その意味で1ないし2に相当する技術課題の選び方にはこだわっています。学生の教育という意味でも、同じようなテーマに偏らないよう幅を広げつつ、日々格闘中です。周辺分野も俯瞰しながら謙虚に研究を継続していくことが次世代のための学術的な蓄積にもなると信じています。

長期的に見て社会的な課題解決につながる研究に発展できたらさらに良いですね。

  1. これからの研究の展望を聞かせてください。
    ―社会的要請度の高い課題に貢献―

 高分子の素材としての可能性は無限です。機能に対する要求も際限はなく、それを分子レベルで設計して、合成化学を駆使して作り出し、特性評価まで一貫して取り組むことでまた次のアイデアが湧いてきます。産業界との連携も深めながら知の中継点としての大学の役割を果たしながら、新しい課題に取り組み、それを通じて学生の学びの場を提供していきたいと思っています。また海洋プラスチック問題などメディアの取り上げ方もあって高分子材料に対する皆さんの見方も厳しくなる中、社会的要請度の高い課題に対し私たちの研究がどのように貢献できるのか、今まで以上に研究者・教育者としての役割が問われていると感じています。一歩一歩取り組んでいきたいと思います。

  1. 応用化学会の活動への期待を聞かせてください。
    ―幅広い年代層による相互刺激―

シニアなOB, 若手OB, 現役の学生委員の活動がうまく噛み合い、交流できる各種イベント、講演会も数多く開催しており、学内外で見ても本当にアクティブなOB会組織だと思います。「先輩からのメッセージ」をはじめ、就職活動の面からも先輩方の活躍する姿を見て、また直接話を伺うことで、学生に良い刺激になっていると思いますし、また卒業後は若手OBとしてそれを還元する立場として帰ってきてくれるのも嬉しく思っています。教室教員としては日々学生の教育、研究に力を注ぎ、育てるのが役割ですが、応化会の活動を通じて、社会の目から見た位置づけを学生が感じる機会を多く提供頂いていると思います。忙しい30-40代の中堅世代の関わりが少し薄いことに私自身も少し責任を感じますが、今後も応化の伝統を引き継ぐ組織として大切にしていきたいと思いますし、また新しい企画が出てくるのを楽しみにしています。

  1. 100周年を迎えた応用化学科についてコメントを聞かせてください。
    ―人材育成の重みを感じつつ次に繋げたい―

2017年の100周年記念会にも参加し、多くの祝福を受け数多くのOBを見て、改めて伝統の重みを感じましたし、一員として、また教員として応用化学科の学生を育てていくことの責任を強く感じています。高分子化学研究室としては西出先生の先代に当たります土田先生が逝去された折、偲ぶ会に300名ほどお集まり頂いたOB/OGの姿を見て(その数は先生が育てられた数の一部に過ぎない訳ですが)、大学教員というのは、一生を懸けてこんなにも多くの人たちと関わり、そして研究者・技術者の卵を、産官学で活躍する人材へと育て、輩出する大切な職業だと感じました。その責任の重みを感じつつ、日々接する学生との関係を大切に過ごしていきたいと思っています。

  1. 21世紀を担う皆さんへのメッセージをお願いします。
     ―自分に見合った化学の領域を見つけてほしい―

応用化学には魅力ある研究を進めている先生方が皆さんを待っています。是非自分の興味を持った化学をそれぞれ見つけ、濃密な実験、研究を通じて方法論と考え方を学び、社会の課題解決に化学の視点で取り組む研究者・技術者になってほしいと思います。

参考情報: 
   https://www.waseda-applchem.jp/ja/professors/suga-takeo/

インタビュアー&文責: 疋野拓也(4年)、佐藤由弥(3年)、
西尾博道(3年)、井上健(新19回)  

突撃インタビュー メインページへ

過去の突撃インタビュー