濱 逸夫 応用化学会副会長 祝辞 

濱逸夫早稲田応用化学会副会長

皆さん、ご卒業おめでとうございます。またご家族の皆さまにおかれましても感無量のことと存じます。心からお祝い申し上げます。

応用化学会副会長としてお祝いの言葉を述べさせて頂きますが、先程ご紹介がありましたように、私は現在、歯磨や洗剤、あるいはライオンちゃんでおなじみのライオン株式会社の会長をしております。昨年まで7年間社長をしておりましたが、本年1月より会長として会社経営に携わっております。明後日が丁度株主総会でありますが、本日は是非皆様にお祝いを申し上げたいとの思いで、こちらに馳せ参じました。

以前は大学を卒業し、良い仕事につくことが、一つの人生のゴールでありましたが、今は授業料を払う生活から、お金を稼ぐ生活へのひとつの転換点であり、ゴールと言うよりも、先の見えない、新たな挑戦へのスタートと言った方が適切かもしれません。私共の会社にも、実に様々なキャリアをもつ新入社員が入社してきます。以前は新人研修や合宿でライオンウェイを叩き込み、如何にしっかりと均質な社員を育てるかが重要でした。しかしながら、現在は多様なキャリアや個性をぶつけ合い、かつ融合させながら、新たな価値を創造し、スピーディに実現していくかが重要視される時代です。更にデジタルトランスフォーメーションやグローバリゼーションの中では、破壊的なイノベーションが至る所で生まれており、常に人も組織も変容を繰り返しながら成長して行かねばなりません。

 こんな話をすると、折角大学で勉強したのに、実社会でどうすれば良いか判らないと思うかもしれません。しかしながら、先日ある著名なデータサイエンティストと話をしておりましたら、今のような時代にも、社会で成功する為の一つの方程式があるとのことでした。またそれはデータサイエンス的にもロジカルに証明されているとのことでした。様々な成功者の行動パターンを分析すると、自分の周囲に三角形の人の繋がりをたくさん持っている。この三角形の人の繋がりが多いほど、成功の確率が上がるとのことでありました。

自分があるAさんと繋がり、そのAさんの知人であるBさんと自分自身が繋がる、こんな三角形の繋がりをたくさん持っていること、そしてその三角形も出来るだけ多様なジャンルの繋がりをもつことが、社会に出て、様々な課題をブレークスルーし、成功に結びつける確率を最大化させるようです。昔から人生は運だとか言われていますが、もしかするとこれも沢山の繋がりを持った人が運の良い人と言われていたのかもしれません。そして、そんな運の良い人になるためには、自分自身も人に繋がりを持ちたいと思わせる、魅力的な人に成長しなければなりません。
 今日ここにいる皆さんも、企業に就職する人、大学院でもう少し学生生活を続ける人、あるいは全く別のキャリアを目指す人等、様々な人がいらっしゃると思います。
卒業という新たな挑戦のスタート。自分自身の、多様な人との三角形の繋がりを広げる最大のチャンスです。夫々が持っている様々な魅力や興味を武器にして、夢と情熱とフットワークで、素晴らしい成功のネットワークを築いてほしいと思います。
そして早稲田人の繋がりと言うのは、これからの皆さんのネットワークづくりの貴重な財産、苦しいときの味方にもなります。そのことに応用化学会も最大限のお手伝いをしたいとも思っています。

これまで皆さんの多くは、ご家族や能力にも恵まれ、挫折という言葉を知らずに生きてきたと思います。しかしこれからの人生では、思いもよらぬ、様々な環境変化が降りかかります。逆境の時も、常に前向きに、アクティブに、そして常に心を揺さぶり、いつもワクワクしながら、自分自身で設計図を描き、成長してほしいと思います。
 これからの皆さんの素晴らしい人生を心から祈念して、甚だ簡単ではありますが、私からのお祝いの、そして応援のメッセージとさせて頂きます。
本日は、本当におめでとうございました。

                             以上